インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第126話

 あれから三十分後、ここは中華人民共和国、略して中国。酷にはアジア最大規模の面積を誇り、人口も世界一に近い程、多い。経済も発展しているが四千年の歴史をも誇っている。

 反面、国自体は汚いと言うイメージが世界中で定着しており、インターネット等の問題を抱えている。しかし、もうすぐ夜中になるにも拘らず、人々は意気盛んであり、今日を愉しみ、明日を考える人達もいるのは事実であった……。

 

 ここは中国の首都、北京にある、周りを湖で囲まれた場所にある、とある建物。そこは政府関係者である重役たちの居住区である。今は沢山の役人達が何かをしている。

 国の為か、それとも己の欲望の為かは判らない。後者の方が濃厚だろう、ある人物から見ればだが……。

 

「ふぅ……」

 

 そんな中、建物の外にあり、湖近くにある場所。そこには一人の三十代前半の男性がいた。スーツを纏っているがネクタイは緩くしており、スーツもヨレヨレ、頬も紅潮しており足下も覚束無い。

 彼は飲酒した後であった。それを見た目や行動で現している。男性は風に当たりたかったのだ。理由は酔いを醒ます為でもある。

 

「ふぅ……それにしても、えらく豪華だよな〜〜」

 

 男性は感想を漏らす。それは一時間前まで食事をしていたのだ。役人達だけのパーティーであるが贅沢三昧でもある。お目にかかれるかどうかも判らない食材も使われており、お酒もかなり高い物ばかりである。

 一般人達にはお目にかかれないだろう。が、あれは役人達であるからこそ、お目にかかれる。自分達は中国の未来を重く受け止める者達であり絶対的権力の持ち主達。

 中国の国民達は自分達の足元にも及ばない。男性はそう思いながらも風に当たる。

 

「あ〜〜それにしても……」

 

 男性は何かを思ったのか辺りを見渡す。湖近くには船を停める場所には辺りを巡回する警備員が居る筈。それなのにえらく物静かであったのだ。

 彼は警備員達がいない事に気づくと、軽く舌打ちした。サボったのか? そう思ったのだ。

 

「ったく、あいつ等後で首にしてやる」

 

 男性はそう言いながら言葉を閉じると、叫んだ。

 

「お前達は首だーーっ! それだけは覚えておけよーーーーっ!? ハハッハ〜〜〜〜っ!」

 

 男性は酔っているのか嬉しそうであった。彼の叫び声は湖まで響き渡るが声は遠くまで響く訳ではない。しかし、男は酔っているのも原因であるが彼は無礼講だと思い、そうしてしまったのだ。

 

「さてと、これから女を抱いて……」

 

 叫び声を上げたせいか、男は高揚している。最高の時間を至福の時と感じていた。男は振り返る。が、誰かにぶつかる。

 

「痛いなコラ……!」

 

 男はその誰かに怒る。

 

「ひっ……!?」

 

 が、顔を青くさせる。刹那、男はその何者かに顔を両側から挟まれるよう鷲掴みされた。それも尋常ではない力で頭を絞められている。

 

「あがが……!」

 

 男は悲鳴を上げた。それは酔いが一瞬で冷まされるくらいであるが男は悲鳴を上げ続けている。が、耳から血が流れ始めている。脳が圧迫されているのだ。

 しかし、脳は全ての生き物にとって、重要な部分であり、そこがやられれば一瞬で生を終え、死を迎える。いや、男は既にその瞬間を迎えている。

 刹那、男は白目を剥きながら事切れた。死を迎えたのだ。そして、そんな彼の頭を鷲掴みにした者は彼を解放する。が、彼は膝を突くとそのまま横向けに倒れた。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ…………」

 

 そして、その彼を殺した者は、ジェイソンであった。彼は一夏により、中国政府の腐った役人達を鏖殺するよう命じられたのだ。今は彼一人であるが彼は役人達を殺す為に動いている。

 彼が殺した男は腐った役人の一人だ。豪遊を好み、権力を麻薬感覚で使っている。人間の塵であるがジェイソンにより地獄へと墜とされた。

 しかし、ジェイソンの仕事はこれで終わり、ではない。彼が殺すべき役人は、まだまだいる。ジェイソンは不意に振り返る。そこには建物が建っている。

 豪華に見え、中国が長い歴史の中を歩み進む中でも現存している。老朽化が無い限り、立て替えが無い限り、存在し続ける。が、ジェイソンにはそれを理解出来る程、頭が良い訳ではない。

 彼は殺しのプロだ。人を殺すのが生き甲斐だ。それ故に彼は腰に携えていた鉈を取り出す。鉈の刀身は妖しい輝きを放っているが血が付着している。

 まだ新しいがそれはさっき、誰かを殺した事を物語っている。それは、さっきの男が言った警備員を殺したからであった。その警備員は今頃、湖の中で魚の餌か塵と化しているだろう。

