海SIDE
「はぁ」
ちょっと早めに部室に来ると何故か灯華さんがため息を付いていた。そういえばこの人って勇者じゃないんだっけ?そして巫女でもないし……何でこっちに呼ばれたんだ?
「あの……」
「あっ、はい。あっ、上里くん」
「海でいいですよ」
「それじゃ海くん。どうかしたの?」
「いや、灯華さんこそ、ため息なんて付いてどうしたんですか?」
「えっと……何というか……私、ここに呼ばれた理由が分からなくって……」
呼ばれた理由か……確かにどうしてなんだろうか?何かしらの理由があるとは思っているけど……
「えっと灯華さんは……」
「海くん、無理しなくていいよ。私もわかってるから、自分が勇者じゃないのに何でここにいるんだろうって……」
勇者じゃないからか……僕もそこら辺悩んだ覚えがあるな……どうして自分は勇者じゃないんだって…
「あの、桔梗さんから聞いたんだけど、変わった方法で勇者になれたって……」
「あれは勇者なんかじゃないよ」
灯華さんはポケットからひび割れた端末を取り出して見せた。
「それは?」
「これは私達の世界の友奈ちゃんに壊されたもの……これには勇者に対を成すシステムがあったの」
勇者にに対を成すシステム?そんなものまで作られていたのか……そこら辺も世界の違いってやつかな?
「勇者システムはバーテックスを倒すためのもの。私のこれはバーテックスと勇者を倒すシステム……大赦は魔王システムと呼んでいるの」
魔王システム……勇者を倒すために作られたものか……よくそんなものを作れるな。というかこれを作った人は悪意を持っていたのか?
「このシステムで私は大切な友達を傷つけたりした。もう処分しようとも思っていたんだけど……いつまでも持ったままなの」
灯華さんが処分できないのはちょっと分かった。もしかしたらいつかきっとこの魔王システムが起動した時、今度はみんなと一緒に戦いたいって思っているからだ。
そう言うべきなのだろうけど、今は言わない方が良いかもしれないな。
「あの、灯華さん、それは処分しないほうがいいですよ。もしかしたら奇跡とか起きるかもしれないから……」
「奇跡?」
「はい」
我ながら変なことを言うな……でもそう言うべきだと思ったから仕方ないよな。
「ふふ、そうだね。いつか奇跡が起きるかもしれないね」
灯華さんは笑顔でそう言うと、部室に四葉さんとひなたお姉ちゃんが入ってきた。
「あら、珍しい組み合わせね」
「二人で何を話していたの?」
「あぁ、実は……」
僕は灯華さんの持っている端末について話すとひなたお姉ちゃんは少し残念そうな顔をしていた。
「魔王システム……何というかそういうものが作られているなんて私としては少し悲しいわね」
「あ、ごめんなさい」
「灯華さんが謝る必要はないわ。きっとそれを作った人は勇者に対して明確な敵を作りたいとか考えて、そういう名前をつけたんでしょうね」
「そんな事をよく考えられること……というか魔王システムを使わずに一度だけ変身したって聞いたけど、その時はどうしたの?」
「あ、あれは……桜を助けようとしたら……後々になって天の神様が力を貸してくれたって言ってましたけど……」
何というか天の神は優しいのかな?それとも何かしら考えがあったのか?
「そう、まぁ海くんが言ったようにいつか必要になるかもしれないから、持っていた方がいいですよ。それに灯華さん、戦えなくってもできる事はありますよ」
ひなたお姉ちゃんはそう言いながら、灯華さんの手を握った。
「それは皆におかえりっていうことですよ。若葉ちゃんが言ってました。帰りを待っていてくれる人がいるから私たちは頑張れるって……」
「皆におかえりって……」
「それに急がなくっても、何かしら出来ることは見つかるからさ。無理はしないほうがいいよ」
「はい」
灯華さんの悩みは何とか解決したのかな?それにしても魔王システムか……どんなものか一度見てみたいものだな
「そういえば四葉さんはひなたお姉ちゃんと一緒に来てたみたいですけど、偶々ですか?」
「いいえ、違うわよ。ちょっと聞きたいことがあったの。彼らのことをね」
「彼ら?」
「君たちの姿をしたバーテックスよ。彼らは君たちのあったかもしれない未来から来たって言うけど……どんな未来だったのかなって?」
僕らのバーテックス……本当に奴らはどんな未来から来たんだろうな……
何だかグダグダですみません。次回は温泉イベントになります。
あと今回の話は勇者の章にちょっと関わってきます。