インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第179話

「あ、あの、織斑さん……?」

「何だ?」

「どうして……あまり大きな明かりを持たないの?」

 

 数分後、一夏と一美は廃工場内を歩いていた。彼等が居る場所はボイラー室であるがそこは長年放置されている為に何時爆発しても、否、爆発するかどうかも判らない。

 が、二人は密着していた。と言うよりも、一美が怯えながら彼の腰に縋り付いていた。一夏は手にライターを持っているが彼女の行動に呆れている。無理もない。室内は暗く、灯りもないのだ。

 ライターだけが唯一の明りでもあるが小さ過ぎるのだ。一美はその事を怯えながら指摘するが一夏を教える。

 

「莫迦か? ……大きな明りを使えば奴等に場所を教えるような物だ……それは自殺行為にも等しく、脱落を早めるだけだ」

「でも……私達はゲームを進める為に……それに、此の状況じゃあ、私達は負けちゃうよ……!」

 

 一美は辛そうに叫んだ。彼女等はゲームを進める為に、他のプレイヤー達を倒す為に此の場所へと来たのだ。一彦の主催の下でもあるが一夏は参加者として、彼を含めた他のプレイヤー達を倒す為にも参加しているのだ。

 しかし、一美は室内が暗い事で怯えている。本当は泣きたいのだが彼に迷惑をかけたくないと我慢していた。そんな一美の叫びに一夏は舌打ちした。

 此の娘はプレイヤーであるが足手纏いとしか思えなくなった。これなら自分一人で来れば良かったが今はそう言っても彼女は否定するだろう、参加するとただを捏ねるだろう。

 が、一美は何を考えているのかは彼女にしか判らないのと、自分は彼女を守る義務はないのだ。一夏はその事を言う。

 

「お前……そんな事を言っても、俺はお前を守る義務はない」

「えっ……!?」

 

 彼の言葉に一美は驚く。それでも一夏は先を続ける。

 

「俺達はゲームを制する為に来たんだ……それにそんな事を言っても、奴等の思う壷だ……一彦だけじゃねぇ、ブギーマンを連れている奴や、ピンヘッドのプレイヤーも来ているだろう。奴等はそれを承知で来てんだよ……!」

「…………」

「奴等は俺と同じようにゲームを制しょうと俺達を殺しに来ている……お前みてえな弱気な奴は直ぐに脱落する……! 殺される未来しかねえよ……!」

「……っ」

 

 刹那、一美は目に涙を溜める。我慢は愚か、耐える事は出来なかったのだ。が、一夏の言い分は一理ある。彼等はゲームの為に殺し、殺される立場にある。

 それを覚悟で彼等は此処に来たのだ。罠である事を承知で来たのだ。一夏も其の一人であるが彼もそれを承知で来たのだ。しかし、自分は違う。

 一美は一夏に協力する為に来たのだが彼に守られると思っていた。後方支援も出来るがそれを出来る度胸はなかった。自分にはチャッキーとティファニーに守られているのだ。

 無理もないが彼女はプレイヤーになったばかりであり、戦いその物に慣れていない、一夏と同盟したのもそれが理由、もう一つの理由でもあるが今の自分は一夏に守られているのだ。

 一美はそれに気づき、泣く。そんな彼女に一夏は舌打ちした。

 

「俺達は生き残らなければならない……それなのにお前がそんなんでは……!」

 

 一夏は一美を突き放す。一美は尻餅を突くが一夏を見上げる。ライターだけが唯一の明りでもあるが彼の表情は見えない。判るとしたら怒っているのだろう。

 彼はゲームの事を良く知っているが一美の先生ではない。が、ゲームの恐ろしさを教えているのだった。

 

「お前がそれではお前は直ぐに死ぬ……それが厭ならば……自分でどうにか出来る手だてを考え、即断出来るように視野を広めろ! 知識を高めろ……!」

 

 一夏は一美に怒った。彼女の不甲斐なさに怒りもあるが彼女を教えている。ゲームの恐ろしさを知って貰う為でもあるが彼はそれを、一美を成長させる為でもある訳ではない。彼女には直ぐにでも脱落する事を望んでいた。

 一人減ればゲームは少しでも進む事が出来る。彼女を殺さないのも、利用する為でもあるのだ。が、今の彼女は其の利用価値もなくなりつつある。

 最早足手纏いでしかないのとゲームに支障を来すだけだった。一夏はそれに気づくが何故か舌打ちすると、俯く。

 

「……今はお前に怒っても無駄か……それに動かない限り、俺達は動かない的だ……!」

 

