インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第145話

 

「それでは、一組とニ組による、合同練習を行なう!」

 

 あれから数時間後、此処は学園近くのアリーナ。そこには一夏、簪、本音、箒、セシリア、シャルロット,ラウラを含めた一組と鈴がいるニ組がいた。が、全員、ISスーツを着用していた、

 そこには一組の担任である千冬と、副担任の真耶もいるが彼女等は何時もの服を着ている。が、彼女は生徒達、彼女達に、ある事を教える為でもあった。

 これは授業であるがISを使った模擬実習である。その為、ISを上手く扱える千冬が教える事にもなったが一組の担任でもあるからだ。そんな彼女の言葉に女子達は整列している。

 彼女達は千冬を見据えているが戸惑っている者達もいる。理由はISを上手く扱えるかどうかを自分でも判断出来ず、疑っているのだ。これも進級に必要な実技であり、一番重要な課題でもあるのだ。

 此処はISを専門かつ、一般の科目も含めたIS学園だ。進級するにはこれらの課題を全て平均点かつ、それ以上の評価が無い限り、進級出来ないからだ。

 全員参加しているが一人だけ、参加出来るかどうかも判らない者がいた。一夏である。彼は右腕を失い、ISを使えるかどうかも判らないのだ。 

 ジャック・ザ・リッパーを専用機にしているが彼は整列していた。

 

「……織斑、お前も出るの、か?」

 

 千冬は視線を彼の方へと向ける。表情は険しいが瞳は哀しい。彼が授業に参加する事を制止している訳ではない、彼が授業に出る方が可笑しくも、不安でしかないのだ。

 一方で一夏は千冬を見据えているが眉を顰めている。彼女の言葉にイラっとしたからだ。自分が授業に出るのが可笑しいのか? そう思ってしまったのだ。

 単位がどうとかではない。ISを慣らすくらいかつ、ゲームを制する為には幾多の戦法を身につけなければならないのだ。一夏は千冬の言葉に腹が立ってくるのを感じる中、周りはざわつく。

 彼女達もまた、一夏の授業の参加に疑惑、困惑しているのだ。彼は右腕を失っている。誰から見ても明らかであるがISを扱えるかどうかも判らないのだ。

 片手のIS操縦者、それは聞いた事も無いのと彼の安否を気にしているからだ。彼は未知の敵を相手にしたからだ。そんな彼が授業に参加するのはどうかとも疑う。

 一方で彼を見た簪、本音、鈴は違った。知り合いである事もそうだが心配もしているのだ。彼の右腕もそうだが出来る事なら支えたい、と思ってしまった。

 しかし、彼の事も考え、言い出せないでいる。言えば彼を怒らせ、更に強気で自ら頼る事も無いのだ。同時にそうすれば彼は更に孤立する危険もある。

 鈴は兎も角、簪と本音は彼を支えるつもりでいる。彼は一人ではない、そう教えたかった。

 しかし、箒は一夏を心配しながらも彼が簪達にしか心を開かないのと、彼が自分よりも簪達にお願いされる事を恐れており、同時に簪達に対して怒りと嫉妬している。

 セシリアは自分を一度負かした彼に対して恐怖しており、シャルロットは困惑している。が、ラウラは一夏に対して怒りがある為、憎しみの籠った視線を送っている。

 周りは一夏に対してそれぞれの感情を抱く中、千冬は先を続ける。

 

「織斑……私はお前に出るなとは言わんが強要もしない……それに」

 

 千冬は何故か目を泳がせる。姉としての私情があるのだろう。が、一介の教師が身内と言う理由で生徒を強要する訳にはいかないのだ。公私混同にもなる為、あるまじき行為でもある。

 同時に彼に嫌われている事も理解しているが何とかしたいと言う事も事実だ。千冬は一夏に対して強く言えないでいる。

 

「……俺の自由だ」

 

 刹那、一夏はそう呟いた。千冬への憎しみがある中、彼女の願いを聞き入れない意味でも応えたのだ。これには千冬は身体を震わせ、周りも肩を震わせる。ラウラ以外だ。

 彼の言葉は拒絶その物である事を即座に理解した。彼の性格上、否、簪と本音、ここに居なく、上級生でもある楯無と虚以外、良く知っている訳ではない。

 が、これには怒る者がいた。ラウラだ。

 

「貴様、教官が心配しているのにその態度は何だ!?」

 

 ラウラは一夏に詰め寄る。彼よりも一回り小さいにも関わらず、彼に突っ掛かる。

 

「貴様、貴様を労る教官の言葉を聞きも、従いもしないのか!?」

「…………」

「貴様、聞いているのか!?」

 

