インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「クソが……! 」
その頃、一也は覚束無い様子で立ち上がると、ジルドレを纏っている一彦を見る。一彦はキョトンとしているが一也が何故困惑しているのかを理解していない。
いや、一也が自身がISを持っている事に困惑と不利な状況の立場に置かれている事に気づきながらも恐れている事を理解していないからだ。
が、自分が纏っているIS、ジルドレは少し前に、ある国、フランスから拝借しただけである。が、それは無断かつ、窃盗した物である。一彦は戦いを有利にする為に拝借(窃盗)したに過ぎないが今頃、大騒ぎであるのと、困惑しているだろう。
一彦から見れば知った事ではないが一也から見れば不利な状況である事に変わりは無い。一也は下唇を噛みながら腰に携えているハンドガンを取り出すと、一彦目掛けて向けながら引き金を引く。
刹那、銃口から銃弾が放たれるが銃弾は一彦目掛けて突き進む。が、それはムダであった。銃弾は一彦を射殺する事は出来ない。ISの絶対防御が一彦を守っている。
「っ!? ぐっ!!」
一也は驚くが直ぐに行動を移す意味でハンドガンの引き金を引き続ける。銃口からは銃弾が何度も放たれる。それは弾倉が空になるまででもあったが一彦を射殺する意味でもあったのだ。
しかし、それらは全てムダであった。絶対防御と言う障壁かつ、一彦の鉄壁の盾が主人を守っている。一也の行動は全てムダであるが一彦は何故か笑っている。
一也の行動が自分を殺すようにも思っていた。いや、そう思っているからだ。自分は彼と同じプレイヤーの一人であり、同じ穴の狢の存在。
同時に同じ穴の狢は自分達だけではない、ジェイソンを引き連れている一夏、チャッキーとティフアニー夫婦を引き連れているがここには居ないプレイヤー。
そして、今回は不参戦であのるか、姿を見せないピンヘッドを引き連れているプレイヤー。
何れも同じだが同じゲームの対戦相手達だ。彼等を倒した者だけがゲームを制するのだ。自分達は殺すか殺されるかの立場であるのと、生き残るのは一人だけだからだ。一彦はそう思っていたが銃弾の雨は突如として消えた。
それは十数発しか無かったがハンドガンの銃口から銃弾が出なくなったのだ。
「クソが!」
一也は困惑する。ハンドガンは一也に逆らっている訳ではない、ハンドガンの弾倉が底を尽き、空となったからだ。一也は困惑する中、一彦はある武器を展開する。
それは禍々しい姿をしている大砲の砲身であった。ジルドレの主力武器でもあるが、それが天井に穴をあけ、床に穴をあけた武器でもあった。
一也は目を見開くが一彦は笑いながら砲身を一也に向けた……。
「更識姉、逃げろ! 逃げるんだ!」
その頃、千冬は楯無に対してそう叫び続けていた。近くには腰を抜かしながら涙目の真耶がいるが千冬は困惑している。楯無も困惑しているが彼女達の間には二人の大男がいた。
ジェイソンとブギーマンであった。ジェイソンは仰向けになっているブギーマンに対し、馬乗りになりながら殴っていたが千冬と真耶を見ていた。
何もしないのであるが腕を振り上げたままであった。刹那、大きな振動が辺りに響く。
「「っ!?」」
これには楯無と千冬、真耶は困惑するがどこかが爆発したのだ。ジェイソンも爆発音に反応するが、これがブギーマンを気がつかせる。ブギーマンは気がつくや否や両手でジェイソンの首を掴む。
ジェイソンはブギーマンの行動に気がつくがブギーマンの手を掴む。
「キャァァァーーーーッ!!」
真耶はブギーマンの行動で叫ぶが千冬は後退る。楯無は目を見開くがジェイソンはブギーマンに首を掴まれ苦戦している。彼の腕力が凄まじく、自分と同じくらいの力を持っているからだ。
ジェイソンは苦戦する中、千冬は舌打ちすると、駆け寄る。
「白式!」
刹那、千冬はそう叫びながら白式の右腕部分だけを展開すると、ジェイソンの頬を殴る。千冬よりも一回り大きな体がいとも簡単に横へと吹っ飛ぶ。
しかし、千冬は楯無を助けようとしていたのだ。教師としてでもあったが、ここに来たのも一夏の様子を見る為であるのと、更識姉妹を心配してからでもあった。
真耶は副担任としても千冬と同じ思いをしていたからだ。
「お、織斑先生! ソイツは!」
が、千冬の行動に楯無は驚きを隠せない。ジェイソンは一夏や自分達を守る盾だ。敵ではないと言い切れないが、味方とでも言い切れない。
