海SIDE
ある日、僕は勇者部の部室を訪れると何故か机の上には一本の栄養ドリンクが置かれていた。
「誰のだろう?」
誰かが買ってきて、置き忘れたのかと思ったが、よく見ると瓶にはこっちの世界の言葉ではなく、あっちの言葉が書かれていた。おまけに手紙も添えられてるし……
「えっと……『カズマさんたちからお話は聞きました。そちらでの戦いは大変だと思います。手伝うことは出来ませんが、少しでも疲れが取れるように栄養ドリンクを送りました。ウィズより』か……こっちとあっちでは時間の流れが違うって聞いてるけど、あっちだとどれくらい経ってるんだろうな……」
元の世界に戻ったら、100年後とかだったら嫌だな……でも、友海や牡丹の話を聞く限りだとそこまで時間は進んでないみたいだけど……
「考えるのはよそう。折角送ってもらったんだし、早速……」
ドリンクを一気に飲み干すと、何故か体が熱くなってきた。何だ?毒でも入ってたのか?嫌々、そんな事は……でもウィズさんのことだから、うっかり栄養ドリンクと毒薬を間違えたりとか………
おまけに何だか段々と意識が………
「……い、お………おいっ!!大丈夫か?」
「ん……僕は……」
誰かの声が聞こえ、目を覚ました僕、目の前には若葉さんとひなたお姉ちゃんが心配そうにしていた。
「目を覚ましたか。部室に来たら知らない人が倒れているからびっくりしたぞ」
「知らない人?若葉さん、何を言ってるんですか?」
「ん?私のことを知ってる?」
「……若葉ちゃん、この子、もしかして……ちょっと鏡で自分の姿を見てみて」
お姉ちゃんは僕に鏡を渡してきた。自分の姿を見ろって、一体どういうことかなと思いながら確認すると、何故か鏡には知らない女性が写っていた。
「………えっと……」
「一応確認するけど、貴方は海くん?」
「海?ひなた、何を言ってるんだ?」
「僕、海です」
僕がそう答えた瞬間、若葉さんは驚いたまま固まっていた。何でだ。何で急に女の子になってるんだ?それ以前に何でお姉ちゃんは僕だとわかったんだ?
「お姉ちゃん、何で分かったの?」
「何となく海くんの面影があったから……あちらの私でもすぐに気が付くと思うわ」
そういうものなのか?というか本当に何でこんなことに……まさかと思い、僕は端末を取り出し、あっちのお姉ちゃんに連絡を取った。
『はい、どうしま……えっと海くん、バーテックスの攻撃でも食らいました?』
「やっぱり気がつくんだ。あのお姉ちゃん、ウィズさんがこっちに何か送るようにって頼まれたりとかは?」
『え、えぇ、頼まれたけど……まさかと思うけどそれを飲んでとか……』
「そうとしか考えられないんだけど……でも手紙も添えられていたし……」
『と、とりあえず聞いてみるわ』
あっち側のお姉ちゃんとの通信を終えると、僕は改めて自分の体を確認した。髪はお姉ちゃんと同じくらいの長さで、身長もお姉ちゃんと同じくらい……胸は……それなりか
「海くん、流石に自分の胸を揉むのはどうかと思うけど………」
「いや、確認のためだし……というかコレ戻るのかな?」
「それは……あちらの私がどうにかしてくれることを信じましょう。今は………着替えましょうか」
着替えるって、まさか……
僕は無理やりお姉ちゃんが持ってきた讃州中学の女子の制服に着替えさせられた。何で僕がこんな目に……
「やはり似合ってるわ。海くん、可愛いわよ」
「あんまり可愛いとか言わないでほしんだけど……」
「海、大変だな」
若葉さんは僕の事を同情の目をしながら、そんな事を言うのであった。というか助けてほしかった
「それにしても海くん、本当に可愛いわ」
お姉ちゃんはお姉ちゃんで僕の写真を取りまくってるし、出来れば写真は消してほしいのだけど……
「まぁ、元に戻るまでの辛抱だな。その姿じゃ寮に戻れないだろうし、ひなたの部屋に泊まっていったほうがいい」
「それは……そうだけど」
「私は構わないですよ。今の海くんは安全そうですしね」
「安全そうって……別に襲ったりとかしないんだけど……」
「まぁ、そうですけど……」
とりあえず元に戻るまで、お姉ちゃんの所に匿ってもらうのが一番だな。この姿だと桔梗さんに迷惑かかると思うし……
「後出来れば他の皆にはこのことは内緒で……多分戸惑ったりするだろうし……」
「そうですね」
「私の方で風さんに話しておく。海は部屋であっち側のひなたの連絡を待ったほうが……」
突然樹海化警報が鳴り響いた。こんな時に何でまた……待機した方がいいのだろうけど、じっとしていられないな。
短めで、中途半端な所ですみません。次回に続きます。