インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「何故、お前が此処にいる……!?」
一夏は彼、ハリー・ヴォーデンがいる事に眉を顰めながら驚いていた。彼は自分が最初に倒したプレイヤーが引き連れていた殺人鬼だった。
あの時、プレイヤーを倒した際に彼は消滅したが死んだ事を意味していた。が、彼は此処に居る。何しに来たのかは自分にも判らないが彼は異形な人形や豚の顔をした人の化物を見捨ていた。
ガスマスクは彼等を見ている、鶴嘴は彼等を潰す意味で用意したのか、それとも愛用している意味で持ち続けているのかは判らない。同時に敵か味方かも判らない。
一夏は彼に警戒する中、楯無と一美は驚き、怯えている。この状況をどうにかしたいがそれが出来ない。同時にこの状況を打開出来るのは彼、一夏しかいないのだ。
彼の判断が功を奏するのかは判らないが誰一人、何も喋らず、語ろうともしない。が、この状況の中、ある者が口を開く。人形だった。
「お前は誰だ?」
「…………」
異形の人形はハリーに対して訊ねる。が、彼は何も語ろうとはしない。まるで黙秘しているか、彼の問いに答える義務はなく、敵である事を認識しているようだった。
それでも異形の人形は訊ね続けるが彼は何も喋ろうとはしない。
「おい……お前は敵か?」
「…………」
「答えないか……まあいい」
人形は何かを思うように更に先を続けた。
「アマ……否、ピッグ、あの野郎とガキ共を殺せ……!」
異形の人形は豚の仮面を着けた人の化物、ピッグに対してそう命令した。その言葉に一夏は舌打ちし、楯無と一美は驚く。刹那、ピッグは豚のような鳴き声を上げながら彼等に迫る。
仕込み刃で殺そうとしているが迫って来ている、一夏は闘う構えを見せるが、それ以上にハリーが素早く動く。彼はピッグが迫ってくるのを確認しているが手に持っていた鶴嘴をピッグの頬目掛けて横に振る。
ピッグは豚の仮面を被っている為にどんな表情を浮かべているのかは判らないが、彼はハリーの攻撃を難とか躱す意味で後退する。直後に鶴嘴がピッグの目の前を横切る。が、ピッグは異形の人形を守る意味で前に立つと、仕込み刃で彼を警戒する。
「なっ……!?」
彼の行動に楯無は声を上げて驚く。彼の攻撃は相手を殺す意味にも近かったからだ。一美は言葉を失う意味で何も喋らないが一夏は彼の高度に眉を顰める。
しかし、彼は味方である。彼は主催者があの方の代わりとして、あの方の願いとして一夏の為に用意した殺人鬼だった。彼の実力は一夏にしか判らないがハリーはピッグと異形の人形を見ている。
攻撃する気配はないが睨み、警戒しているようにも思えた。一夏を守る意味にも近いが一夏は彼を警戒している。知らないとは言え、味方である事も知らない。
敵である事に警戒している。刹那、再び破裂音が何所からか響く。が、今度はそれ以上に大きかったからだ。これには一夏達も反応するが何所から響いているのかは判らなかった。
「…………」
一夏は破裂音に舌打ちした。また響いた事に怒りを隠せないでいた。何所から発生しているのか、何が起きているのかは判らない。判るとすれば、一彦がだれかと闘っている事だった。
恐らく、自分達の他に来た一也か、或いは目の前にいる奴等の仲間かもしれない。一夏はそれに気付くと楯無と一美を交互に見る。楯無は一美を支えながら辺りを見渡しており、一美は楯無に抱き着きながら怯えている。
逆にハリーの方を見るが彼はピッグと異形の人形達を警戒している。自分達に危害を加える気配はないが一夏は溜め息を吐く。
「織斑、君?」
楯無は一夏の行動に疑問を感じるが一夏は眉を顰めながら楯無、否、一美を見る。
「おい」
彼は一美に訊ねる。一夏の言葉に一美はビクッと肩を震わせながら彼を見る。一夏は眉を顰めているが「な、何?」と答えた。が、一夏は自分に対して怒っていると思っていた。
彼女は一夏を見て怯える中、彼は口を開いた。
「……更識と共に、この場所から脱出しろ」
「!?」
「っ!?」
彼女の言葉に一美は目を見開き、楯無は言葉を失う。が、一夏は何も言わなかった。それだけ言った後でもあるがそれ以上の事は言わない方が良いと思っているからだ。
が、そんな彼の言葉に否定的な者がいた。楯無だ。彼女は一夏の言葉に驚きつつも彼に詰め寄る。
「如何いう事なのよ織斑君!?」
彼女は一夏に詰め寄りながら指摘した。彼の言葉は自分達がいる事を否定し、足手纏いとも感じているからだ。が、一夏はそれを話そうともしない。
彼はゲームを制する為に、一彦を倒すのが先だった。しかし、彼女等がいると逃げられる危険もあるのと、それを防ぐ為には一也と共に倒すしか方法はない。
