インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第166話

「ですからそれは此方がその場で決めた事ですので、今はお引き取り願います!」

「それは無理だ! 第一あれは私達が開発したIS、ジルドレだ! それにあれは盗まれた物だがそれを操縦者しているのが織斑一夏と良く似た者だ! それと一緒に我らフランスに身柄を引き渡す事を願い出る!」

「ですから!」

 

 その頃、此処は学園内にある学長室では、この学園の責任者である十蔵と三人の白人男性達がソファーに向かい合うように座っていた。が、彼等の間にはピリピリとした空気が流れていた。

 口論しているがその理由は簡単、織斑一夏の双子の弟的な存在である二夏の事でだった。彼は一彦が一夏の右腕を元に造ったクローン。それだけでなく、彼はフランスが持てる全技術を元に造ったIS、ジルドレを使っているのだ。

 彼は兎も角として、フランス政府はジルドレの返還を求めていた。が、二夏も例外ではない。彼の身柄も此方に引き渡すように申し出ていた。

 しかしそれは、フランス政府にとって大きな利益にもなるからだ。彼の事を隅から隅まで調べるのと同時に彼をフランス国籍にする事でフランス初の男性操縦者にしょうとしていた。

 そうすればフランスの懐に潤いが出るのと、国はIS関係で大きな発展が出来るからだ。そんなドス黒い事を彼等、フランス政府はその事を隠しているが今は二夏とジルドレの事を十蔵に話していた。

 怒りもあれば良い事もある、そう感じているからだ。彼等は十蔵に願い出る中、十蔵は頑に拒んでいた。あれは何者であるが以前に彼等が良からぬ事を考えている。

 彼が危ない、そう判断したからではない、直感でもあるからだ。十蔵か二夏の事を考え拒むが彼はある事を話した。

 

「それに学園にはある規則があるのです! それを貴方達に破る事は出来ない!」

 

 十蔵は学園に決められた規則の事を話した。それは如何なる理由に置いても学園に干渉出来ないのだ。アラスカ条約でもあるが国際規約でもあるのだ。

 彼等はそれを破っている。十蔵はそれに気づき、指摘した。が、彼等は引かない。

 

「それが何だ! 其方は其方で此方は此方だ! 我々は一刻も早く、彼等をフランスに連れて行きたい! 入国手続きは愚か、色々と忙しいのだ!」

「そうだ! 我々はフランスと言う祖国を大きくしなければならない! その為には彼を連れて行く!」

 

 彼等は二夏の事で口論している中、話は平行線であった。片方は安全の為に、もう片方は己の利益の為にだ。そんな中、扉の叩く音が聴こえた。

 彼等は扉の音に反応するが声が聴こえた。

 

「学園長、織斑千冬です」

「あ、や、山田真耶です……!」

 

 その声の主達は千冬と真耶だった。二人はそう言った後、扉が開く。そこに居たのは千冬と真耶だ。真耶は困惑しているが千冬はフランス政府の面々を見て微かに驚く。

 彼等は表情を険しくしている。それは二夏の事だと気づいたが彼女は彼の名前を知っている。理由は一夏から聞かれた為であるが彼は今、楯無や簪、布仏姉妹と一緒に居る。

 ラウラは気を失っている二夏と共に医務室にいる為、此処には居ない。、元より怪我しているであろう彼女達を連れてくる訳にも行かないのだ。

 だが今は本件が先であった。フランス政府の面々が二夏を連れて行こうとしている。その事で千冬は呼ばれたのだ。十蔵に。

 

「織斑先生……」

 

 十蔵は彼女を見て困惑するが千冬と真耶は頭を軽く下げた。その後十蔵の隣に座るが真耶は扉を閉め、二人の後ろに立つ。これで役者は揃ったとも言えるが二夏の件は解決していない。

 十蔵と千冬は彼等を見据える。一方で真耶は困惑している。が、フランス政府の面々は引く事を考えていない。二夏をどうしても連れて行きたい、彼の人生等考えてもいないようにも思えた。

 

「……さて、早速本題に戻りますが彼を……」

「二夏です」

「「二夏?」」

 

 十蔵が言うと千冬側って入るように口を開いた。これには十蔵や真耶は声を揃えながら驚き、フランス政府の面々は目を見開く。一方で千冬は哀しそうに目を逸らす。

 

「二夏です。彼の名は二夏、織斑の双子の弟的な存在の者です」

 

 千冬の言葉に周りは驚く。が、一番に驚いて居るのは千冬自身だ。彼女は二夏を一夏の双子の弟的な者だと認識してしまった。瓜二つとは言え、肌や眼の色は違うとは言え、彼は一夏を『義兄さん』と呼んだのだ。

