インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第103話

「だ、誰よアンタ!?」

 

 楯無は咄嗟に簪を背中に隠す意味で移動すると、その人形を睨む。簪は人形を見て微かに震えると、立ち上がり、楯無に縋り付きながら震える。

 姉妹はそれぞれ、違う行動をしていた。楯無は人形を見て警戒しながら簪を守り、簪は楯無に甘えるように震えていた。どちらも違う反応を見せるが、その人形は笑う。

 

「おいおい、人形だからって心外だな? 俺様、哀しいぜ?」

 

 人形はそ言いながら笑う。その人形は三歳ぐらいで赤髪や青い瞳、そばかす等が特徴的であった。カラフル的なシャツに青いオーバーオールと赤いスニーカーなのも特徴的だった。

 しかし、手には逆手でもつている包丁がある。切れ味が良さそうかつ、獲物を探しているように妖しい輝きを放っていた。恐らく、その獲物は更識姉妹か、或いは彼なのかもしれない。

 同時に、可愛らしい人形と言うよりも、残忍さを求める人形としか思えなかった。楯無と簪はそれに気づくが警戒している上、人形はピタ、ピタと歩み寄ってくる。

 

「アンタ、此方に来ないで!」

 

 楯無はそう言いながらランスを展開し、人形に向ける。これには人形も驚き立ち止まるが怒る。

 

「物騒だなおい!? それを下ろせ!」

「嫌よ! 誰が下ろす物ですか!?」

「んだと、このアマ!? それよりもガキはどこだ!?」

「ガキ!? 誰の事よ!?」

 

 楯無は人形の言葉に怒る。が、人形はその人物を言う。

 

「織斑ってガキだよ! 俺はソイツを殺しにきたんだよ!」

「なっ!?」

 

 人形の言葉に更識姉妹は驚きを隠せない。しかし、その人形は平然と応えたのだ。彼の目的は一夏を殺しにきた。それは殺害予告にも等しく、一夏の命を奪いにきたと自ら教えている物であった。

 人形の言葉に姉妹は驚くが、楯無はキリッと人形を睨みながら怒る。

 

「そんなの出来る訳ないじゃない!? それにアンタみたいなイカれた人形に織斑君を渡す理由は無いわ!」

「誰がイカれた人形だ!? 俺様はチャッキーと言う名前があるんだよ馬鹿!」

 

 人形は自らをチャッキーと名乗る。が、楯無はチャッキーをに睨み続けていた。

 

「アンタみたいなイカれた人形、焼却炉とかに放り出すわよ!? それが嫌なら、消えなさい!」

「うるせぇ! 織斑を出せ! ソイツを殺したら、俺は帰ってやる! 勿論……」

 

 チャッキーは手に持っていた包丁を舐める。

 

「お前達を切り刻んだ後にな……!」

 

 チャッキーは包丁を舐めながらそう言った。刹那、二人は背筋を凍る感覚に陥った。いや、あれは単なる脅しではない、それはチャッキーが自分達を殺す前提での警告であった。

 その言葉には凶器が孕んでいるようにも感じた。逃がさないと言う意味をも感じた。それだけでも判ると背筋が震える。あれは単なる人形かとも言えるが、可愛らしさは無く、狂気さえをも感じる。

 あんな人形は呪いの人形よりもタチが悪い、そう思った。更識姉妹はそれを考える中、チャッキーは笑いながら二人に近づく。

 

「それよりも俺は気が短いんだ……さもなくば……あん!?」

 

 チャッキーは立ち止まると驚く。更識姉妹にではない。その後ろにいる、異様な存在にであった。チャッキーの様子に気づいたが簪が不意に後ろを見る。

 

「キャァァァーーーーっ!!」

 

 簪は悲鳴を上げる。簪の様子に楯無は肩を震わすと簪を見ながら何かを言おうとした。

 

「簪ちゃ……っ!?」

 

 楯無は簪が見ている方を見て戦慄した。なぜなら、チャッキーと簪が見ている方、いや、楯無を含めて彼女等と一体の人形が見ている方には、一人の大男がいたのだ。

 ジェイソンと対等と言う意味での巨躯で青い作業着に白いハロウィンマスクの男。手には包丁を持っているが佇んでいる。遠くから見ただけでも異様であるが、不気味とも思えた。

 そして、その大男はブギーマン。黒峯一也が引き連れている殺人鬼の一人であった。一也はそこには居ないが学園のどこかにいる。そして、彼等の目的は一夏抹殺であった。

 ブギーマンは楯無達を見る中、簪は泣きながら震えながら楯無に縋り付く。

 

「だ、誰よ!?」

 

 楯無はランスを構えるが簪を背中に隠そうとした。しかし、簪を扉の前へと立たせながら左右にいる者達を交互に見る。チャッキーとブギーマンは互いの相手を見ている。

 チャッキーはブギーマンを見て歯軋りするが、ブギーマンはチャッキーを見たまま何も言わない。しかし、一触即発の気配だけはあった。互いの相手を警戒しているようにも思えるが、チャッキーは微かに警戒しているだけであった。