一也も敵対しているとは言え、一彦には借りがあるのだ。何方も怪我を負ってる身であるが何とか対抗出来る。その為には楯無達には、この場所から前線離脱と言う意味で脱出してもらう。
彼女達がいればややこしくなるからだ。一夏はそう考えているが楯無は言葉を続ける。
「織斑君、これ以上どうするつもりなの!? この状況で、そんな事を言って何を考えているのよ!?」
「……いいから脱出しろ、おい、小娘、この女を」
「そんな事は私が赦さないわ! もしも脱出したいのなら貴方も一緒よ!」
楯無は一夏に対してそう言った。彼も一緒に脱出する事を選ぶ。今の彼は負傷しているからだが後の事はどうにかなると思っていた。
「……脱出しろ」
「厭よ! 貴方も一緒なら私は拒まない!」
楯無は彼の左手を掴むと、一美を見る。
「一美ちゃん! 此処から離れましょ!」
「えっ……でも」
「早くして! お願い!」
「そ、そんな……」
一美は困惑する。が、ピッグが鳴き声を上げながら彼等に迫る。
「ひっ!」
一美は怯え声を上げるが逃げる意味で風のように消えようとした。刹那、一夏は楯無の腕を払う。
「織……!」
楯無は一夏の行動に驚くが彼は楯無を冷ややかな目で見ていた。それは一瞬であるが楯無は一美と共に風のように消えた。更に刹那、ハリーがピッグに対して戦いを挑む。
ハリーがピッグとぶつかり合う。そんな彼等のやり取りを一夏は眉を顰め続けながら見ているが彼はハリーに後の事を託して、その場から消えた。
「おい……!」
そんな彼背景の人形は怒るがそれは二体の殺人鬼と闘い合う音で掻き消されてしまい、誰にも訊かれる事はなかった。
「夢見一彦……!」
その頃、一也はグレネードランチャーで一彦を追い詰めている。彼は憎しみが籠った視線を彼に向けるが一彦はそれを逃げる意味で躱すが押されていた。
しかし、彼等はISを完全に起動していた。一夏が楯無と会話している間、ISを起動しており、上空で死闘を繰り広げていた。理由はレイスやハントレスからの攻撃を逃れる為であった。一也はゾディアックを、一彦はジルドレを起動していた。
一也はグレネードランチャーを展開したままであるが一彦は砲身を展開していた。
「おわっ!」
一彦はグレネードランチャーの擲弾を躱すと、即座に砲身の砲口を彼に向けながら、数発の砲弾を放つ。一也はそれを見て舌打ちすると、ISを上手く使いながら横へと移動しながら躱していく。
しかし、完全に躱す事は出来なく、一発が彼の胴体に命中する。
「ぐあぁぁっ!」
一也は吹っ飛ばされるがグレネードランチャーを落としてしまう。が、何とか身体を回転させると彼を、一彦を見る。彼は笑っているが勝てると思っていた。
一也は彼の表情を見て歯を食い縛るが莫迦にされた気分を味わい、屈辱をも味わう。彼を倒す、そう決意させていた。彼は、ある武器を展開する。
それは一丁のマグナム銃だった。それは一也が最初に使う意味でも一彦を倒す意味でも展開したのだ。彼はそれを一彦に向け、引き金を引いた。
破裂音が響くが一彦は横へと移動する。躱されるが一也は彼を追い掛けるようにマグナム銃を移動させるように手を動かしながらマグナム銃の引き金を引く。
しかし、どれも命中しない。
「ふふっ! そんなんじゃ僕に……!」
一彦は一也に対して揶揄するが彼の背中に命中した。
「っ!?」
一彦は背中に微かな痛みを感じるが一也は目を見開くと視線を一彦の背中を、その後ろへと走らせる。同時に彼は驚いた。そこには、ある人物がいた。
その人物はISを展開しているが一也の方へと向かってくる。
「……織斑一夏……!」
一也はその人物を見て驚いた。その人物は一夏だった。彼はIS、ジャック・ザ・リッパーを展開しているが彼の近くで止まると、彼を見る。眉を顰めているが一也は驚いていた。
彼は死にかけていた筈、そう思っていたのだ。しかし、生きている事に驚きつつも一夏は視線を別の方へと向ける。一也は彼の視線に気付くと舌打ちし、彼が見ている方を見た。
そこには一彦がいた。彼は背中に痛みを感じながらも宙に浮く。
「いてて……あれ?」
一彦はキョトンとしながら彼等を見る。何方も表情を険しくしていたが、彼はある事に気づき、両手を叩く。
「ああ、そう言えば……ふふっ!」
一彦は笑うと、砲身を彼等に向けていた。それは二人を倒す、そう意味させていた。一方で一夏と一也は一彦を見ているが武器を構える。
それは共闘する意味で一彦を倒す為だった。
そして、深夜の廃工場の上空で一夏は一也と共に、一彦との最後の戦いを繰り広げる。
次回の投稿はお休み致します、次回は明後日からの投稿となります。