インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第19話

「そんな……そうか、判った」

 

 あれから十分後、源次の部屋では源次と楯無、従者がいた。しかし、従者は携帯電話で誰かと話をしていた。彼の表情は哀しくも何処か怒りを隠しきれないでいる。

 電話の内容は彼にとって、悲しい気持ちや怒りを抑えきれない気持ちをも作っていたからだ。電話の主は美川からであり、その内容は武藤と山岡の死であった。

 

 

「警察には連絡したか……そうか、では其方には村上と山川が警察の事情聴取に応じといてくれ――ああ、簪お嬢様と奥様には……恐らく簪様にはつらいだろうが、なるべく刺激しないように伝えとく」

 

 従者はそう言うと携帯をしまい、源次と楯無を交互に見ると軽く項垂れながら武藤と山岡の死を伝えた。従者の言葉に楯無は「そんな……」と驚きを隠せず、源次は下唇を噛む。

 二人の従者の死。それは楯無と源次からみればつらく、大きな打撃を与えた出来事でもあった。従者は他にも大勢いるが二人の犠牲はまだ小さくも大きな打撃でもある。

 構成員とは言え、従者は使い捨てではない。いざという時には見捨てる決断も要る。楯無達はそう思いながらもある事を気にしていた。

 

「お母さんや簪ちゃんには何て言えばいいの?」

「判らぬ……だが、家内は兎も角、簪は虚ちゃんや本音ちゃんに彼女の傍に付くように言っとく」

「そう……それよりもお父さん、他の皆にも連絡した方がいいわ……色々と考えなきゃならないけど、他の人達にも伝えた方がいいわ」

「そうだな……二人の死は無念であるが他の従者達にも彼等の死を伝えよう」

 

 源次はそう言うと楯無や従者に「他の者達に連絡を」と言いながら懐から携帯を取り出すと携帯を開き、何処かへと連絡する。楯無や従者も頷くと楯無は携帯を取り出し、従者のひとりに連絡する為に操作する。

 

「では、私は木村に……」

 

 従者はそう言いながら携帯を操作し、その後に耳に当てる。微かに音がするが三人は他の従者達に連絡する為に電話していた。源次と楯無は直ぐに出たが二人は山岡トム等の死を知らせる。

 向こう側は酷く驚いていたが二人は冷静に伝えていた。しかし、従者だけは違った。彼が連絡した木村が出ない事に驚いていた。携帯からは音だけがなるが不意に女性のアナウンスがなった。少しであるが彼は留守電を入れる。

 

「おい木村? 何故出ない? おい!」

 

 

 

 

『木村、どうして返事をしない? 応答しろ!』

 

 ここは東京の某所にある路地裏。今の時間帯が夜と大雨により人は通らない。否、通る事態が珍しいが通るとしたらホームレスくらいだろう。

 そんな中、此所には一人の黒服を着た男がいた。彼は壁に凭れ掛かりながら俯きながら座っていた。が、彼からは何の反応はない。何故なら彼は既に事切れていたからだ。死んでいたからだ。

 動向は開いており、口も開いている。そして胸には鋭利な刃物で刺された痕があり、胸には血がにじみ出ており、下に伝うように流れ、周りに血の海が出来ているが雨と混じり合うように出来ていた。

 

「…………」

 

 そして、彼の近くには一人の青年が立っていた。彼の手には携帯が握りしめられていたが男性の所持品であった。青年は携帯を凝視しているが表情は険しい。

 携帯から男性の声が聴こえている事に怒っている訳ではなかった。青年は携帯から声が聴こえなくなるのを待っているのだ。刹那、声は聴こえなくなり、青年は携帯を開く。

 画面が表示されているが不在着信が一件だけ残っていた。さっきの奴であろうが青年は気にもせずに携帯を操作する。彼が操作して出したのは、連絡先であった。

 山岡、武藤、美川、村上、山川、伊藤、高橋、鈴木、佐藤、といった数名の名字が電話番号と共に表示されているが中には当主や前当主と行った名前不明の物もあったが青年は他の、ある二人の名字を無言で見ていた。

 山岡と武藤――それは青年には見覚えのある名前であった。そう、彼が少し前にブギーマンと共に殺した者達である。そう、彼はブギーマンを半霊としているプレイヤーの一人であった。

 そして近くにいる男性は木村――更識家の従者の一人であり、その彼を殺したのは青年であった。彼とは軽いやり合いをしたが青年から見れば難なく倒せた。

 理由は彼も霧の影響により、身体に以上を来された者であるからだ。青年の近くにはブギーマンはいない。彼は青年が囮となって木村に不意打ちしてから包丁で胸を刺したのだ。

 彼は青年の命で霧のある病院へと戻ったのだが青年は何故か其処に居続けていた。早くしなければ警察が来るが彼は携帯の連絡先を操作し続けていた。

 その理由は連絡先に載っている者達を調べていた。

 