 ラウラは一夏に詰め寄っている。が、彼は聞く耳を持たず、尚且つ彼女とは視線を合わしていない。毛嫌いしているのと、彼女とは気が会わないと彼自ら気づいているのだろう。

 そんな彼等のやり取りに周りは怯えている。簪や本音も怯えているが軍人気質の彼女とは会話は愚か、堅物だとも認識しているのだ。何方も堅物であるが畏怖の対象でしかない。

 一組は愚か、ニ組は他人であるのとそれを止める事も出来ない。彼等の確執を知っているからだ。噂としか思わなかったが目撃した時点で噂の信憑性は濃い物となった。事実上、目撃者になったからだ。が、止める気配はない

 誰もが止めようとする者は誰もいない、女子生徒達はそう思った。が、いない訳ではない。名乗り出る者がいた。

 

「止めろラウラ! 織斑は怪我をしているのだぞ!?」

「貴様! 一夏から離れろ!」

 

 千冬は慌て、箒は怒りながら二人の間に入る。二人は一夏を庇い、ラウラと向き合っている。が、箒は詰る意味にも近い。

 

「貴様、一夏の事を知らないくせに何も言うな!」

「フン! そんな奴を庇うとは何事だ! 教官を侮辱し、無視したような発言だ!」

「それが何だ! それに一夏にも原因はあるが一夏は右腕を失っているのだぞ!? それを気にもしないのか!?」

「そんなのはソイツの自業自得だ! 誰かを庇い、尚且つ敵に背中を見せるのは愚の骨頂だ!」

「貴様! 一夏が愚かとはどう言う事だ!?」

 

 箒とラウラ等は口喧嘩する。何方も一夏に関する事であった。片方は想い、片方は憎しみを抱いているからだ。

 

「止めろ二人とも!」

「止めてください二人共!」

 

 千冬と真耶は二人を宥める。が、二人は止める気配はない。そんな彼女等に周りは困惑する。が、中には止める者達もいた。鷹月静寐、相川清香を含めた数名の女子達。

 彼女等は千冬や真耶同様、二人を何とか宥める。しかし、何方も止まらない。一夏に関する事は目に見えていたが止まらない。

 

「…………」

 

 そんな彼女等を一夏は見ているだけであった。彼は止める気はないでいた。否、止める理由も無いからだ。が、これを引き起こしたのは彼であるがラウラが突っ掛かってきたのと、箒は言い返したに過ぎない。

 そんな彼女等を止める義理も無く、義務も無いのだ。彼はジッと見ているがそんな彼の手包むようにを掴む者がいた。一夏は視線を横の方へと向けると、一人の少女はいた。

 簪だ。彼女は哀しそうに彼を見つめていた。心配しているからだ、同時に手を包むように掴んだのは彼を慰める意味でもあった。独りじゃない、そう教えていた。

 が、そんな彼女に一夏は何も言わないが視線を箒やラウラ、千冬達を見る。彼女等は、口喧嘩している二人は止まらない、それどころかヒートアップしている。

 このままでは埒があかない、一夏はそう思った。が、止める事はしない。見ているだけであった。

 

「……ちっ」

 

 一夏は舌打ちした。ああ、めんどくさい、そう思ったのだ。無駄な時間を過ごしているようにも感じた。しかし、一夏は止める気はない。無駄な行動だとも感じたのだ。

 だが、何時まで続くかのも判らないのと、淡々と流れる事だけは目に見えているが止める者達が何とかするしか方法は無い。伊らばの話だが……。

 

「……」

 

 そんな彼女等をセシリアは見ていた。が、止める事は出来ないでいた。他人でもあるのと、今の自分には止める事は出来ないからだ。ふと、不意であるが視線を席の方へとやる。

 

「キャァァァァ!!」

 

 刹那、セシリアの悲鳴がアリーナ内に木霊する。これには周りも反応するが。

 

「「キャァァァァ!!」」

 

 更に悲鳴が響き渡る。それも数人、否、ほぼ全員であった。彼女達はセシリアが見ている方を見て悲鳴を上げていた。刹那、突然、反対方向へと逃げ出す。

 

「「ウァァァァぁ!!」」

「「キャァァァァ!!」」

 

 更に箒、ラウラ、シャルロット、真耶の悲鳴も聞こえる。彼女達もセシリア達の見ている方を見て悲鳴を上げたのだ。

 千冬も見たが彼女は驚きを隠せない。一夏や簪も見たが一夏は目を見開き、簪は……。

 

「キャァァァァッ!!」

 

 彼女も悲鳴を上げた。が、一夏は怒りを隠しきれないでいた。周りは逃げ惑う中、一部は腰を抜かしている。が、彼女達の視線の先には、会場席の、一番手前のアリーナ席には独りの大男がいたのだ。

 それはジェイソンであった。彼はある理由で来たのだが、彼女等は彼を見て逃げ出しているのだがそれも仕方ない事であった……。


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