花結いのきらめき・二人の勇者の章   作:水甲

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海SIDE

 

敵の数はそう多くはないけど、ちょっと妙だな。敵の攻撃が僕らに集中しているみたいだ。

 

「海、気づいてるか?」

 

「若葉さん、うん、何だか足止めされている感じがして……」

 

「あの桔梗さんの姿が見えないんですけど……」

 

樹がそう言った瞬間、僕はあたりを見渡すと確かに桔梗さんと牡丹の姿が見えない。まさかと思うけど……

 

「あいつらが来たって言うことかしら?」

 

千景さんが敵を切り裂きながらそう告げた。あいつらって、まさかと思うけど僕らのバーテックスって言うことか?だとしたら今回巫女を狙うように指示を出したのも……

 

「それじゃ何か、私達の動きを止めて桔梗たちを倒すっていうことか?」

 

「それってまずいですよ。珠子さん、ここは一気に……」

 

「銀!待ちなさい!!」

 

須美が止めようとした瞬間、僕らの所に大型のバーテックスが現れた。足止めにしちゃ力入りすぎだろ。仕方ない。ここは切り札を発動させて……

 

「はい、ちょっと待って。海くん」

 

切り札を発動させようとした瞬間、四葉さんが止めに入った。四葉さんは手にした勾玉の形を変え、両手に装備させた。

 

「焦りは禁物よ。見た感じ貴方は特殊な感じだけど、それを知った上で大型を出してきたんじゃないかな?」

 

敵の攻撃を避けながら四葉さんは大きく跳び上がり、大型の頭目掛け拳を振りかざし、強力な一撃を喰らわし、撃破していた。この人、どんだけ強いんだよ。

 

「切り札は何回も使えるものじゃないんだから、もうひとりの特殊な人間が頑張るしかないわね」

 

勾玉を鞭に変え、回りにいるバーテックスを倒していく。そういえば四葉さん、何者なんだ?300年前の人間だとか名前くらいしか明かしてないけど……

 

「海くん!?危ない!?」

 

友奈さんの声が聞こえ、僕は咄嗟に後ろへ下がると、さっきまで僕がいた場所に誰かが降ってきた。手にしているのは先輩の大剣だけど、こいつは……

 

「久しぶりだな。僕」

 

「お前か……」

 

「こいつが海のバーテックスか」

 

「本当にうり二つね。でもこの場にいる全員で戦えば……」

 

「夏凛さん!?後ろ!!」

 

樹の声に反応して、夏凛が頭を下げた。夏凛の後ろにいたのは千景さんのバーテックスだった。まさかと思うけど……

 

「本当に厄介だな………」

 

目の前にいる僕らのバーテックスは笑みを浮かべていた。邪魔をするなって言うことだよね。それに多分だけどこいつら前に戦ったときよりも強くなってる気がするし……

 

「なるほどね。別世界だとこういうバーテックスが出現するんだね……」

 

どう戦うべきか悩んでいると四葉さんが前に出てきた。まさかと思うけど一人で戦う気か?

 

「勇者の姿を模したバーテックス。確かに厄介だけど……あなた達は気がついてるの?私が何者かって……」

 

「あぁ、気がついてるさ」

 

「境界の勇者、女神の勇者とは違って、貴方はかなり特殊……造反神と同じ力を感じる」

 

同じ力を感じるって……まさかと思うけど四葉さんは神様だっていうのか?

 

「この二人は私が相手するから、海くんは桔梗くんのところに行ってあげて」

 

「分かりました」

 

この場を皆に任せ、僕は急いで桔梗さんの所へと走った。だけどそれは僕一人だけじゃなく、友海も一緒だった。

 

「友海?」

 

「牡丹のことが心配だから……パパの邪魔はしないよ」

 

「邪魔だって思ったことは一度もないんだけど……」

 

「そっか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

怒りに任せてキキョウに攻撃を繰り返すが、全部奴に防がれてしまう。海の言うとおりこいつ、強くなっている

 

「ほら、どうした!!俺を倒すんじゃないのか!」

 

キキョウの一撃で槍を弾き落とされた僕は、距離を起き体制を整えた。でも距離を取りすぎると牡丹が………

 

「お前の娘が気になるか……そうだよな。世界は違ってもお前の娘には変わりないんだから」

 

キキョウは倒れた牡丹に更に蹴りを喰らわした。本気でこいつをどうにかしないと……

 

「お、お父様………」

 

牡丹は弱々しく手を伸ばしていた。このままだと……

 

「気になって戦いにならないな。折角だ。このまま殺してやる」

 

キキョウが大鎌を振り上げた瞬間、僕は止めに入ろうとしたけど、このままだと間に合わない……

 

そう思った瞬間、大鎌が緑色のワイヤーに縛り付けられた。これって……

 

「ママ直伝!勇者パンチ!!」

 

鋭い一撃がキキョウに当たり、吹き飛ばした。そして倒れた牡丹の側には海と友海の二人が駆けつけていた。

 

「お待たせ、桔梗さん」

 

「海………」

 

「よくも牡丹をいじめて……許さない!!」

 

友海が怒りの篭った声でそう告げた。この子、こんな風に怒ることがあるんだ……ちょっと吃驚だな。

キキョウは殴られた場所を押さえながら、立ち上がり笑みを浮かべていた。

 

「分が悪いな。悪いけど目的は達成したし、逃げさせてもらうよ」

 

キキョウがそう告げた瞬間、樹海が解け始めた。目的って何なんだ?それを聞こうと思ったけど、一瞬の内に現実の世界に戻ってしまった。

 

「……なぁ海。あいつが言っていたことは本当か?」

 

「何を言われたんですか?」

 

「牡丹が僕の娘だって………」

 

「…………えぇそうらしいですよ。僕もこっちに来たばかりの友海に聞かされて初めて知りましたけど」

 

本当に娘だったんだ。僕はそっと倒れた牡丹のそばに寄り、

 

「大丈夫か。牡丹」

 

「……うん、お父様」

 

牡丹は僕に心配かけまいと微笑んでいたけど、僕はそんな牡丹をギュッと抱きしめた。

 

すると遠くの方からみんなが駆け寄ってくるのが見えてくるのであった。それにしてもキキョウの目的って………何なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはっ、あの一撃………避けるべきだったな」

 

「その痛みはあの子の攻撃を喰らった痛みかしら?」

 

「チカゲ……どういう意味だ」

 

「僕らが出張った理由、改めて話した方が良いかな?」

 

「………ふん、余計な事を……お前の方は良かったのか?」

 

「僕はいいさ。その内に……な」

 

 

 

 




次回で夏祭り編は終わりです

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