インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第157話

「き、貴様……ふ、双子の存在を隠していたのか!?」

 

 ラウラは困惑しながら一夏と彼のクローンである二夏の二人に叫んだ。が、彼女は二夏の要望は兎も角、肌や眼の色が違う事に気づいていない。

 否、突然の出来事に冷静さを失っていると言い替えれば良いだろう。一夏のペアが箒ではないのは兎も角、彼の隣にいる二夏が彼の双子ではないのかとも疑っているのだ。

 兄や弟の何方かなんてどうだって良い、彼女は一夏に問い掛けていた。その質問はラウラがしているのだが観客席にいる生徒達や教師、来客席にいる各国の重鎮達、放送室にいる、ある人物の気持ちを代弁するかのような発言でもあった。

 彼は何者で、箒はどうしたのか、と。

 

「…………」

 

 一方で一夏はラウラを冷ややかな目で見ていたが視線を隣にいる彼、二夏の方へと走らせる。彼は自分の視線に気づき哀しそうに微笑む。不安を隠せない様子でもあった。

 しかし、何所からどう見ても自分と瓜二つの存在だ。クローンとは言え、自分の右腕を元にした血液や細胞から産まれた赤子のような存在。

 自分のもう一人の存在でもあり、弟のような存在。それでも、彼は自分のパートナーであり、一彦が推した存在。一夏は彼に不信感を抱きながらも親近感を覚えてしまう。

 弟が出来た、と。自分は兄になったんだ、と。そんな感覚でもあった。一夏はそう思いながらも何も言わない。

 

「き、貴様……!」

 

 そんな彼にラウラは肩を震わせる。怒りその物であった。自分の質問に答えない彼に怒りを感じているのだ。憎悪だけでなく憤怒しつつあった。

 自分のプライドを傷付けられ、尚且つ隠し玉のような存在でもある二夏に対しても怒りを感じているのだ。この双子は自分を侮辱している。

 赦せない、と。ラウラはそう思いつつ叫んだ。

 

「貴様等ァァーーーーっ!!」

 

 刹那、ラウラは自身のISの主力でもあるレールガンを彼等に向けながら攻撃した。これには一夏達は驚かないが彼等は左右に別れるように躱した。

 同時に一夏はハンドガンを、二夏はショットガンを展開し、同時に彼女に向け、引き金を引く。一回だけではなく、何回もだ。

 

「つぐっ!?」

 

 ラウラは左右からの銃弾の雨を浴びる。二人の織斑に攻撃されていた。

 

 

「止めろ織斑達! ……っ、ややこしい!」

 

 そんな二人とラウラの行動に放送室にいた千冬は困惑していた。彼等がラウラを攻撃しているのだ。最もラウラが攻撃してきた為に何方が悪いのかと言えば、彼女だろう。

 しかし、今はそれどころでは無い、一夏と二夏はラウラを攻撃しているのだ。が、ラウラは負けじとレールガンを……が、何故か困惑していた。

 何方を攻撃すれば良いのかと悩んでいる。何方も一夏である事に冷静さを失っているのだ。

 

「お、織斑先生! どうしますか!?」

 

 そんな彼女に、ある女性が訊ねる。副担任の真耶だ。彼女は千冬の様子に戸惑いつつも、この状況の打開策を探していた。あれは何者で、本来のペアである箒はどうしたのかとも悩んでいた。

 千冬に打開策を探してもらうのはあるまじき事であるが担任でもあり決定権があるのは彼女なのだ。真耶の言葉に千冬は右から左に流すように聞いていなかった。

 自分の弟の瓜二つの存在に戸惑っているのだ。彼女はアリーナにいる彼等とラウラの戦いを見て困惑する中、千冬はマイクに向かって叫んだ。

 

「お前達止めろ! それに試合は中止だ!」

 

 千冬はそう叫んだ。理由は突然の乱入者とも言える弟の瓜二つの存在、二夏に戸惑いながらも彼を乱入者として見ていた。彼は学園の生徒である前に登録されてもいない。

 それに容姿は弟と似ていても肌や眼の色は違うのだ。同時にあのISは何なのかも気にしていたのだ。試合を速攻中止にし、彼を捕えなければならないのだ。

 最善の策でもあるが良策なのだ。

 

「教官! このまま試合をさせて下さい!」

 

 刹那、ラウラが叫んだ。その言葉に千冬は驚くが反論する。

 

「何を言ってるラウラ!? その男は乱入者かもしれないのだぞ!?」

「それでも構いません! それにコイツ等は……教官の汚点です! それにもう一人が似ていようが関係ない! ソイツ等は教官の汚点である事に変わりはありません!!」

 

 ラウラはそう言いながらレールガンを二夏の方へと向ける。レーザーが放たれるが二夏は難なく躱し、ショットガンで彼女を攻撃する。ラウラは直撃するがそれでも抗う。

 

