桔梗SIDE
千景が出ていき、高嶋も追いかけていった。さて、僕はどうしたものか?
「色々と急ぎすぎましたね」
ひなたは落ち込んでいた。まぁ確かに無理やり結びつかせるのもどうかと思うけどな……
「ひなたお姉ちゃん、そうそう僕らみたいな関係はいないからね」
「海くん、そうね」
海はそう言う中、僕自身もちょっと自分の先祖について気になった。実際問題本当に関係あるのかな?
とはいっても、僕がいた世界とこっちとじゃ歴史がぜんぜん違うし、調べる方法なんて……
「気になっているみたいだね」
突然部室のドアから声が聞こえ、振り向くとそこにはフードをかぶった女の子がいた。若葉と夏凛の二人が変身し武器を構え、警戒した。
「何者だ!!」
「ただの迷子よ」
「ただの迷子にしては、声が聞こえるまで気配を感じなかったけど……」
「気配を自由に消せる迷子よ」
若葉と夏凛の二人をおちょくっているのか、少女はクスクス笑っていた。
うん、こいつ、まさか……
「若葉ちゃん。落ち着いて」
「ほら、夏凛も落ち着きなさい。あんた、私達と似たような状況なのかしら?神樹様と造反神の喧嘩に巻き込まれて、呼び出された別の世界の勇者?」
先輩がそう言う中、少女は笑みを浮かべていた。
「勇者ね………」
「いい加減、正直に答えたらどうだ?」
僕は少女の頭を叩こうとするが、触れられなかった。前に海の端末から出てきたひなたみたいなものか
「ふふ、影で君の様子を見ているだけにしとこうと思っていたけど、どうにも気になることが出来たみたいだね。それに私について、そっちの巫女二人は気がついてるみたいだけど」
少女はひなたと水都の方を見た。どうやら巫女の力なのか正体に気がついてるみたいだな
「神格的なものを感じる。それに……」
「バーテックスと似たような気配も……」
二人の言葉を聞いて、その場にいた全員が身構えた。確かにバーテックスと似たような気配を感じると言われたら身構えるのは当たり前だけど……
「みんな、こいつは敵じゃない。それに戦っても勝てるかどうか……」
「まだ自己紹介はまだだったね。私は境界の勇者の世界で、天の神をやっているもの」
「……別世界の天の神がどうしてこんな所に?」
「さっきも言ったように、彼の様子を影で見ているだけよ。今回は面白い話をしているから関わりにきたのよ」
「えっと、関わりにきたって?」
友奈がそう言うと、天の神は一冊の古い書物を取り出し、僕に渡してきた。僕は園書物を見てみるとそれは……
「これって……神宮家の家系図?何であんたが……」
「君の知り合いから探すように言ってね。届けに来た。それだけ……それじゃ私は帰るわ。あぁ、それと……」
天の神は海の事を見つめた。そして笑みを浮かべていた。
「そっちの君はいつか選択しなくてはいけなくなる。もし間違った選択の場合は……まぁここまで言う必要はないか。あと造反神は記憶を読み取ることもできるから気をつけるように……」
そう言い残して、姿を消すのであった。本当に家系図を渡しに来ただけなのか?まぁいい。これで色々と分かるかもしれないな。
早速見てみようとした時、突然端末からアラームが鳴り響いた。これって、樹海化警報!!
千景SIDE
近くの河原まで来た私は、ただ呆然と景色を眺めていた。すると高嶋さんが私を追ってきた。
「郡ちゃん!」
「高嶋さん………」
「何だか怒ってる?」
高嶋さんは心配そうにそう言うが、私は首を横に振った。
「怒ってないわ。ただ……」
「ただ?」
「もし神宮が私の子孫だとしたら、可哀想かもしれないって思って……」
「可哀想って?郡ちゃんが先祖だから?そんな事……」
「可哀想よ……だって私みたいな愛されたことのない子が先祖だもん。きっと神宮も………」
「そんな事ないよ!だって………」
高嶋さんが何かを言いかけた瞬間、突然端末からアラームが鳴り響き、樹海に引き込まれた。
「こんな時にバーテックスが……」
「あれ?でも反応が一つしか……」
高嶋さんの言うとおり、端末に映し出されたマップには反応が一つだけ……もしかして……
「新種かしら?」
私がそう告げた瞬間、突然背後から衝撃を受け吹き飛ばされた。私は何とか受け身を取るとそこには全身真っ白の人型の何かがいた。
「くっ!?」
「郡ちゃん!?」
高嶋さんが私の所に駆け寄ろうとしたが、そいつに首を捕まれ捕まってしまった。
「うくっ………」
そいつは不思議そうに高嶋さんを見て、思いっきり地面に叩きつけた。私はそれを見て、怒りのあまりそいつに斬りかかるが、そいつは刃を片手で受け止めた。
「………何者なの?あなた……」
「?」
そいつは刃を掴んだまま、私のお腹を思いっきり蹴り続けた
「ぐっ、がっ、かはっ」
何発か蹴りを食らわしたそいつは、手を離し、お腹を抑える私を見ていた。そして倒れ込んだ私を更に蹴り続けた。
「やめて!!」
高嶋さんが咄嗟にそいつを殴り、そいつは私から離れた。
「郡ちゃん!?大丈夫?」
「だ、大丈夫よ……」
私たちはそいつを見ると、何故か不気味な笑みを浮かべていた。それに何だかさっきよりはっきりと人の形をしてきた。でも、何で………
「えっ?」
「ど、どうして……」
私たちはそいつを見て、ただ驚いていた。何でこいつの見た目が私に似ているの?
『私は……愛されてない。そのとおりよ。だからこそ貴方は……』
「や、やめ……」
『両親があんなだから……私は愛されてない。だから皆にいじめられた』
「やめて!?」
私はそいつに斬りかかるが、そいつは右腕を変化させ、私と似たような鎌を生み出し、私の首筋に刃を当てた。
『死ぬしかない。死ぬしかない。殺すしかない……殺す……全て……故郷の皆を、乃木さんたちも、高嶋さんも……どうせ私のことなんて……』
「そ、そんなこと……」
「そんなことないよ!郡ちゃんが愛されてないなんてそんなことない!!それに私は郡ちゃんのこと大好きだもん」
『嘘、嘘、嘘……』
そいつは私の頭を掴み、地面に叩きつけ、高嶋さんにゆっくり近づいていった。このままじゃ高嶋さんが……
「嘘じゃない!!」
『嘘、嘘つき!嘘つき!!』
そいつが大鎌を振り上げた瞬間、もうだめかと思った。だけど突然黒い何かがそいつの腕を切り裂いた。
「天の神から記憶を読み取るって聞いたから、まさかと思ったけど………似たような奴を生み出すのか……」
そいつの前には黒い大鎌を構えた神宮がいた。
次回あたりで桔梗と千景の話は終わりです。その後は海水浴の話になります