花結いのきらめき・二人の勇者の章   作:水甲

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桔梗SIDE

 

少し遡ること十分前、僕らは樹海に訪れるが、敵の姿を確認できないでいた。

 

「敵がいないみたいね?」

 

「どういうことだ?敵がいないというのに樹海化が起きるのはおかしいだろう」

 

先輩と若葉がそんなこと言う中、僕は前にも似たような事があったのを思い出した。あの時も敵の姿はなく……いや、敵はいたんだ。だけど……

 

僕は思わず義手を抑えると心配そうに樹が声をかけてきた。

 

「桔梗さん?どうかしたんですか?」

 

「ちょっとな……千景と高嶋の二人がどこにいるか分かるか?」

 

「お二人でしたら、少し離れた場所にいるみたいです」

 

「ん?何だ?千景の所が何だかダブって見えるぞ?」

 

珠子の言葉を聞いて、僕は嫌な予感がしてきた。まさかと思うけど奴みたいな存在があらわれたというのか?だとしたら……

 

「僕は先行して二人と合流する!!」

 

「ちょっと、待ちなさいよ。勝手な行動は……」

 

「悪いけど詳しいことを話す時間はない。ただ、厄介なバーテックスが出現したんだ」

 

僕はそう言い残して、前鬼の力を使い、二人の元へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

海SIDE

 

物凄い速さで先へと行く桔梗さん。一体何があったんだっていうんだ?それに厄介なバーテックスって……

 

「仕方ない。私達も行きましょう。海、悪いけどあんたは先に行ってもらえない?」

 

「どういう事ですか?」

 

「桔梗の奴があそこまで熱くなるのって、おかしいからね」

 

まだ短い付き合いなのによくそこまで分かるな……流石は勇者部部長というべきだな

 

「了解しました。追いかけます。みんなも気をつけて……」

 

僕は桔梗さんの武器を取り出し、物凄い速さで先へと進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

二人がいる所まで来ると、倒れた千景と高嶋の二人を見つけた。更に二人の前には全身真っ白の千景がいた。やっぱりあいつは……

僕は直ぐ様ヤツの腕を切り裂き、二人の前に出た。

 

「……神宮……」

 

「桔梗くん……」

 

「怪我は大丈夫みたいだな」

 

僕は二人の怪我を確認し、目の前の奴を睨みつけた。

 

『貴方は?貴方は?貴方は………知ってる……あの時の……』

 

「僕はお前のことは知らないけど、お前が何なのかは知っている。キキョウと同じ存在だろ」

 

『キキョウ?』

 

「キキョウって……」

 

「何か知ってるの?」

 

「詳しい話は後でする。今は休んでろ」

 

僕がそう告げた瞬間、奴は切られた腕を再生させ、僕に襲い掛かってきた。

 

『キキョウ……キキョウ……知ってる。私の大切な人……』

 

「あんな奴が大切な人か……趣味が悪いな」

 

僕はヤツの攻撃を大鎌で防ぎながら、思いっきりヤツの腹に蹴りを食らわした。奴は攻撃を喰らった瞬間、後ろへと下がり、攻撃を喰らったお腹に触れた。

 

『痛い……痛い……』

 

そんな事を言いながら、千景の顔で笑みを浮かべていた。本当に不気味なやつだな

 

「面倒なやつだ。ここは一気に……」

 

僕は精霊の能力を発動させようとした瞬間、突然横から衝撃を受け吹き飛ばされた。僕は何とか受け身を取るとそこには僕そっくりの奴がいた。違いがあるとしたら全身真っ白というところくらいだな

 

『お前は………俺か?』

 

「似たようなやつを作り出せるみたいだけど、記憶自体は引き継がないのか」

 

『そうか……俺とお前は前に会ったことがあるのか?』

 

「あぁ、元の世界で僕の右腕を食らった」

 

「桔梗くんの腕を……!?」

 

「食べたって……」

 

『知らない………でも、俺はお前を殺さないといけない』

 

『私も私を殺さないと……』

 

奴らは武器を取り出し構えだした。一人だけだったらまだしも、二人に増えたとなると守りながら戦うのは……

 

そう思った瞬間、どこからともなく黒い影が奴ら二人を吹き飛ばした。今のってまさか……

 

「追いついた……って何だか厄介事だな」

 

「海……」

 

「桔梗さん、何を熱くなってるか知りませんが、落ち着いてください」

 

「落ち着いてるぞ」

 

「落ち着いてる人が一人で先行しませんよ。まぁ後で先輩と若葉さんの二人にお説教でも……今はこいつらを倒すことが先決みたいですし……」

 

海は武器を変え、刀を一本取り出した。奴らは海の姿を見て何か呟いていた。

 

『神樹とは違う?』

 

『女神の加護……』

 

奴らはそう言い残して姿を消したのだった。ここは追うべきなのだけど、止めておいたほうがいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻り、僕はみんなに囲まれていた。

 

「それであんた、何か知ってるの?千景と友奈が戦ったバーテックスについて?」

 

「何故奴らはお前と千景の姿をしているんだ?そこら辺教えてもらうぞ」

 

仁王立ちする先輩と若葉の二人、一応後々話すべきことなのかもしれないから話さないでいたのだけど……

 

「奴らは白い鰻みたいなバーテックス……僕らの世界では星屑って呼んでいたけど、その星屑の一体が僕の腕を食べ、進化した姿があのバーテックスだ」

 

「腕を食べたって……それじゃ桔梗さんの義手の理由って……」

 

「樹が思っているとおりだ。奴に食べられたのが原因だ。ただ今回遭遇したのは造反神が作り出したバーテックスだからなのか、以前戦ったやつとは違うみたいだけど……」

 

「あの、千景さんの姿をしていたのは何故でしょうか?特に千景さんはその……」

 

そこが僕も気になっている。もしかすると造反神の力なのかもしれない。

 

「とりあえず今後はあの二体に注意が必要ね」

 

「あぁ、特に千景と桔梗は気をつけろ。奴らはお前たち二人を狙っている」

 

「分かったわ……」

 

「僕も分かった。そういえば神宮家の家系図は?ひなたに預けたけど……」

 

僕はそう告げると、何故かひなたは顔を赤らめていた。

 

「え、えっと、一応私と水都さん、園子さんの三人で読んだんですが……」

 

「何ていうか~幸せだったんだね~」

 

「その、家系図の他に日記があったので、そちらを読み終えた後、まとめますね」

 

日記か……どんなものが書かれているか気になるけど……というか幸せってどういう事だ?

 

「神宮……」

 

「ん?千景、どうしたんだ?」

 

「一応礼を言っておくわ。ありがとう」

 

顔を背けながらそう告げる千景。何だか心をひらいてくれたのか?

 

「どういたしまして……とりあえず先祖だの子孫だのは気にしないでおこう。あの三人が調べ終えるまでな」

 

「……そうね」

 

僕と千景は握手をかわすのであった。それにしても厄介な敵が増えたな




一旦桔梗と千景の関係の話は終了します。あとオリジナルバーテックスのキキョウとチカゲについては前に自分が書いた話で出てきたオリジナルの敵です。

次回はイベントの海水浴の話になります

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