みんなで夏祭りの準備のため、神社に集まる僕ら、それにしてもちょっと気になることがあった。
「ひなた、水都。お前らさっき何か言ってたけど、何かあったのか?」
「それが……」
「どうやらまた新しい勇者がこちらの世界に送られたみたいなんですが、どうにも感じ取れないといいますか……」
「何だか神樹様に呼ばれたんじゃないみたいなの」
神樹様に呼ばれず来たというのか?それはそれで気になるな……
「ですがその方々からは悪しき力は感じませんので、今は準備に集中しましょう」
「そうだな」
ん?今方々って言わなかったか?来たのって一人だけじゃないんだ……
「ほら、そこの三人、準備を始めるわよ」
「分かりました」
先輩に急かされ、僕らは祭りの準備を始めるのであった。
海SIDE
ひなたお姉ちゃんたちが神事を行うための舞台の修繕等をやっている僕と歌野さんの二人
「いや~海くんも中々手際が良いね~」
「あっちでこういう作業とかやっていたので」
ある程度の技術とかは街の人達に教わっていたからな……でもこういう技術って覚えておいても損はないし、戻ったらカズマさんあたりにでも教えてもらおうかな
「あの……すみません」
突然誰かに声をかけられ、振り向くとそこには長い赤髪の少女がいた。何か用なのかな?
「何か?」
「困り事だったら、聞きますよ」
「いえ、何というか話しても信じてもらえるかどうか……なんといいますか……」
一体この子はどうしたんだろうか?話して信じてもらえるかどうかって……
「そういえば今ってお祭りの季節でしたっけ?」
「ん?まぁ季節的には……」
「私達からしてみればちょっと季節外れだったりするけどね」
「季節外れ……そうですね」
何だか彼女は思い詰めた表情をしていた。何だろう?何か気になるなこの子……
「お~い、灯華ちゃ~ん」
「あっ、すみません。連れが呼んでいるので……これで失礼します」
彼女はそう言って、どこかへと走り去るのであった。
「何だったんだろうね?」
「さぁ、ただ何だか気になるけど……」
「気になるって?」
「さっきあの子が……」
突然端末から警報が鳴り響いた。まさかこんな時に敵の襲撃だなんて……
「作業一旦中止、敵を倒しに行くよ」
「はい」
桔梗SIDE
突然の敵の襲撃。まさかと思うけど神社の準備のジャマをするつもりなのか?
「タイミングとしてはよすぎるよな」
「あんたもそう思う?だとしたら厄介ね」
夏凛もそのことに気がついていた。こういったお祭りとかは神樹様の力を強めることが出来る。もしバーテックスがそのことを知っていれば邪魔をしてくるのも当たり前だ
「えっ?どういう事?」
「友奈、説明したいのは山々だけど、今は敵の襲撃に備えろ」
「後でたっぷり教えてあげるわ」
「そこ!!話してる暇はないぞ!!」
若葉の掛け声とともに大量の星屑が迫ってきた。僕と夏凛と友奈の三人は前に飛び出し、敵を撃退していく
「数が多いな。それにいつもだったら大型の奴の姿があるはずなのに、今回は姿がない」
僕は槍を取り出し、回転させながら敵を撃退していった。今回の敵の動きがどうにもおかしい。何か企んでいるのか?
「もしかするとあんたの分身が関わってるんじゃないの?」
「それだったらみんなで力を合わせて……」
「いや、奴がいるなら僕だけを狙うはずだ。そのために僕を孤立させるつもりだし……」
敵の動きは特に変わった様子もないから、今回は奴は関わってない。
すると他のみんなが僕らと合流してきた。
「あぁもう、どうにも厄介ね」
「敵さん、数だけは多いしね……」
先輩と雪花の二人がそう言う中、奥の方から大型のバーテックスが現れた。
「敵の親玉みたいだ……」
「それだったらタマが一撃で倒してやる!!」
「珠子さん、付いていきます!!」
「待て!珠子、銀!!様子がおかしいぞ!!」
大型の方を見ると何故か背中から何十体もの星屑を呼び出し、こっちに向かってきた。そして星屑はボール状のものを僕ら目掛けて落としてきた。
「ボール?」
友奈は特に警戒する様子もなく、そのボールに触れた。その瞬間、ボールが爆発し、辺りを煙で包み込んだ。
「毒ガスか!?」
「けほっ、けほっ」
「友奈ちゃん!?」
「ちょっとこの煙どうにかして」
目がしみてまともに開けられない。おまけに動きを封じられている間にバーテックスの侵攻を許してしまう
「ここは一気に……」
「トルネード!!」
僕は天神刀を抜こうとした瞬間、誰かの声とともに竜巻が現れ、煙を晴らした。一体これは……
「誰かは知らないが、煙が晴れた。これなら……」
「まずいです!動きを封じられていた間に敵の進行が……」
杏の言うとおり、敵は僕等がいる位置からかなり離れた場所にいた。このままだと……
「先へは行かせないよ」
また誰かの声が聞こえた瞬間、バーテックスの前方に勾玉が無数に繋がった網が現れ、バーテックスを捕獲した。
「捕獲完了と、牡丹ちゃん」
「はい!!ライトオブセイバー・アロー!!」
一本の矢が捕獲されたバーテックス一匹に当たった瞬間、黄色い閃光とともに全て切り裂かれた。
「さっきのって……まさか!?」
「はあああああああああああ!!」
海は何か気がついた瞬間、大型バーテックスがいる方からまた声が聞こえた。大型バーテックスの上の方には一人の少女がいた。
「爆裂!!勇者パァァァァァァンチ!!」
少女の拳が大型バーテックスに当たった瞬間、まばゆい閃光とともに樹海中に爆発音が響いた。何者なんだ?
「よし、敵撃破!」
「どういう状況なのかわかりませんが、あの方々を助けられてよかったですね」
「あら?何だか見覚えのある人達がいるんだけど………」
「あっー!!牡丹、見て見て、パパたちがいるよ」
「お父様も……」
三人の少女たちは僕らの方を見ながらそんな事を言ってるけど、誰がパパとお父様なんだ?
「やっぱり………なんであの二人が……」
海は頭を抱えながらそう告げた。もしかして知り合いなのか?
というわけで合流回でした。