本当の敵は馬乗りされているブギーマンだ。ジェイソンは自分達を助けてくれたのだ。千冬は知らないとはいえ、敵である事を誤解している。
楯無は千冬の行動に驚く中、ジェイソンは横へと吹っ飛ぶ。大きな損壊音がするがジェイソンが壁に衝突した音でもあったのだ。その衝撃でジェイソンは気を失う。が、千冬は更に相手を変える意味でギロリと視線を逸らす。
その相手はブギーマンである。彼は仰向けに倒れているが千冬を見て何も動じない。千冬はブギーマンを見るや否や、彼の顔を殴る意味でパンチを繰り出そうとした。
刹那、ブギーマンは風のように消えた。これには千冬は目を見開き、真耶は驚き、楯無も驚く。いや、ブギーマンは風のように消えたのは、理由があった。
彼は逃げたのではない、別の場所にいる一也に援軍を頼まれたからだ。何故なら、一也はジルドレを纏っている一彦に苦戦を強いられているからであった。
千冬達はそれを知らないが彼女達はブギーマンが逃げたと思っていた。それは好都合でもあるが警戒さえもしている。それは楯無しか知らない。
彼女はジェイソンが風のように消える事を知っているからだ。一番近くで目撃しているのが理由でもある。
「……っ!」
千冬はブギーマンが消えるのを不審に思いながら相手を再び変える。壁に激突したまま気を失っている。好都合でもあるが千冬は歩み寄る。
彼には只ならぬ因縁があるからだ。それはあの時の……。
「だ、ダメです! そ、ソイツは!」
そんな中、楯無が千冬の様子に気づき、慌ててジェイソンと千冬の前に立つと、ジェイソンを庇う意味かつ、千冬の前に立ちふさがる。そんな楯無の行動に千冬は目を見開き、まやは瞠目する。
彼女の講堂はジェイソンを守る意味にも近かったからだ。千冬は楯無の行動に戸惑いつつも、怒る。
「さ、更識姉! どういうつもりだ!?」
「それは私には言えません! ですがそれだけは止めて下さい!」
「それは無理だ! そいつは一夏を誘拐した奴だ! それに一夏を怖がらせたのかもしれないのだぞ!?」
千冬は楯無の後ろにいる、気を失っているジェイソンを指差す。それはあの時の一夏がジェイソンに連れ去られたときの事である。簪の部屋から起きた事でもあるが千冬から見れば憎悪の対象でもあるのだ。
ジェイソンは一夏を狙っている。そう思っているからだ。千冬は姉として弟の一夏を守ろうとしていた。千冬は弟を守りたいが為に我を忘れている中、楯無が立ち塞がったのだ。
これには千冬も驚かない訳にはいかなかった。生徒でもあり、会長としてはあるまじき行動でもあるのだ。
「更識姉、ソイツはお前の妹を怖がらせた張本人でもあるのだぞ!? それにお前所の仲間をも……!」
「あれは違います! それにコイツは貴女が思う程の奴ではありません!」
「だからなんだ!? ソイツはまた、一夏を……!」
刹那、音が鳴った。これには真耶や千冬も驚くが、音の正体は楯無からであった。楯無は慌てるが懐に手を入れると、ある物を取り出した。
それはスマートフォンであった。楯無あはスマートフォンの画面を見るが『虚』と言う字が映し出されていた。目を見開く。彼女は画面をを指でタップすると、耳に当てた。
「どうしたの!?」
『お、お嬢様大変です! 学園に未知のISが学園を襲撃しています!』
「えっ!?」
楯無は目を見開く。未知のISが学園を襲撃してい。それは楯無にとって驚きでしかなかった。が、楯無は虚から事の発端を細かく聞く。
後ろにはジェイソンがいるのにも関わらずに……。
『私は学生寮の外から見ていますが、そのISは学園のある一室を集中して攻撃しているのです!』
「それで……ええ! 判ったわ! 虚は学生寮にいる人達を外に出さないように言い回って! それで……!」
楯無はスマートフォンの向こう側にいる虚と会話をしていた。避難での事でもあるが千冬と真耶は驚きながら楯無の声に耳を傾けている。xジェイソンは気を失っており蚊帳の外であった。
「……あっ」
そんな中、集中治療室の扉を開けながら彼女等を見ている者がいた。簪だ。簪は楯無達を心配して、顔を出して窺っていた。
また波乱が起きている。それも最悪な形で起きていると彼女自身も理解していた。近くにはジェイソンが倒れているが何が遭ったのかは解らない。
それもその筈、ジェイソンが気を失った後に様子を伺っていたからだ。しかし、簪は彼女等を見て泣きそうになっている。もう嫌だ、簪はそう思っていた。
しかし、彼女が集中治療室の外を窺う為に少し離れている刹那、一夏の左腕の指が微かに動いた……。