インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第143話

「ふぅ……」

 

 翌朝の午前六時頃。此処は学園の屋上、そこには一人の女子生徒がいた。シャルロットである。彼女は今、ある所へ電話したばかりであり、携帯電話をポケットに仕舞った後であった。が、それはとても疲れる物であり、苦痛でしかない。

 が、その電話の主は怒りがあり、困惑さえもしている。それは国に関わる存亡でもあり、一刻も手を打たなければならなかった。否、その前に出来たのだが、ある事件を切っ掛けにより、存在その物が関わっているのだ。

 強いて言うならば、シャルロットはその事で巻き込まれている。同時に、彼女には辛く、国の存亡を任されたに過ぎないのだ。未だ少女に過ぎないが、それを,上層部は気にもしないのだ。

 そして、その電話をしてきたのは、連絡してきたのはフランス政府からであった。政府はシャルロットに対し、任務を与えたのだ。それは赦される事ではなく、最悪、強制送還される物でもあった。

 彼女にはそれを実行する手だては無い。が、身内の事を気に掛けているのと、政府がそれを利用している。言わば、逆らう事も出来ないのだ。

 

「……はぁ」

 

 シャルロットは頭を抱える。正直、この任務をやりたくない。我が儘でもあるが身内の安否を気にしている為、無理に等しい。自分がやらなければ、それが彼女を追い詰めていた。

 

「っ……」 

 

 シャルは下唇を噛む。悔しい、奴等の言いなりになるのな苦痛でしかないからだ。誰にも告げる事が出来なく、尚且つ、喋れば自分の命は無い。

 それが彼女の心を抉っていた。学園に来たのも、ある事をする為であるがそれは彼女から見れば、やりたくはない物であった、それは……ある男子生徒に接触し、データを奪う事であった。

 

「……早起きだな」

 

 刹那、近くから声が聞こえ、シャルは目を見開き、手を退かすと、声がした方を見た。シャルは驚きを隠せない。そこには、屋上の手摺りに凭れ掛かりながら俯いている者がいたからだ。

 シャルロットが接しろと言われた人物、一夏であった。が、彼女は彼が此処にいる事に驚きを隠せないでいた。此処は朝早くとは言え、いる方が珍しいのだ。

 彼女が此処にいるのは独りになりたいからであった。しかし、一夏が何時の間にかいる事に驚きを隠せず、同時に警戒している。まさか、あの事を聞かれたのか、と。

 シャルロットはその事で焦る。彼がいた事よりも、重要な秘密を知られる事を恐れていた。が、一夏は俯いたままシャルロットとは目を合わせていない。

 彼女がそこにいる事を気にもしていないようにも思えるが彼が此処にいるのは、単に彼も早起きしたからである。その為、眠気覚ましと言う意味でも此処に来たただけである。

 学生寮から、否、楯無達に出会う前まで寝泊まりしていた家から、この場所へと風のように移動してきたのだ。シャルロットはその事を知らないだけであるが一夏は視線を彼女の方へと向けた。

 

「ひっ!?」

 

 シャルロットはその視線に肩を震わす。とても鋭く、威圧的な視線であったからだ。彼が何者なのかを知りたい事もあるが今はそう言った考えは無い。

 彼に恐怖を感じたからだ。好意的な青年とは掛離れていると感じたからだ。シャルロットは一夏に対して怯える中、一夏は溜め息を吐くと、手摺りから離れ、身を翻すと、空を眺めた。

 朝日は昇っているが空はオレンジ色と青が混じっているように暗くもなく、微かに明るい。が、夜明けから未だ時間は経っていないからだろう。

 一夏はそう気付いたが何時もの光景かつ、新たな一日の始まりを告げるようにも思えた。一夏から見ればそう思うが何気ないようにも感じるだろう。

 しかし、そんな一夏をシャルロットは恐る恐る、訊ねる。

 

「あ……お、おはよう、織斑君……」

 

 シャルロットは彼に挨拶する。朝の習慣とは言え、欠かせない物であるからだ。

 

「…………」

 

 が、一夏は反応を見せず、そう言った素振りも見せない。そんな彼にシャルロットは困惑する。挨拶は愚か、それをする素振りも無いのだ。同時に秘密がバレた事を恐れているのだ。

 

「あ、あのさ織斑、君?」

 

 シャルロットは一夏に訊ねる。が、一夏は空を眺めたまま何も言わない。言葉を返す気もないでいる。無理も無い、彼と彼女は他人であるからだ。

 同級生でもあるが親しい訳でもないのだ。交友も自己紹介以外、何もしていない。接する時間も、日も浅いのだ。一夏はシャルロットに対して無視している中、彼女は困惑しながら訊ね続ける。

 

「あ、あのさ、ど、どうしたの?」

「…………」

「あ……簿、僕はめ、珍しく早起きだったから、此処に来たんだ」

 

 シャルロットは何とか会話を切り出す。それは秘密がバレた事を忘れさせる為でもあるからだ。無理にも等しいがフランスの存亡に関わっているからでもある。

 故国を守るのもそうだが、身内を守る為でもあるからだ。彼女は何とか会話を切り出すが彼は返すどころか、反応さえもしない。

 

