インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第108話

「クソっ! グッ!?」

 

 その頃、一也は一彦に対し、防戦かつ苦戦を強いられていた。彼は壁の物陰に隠れながらグレネードランチャーを持っているが歯痒い思いをしていた。

 何故なら相手の一彦はIS、ジルドレを纏いながら主力武器の一つ、砲身の砲口から放たれる砲弾で一也を攻撃している。が、一也と言うよりも一也が隠れているであろう、教室を集中攻撃していた。

 一彦は破顔しているが異常とも言える。相手を殺す事に躊躇していないように思えた。一也は苛立、一彦は喜んでいる。対照的でもあるが戦況は傾いているのだ。

 一也は圧倒的不利かつ、一彦は圧倒的有利だからだろう。その証拠に一彦は砲弾を放つと言う強力な攻撃の手を休めない。その教室は砲弾が幾つも攻撃してくるせいでボロボロであった。

 修復不能までとはいかないがかなりの時間が掛かるのだ。それに煤や爆風、炎まで発生している。が、天井に設置されているスプリンクラーから水が放出される。

 床を水浸しにしているが消火しょうとしている。しかし、一也をも巻き込んでいるが彼は水に撃たれながらも憤りを隠せないでいた。

 

「(くそっ! ……このままじゃあ……!)」

 

 一也は下唇を噛む。状況を覆す手段を探していた。が、その方法は見つからない。相手はISを纏っているのだ。幾ら強力な武器でも限度がある上、戦闘機等で使用される重火器でなければ歯が立たない。

 ISその物を解除させる以外、勝ち目が無いのだ。同時にブギーマンでも勝てるかどうかも……無理だろう。一也はそれに気づきながらも辺りを伺う。

 

「(ブギーマンの奴、どうした!? 何故来ない!?)」

 

 一也は怒りを隠しきれないでいた。何故ならブギーマンがいないのだ。援軍願いを出したにも拘らず、彼が一向に姿を見せない。まるで拒否しているようにも思えるが逆らっているようにも思えた。

 一也はその事を知りながらも舌打ちするが当たりに爆風が発生する。

 

「うぐっ!?」

 

 一也は爆風に巻き込まれないが髪や全身を撫でられる感覚に陥った。

 

「……っ!」

 

 一也は悟った。このままでは負ける、敗者となる。そう悟ったのだ。刹那、一也はある人物の顔を思い浮かべる。美しいブロンドの髪に琥珀色の瞳の少女。

 自分に対し、微笑んでいる。偽りの無く、愛しそうに見ている。そう、一也の想い人でもあり、ハロウィンの日に殺された少女、澪香であった。

 

「澪香……っ!」

 

 一也は澪香の顔を思い浮かべていた。それは一也の大切な人かつ、願いを叶える為の存在。彼女を生き返らせたいと言う願いがあった。家族も含まれているが彼が一番望んでいる存在であった。

 一也は彼女の顔を思い浮かべると、眉間に皺を寄せる。死んでたまるか、自分はゲームを制する為に彼女を生き返らせたいのだ。彼女を生き返らせる為には悪魔にもなる、と。

 が、スプリンクラーからの水は出なくなった限界が近いのと、攻撃の手を休ましていない一彦にも原因はあったからだ。

 

「おわっ!?」

 

 刹那、一彦から戸惑いの声と、重火器の音が耳に響く。これには一也も驚くが彼は顔を出して窺う。そこには、一彦が何者かに銃弾を浴びられているのだ。

 一也は驚き続けるが銃弾は連続で放たれている。しかし、銃弾を放っているのは、少し奥にいる少女、楯無であった。彼女はISを纏っているが両手にはガトリングガンを持っているが一彦目掛けて撃ち続けている。

 彼女は学園を守る為に、一彦を攻撃している。が、一也の援軍ではない、彼も見たら侵入者として捕まえるだろう。その証拠に楯無は怒っている。

 侵入者を排除し、捕まえる意味でだ。が、一也はチャンスと思いつつも前線離脱と言う意味で姿を消した。同時にある目的の為に一彦を楯無に任せたからだ。

 

「侵入者ね! それに何者よ!?」

 

 楯無は怒りながら一彦に訊ねる。が、一彦は銃弾の雨を浴びられたままであった。楯無が攻撃をやめない限り、止まる事は無い。

 

「馬鹿かよ!? それに、おわっ!」

 

 一彦は銃弾の雨を浴びさせられたままであり身動き一つ取れない。が、なんとか状況を覆す意味で風のように消えた。

 

「消えた!?」

 

 楯無は驚くがガトリングガンを撃つのを止め、辺りを見渡す。センサーで一彦がいる場所を特定する。が、それは無いに等しい。楯無は辺りを警戒する中、彼は現れた。それも、彼女の直ぐ後ろに。

 

「っ!?」

 

 楯無は突然の事で驚く中、一彦は笑っていた。砲身を彼女の背中に向けたままであった。楯無はが振り返ようとした刹那、砲口から砲弾が放たれる。

 更に刹那、砲弾は楯無に直撃し、同時に爆風が発生し、楯無と一彦を巻き込むように包む。

 

