そして今回は……
桔梗SIDE
バーテックスが襲撃してきたため、僕らは戦っていた。
「ハァ!!」
大鎌で星屑を切り裂いていく中、後ろで援護していた須美が近寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど……どうかしたのか?」
「いえ、ただその……桔梗さんの動きが何だか悪い気がして……」
動きが悪い?特に調子が悪いってわけじゃないんだけどな……
そんなことを考えていると須美の後ろに星屑が現れた。咄嗟に僕は須美を突き飛ばし、大鎌を振ろうとした瞬間、右腕が壊れてしまった。
「なっ!?」
「桔梗さん!?」
須美が叫んだ瞬間、誰かが星屑を切り裂いてくれた。今のは……
「大丈夫ですか?桔梗さん」
「須美ちゃんも」
海と樹の二人が助けに入ってくれたのか、僕は二人に事情を話し戦闘から離脱するのであった。
戦いも無事に終わったみたいだけど……ちょっとした問題が発生した。
「義手の破損ですか……」
「あぁ大赦に連絡をしてほしんだけど……」
ひなたに頼んで義手の修理を大赦で出来ないか聞いてもらうことにした。この義手は元々は大赦が作ってくれたものだからもしかしたら修理できるかもって思った。
ひなたが連絡し終えると……
「とりあえず修理の方は出来ますが、その間戦闘、日常生活などに支障が出るのでは?」
「それはまぁ仕方ないと思ってるし、そこら辺は海に迷惑がかかるけど……」
「海くんでしたら忙しいみたいですよ」
「忙しいって?」
「ほら、この間の私との……」
ひなたは顔を真赤にさせていた。あぁそういえば赤嶺の仕業で手がくっついたんだっけ?
「海くんは赤嶺さんを探して怒ってやるって言ってましたから……戻ってくるのは遅くなりますね」
「それじゃ……どうするかな?」
「あ、あの桔梗さん!」
すると突然須美が大声を上げた。どうしたんだ?
「わ、私がお世話します!」
「はい?」
須美の強い希望で義手が治るまでの間身の回りの世話をしてくれることになった。それにしても……
「お前、荷物多くないか?」
僕の部屋にやってきた須美は何故か大荷物を持ってやってきたのだった。
「義手がどれくらいで治るか分からないので泊まり込みで……」
「いや、海がいるから……」
「海さんには暫くの間別室に移動するようにってひなたさんが言ってくれましたから大丈夫です」
海の奴……何というか可哀想に……まぁこの間僕が追い出されたから仕方ないか……
「まずは夕食を作りますね」
「手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です」
「お、おぉ」
きっぱり断られてしまった。さてどうしたものか……絵を書くのもこの腕じゃ大変だしな……折角だからこっちで描いてきた絵を見てるか……
しばらくしてから須美が夕食のうどんを作ってきた。
「おまたせしました。絵を見ていたんですか?」
「あぁ、こっちに来てから沢山描いたなって思って……」
「風景の絵ばっかりですね」
「まぁ誰かを書くっていうのは機会がないと……」
「でも素敵な絵です……ってうどんが伸びちゃいますから早く食べ……」
須美が突然何かに気が付いたみたいだった。一体どうしたんだ?