 それでも、彼は気にもしない。彼の目的は多くの腐った人間を殺す事、それ以外、何も無い。鬱憤を晴らし、八つ当たりをする為でもあるのだ。

 ジェイソンは何かを思う中、彼は鉈を手に建物の中へと入る意味で、風のように消えた……。そして、彼に殺された男は放ったらかしにされているが死後硬直が進んでいた。いや、悪徳の限りを尽くした彼には相応しい最期だろう……。

 

 

「ふぁぁ〜〜」

 

 その頃、此処は建物内にある、とある部屋。そこは簞笥やベッド等の一般的な家具が置かれているが高級感がある。が、その部屋には一人の男がベッドに寝転がっていた。

 シャツに黒いズボンであるがヨレヨレである。しかし、だらしが無い訳ではない、部屋に居る時くらいはその姿が良いと言う我が儘だろう。

 が、その男もまた腐った役人の一人だ。金を好み、女を好む男だ。しかし、彼は酔っているのか欠伸をしている。ゆっくり休むと言う意味で寝転がっている。

 多忙の中で休む事の出来る唯一の時間だろう。

 

「さて、もう寝るか……一時間くらい」

 

 男は背を向ける意味で横向けになる。そして、ゆっくりと寝息を立て始めた……。が、そんな彼のベッドの直ぐ近くに一人の大男が風のように現れた。

 ジェイソンだ。彼は次の標的を彼にしたのだ。ジェイソンは彼を無言で見下ろしているが殺す事に代わりは無い。彼は手にしている鉈を腰に携える意味で戻すと……。

 

「っ!?」

 

 男は目を覚ます。が、ジェイソンは彼の頭を鷲掴みにしている。が、もう片方の手は何故か男の両足首を掴んでいた。

 

「な、なんだ!?」

 

 男は困惑し、自分の頭を掴んでいるジェイソンの手を掴もうとした。

 

「……!」

 

 刹那、彼は死んだ。それも、ジェイソンにより、頭を両足の踵にくっ付けられながら。いや、それはジェイソンが彼を紙のように折り畳んだのだ。

 その最中、骨の砕く音が幾つも聴こえたがジェイソンの仕業である事に間違いない。が、ジェイソンは相当鬱憤が溜まっているのか、彼は更に折り畳む。

 男の額が男の足の爪先にくっ付くがジェイソンはそれを投げ捨てた。ガタン! と言う音がするが男が死んだ事には変わりない。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ…………」

 

 ジェイソンはその男を見た後、彼を持ち抱えると、簞笥の方へと歩み寄り、男をその中へと放り投げた。一時の隠れでもあるがジェイソンは簞笥の扉を閉める。

 そして再び、風のように消えた……。

 

 

「ふんふ〜〜」

 

 更に数分後、此処は、とある部屋の浴室。そこにはシャワーを浴びている女性がいた。彼女は悪徳議員の一人であるが今はシャワーを浴びていた。

 とても愉しそうであった。裕福の時間である事を自分でも理解していた。しかし、そんな彼女もまた……刹那、ジェイソンが彼女の後ろに風のように現れた。

 

「うん?」

 

 女性は後ろに誰かがいる事に気付き、振り返る。

 

「うぐっ!?」

 

 しかし、ジェイソンに首を掴まれた。女性は目を見開くが彼は女性の首をへし折った。刹那、女性はがくっと俯いた。いや、死んだのだ……。

 それも、至福の時間が一瞬でなくなり、死を迎えたのだ。悪徳議員には相応しい最期であるがジェイソンは女性を放す。女性は横向けに倒れるが起きる気配はない。

 そして、ジェイソンは再び風のように消えた。次の役人を殺す為に……。彼がい無くなった後、死んだ女性がいる。死後硬直の最中であるがシャワーの、お湯の雨が彼女の身体を打っているが発見されるまでの間だろう……。

 しかし、ジェイソンの殺戮は終わらない。彼は政府の重役を鏖殺するまで、止めない。それは彼が地獄へと誘う使者であり、役人達はその罪人達。

 悪人は生きる価値がない。死で償う事でしか出来ないからだ。それはジェイソンが決めた事だろうが政府の役人達は一人の少女を狂わせているからだ。

 同時に他にもいるだろうが今は、ジェイソンが彼等の無念を代わりに受け持っているとしか思えないだろう。が、それは正しい事は間違っている事かは誰にも判らない。判るとすれば、役人達は苦しめられた者達にした事の報いを受けている事だろう……。

 

 そして、彼が殺戮を行なっている事、一夏はアメリカにいた。それは、レクター博士に逢いにいく為でもあった……。

 


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