インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第195話

「喰らえ……!」

 

 あれから数分後、東京が深夜で静寂に包まれている中、町外れにある廃工場の上空では三機のISが死闘を繰り広げていた。一夏と、彼のIS・ジャック・ザ・リッパー。一也と、彼のIS・ゾディアック。一彦と、彼のIS・ジルドレが、だ。

 しかし、一夏と一也は一時的な共闘で一彦を倒しにかかっている。一彦は二対一と言う不利な状況でも抗戦していた。一夏はグレネードランチャーを、一也はマグナム銃を、一彦は砲身を展開している。

 どうなるのかは、勝利の女神は何方に微笑むのかは神のみぞ知る。同時に静寂を裂くような破裂音、轟音を彼等は出していた。近所迷惑とも言えるが彼等はゲームを制する為に戦っているに過ぎないのだ。

 

「死ね……!」

 

 一也はマグナム銃を一彦に向けて、引き金を引く。銃口からマグナム弾が放たれ、それは一彦目掛けて突き進むが彼は動く的であり、難なく躱された。

 直後に一彦は砲身を彼に向けるが砲口から砲弾が放たれた。一也はそれを躱すがマグナム銃を彼に向けたまま引き金を引き続ける。何度もマグナム弾が放たれるが一彦は難なく躱し、更には反撃と言う意味で砲弾をブッ放し続ける。

 何方も一進一退の後方であるが一夏はと言うと……彼はグレネードランチャーを彼、一彦に向け、引き金を引いた。擲弾が放たれるが一彦向けて突き進む。

 

「おわっと!」

 

 一彦はそれに気付き躱すものの、被弾してしまう。彼の擲弾ではない、一也のマグナム弾に被弾してしまったのだ。彼は一夏だけを相手にしている訳ではない、一夏と一也の二人を相手にしているのだ。

 一彦には不利だろうが他所を気にしつつ闘うしかないのだ。一彦は一也に撃たれる中、彼は更に二門の砲身を展開すると、それ等を全て一也目掛けて向けると、砲身を彼の方へと突き進ませる。

 

「暫くは彼等が相手だよ!」

 

 一彦は笑いながら移動しながら一也に言った。三門の砲身は一也目掛けて砲弾を放つ。それを見た一也は舌打ちすると、躱す。が、三門の砲身は砲弾を出し続けていた。

 何れも一発づつではない、何発も出しているのだ。一也はそれ等を全て躱すのは至難の業である。その意味は苦戦でもあった。

 

「さてと……」

 

 一也を見た後、一彦は一夏を見る。彼は眉を顰めているがにはグレネードランチヤーはない。代わりにハンドガンを展開していた。それを一彦ン向けながら引き金を引き続けていた。

 しかし、それ等は全て空振りと言う意味で全て当たらない。一夏は舌打ちするが一彦はある武器を展開した。槍だった。

 

「それは……!」

 

 一夏はその武器を見て、ある忌まわしき過去が彼の脳裏を過る。それは彼が、他のプレイヤー達が学園を襲撃した際、自分が唯一、相手にしたのが一彦だった。

 しかし、その時、彼が展開した武器が槍だった。自分もランスで対抗したが結果は虚しくも敗北だった。怪我をしていた事、右腕を失った事が敗因でもあった。

 屈辱かつ、復讐したかった。が、今それが出来る。あの時と同じ状況になっている。勝てるか勝てないかは自分の力量かつ、相手の動きを詠む他、方法はない。

 一夏は彼が展開した武器を見て歯軋りするが一彦は笑いながら槍を軽く振り回す。

 

「まあ、あの時と同じだろうけど、君は一回の敗北を認める前に、僕は負ける気はないよ?」

「…………」

「あの時の事は良く覚えているし、僕自身、ゲームに生き残りたいからね?」

 

 一彦はそう言いながら槍を振り回し続けていた。挑発とも取れる発言をしているが煽っているのだ。彼は勝利出来る自信や理由があった。理由は彼が負傷している事だった。

 彼は右腕を失っているどころか、肩口が何者かに噛まれたように裂かれている。同時にボロボロであり、時間があっても体力はない。つまり、死をも意味しているのだ。

 逆に自分は体力はまあまあるが完全に怪我している訳ではない。それに一也は三門の砲身を相手にしている為、援軍に入られる危険はない。

 しかし、それはメリットでありデメリットでもあった。一也が介入してきたら、二対一で押される危険もある。逆に倒す事でも出来る為、一石二鳥でもあるのだ。

 一彦はそう考えているがそれを発言する気配はない。言えばバレるからであり、口は災いの元とも言えるからだ。一彦は笑いながら槍を振り回しているがそれを見た一夏は無言でハンドガンを投げ捨てた。

 刹那、彼はある武器を展開した。それは、ランスだった。

 

「ありゃ?」

 