「ど、どうしましょう……その腕では……」
「あぁいやだいじょ……」
「待っていて下さい!」
須美が僕の器を取り、僕に向けて……
「あ、あーん」
「………」
いや、これはかなり恥ずかしんだけど……というか須美も恥ずかしがってるなら無理しなくていいのに……
「いや、これぐらいは……」
「駄目です!あ、あーん」
頑固だ……いやまぁ美森も頑固だったし……いやまぁ同一人物だから仕方ないんだけど……というかこうしてあーんをしてもらうのは美森にも……
ごめん、やってもらったけど、あいつは恥じらいとかなく普通にやってくるからな……
ここは諦めて僕は一口うどんを啜った。
「どうでしょうか?」
「美味しいよ。ただ須美、僕は左手でも食べられるぞ」
「へっ?」
「右腕が無くなって、義手ができるまでの間は左手でご飯を食べていたし……」
「ご、ごめんなさい!」
ものすごい勢いで謝る須美、にしても本当に昔の美森は暴走しやすいな……いや今もだけど……
夕食を済ませて僕はお風呂に入ることになった。まさかと思い一応扉に鍵を締めておいた。絶対アイツのことだ。背中を洗いに来るはずだと思った。
「気を使うのはいいことだけど……使われすぎるのはちょっとな……」
そう思いながらお風呂でのんびりしていると脱衣所の方から気配を感じた。すりガラス越しだけど須美が服を脱いでいる……いや待て、侵入は出来ないはずだ。鍵がかかっているのを知ったら諦めるはず……
ポンッ
精霊が浴室に出現
↓
鍵を開ける
↓
精霊が消える
↓
須美が入ってくる
「っておい!?」
「どうかしたんですか?」
「どうかって……」
「あぁ鍵は前に東郷さんから聞いた方法で……」
いや、不法侵入だからな。というか美森、精霊の扱いが上手いけどまさかと思うけど友奈の部屋とか侵入してないよな……
「お背中を流します」
「いや、大丈夫だから……」
「駄目です」
バスタオルを巻いた須美がそう言ってきた。だから色々とまずいからな……
「須美、はっきり言うが……気を使い過ぎだぞ」
「そ、それは……」
「今回の義手の件はお前が責任を感じることじゃないんだから……しっかり整備をしていなかった僕のせいでも……」
「そ、それでも……やっぱり原因は私なんですから……ちゃんとお詫びしないといけないと思って……でも迷惑だと思うのでしたら……帰ります」
泣きながら須美が浴室から出ていった。僕はすぐさま追いかけ、須美の腕を掴んだ。須美は必死に抵抗するとそのまま須美を押し倒す感じになってしまった。
「あ、あの……」
「あのな……迷惑だとは思ってないからな!」
「でも……」
「気を使い過ぎだから怒ったんだ。できることはやる。出来ないことはお前に頼むから……変に責任を感じすぎなんだよ」
「す、すみません……」
「とりあえず泣きやめ。泣き止んだら一旦着替えて……」
「………」
視線を感じ、二人で振り向くとそこには海、園子(小)銀の三人がいた。
「えっと……義手が届いたから届けに来たんだけど……」
「須美が迷惑をかけてないかと思ったんだけど……」
「二人のいちゃいちゃ邪魔しちゃったね~そのっちに言っておくから安心してね~」
三人はそう言い残して部屋を出ていった。須美は顔を真赤にさせたまま動かなかった。僕は海が持ってきた義手をはめ、
「寝るか」
「は、はい……」
園子には後でお説教をすることになり、僕らは布団に入った。すると須美があることを聞いてきた。
「桔梗さん……今日はほんとうにごめんなさい」
「いや、気にするな」
「あ、あの…桔梗さんは元の世界では私たちと一緒にいたんですよね」
「あぁ……須美とはクラスメイトだったけど……」
「その、好きな人とかいたんですか?」
「好きな人……まぁいたっていうか……彼女がいるっていうか……」
「……そうですか」
本当の事を言いたいけど、変に気を使われるのは嫌だからやめておこう。ただ暗くてわからないけど何となく須美が落ち込んでいる気がした。
「須美……僕の初恋なんだけど……お前なんだ……」
「…………」
返事がない。もしかして寝ちゃったか?
須美SIDE
今のって聞き間違いじゃないよね……だとしたら桔梗さんの初恋は私?
それって……
ど、どうしよう。それにもしかしたらお付き合いしているのは東郷さんだということは私と将来的に……
「桔梗さん……」
名前を呼ぶけど完全に眠っている。私は何を考えたのかそっと桔梗さんにキスをした。
「私のこと幸せにしてくださいね」
もうこれからはイチャラブを書いたほうがいいかもしれないですね。後で章の方を付けておきます。
次回は桔梗で、国土亜弥か千景にするか、海で杏か樹でも書こうかと思います