「あ、あのさ……」

 

 シャルロットは徐々に弱気になる。埒があかないようにも思え始めていた。彼の反応が厭だからではない。彼は自分とは話す気はないと思ったからだ。

 そして、シャルロットはぎこちない笑みを浮かべると、こう言い放った。

 

「あ、あのさ僕、これから勉強したいから、じゃあね!」

 

 シャルロットはそう言った後、その場から離れた。彼との会話を終わらせたかったのだ。彼は反応しないのと、会話しただけでも彼を怒らせてしまうと思ったからだ。

 スパイの事もバレてしまうのではないかと思い、逃げたのだ。が、彼が告げ口すれば終わり、それだけ気づいているが今は彼から逃げる事を選んだのだ。

 何れバレると思いながら、彼女は室内へと逃げるように屋上から出て行った。そして、屋上には彼、一夏が取り残されているが彼は気にもしていない。

 

「……莫迦が」

 

 刹那、一夏は眉を顰めながら呟いた。彼は気づいていたのだ。彼女が自分に対して何度も話しかけている事に。それは疾しい事を隠す為だ、それに気づいていたのだ。

 それを咎めず、訊きもしなかったのは彼女に対して、不信感を抱いているからでもあった。自分に関わる何かを隠している。何かまでは判断出来ないが警戒している事に変わりは無い。

 暗部に入ってからでもあるが一夏は怪しい人物に対しては警戒しているからでもあった。刹那、一人の幼女が彼の隣に現れた。一美である。彼女は寝間着姿であるが、上着を羽織っているが何処か困惑している。

 

「……お、おはようございます」

 

 一美は彼に挨拶する。彼女は一夏に挨拶する為に来たのだ。彼女も珍しく早起きしたのだが彼に挨拶をしにきたのは同盟者でもあるからだ。

 一応、彼は自分の力を借りる為に戦っているに過ぎないようにも思えるだろう。逆に未だ幼い彼女にとって、解る筈も無いのも事実だ。それでも朝の挨拶だけはしておこうと思ったのだ。

 彼が怖いのもそうだが朝の習慣だけは忘れていない。本当のプレイヤーでもあり、今は亡き父と二人で暮らしていたのもそうだが彼女は人接する事だけはしておこうと思ったからだ。

 父を哀しませたくない、そう思っているのと、人間の醜い部分を見てしまったが故でもあるだろう。

 

「……どうした?」

 

 一夏は何故かシャルロットとは違い、彼女に訊ねる。視線を一美の方へと向けるが彼女は困惑する。何時見ても怖い,そう思ったからだ。

 

「……あ、あの、私、織斑さんだけには挨拶しておこうかと思って……」

「別に要らない。それに俺達は同盟しているとは言え、俺達は敵対している。俺はお前と馴れ合いはするつもりも無い」

「……言え、別に私は挨拶をしにきただけ、です」

「要らん、俺にはそう言った事はお前にしたくない」

 

 一夏の言葉に一美は下唇を噛むと俯く。彼の言葉が彼女の心を抉る。自分は彼に挨拶するつもりで来ただけである。彼女は学園に来たのは二回目であるが見つかるわけにはいかないのだ。

 一夏は何所にいるのかを困惑しており、迂闊に動けないからだ。なのに、一夏は辛辣な事を言うばかりだ。彼は信用に値するのか、一美はそう思い始める。

 そんな彼女に一夏は何も言わないが舌打ちする。

 

「ふ〜〜ん。君達、手を組んだんだ?」

 

 刹那、近くから声が聴こえた。これには一夏は眉を顰めながら勢いよく振り返り、一美は驚きながら少し後に声がした方を見る。

 

「貴様……!」

「ひっ!?」

 

 一夏は歯を食い縛り、一美は怯える。彼等が見たのは、視線の先には一人の十代後半に差し掛かる青年がいたのだ。童顔かつ黒髪黒目。く着ている服は黒いジャケットに白いシャツ、青いズボンのラフな恰好。

 しかし、彼は二人を見てニッコリと笑っていた。余裕かつ不気味とも言える。しかし、二人から見れば不気味としか思えなかった。何故なら、その青年は一夏と一美動揺、音字プレイヤーでもあるからだ。そして、その青年は……一夏が言った。

 

「夢見……一彦!」

 

 一夏はその青年は夢見一彦と言った。そう、彼は一彦である。一夏が敗北を喫した相手でもあり、一番に倒したい相手でもあった。が、彼が此処に来たのには理由があるがそれは彼にしか判らない。

 一美は彼を見て怯えると、一夏の後ろに隠れる。本能が彼を避けているようにも思えるがプレイヤーの一人とも気づいたからだ。しかし、それは一触即発の危険があるようにも思えるがどうなるのかは、彼等にしか判らないだろう……。

 そして、彼等の周りには重苦しい空気が流れ始める。さっきまでの穏やかな空気が一瞬で変わったのだ。それは彼等にも原因があるが、彼等には解るかどうか、誰にも解らないだろう……。

 

「やあ……織斑君?」


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