桔梗SIDE
「あのお父様、良かったらどうぞ」
「ん、ありがとう」
図書室で牡丹からチョコを貰っていた僕。何というかこういうとき牡丹と友海は羨ましいな。ちゃんと上げる相手が決まってるし。
ん?でも一つは僕でもう一つは誰にも上げたことのない人なんだっけ?誰に上げたんだ?
「なぁ、牡丹。チョコはもう一つ誰に上げたんだ?」
「もう一つですか?友海ですよ」
「それ園子が出したルールに反しているような……」
「それは大丈夫です。ここにお父様と私がいる世界のお父様は別人ですから」
それってありなのか?確かに別世界だから良いのだろうけど、結局のところ同一人物だしな……
まぁそこら辺細かくは指定してないから大丈夫だろ。
「おっと、そうだった。牡丹。僕からも」
「あ、ありがとうございます」
チョコを上げただけなのに何で牡丹は顔を真っ赤にさせてるんだよ。歳が近いからそういうふうに思われてたりするのか
「あ、あの大切にしますね」
「いや食べろよ」
「見つけた」
二人でそんなやり取りをしていると美森が慌てて入ってきた。どうしたんだ?急に……
「桔梗くん、牡丹ちゃん。悪いんだけど急いで部室に戻って」
「あの何かあったんですか?もしかして敵の進行が……」
「いえ、そういうわけじゃないんだけど、戻れば分かるわ」
美森はそう言って直ぐ様何処かへ走り去るのであった。本当に何かあったのか?
部室に戻ると正座させられている園子二人。うん、すぐに何があったのか理解できた。
「あら、桔梗は牡丹ちゃんにあげたのかしら?」
「あぁ、あとほら」
僕は姫野にチョコレートを渡すと、姫野は驚いた顔をしていた。そんない僕がお前に上げるのが意外だったか?
「ど、どうしての。私はてっきり……」
「てっきり何だよ。本当は元の世界で渡すべきなんだけど、姫野、あんたは僕の……」
「うわ、何事?」
あることを言いかけようとした瞬間、海と友海の二人が部室に入ってきて、驚いた声に遮られた。なんというかタイミングが悪いな。
「牡丹~見てみて、パパから貰ったの~」
友海は嬉しそうにしながら海からもらったチョコを見せていた。こいつも僕と同じ考えだったのか。だとしたらもう一個は先輩に渡すのか?それとも元の世界で指導してもらっている若葉にでも渡すのか?
「あと、お姉ちゃん」
「何ですか?海くん」
「はいこれ」
海SIDE
正直好きな人にチョコを上げるべきなのだろうけど、そういうのはちゃんとした機会に渡すべきだと思った。
だったら誰に渡すべきか悩んだ。悩んだ結果、娘である友海とあっちの世界でもこっちの世界でもいつも心配してくれているお姉ちゃんに渡すべきだと思った。
お姉ちゃんはと言うと思いっきり顔を真っ赤にさせていた。
「こ、これはどういう意味で……その……」
「まぁ日頃の感謝の気持ち……かな」
何だか僕も恥ずかしくなってきた。お姉ちゃんはもじもじしながらも優しい笑顔で……
「海くん。ありがとうね。出来たらその……ね。貴方の世界の私にも同じ思いさせてね」
「うん、分かったよ」
「これは~」
「予想できなかった展開だね~」
何だか横からの声が気になるけど、この二人は本当に反省しているのか?
桔梗は牡丹、姫野
海は友海、ひなた
と言う感じになりました。本来は東郷と友奈の二人に渡すべきなのだけど、あえてのこの二人でした。
次回は……時間を遡って姫野と灯華のオリストになります