 彼が展開した武器を見た一彦は首を傾げる。彼はあの時の敗北を繰り返すのか? と。が、一夏はそれを繰り返す気はない。彼はリベンジしょうとしていた。

 あの時の屈辱を、雪辱を、報復と言い替える意味で返そうとしていた。死で償ってもらおうとしていた。同時に負ける気はない、彼に勝たない限り、敗北したままである。

 自分の手で奴を敗死させる。一夏はそう考えていた。

 

「フフッ……!」

 

 彼がランスを展開しているのをキョトンと見ていた一彦は突然笑い出す。何をするのかは判らないが彼はランスで対抗しょうとしているのだ。

 彼はそれに気付くが槍で対抗出来る武器は、それしかないと思っているのだろうと。

 

「まあ、いっか? じゃあ、いくよ!」

 

 一彦は笑いながら彼に迫る。先手必勝と言う意味でも、先制攻撃してきた。刹那、一夏はウィングスラスターから黒い煙を噴き出させる。それは辺りを包み込むように充満するが一彦は慌てて止まる。

 

「おわっと!」

 

 一彦は驚くが彼は黒い煙に巻き込まれる前に止まった為に、被害を受けずに済んだ。が、一夏は黒い煙の中にいるが彼が出した物である。

 

「う〜〜ん? 何所から出てくるんだろうね?」

 

 一彦は辺りを警戒しながら槍を構える。彼は何所から出てくるのだろうか? そう思っていた。刹那、彼の前に何かが煙の中から突き出てきて、彼目掛けて突き進む。

 

「うわっ!」

 

 一彦は紙一重で躱すが、それは一彦の横を通り過ぎた。が、彼はそれを見て驚く。

 

「そ……!」

 

 一彦は何かを言い掛ける前に、彼の前にある煙から一夏が煙を突き出てくるように出てきた。一彦は更に驚くが一夏はウィングスラスターから黒い煙を噴き出させる。

 それは今度こそ一彦を巻き込んだ。一彦は煙に巻き込まれるが一夏はその隙を突くようにランスで彼の腹を突く。

 

「うぐっ!?」

 

 一彦は腹を突かれるが微かに痛みを感じるだけだった。しかし、一夏は更に追い討ちをかけるように今度はランスを振り翳すと、彼を叩き落とす。

 彼の、ISを纏った一彦が地上目掛けて突き進む。彼は黒い煙から追い出させるように突き出てきたが彼は地面、廃工場の方へと落ちていく。が、彼は何とか踏ん張ると黒い煙の方を見る。

 黒い煙は何の変哲もないがそこから一本の矢が煙から突き出てきた。それはさっきの、最初に出てきた奴と同じ奴だった。一彦はそれに気付きながらも躱そうとした。

 が、その矢は突然爆発した。

 

「おわっ!」

 

 一彦はそれに巻き込まれるが爆風で吹っ飛ばされそうになる。が、何とかそれも持ち堪える。

 

「……凄い」

 

 一彦は思わず感想を漏らしながら黒い煙の方を見る。煙は徐々に消えつつあるが人影が見えた。そこには、彼がいたのだ。ランスを肩に掛けながら一彦を見下ろしている彼、一夏がいた。

 彼に向ける視線は冷ややかな物かつ、絶対零度の視線とも言えた。敵である事を自ら認識しているのと、彼に敗北したと言う信じ難い現実に目を逸らし、それを覆す意味で無くそうとしている。

 敗北した相手には二度と負けない、そう意味させていた。その為には一彦を倒すのが先決でもあった。彼を倒し、それ等を全て払拭させる。

 一夏はそう考えているが彼は知識を働かせて闘おうとしていた。不利ならば知略で補えば良いと。さっきの攻撃も二度は喰らわないだろう。逆に新しい攻撃方法で戸惑わせば良いのだ。

 

「まあ……君も本気みたいだね?」

 

 そんな彼に一彦は微かに笑う。刹那、彼は表情を一変させた。笑いが残っていながらも険しい表情を浮かべる。彼も本気を出そうとしていた。

 彼は槍を持っているがさっきの攻撃を喰らいながらも持ち続けていたのだ。彼は槍を軽く振り回した後、叫んだ。

 

「僕も本気を出すよ! 織斑ーーっ!」

 

 一彦は槍を持ちながら彼に迫る。一方の一夏も彼が突撃してきたのを確認しながらも彼もランスを持つ手に力を入れると、一彦目掛けて突き進む。

 刹那、大きな音が響いた。それはぶつかりあう音だった。その正体は、武器と武器が鍔競り合う音だった。そしてその武器は槍とランスだった。

 何方も遠距離や近距離での攻撃に特化した物であるが持ち主は違う。ランスは一夏、槍は一彦だった。一夏は表情を険しくしているが一彦は笑っている。

 彼等は互いの武器を使って鍔競り合っているが退く気配はなかった。退けば負ける、そう気付いていたからだった。


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