 一夏はそう言った後、歩き出す。彼は危惧していた。他の奴等が自分達を狙っている。彼はそれに気づいているが一美に怒っている暇はないのだ。

 何所から来るのか、何所から責めてくるのかは自分達にも判らない。此処は廃工場であるが得意分野の奴がいるのかもしれないのだ。一夏はそれに気づき、歩いている。

 彼は歩き続けているが一美は尻餅を突いたままだった。が、嗚咽を上げているが彼女は立ち上がると、彼の方へと駆け寄る。彼とは少し離れた場所に止まる訳でもなく歩く。

 泣きながらでもあるが彼女は死にたくないのだ。父を生き返らせる。自分には其の願いがあるからだ。其の為には一夏の強力が必要でもあるのだ。

 彼女はそう思っているが一夏は後ろに居る彼女の様子に気づきながらも舌打ちした。

 

『レディ、アンド、シェットルメーン……だっけ?』

 

 刹那、何所からか声が漏れる。これには一夏と一美は声に反応するが一夏は眉を顰め、一美は怯える。

 

『今宵、僕の催しに参加してくれてありがとう〜〜まあ、プレイヤーだけなのかもしれないけど、十二時を少し過ぎたけど……ああ、それは過ぎた話だけど僕は夢見一彦、フレディの主人だよ〜〜』

 

 此の声は彼、一彦だった。一夏はそれに気づき歯を食い縛るが彼には良い思い出は無い。彼には一度敗北している。それは侮辱であり、憎悪を滾らせる。彼を倒すのが一番の目的でもあったが彼の余裕に近い発言は怒りでしかないのだ。

 其の証拠に一夏はライターを持っている手に力を入れていた。しかし、彼がそう思っているにも関わらず、一彦は先を続ける。

 

『僕は今、何所にいるのかは教えられないけど、君達が何所にいるのかは、手に取るように判るよ〜〜?』

 

 刹那、一夏と一美は其の声に更に反応する。自分達の居場所がバレている? それは命の危険をも意味し、脱落を早める意味にも近かった。

 一夏は歯を食い縛るが一美は泣きながら怯える。しかし、一彦はそれを教える意味で更にとんでもない事を発言した。

 

『先ずは織斑一夏、君は人形達を連れている女の子と共に……ボイラー室にいるでしょう?』

「…………」

 

 彼の言葉に一夏は何も言わない。

 

『まあ、他にも、ブギーマンを連れている彼は休憩室に居るみたいだし……それに……でも、ピンヘッドのプレイヤーは来てないみたいだね? 弱虫なのかな〜〜?』

 

 一彦は疑問に近い口調で訊ねていた。と言うよりも、彼はピンヘッドが参加していない事を疑問に思っているのだ。が、一夏は眉を顰めている。

 彼の言葉にある人物の事が出てきたのだ。それは……刹那、大きな爆音が聴こえた。同時に近くの壁が破壊される。一夏と一美は音に反応するが彼は即座にISを展開した。

 彼は一瞬でジャック・ザ・リッパーを纏っているがランスを展開している。しかし、両足だけは展開していない。彼はそれに気づきながらも破壊された方の壁の方へと向く。一美は彼の後ろへと駆け寄るが、彼等の近くからある人物が風のように現れた。

 一夏の近くには彼が引き連れている殺人鬼であり、鉈を持っている大男、ジェイソン。一美の近くには彼女が引き連れている殺人鬼の人形達であり、ナイフを持っているチャッキーと、包丁を持っているティファニー。

 彼等は自分達を引き連れ、従っている者達を守る為に来たのだ。否、プレイヤーが現れた時点で即座に叩けるように何時でも待機していたのだ。

 一夏とジェイソン。チャッキーとティファニーは一美を守る為に破壊された壁の方を見ていた。壁には煙が発生して居るが埃が舞っている。

 しかし、煙には一つの影があった。しかし、それは辺りが暗い為によく見えないが一夏達は相手は敵である事に気づいていた。彼等は警戒しているが煙は微かに消えつつあった。

 そして、そこには一人の青年が居た。ISを纏っているが両足部分だけは展開していない。が、手にはショットガンを持っている。表情は険しく、視線は彼等、一夏達に向けていた。

 其の人物は一夏とは因縁かつ、四度目の戦いとも言えた。一度目は一夏の不意打ちで勝利し、二度目は彼を殺す事は出来た物の一美の妨害により失敗に終わり、三度目はドイツ軍基地で邂逅出来ず、ドイツ軍を壊滅的打撃を与えただけだった。

 だが、今は四度目でもあるが思えば彼との戦いは宿命図けられているようにも思えるだろう。それは彼等にはどうだって良い。同時に闘うのだから。

 

「お前は……!」

 

 一夏はその人物に心当たりはあった。そして其の人物も一夏に心当たりはあった。

 

「織斑、一夏……!」

 

 其の人物が一也だった。彼は一彦の言葉、一夏の居場所を聞き、此処へと来たのだ。が、彼はゾディアックを纏っていた。

 

「「…………」」

 

 彼等は互いの相手を睨む。が、それは一夏と一也の一触即発を意味していた。一夏には一美達が居るがジェイソンもいる。一也はブギーマンが居るが結果はどうなるのかは、彼等には判らない。

 


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