「ガハッ……!」

 

 そんな中、煙の中から楯無が出てきた。それもダメージを受けているのか地上へと落下していく、刹那。煙の中から砲弾が煙の中から脱出するように現れ、楯無目掛けて突き進む。

 一瞬であった。砲弾は楯無の腹に直撃し、四散する。が、楯無にはダメージを与えるには等しい。楯無は攻撃を受けるや否や、地面に直撃する。

 大きな音がするが楯無はISを解除してしまう。さっきの攻撃が大きなダメージでもあったからだ。

 

「っ……!」

 

 楯無は身体中に走る激痛で顔を歪める。が、身体を動かすのもやっとであるが楯無は上空にいるかれ、一彦を見る。正体不明とはいえ、強いと思っていた。

 同時にさっきの攻撃はとても重いのだ。砲弾でもあるが一発一発が違う。まるで改造したようにも思えるが一彦にしか判らない。しかし、楯無は彼を見てある事に気づく。

 

「お、男!?」

 

 楯無は驚きを隠せない。何故ならさっきの攻撃では判らなかった、いや、侵入者である事で我を忘れていたからだ。理由は昼間の奴等の仲間ではないかと思ったからだ。

 改めて見ると男である事に驚いていた。彼は何者かは判らない、そのISが何所で手に入れた事も判らない。判るとすれば、彼が二人目の男性操縦者である事だろう。

 それが本当ならば世界は震撼する、男性達は驚喜し、女性達は畏怖し、憎悪するだろう。存在その者が世界をひっくり返すには充分過ぎる。

 しかし、その二人目は敵であるのだ。学園を襲撃してきた敵なのだ。楯無がそれに気づくのは遅くもないが楯無は驚きを隠せないでいる。一方で一彦は楯無をが自分を見ている事に首を傾げていた。

 

「どうしたの? 僕の顔に何か付いているの〜〜?」

 

 一彦はわざとらしく大声で訊ねる。が、楯無は一彦の言葉に下唇を噛む。わざとらしい事に気づいていたのだ。楯無は彼の正体を知りたいのであった。

 しかし、それは叶わない。一彦が砲身の砲口を楯無に向けたのだ。それもワザとらしく破顔しながら。これには楯無も驚くが一彦は笑いながら口を開く。

 

「まあ、僕には関係ないけどね? バイバ……」

 

 刹那、一彦の前に誰かが風のように現れた。

 

「えっ?」

「っ!?」

 

 一彦はキョトンとし、楯無は目を見開く。刹那、大きな破裂音が上空に響く。同時に一彦はISごと吹っ飛ぶ。しかし、それをしたのは彼の前に姿を現した者であった。

 手にはショットガンを持っているが左腕でであった。黒いISを纏っているが青年であった。そんな彼は一彦を睨みつけている。一方で一彦はぶっ飛ばされそうになるのを難なく堪えていたのだ。

 直ぐに一夏を見るや否や破顔している。

 

「お……織斑君!?」

 

 そして、その青年を地上からであるがISで直ぐに気づいたのだ。そのISはジャック・ザ・リッパー。そのISを使うのはこの世で一人だけ……そう、一夏である。

 彼は瀕死の重傷から生還したのだ。一般の者なら二、三日掛かるか最悪、死亡する。が、霧の影響でもあるが彼はゲームを制したいと言う思いがあったからだろう。

 しかし、彼は病上がりの身かつ千冬達には黙ったまま姿を消したのだ。それは楯無の会話を少しばかり聞いていたのと、他のプレイヤーが責めて来たと思ったからだ。

 それは本当ならば闘わなければならない、チャンスだと思ったからだ。現に彼は今、目の前にいる一彦を見ている。一彦は何故か笑っている。狂気としか思えなかったのだ。

 

「お、織斑君……!」

 

 楯無は彼を見て微かに涙を浮かべる。彼が無事である事に泣いていた。しかし、彼が病み上がりでISを乗っている事に驚きや怒りもあったのだ。

 

「だ、ダメっ! 織斑君、退きな……さい!」

 

 楯無は一夏に命令する。今の彼には一彦を倒せる手だては無い。病み上がりであるのと、彼の右腕は……楯無はそれに気づくと涙を浮かべながら何度も命令したが一夏は聞く耳を持たないでいた。

 一夏は一彦を見ながらショットガンを放り捨て、同時に彼はランスを展開すると、一彦に対し、身構える。そんな彼に一彦は笑ったまま、砲身を下ろすと、ある武器を展開する。

 槍であった。それも血で洗うように赤い槍であった。彼は槍を両手で持ち構えながら一夏を見る。一夏は舌打ちすると、彼に迫り、ランスで突こうとした。

 が、一彦は難なく槍で弾き返す。これには一夏は眉間に皺を寄せるが一彦は即座に槍で一夏の腹を突いた。

 

「ガハッ……!」

 

 一夏は腹に激痛を感じているが、彼は右腕を失い、尚且つ病上がりの身と言う不利な状況で一彦に戦いを挑んだからであった……。


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