インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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 13話しめですが急展開にしました。


第13話

「あ、ああっ……」

「あらあら?」

「おお……」

 

 一時間後、千冬達は今、学園のとある場所まで移動していた。そこは学園が備えているISの量産機が全て置かれている場所だった。同時に学園には二つのISがある。

 一つはフランスが生産したIS、ラファールリヴァイブ。もう一つは日本が生産した打鉄。何方も量産機でありながらも扱い易く、学園の生徒達が練習としても使っているが許可が無ければ使用出来ず数も限られている。

 彼女達が其処に居るのは、ある人物の確認をする為でもあった。その人物は学園から見れば初の存在でもあるが貴重な存在でもあった。その人物がISを動かす事が出来るのかを確認する為に来たのもそうであるが三人は其々の表情を浮かべていた。

 千冬と十蔵はそれを見て愕然としており、楯無に至ってはからかう様に笑いながら扇子を広げている。扇子には黒文字で『想定外』と書かれていた。

 三人は其々の表情を浮かべている中、彼等が見ているのは一機のIS、ラファール――そのISに乗っている青年を見ていた。その青年とは織斑一夏――世界初の男性操縦者であり、全世界が血眼になって捜している貴重な存在。

 彼はISを纏っているが表情は険しく、腕を組んでいる。ISを動かせる事を疑問視していた者達に対して怒っているからだ。口で言ってもあれであり、せめて正銘しようとISに乗ったのだ。

 最初は楯無がISに乗れるかどうかを試す為に言ったのだが別に関係なかった。此所に来たのもISを動かせるかどうかを知って貰う為である。

 しかし、乗れた時点で疑惑は確信へと変わった。ISに乗れた事が正銘した事だろう。千冬と十蔵は驚きを隠せない中、楯無が扇子を閉じると、扇子を彼へと指すように突き出す。

 

「取り敢えず、貴方がISを動かせると言う事は知ったわ」

 

 楯無はからかう様に笑う。一方で一夏は「フン」と言いながら軽く流すとラファールから降り、三人を見る。

 

「取り敢えず……俺はISを動かせた、これでいいだろう?」

 

 一夏は腕を組むとそのまま三人の横を通り過ぎる。扉の方へと歩いていく。そこを出ようとしたのだ。千冬と十蔵は一夏の行動に驚くが楯無は不意に訊ねる。

 

「あら、何処行くの?」

 

 楯無は彼に訊ねるが一夏は立ち止まり、肩越しで三人を見る。表情は険しいが普通に答える。

 

「……もう、用はない――だから俺は帰るんだよ」

「か、帰るって如何いう事だ一夏!?」

 

 千冬は一夏に詰め寄ろうとしたが彼は千冬に対して鋭い瞳を向ける。千冬は「っ!?」とたじろぐが彼は三人と向き合うように身体を翻す。彼は腕を組んでいるがそれを指摘した。

 

「俺の目的はISを起動できる事を正銘する為――それ以外の事は興味ない」

「きょ、興味ないって、お前は馬鹿か!? 男性操縦者は世界初で貴重な存在なんだぞ!? それを帰る等、私が許さん!!」

 

 千冬は一夏に対して怒るが逆に言えば、千冬は心配していた。一夏を帰さない意味では、彼が男性操縦者である事だろう。彼を返す事は全世界に彼を売る好意に等しい。

 保護する輩もいれば、殺し、解剖しようとする輩もいる。そんな状態の全世界に彼を放す事は彼の生死を問う意味にも近い。同時に、彼は自分の弟である。

 自分は弟を心配しているのは当たり前であり、同時にまた一緒に暮らしたい思いもある。三年間の事を訊き、ちゃんと見てやれなかった償いをしたいのだ。

 あの家で再び一緒に暮らし、彼の為に出来る事をしてやりたい。織斑一夏の姉としての想いと気持ちであった。千冬は一夏に彼の安全を問う中、そんな千冬の想いとは裏腹に一夏は反論した。

 

「断る――俺がIS学園に来たのはISを動かせる事を正銘する為だけ、アンタの家に帰る為に来た訳ではない」

「私の家ではない! 私達の家だ! 私はお前の姉だ!!」

「何が姉だ……俺を疎かにした奴を姉と言いたくもない」

 

 一夏と千冬は軽い口論をした。姉弟の喧嘩とも思えるが何方も手を引かない。しかし、何方も既に戻れない道まで行ってしまった。姉である千冬は一夏と寄りを戻し、罪を償いたいが為に。

 そんな千冬に一夏は姉への憎悪を剥き出しにして反論している。それはもう、戻れない意味を表し、それが口論と言う形になっていた。

 

「止めなさい織斑先生!」

 

 十蔵は千冬を宥めるが千冬は一夏と口論を止めない。このままじゃ埒があかない――そう感じていた。が、良い意味で裏切ったのは一夏であった。

 

「姉だろうが何だろうが俺は帰らせてもらう――じゃあな」

 

 一夏は踵を返すと扉の方へと歩く、千冬は「待ってくれ!!」と一夏に駆け寄ろうとした。

 

「だったら私の家に来ない?」

 