 ブギーマンは無口であるが体格では彼の方が勝っている。余裕でもあるが、チャッキーから見れば不利だろう。

 

「けっ! お前も来ているのかよ!?」

「…………」

「おい、なんとか言ったどうだ!?」

 

 チャッキーはブギーマンに言う。しかし、ブギーマンは何も言わない。何度指摘しても言わないだろうが元から無口であり、言わないのだ。

 そんな事をチャッキーは知らないがチャッキーは怒る。

 

「おい喋ったらどうだ!? それに」

「コイツは元々喋らない」

 

 刹那、チャッキーの言葉を遮るかつ、代弁するように誰かが言った。これには更識姉妹やチャッキーも驚くが、その声の主はブギーマンの方から聴こえた。

 ブギーマンが言ったのではない。ブギーマンの後ろに誰かがいたのだ。その者はブギーマンの横から、出てきた。全身を黒で覆うような服装に、至る所には重火器を携えている。

 ショットガンにハンドガン、手榴弾に催涙弾と言った緊急用の物に、手にはアサルトライフルを持っている。が、その青年は黒峯一也であった。

 彼は眉間に皺を寄せているが怒っているようにも思えた。しかし、彼がここにいるのも、一夏を抹殺する為でもあった。

 

「だ、誰よ貴方!?」

 

 楯無は一也に訊ねる。しかし、一也は楯無を見て何も言わず視線を楯無の方へと移す。

 

「っ!?」

 

 楯無は一瞬、肩を震わせる。彼も只者ではないと感じたのだ。それも、自分や一夏と同じ血の臭いを感じたのだ。同時にあの目つきは人を躊躇無く殺す目をしている事に気づいたのだ。

 楯無は生唾を吞むが一也は視線を楯無に移したまま、何も言わない。が、ふと、簪の方にも気づく。簪は一也が見ている事に気づき、肩を震わせるが更に泣き出すと、楯無に縋り付く手に力を入れる。

 

「おい! 人の話を聞け!」

 

 そんな一也にチャッキーは怒る。自分がのけ者にされていると思っているからだった。チャッキーの言葉に一也は視線をチャッキーに移すと口を開いた。

 

「ギャアギャア煩い人形だな?」

「んだとゴラ!? てめえ、ブギーマンを引き連れている奴だな!?」

「……だったらどうする?」

 

 一也の言葉にチャッキーは怒る中、微かに歪んだ笑みを見せる。

 

「だったら早い、織斑一夏というガキだけでなく、お前も殺してやる!」

 

 チャッキーはそう言いながら風のように消えた。一也は驚かないが更識姉妹は驚く。刹那、チャッキーは風のように現れた。それも一也の真上に。

 

「貰っ!?」

 

 チャッキーは笑いながら包丁で彼の脳天を刺そうとした。が、彼は吹っ飛ぶ。それも、身体中に激痛を感じながら……。

 

「うわたっ!?」

 

 チャッキーは吹っ飛ばされるが包丁を落としてしまう。彼は一也の後ろへと転げ落ちるが、彼を吹っ飛ばしたのは……ブギーマンであった。

 ブギーマンは一也を守ろうとしてチャッキーを殴ったのだ。彼の腕は横へ伸びているがそれを物語らせている。同時に、彼は振り返ってはいない。

 

「イチチ……!」

 

 チャッキーはなんとか起き上がると、一也とブギーマンを睨む。彼等は後ろを向いているが怒った。

 

「おい! 俺様は人形だから繊細なんだよ!」

「だったらなんだ?」

 

 一也は聞き返すがチャッキーは更に怒る。

 

「俺様は一応、日本製だ! そこら辺の人形とは思うなよ!?」

「……ふん、だったら話は早い」

 

 一也は呆れるように吐き捨てると、ブギーマンを見る。ブギーマンは何も言わないが一也は言った。

 

「ブギーマン、あのクソ煩い人形は俺に任せろ、お前はあの姉妹を殺せ……無論、織斑一夏は生きたまま俺の所へと持って来い」

 

 一也はそう言った。が、一也の言葉に更識姉妹は驚く。一也はブギーマンに自分達を殺すよう言ったのだ。しかし、それは部外者である彼等には関係ないのだ。

 しかし、ブギーマンは彼女等を見ると、包丁を手にしまま彼女達に迫る。同時に、一也はアサルトライフルをチャッキー目掛けて向ける。

 

「かんちゃん!!」

 

 楯無は何かを言う前に、同時にチャッキーは困惑しながら風のように消える。その場から逃げたのだが一也は「逃がすか……!」と静かに怒りながら風のように消えた。

 同時に、ブギーマンは更識姉妹に迫るが、楯無が簪を守ろうと身構える。

 

「たぁつ!!」

 

 刹那、楯無はランスをブギーマン目掛けて突く。ブギーマンは楯無の行動を見て驚かないが腹を刺された……。

 そして同時に、学園は女子生徒達や女性職員に知られるかどうかは判らない中、戦場と化した……。


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