「私は教官の為に闘う!」

 

 ラウラはレールガンで攻撃する、乱射とも言えるが当てずっぽうとも言えるが彼女には信念があったからだ。千冬の為である。歪んだ思考でもあるが崇拝している証拠でもあった。

 そんな彼女に千冬は驚いているが直ぐに下唇を噛むと俯く。あれは頑に否定している意味にも近いからだ。どんなに言っても彼女のは届かないだろう。

 彼女はラウラの考えに気づくが彼女は思考を走らせていた。そんな彼女に真耶は訊ねるが千冬はマイクに向かって口を開いた。

 

『これより……学年別トーナメント、第一試合を始める……』

 

 刹那、周りは彼女の言葉に驚いた。が、千冬は目に涙を浮かべていた。ラウラを思い、一夏を想うが為の苦渋な決断でもあるからだ。ラウラを救いたい、同時に一夏と和解したい。

 私情でもあるが救うにはこれしかなかった。間違っているとは言え、避けられない宿命でもあるからだった。千冬の言葉に真耶は困惑するが千冬は膝を突き、嗚咽を上げた。

 

 

「聴いたか? ……ならば私は貴様等を倒す!」

 

 ラウラはレールガンで一夏を倒そうとした。が、一夏は難なく躱すとそのままハンドガンで彼女を撃つ。ラウラは躱すが受けてしまった。

 

「あがっ!?」

 

 ラウラは背中に銃弾を浴びるが肩越しで後ろを見る。そこにはショットガンを自分の方へと構えている二夏がいた。彼は哀しそうに目を伏せているがラウラは怒る。

 あの表情は自分を哀れんでいるようにも感じたからだ。屈辱でしかないが逆鱗に触れさせる行為にも等しいからだ。

 

「貴様ァーーーーっ!!」

 

 ラウラは怒りながら彼に迫る。しかし、彼は彼女を見て何も言わないが視線を走らせる。視線の先には一夏がいた。彼は無言で自分を見ているが何かを呟いている。

 刹那、二夏の前にはラウラが迫っていた。彼は驚かないが彼女をショットガンで軽く撲った。

 

「っぐ!?」

 

 ラウラは撲られるが彼は少し離れ、ショットガンで彼女を撃つ。至近距離でもあるが最大限に発揮出来る範囲でもあるからだ。ラウラはそのまま吹っ飛ばされるが、彼はそれ以上はしなかった。

 彼女は落下していくが完全に機能が停止した訳ではない。火花も飛び散っておらず、未だ闘えるが一度前線離脱にも近いからであった。

 

「「…………」」

 

 そんな彼女を見た一夏と二夏は視線をある方へと向ける。そこには彼女がいた。シャルロットである。

 

「っ!?」

 

 彼女は二人を見て驚く。が、彼女はさっきから何にもしなかった。二夏の存在が彼女を闘いと言う事から離れさせ、困惑させていた。もしもラウラの手助けに行けば戦況か微かに変わっていたのかもしれない。

 しかし、二夏と言う存在が彼女を足止めさせていた。シャルは二人を見て驚くが武器を展開する。二丁のアサルトライフルであった。が、一夏と二夏は同時に彼女に迫る。

 

「喰らえ!」

 

 シャルは二人の行動に驚くがアサルトライフルで彼等を攻撃する。刹那、二夏はある武器を展開する。盾であった。彼は盾で銃弾の雨を防ぐ。

 一方で一夏は躱しながら彼女に迫っている。

 

「ぐっ!!」

 

 シャルは攻撃が当たらない事に驚くが彼等は全く同じ速さで彼女に迫っていた。そして、二人で彼女に体当たりした。が、二夏は盾を持っている為にダメージは大きい。

 シャルは攻撃を受けて怯むが、一夏はハンドガンを投げ捨て、同時にランスを展開し、それを彼女目掛けて突く。

 

「うぐっ!!」

 

 シャルは突かれるが今度は二夏がショットガンを投げ捨て、同時に剣を展開すると、

彼女に斬り掛かる。シャルは怯むが二人は息の合ったコンビネーションであった。双子の兄弟のようにも思えるが二夏は彼のクローンである。彼の行動や癖も受け継いでいるのだ。

 一夏は二夏を攻撃する様子はない、今は眼前の敵でもある彼女に攻撃している。

 一夏はランスで、二夏は剣で斬り、盾で撲っている。シャルは追い詰められるが二人は攻撃の手を休めなかった。

 そんな二人に観客席にいる者達は戦慄し、恐怖している。あの二人は脅威とも感じているのだ。男性操縦者達である事には警戒しているが更に警戒しているからでもあった。

 しかし、勝敗は目に見えている事にも気づいていた……。勝つのは彼等だ、と。


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