海SIDE
気を失った夏凛を旅館に一旦運び、救急車を呼ぶことになったのだけど……
「どうにもがけ崩れで救急車がここに来れないみたいなんです」
「ということは救助待ちということか……」
皆がそう言う中、僕はこの場に二人ほどいないことに気がついた。
「そういえば友海と珠子さんは?」
「そういえば珠子さん、夏凛さんを探す時に別れたきりだ……まさか……」
「そんな……たまっち先輩も……友海ちゃんも……」
急いで探しに行こうとするが、突然警報が鳴り響いた。こんな時にバーテックスかよ!?
「とりあえず今は敵に集中ね。もしかしたら合流できるかもしれないし……ひなたちゃんたちは彼女のこと頼んだわよ」
「はい」
僕らは急いで樹海へと向かうのであった。出来れば友海、無事でいてくれ
友海SIDE
どうしよう。夏凛さんを探していたら迷子になるし……おまけに敵も攻め込んできた。
こういう時ってあんまり動かないほうがいいけど……
「でも、皆心配してるよ。何とかして合流しないと……」
樹海化したんだから戦いの音が聞こえる方へと向かえば何とかいけるかもしれない。そう思いながら、先へと進もうとしたときだった。
「きゃ!?」
突然空から何かが私の目の前に落ちてきた。それはパパに見えるけどパパじゃなかった。
「……」
「貴方は……パパじゃないよね。パパのバーテックス?」
「……ユミか。こんな所で何をやっている」
バーテックスは私に触れようとしていた。私は咄嗟に身構えるとバーテックスは何故か悲しそうな顔をしていた。
「敵だからこその対応だな。それでいい」
バーテックスはそう言いながら、どこかへ行こうとしていた。私は何故か咄嗟にバーテックスの腕を掴んだ。
「……何だ?」
「えっと……バーテックスなんだよね」
「あぁ、そうだ。僕はあいつのバーテックス……いずれたどるはずの未来だ」
いずれたどるはずのってどういう事?よく分からないけど、このバーテックスはパパとしか思えなかった。
「教えて……貴方はパパなんだよね。なのに、どうして皆と戦うの?造反神に利用されてるから?」
「……違う」
違うって……何が違うのかわからない。だけどこのままじゃダメだ。私は腕を力強く握りしめた
「教えてよ。どうして貴方は……そんなに悲しそうにしているの?」
「………………それはな」
私はバーテックスの言葉を聞いて、耳を疑った。それって私が過去に行ってから起きた出来事の……でもそれって……
すると突然、首に何かの衝撃を受け、私の意識は消えるのであった。
「………いい加減決着を着けるべきだな」
海SIDE
襲ってきたバーテックスを倒し、僕らは分かれて二人の捜索を行っていた。僕は姫野さんと一緒にあたりを探すと……木にもたれかかった友海を見つけた。
「友海!?」
「眠っているだけね。のんきなものね」
「………いやただ眠ってるんじゃない」
僕は友海のポケットの中に入っている一枚の紙を見つけて、書かれていた文字を読んだ。
『いい加減、決着をつけようか』
「………姫野さん、悪いんですけど……友海の事お願いします。それと皆にはこの事は……」
「………今の状況で嘘が通じると思ってるのかしら?」
「それでもこれだけは皆を巻き込みたくないんです」
「そう……」
僕は姫野さんに友海を預け、ウミが待つ場所へと向かうのであった。勝ち目があるかどうか分からないけど……ここに来る前に教えてもらった秘策がある
「待ってろ。ウミ!!」
姫野SIDE
何というかそんな役回りだ。危険を承知で彼を一人で行かせるなんて……
「あの子がひなたちゃんの子孫………思った以上に暴走しやすい子ね」
とりあえず頼まれた以上は彼女の安全を確保しないと……
そう思い、彼女を背負おうとすると彼女が突然目を覚ました。
「ここは………あの人は!?」
「あら、起きたの?何があったか覚えてるみたいだけど……」
「姫野お姉ちゃん……パパは?」
「海なら自身のバーテックスと戦いに……」
「だ、ダメ……急いで止めて……パパは……あの人は……」
私は彼女の言葉を聞き、驚きを隠せないでいた。まさか彼らのバーテックスはそのために……
「急がないとね。動ける?」
「うん」
「止めに行くわよ。一応皆には事情を話しておくわ」
私はひなたちゃんにある方法で連絡をするのであった。それにしても彼らがいた世界は……それと同時に千景ちゃんのバーテックスがいた世界って……
「私がいない世界か……守り神失格ね」
僕は指定された場所へと来るとそこにはウミが待っていた。
「来たか」
「待たせたな」
ウミは僕を見て、笑みを浮かべていた。笑っている状況なのか?今の僕は……
「ユミの事で頭いっぱいだな。娘を傷つけられて怒ってるな」
「当たり前だろ!!それと……」
僕は一瞬でウミとの距離を詰め、海の首筋に生太刀の切っ先を当てた。
「気安く友海の名前を呼ぶな!!」
「あの時より成長はしているな」
ウミは切っ先を掴むと僕ごと持ち上げ、地面に叩きつけた。パワーも以前より上がっているというのか?
「決着を着けるために僕はまず、自分の呼び方を俺から僕に変えた」
何とか起き上がろうとした瞬間、横から蹴りが近づいてくるのに気が付き、咄嗟に防御するが思いっきり蹴り飛ばされた。
「この世界に来て、お前は切り札も満開も上手く使えないみたいだな。だけど僕は……」
ウミの身体が黒く輝くと白い衣装に身を包んだ姿に変わった。あれって……僕の切り札使用時の……
「切り札発動!!白月!!」
白く輝く切っ先が僕に迫ってきた。僕は咄嗟に生太刀で防ぐが生太刀が折られ、僕の肩を貫いた。
「ぐうううううう!!」
「お前は僕に勝てない。なぜなら……切り札発動!!酒呑童子!!」
黒い光とともに友奈さんの切り札を身にまとい、巨大な鉄甲で僕の腹部を殴った。
「がはっ!?かはっ!?」
ものすごい痛みが体中に走った。これがウミの本気……
「なぜならお前は……一人だからだ」
ウミは僕の首を掴み、離すと同時に思いっきり殴り、僕は壁に激突した。このままだと……意識が……
『いいか。ウミ、自分自身との戦いだったら……』
そんな時僕の頭にカズマさんの言葉が過ぎった。