 刹那、楯無は唐突的な事を言い出す。楯無の言葉に一夏は足を止め、千冬と十蔵は楯無を見やる、楯無は「ウフフ」と嬉しそうに笑っていた。

 その笑顔には何処か裏が有る様にも思える――一夏はそう察知したが敢えて訊ねた。

 

「お前の家に? 如何言う事だ?」

「如何言う事って……それは勿論、私の家に来れば良いって事よ?」

「だから如何いう事だ? お前の家に来ると何かあるのか?」

「勿論そうよ? 私の家に来れば貴方を保護出来るからよ?」

 

 楯無は一夏に理由を話し始めた。楯無は自分の家はデカいのと、政府とはある関係であり、彼を保護出来ると述べた。

 

「それが理由か? それでは理由とは言えない」

 

 一夏は反論するが楯無は人差し指を左右に振る。

 

「ノーノーそれは大丈夫――私の家は政府とは関係あるけど、家には従者達も居るわ」

「……従者?」

「そっ――従者と言っても皆、普通の一般人じゃない――選りすぐりの精鋭達よ? 勿論、皆良い人達よ?」

 

 楯無は従者達の存在も教える。彼等は楯無にとって従者ではなく、精鋭である事も教えた。隠す訳ではない――彼等の実力は確かな物であり、信用に値する。

 彼等なら一夏を守れるし、一夏の危険が有れば何とか対処出来るからだ。楯無は一夏を保護する理由は単に保護したい理由とも思えるが彼女は暗部の人間。

 彼等、従者達も暗部の人間であるが実力が有るのもそれが理由であった。しかし、楯無は暗部の事は伏せているが一夏は何故か楯無を見据えていた。

 確かに彼女の所ならば何とかなる。そう思っていたが何処か怪しいとも感じていた。何か有る――と警戒していた。

 それは彼がジェイソンと共に死のバトルロワイヤルを制する為に修行してきたからだ。三年と言う短くも長くもない日々を修行に注ぎ込んだ。霧の影響もあるが心身ともに成長し、同時に冷酷な性格になったが彼は多くの犯罪者――否、社会のゴミを殺してきた。

 彼女が属する暗部達とは同格か、それ以上の強さを持っているが過信している訳でもない。彼は常に家にいるが家を出る時は多少の警戒をしている。

 自分の力を過信している訳ではない――彼は楯無を見据え続けるが楯無は一夏に訊ねた。

 

「どう織斑君? 私の家なら貴方の安全を保障出来るし、私の所なら、貴方を何処かの国に何かをされるよりも安全よ?」

「駄目だ!!」

 

 楯無が言い終わるや否や、千冬が反論してきた。楯無は千冬を見るが千冬は怒りと焦りが入り混じった表情を浮かべ言葉を続ける。

 

「それは駄目だ更識姉! 一夏は私の家に来るべきだ!」

「……織斑先生、それは私情ではないですか? それに織斑先生が全世界に警告しても一時の凌ぎにしかなりませんよ?」

 

 楯無は少し表情を険しくした。千冬が嫌いだからではない――楯無は一夏の身の安全を考えての事だった。千冬が世界で有名な存在だとしても何時でも彼と一緒に居られる訳ではない。

 もしも目を離した隙に逃げてしまったら元も子もない。そうなれば彼は何者かに殺され、解剖される。楯無はそれを危惧していたが同時に千冬を心配していた。

 今の彼女に一夏と住まわせる訳にはいかない――最悪な展開が予想されるからだ。楯無は千冬を同性としてではなく、同じ姉として彼女に同情しているからだ。

 すれ違い――そう感じたのと自分も同じ境遇であるが為に。そんな千冬に十蔵は宥めると同時に彼女に言う。

 

「織斑先生――ここは生徒会長の言い分が正しいです」

「学園長!? 何故ですか!? 貴方も私の言い分に反対なのですか!?」

 

 千冬は十蔵に怒るが十蔵はそれを指摘した。

 

「織斑先生、今の貴女は冷静さを失っています。それに彼女の家なら彼を安全に保護出来ます――例え貴女が有名だとしても一時の凌ぎにしかなりません」

「ですが!!」

「織斑先生!! ここは生徒会長に任せてください! 彼女の所なら彼も安心です! それに今の彼を任せられるのは生徒会長しかおりません!」

 

 十蔵は怒りながら千冬に言った。その言葉には冷静さを失っている千冬への怒りと、気遣う意味でも心配しているからだ。もし最悪な展開になれば時既に遅しだ。

 十蔵はそれを危険視しているが千冬は十蔵の言葉に何も言えず項垂れると下唇を噛みながら身体を震わせる。逆らえない訳ではない――彼女も一夏を心配しているからであった。

 そんな千冬に一夏は声を掛ける気配はない――否、なかった。一夏は溜め息を吐くが楯無を見る。楯無は「うふ」と笑っているが一夏は彼女から目を逸らす。

 少し考えていたが彼の答えは直ぐに決まった。彼は行く――そう言う意味で深く頷いた。勿論、それには理由があるが楯無は「良かった〜」と良いながら扇子を広げる。扇子には黒文字で『保証』と書かれていたが一夏の安全を保障すると言う意味でもあった。

 楯無が喜ぶ中、一夏は楯無の扇子を見て呆れるが仕方ないと片付けた。


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