 これには千冬も驚いたが自分の弟、一夏はそれを気にもしなかった。最初は抵抗しているようにも思えたがそれも直ぐに掻き消すように何も感じていなかった。

 しかし、千冬は彼を、二夏を弟である事に抵抗はあった。もしもあれが自分の一夏の弟的な者だとすれば、客観的に自分の弟と言う認識もされなくはない。 

 それでも千冬は躊躇するが今は彼の身柄を引き渡さない事を選んだ。彼の安否も気になる為だ。彼女は自分にそう言い聞かせながら彼等、フランス政府の面々を見据える。

 彼等は微かに驚いているが彼女は言葉を続けた。話は真耶から聞いた為に一通りの事は知っている。同時に彼女の答えも決まっていた。

 

「話を戻しますが……あなた方の要求は受け入れられません」

 

 刹那、千冬の言葉にフランス政府の面々は驚きを隠せない。

 

「な、何故だ!?」

 

 その内の一人が千冬に問いつめる。が、千冬は先を続ける。

 

「彼は、二夏はあなた方に身柄を引き渡す事は出来ないと言う事です。どうかそこを了承して下さい」

「巫山戯るな! あの者は我々のISを使っているのだぞ!? それも窃盗かつ無断で!」

「それが何ですか? それに盗んだと言ってもあなた方に利益はあるのですか? それに持っていくのならばISだけでよろしいのでは?」

「ダメだ! 彼も一緒に連れて行く! 彼は男性操縦者……」

「それは無理ですね」

 

 その物が言い終わる前に十蔵が口を開いた。彼等は十蔵を見るが彼は表情を険しくしていた。温厚なイメージがある彼とは思えない程の険しい表情であった。

 

「それは無理に等しいです。もしも彼が男性操縦者だとしてもあなた方に引き渡す事は出来ません」

「だがあの者は学園の生徒ではない筈だ!? それなのに何故庇う!? お前達の利益にもならないのだぞ!?」

「確かに利益はありません、ですが彼の安否を思えば軽い物です」

「何だと?」

 

 十蔵は溜息を漏らす。

 

「いいですか? 彼は男性操縦者だとしますが彼の安否をあなた方で守れますか?」

「守れるに決まっている! 私達は命を賭けてでも彼を……」

「それはあなた方の利益にもなる為ですね?」

 

 十蔵の言葉にフランス政府の面々は目を見開く。図星でもあった。が、十蔵は先を続ける。

 

「彼は男性操縦者だとしても、彼は何者であるかである前に私達は彼を迎えるつもりです。この学園に」

「何だと!? 巫山戯るな!」

 

 フランス政府の面々のうち、一人がテーブルを叩く。彼の行動に真耶が一瞬だけ肩を震わすが十蔵と千冬は怯まない。二人は二夏を守る為にもだった。

 彼は部外者であるが十蔵は彼を二夏をフランス政府の汚れた欲望の為の人形にされる事を嫌い、千冬は二夏を一夏の生き写しだと思いながらも彼を守る事にしたのだ。

 何方も目的は違えど二夏を守る事を選んでいた。フランス政府に渡す訳には行かない、と。フランス政府の面々は千冬と十蔵を睨んでいた。真耶は千冬と十蔵を見守っているが声を掛けられないでいた。

 刹那、扉が突然と勢いよく開いた。これには彼女等は驚くが更に驚いた。扉を開けたのは、ある人物だった。その者は千冬の弟にして二夏の義理の兄とも彼に認識され、学園の唯一の男性操縦者である一夏だったのだ。

 彼は制服を着ているが表情は険しい。視線はフランス政府の面々に向けられていた。彼等は一夏の視線に微かに驚くが彼は此処に来たのも、ある理由でだ。

 

「お、織斑……?」

 

 千冬は彼が此処に来た事に驚く。直後、一夏は足早で室内に足を踏み入れるとランスを展開し、それの穂先をフランス政府の面々に突きつけた。

 

「ひっ!?」

 

 フランス政府の面々は驚きを隠せない。彼の突然の行動に驚くが一夏は眉間に皺を寄せていた。

 

「「織斑君!?」」

「織斑、何をしている!?」

 

 十蔵と真耶は声を上げるが千冬も困惑していた。彼の突然の行動は殺意ある行動としか思えなかった。彼の行動はフランスと言う国を怒らせるに等しい行動でもあるが一夏はそれを気にもしていない。

 だが、彼此処に居るのには理由があった。それに彼は彼等の話を訊いて怒っていた。彼等の思惑に気づいたがそれ以上に怒ったのが二夏での事だった。

 彼はフランス政府の面々に対してこう言った。

 

「二夏に手を出すな……奴に手を出せば……殺す!」


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