「コイツらも男性操縦者を……織斑一夏を捜しているな」

 

 青年は呟いた。彼は一夏を捜していた。その為、彼は彼を保護したであろう更識家の者達に居場所を訊ねようとしたが彼等は何故か、それを答えようとはしなかった。

 そのため彼は武藤と山岡を殺したのだが、木村もまた拒んだ為に殺した。青年は彼等も一夏を保護か、或いは捜している事に気付いた。

 しかし、彼はそれを良しとはしなかった。彼は一夏がプレイヤーではないかと察知しており、同時に彼を邪魔な存在として認識していた。自分は織斑一夏を殺す、その為には更識家の連中は障害としかない。

 彼は更識家を障害として認識しただけでなく、彼等を抹殺の対象としても、認識しつつあった。その為、彼は携帯にある者達を一人一人覚えていく。

 

「コイツらから全てを聞くか……が、拒むなら殺す」

 

 青年はそう言うと、携帯を懐にしまうと視線を木村の方へと移す。彼は既に死んでいるが彼は拒んだが為に殺した。抵抗はされたがブギーマンと共に難なく倒した。

 しかし、彼は最初から殺すつもりはなかった。訊ねたのも慈悲であるが当然、彼は拒んだら殺すという考えを持っていた。同時に彼は更識家の連中を殺す事も考え始める。

 彼が殺したのは武藤、山岡――そして先ほど殺した木村。彼が殺したのは三人であるが彼はもっと殺すつもりであった。もう慈悲は掛けない――彼が、織斑一夏が姿を現そうがしないが関係ない。

 彼はもう、連中の全てを殺すつもりであった。彼は一夏を求めていた。殺すつもりであった。それは、彼もある願いを叶えるがためであった。

 その為には一日も早く、死のバトルロワイヤルを制する気持ちがあった。一夏がプレイヤーであろうがなかろうが関係ない。疑わしき者は全て殺す。

 彼の信念と願いを叶えたいが為の憎悪を募らせていた。彼は木村を見続けるが彼は飽きたかのように風のように姿を消した。残ったのは木村であるが彼が他の従者か通行人に発見されるまで、そのままであった……。

 しかし、これは序章にしか過ぎない――一人、また一人と消される。それは更識家にとって手痛い打撃でもあり、楯無達が多くの従者を喪う序章にも過ぎなかった……。

 

 

 

「…………」

 

 その頃、此所は霧に囲まれ、湖にも囲まれたに階建ての一軒家。その家の中には一夏がテーブル近くのイスに座っており、その近くには一夏を見下ろすように立っている大男、ジェイソンがいた。

 一夏は表情を険しくしているが彼は思考を走らせていた。他のプレイヤー達の行動範囲を想像していた。彼等がどう動き、どう動くのかを想像していた。

 それだけでなく、彼は三日も此所を出てない。更識の連中に見つかる危険があるからだ。連中の事だから手荒な真似をしてでも拘束しにくる事も目に見えていた。

 本当のことを言えば自分を捕まえにくる事は察していた。その為彼は動くに動けないでいた。刹那、彼は何かを思ったのか静かに立ち上がると、二階へと向かう。

 途中、ジェイソンを見る。ジェイソンは一夏を見続けていたが一夏もジェイソンを見続けていたが彼は言った。

 

「俺は買い物に行く……食料の蓄えが底を尽きそうになったからな」

 

 一夏はそう言うと二階へと向かう為に階段を上る。彼は二階で出掛ける準備する為に自分の部屋に向かったのだ。そんな彼をジェイソンは無言で見ていたが彼は鉈を携えていた。

 彼は鉈を静かに取り出すと鉈を舐めるように眺める。とても鋭く、妖しい輝きを放っている。切れ味も良く、人の頭を一刀両断出来ると直感した。

 が、彼の愛用の武器であり、欠ける事の出来ない物。これはいざという時の為にしか使わないが彼は軽く振り回していた。それはまた留守番である事に気付き、尚且つ、他の自分と同じ殺人鬼を殺す為にもであった。

 一夏の半霊として、殺人鬼のプライドとしても、と……。ジェイソンは鉈を振り回し続けるが彼は一夏が支度を終え、一階に降りてくるまで振り続けていた。




 申し訳ございません、水曜日は投稿をお休み致します。次回の投稿は木曜日です。

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