Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

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前回までのあらすじ(数年前)

・学園へと偵察に来たバーサーカー。

・アーチャーに邪魔されて戦うはめに。

・親方ァ!空から士郎が!!

・凛「お前ら組んでたな!」←は?

・ライダー乱入&返り討ち

・虫の大群に襲われ、士郎と脱出

・お茶に誘われる

・セイバーにエンカウント喧嘩ふっかけられる



・バ ー サ ー カ ー ぶ ち ギ レ る



以上、あらすじ終わりいい!!(ヤケクソ)






第十五夜 新展開

 

 

 

双子大剣を振りかざし、セイバーへと突撃する俺ことバーサーカー。

白銀の刃で執拗に透明の剣を攻め続け、止むことなく攻撃を繰り出す。

横薙ぎ、切り上げ、唐竹割り…幾度なく繰り出される斬撃に流石のセイバーも防御の構えを解いて反撃する事が出来ないようだ。

 

 

セイバーの額から汗が滴り落ちるのが見えた。

 

それを見た、俺は思わず口角を上げそうになる。

 

 

 

「っるあッ!!」

 

「ッ!!」

 

 

地面ごと叩き割る勢いで、上から一閃。

自分でも分かる隙だらけの大振り、もちろん当たる訳がない。

しかし、サーヴァントの力で振るわれた斬撃は地面を抉り、勢いよく砂利がショットガンのように飛び散った。

飛び散った砂利程度が当たったところで、屁でも無いんだろうが意識は乱れたハズ。

 

 

大剣の柄を握り締めて、セイバーの喉元へと突きを繰り出す。

 

 

「くっ!」

 

 

…が、寸での所で透明の剣へ阻まれる。まぁそうなるよね…。

刃が弾かれ、今度は俺が無防備となる。

その隙を彼女が見逃さない、俺を真っ二つにしようと横薙ぎに一閃斬りつけてきた!

不意打ちをかわされ、完全にしてやられた状況だが…俺はこれを待っていた。

 

 

(喰らえ、セイバー。)

 

「ッ!?」

 

 

突き技による前屈みになった姿勢を利用して、そのままセイバーの攻撃をかわし。

双子大剣を解除して、銃形態へと瞬時に戻して『ディーヴァ』を連射した。

これはとっただろ!隙を誘っての攻撃だ、セイバーの意識を完璧に誘い込んだ!

自分でも手ごたえを感じた攻撃……だったが

 

 

「はっ!!」

 

 

だが、それも無駄だったようだ。

剣に纏った風が勢いを上げたかと思うと、弾丸が全て弾き落とされた。

 

 

 

 

おいおい、その風は防弾ガラスか何かか。

 

 

 

 

「…この間の戦闘で分かりきった事だが、やはり一筋縄ではいかないようだなバーサーカー。」

 

 

ため息めも吐くように戦慄した声音でセイバーは言う。

まるで、こちらが化け物じみていると言わんばかりだが、こちらの台詞である。

なにせ、英雄時代に死ぬほど修行した技を防いだ上、不意討ちさえも“感”で避けるとか。

 

 

(面白くて、にやけそうだ。)

 

 

やっぱりこいつは凄いと改めて実感する。

最優のサーヴァントと呼ばれているのも頷ける。

手数で勝ってる分、俺の方が優勢のようにも見えるが実のところセイバーに対して決定打というかこれといった対応策がない…負ける気はしないが。

 

 

trick,burst(魔力開放)――――…“the,『accelerate(加速)』”!!」

 

 

双子大剣のグリップを左手で握り締め、右手の指を鳴らして魔力を解放した。

10秒間の『加速』を得た俺は瞬く間に、セイバーの視界から消え失せる。並みのサーヴァントでさえ、その動きを捉える事は難しいはずだ、それがいくら勘の良い剣士でもな。

 

驚異的な速度で振るわれる銀色の刃で彼女の喉元を狙うが、初撃は咄嗟に防がれる。

まぁ、これで当たるとは思っていなかったのでスピードを利用して通り過ぎるように一気に離れる。

そして、踵を返すようにとんぼ返りして刃を切り付けるのを何度も繰り返すといったかまいたちのような戦法だ。

 

これには、セイバーの表情にも焦りの色が滲み出ていた。なにせ超スピードで動き回って斬りかかってくる上、すぐ消え去るので反撃が掠りもしないのだから厭らしいことこの上ないだろう。

 

 

 

が、それも終わりが近づいてきた。

 

 

 

『加速』の限界時間が来ようとしていた三秒前、俺はセイバーの真上に飛び上がり、水車のように回転して攻撃する。

あまりにも変則的過ぎたのか流石のセイバーも避けきれず俺の大剣が彼女の右肩を微かに切り裂く。

 

鮮血が少しばかりか飛び散ったのを確認し、俺は後方へと着地…“いつもの感覚に戻ってきた”。

時間が通常のモノに変わった俺は空中で体制を整えて難なく着地した。

 

 

「セイバー!!」

 

「問題ありませんマスター、大した傷ではない。」

 

 

右肩を押さえて告げるセイバー。

彼女の言う通り、サーヴァント一騎屠るには全然足りない傷だ、少しの間休めばすぐに癒えるだろう。

だが、『加速』による戦法で明らかにペースを崩されたのは目に見えて分かった。

次、また使用すれば間違いなく今以上にセイバーを追い詰めることが出来るだろう……やらないけど。

構えを解いて、肩に刀身の峰を乗せて次の手を考える、と。

 

 

 

その俺の行動を見たセイバーは驚いたように目を丸くしたが、すぐに険しい目つきに変えた。

 

 

 

「やはり…そうか。前の戦闘でもそうだったが……バーサーカー。貴様、なんのつもりだッ!!」

 

 

 

犬歯を剥き出しにしながらセイバーの怒号が俺の許へ届く。

え、なんで俺キレられてんの?逆じゃね?今キレるのお前じゃなくて俺じゃね?

目の前で激おこぷんぷん丸な女に今度は俺が目を丸くした、なんでなんで?

首を傾げそうになるが、その前に見えない聖剣構えて馬鹿みたいなスピードで斬りかかってきた…まてまて!?

 

 

 

「何故、本気で戦おうとしない!!貴様からは戦意は感じても殺意はまるで感じられない…!それだけ強い力を持っておきながら本気で私を倒そうとしない!!」

 

 

何故だ!!と叫ぶセイバー。対する俺は何故と言われても答えられないんだが…。

つまりあれか、セイバー的には俺がガチで戦おうとしないからご立腹ってヤツか…?

 

 

…なぁにそれぇ。

 

 

 

「貴様は、騎士を侮辱する気か!!本気で戦えバーサーカー!!」

 

 

 

見えない剣先を俺に向けて言い放つセイバー。

戦えって言われてもなぁ――――…とりあえず、剣の腹で見えない攻撃を払う。

そんな俺の倒すわけでも逃げるわけでもない、どっちつかずの俺の戦法に彼女はさらに苛立った。

いや、そんな顔されましてもね…。

 

 

 

俺が、セイバーに言えるとすれば一つだ。

 

 

 

本気で戦ったら、近くにいる士郎があぶねぇだろ!!

 

 

 

端にいる赤銅色を視界に収めながら、双子大剣を振るう。

セイバーは頭に血が上っているのか、自分の主の姿が見えていないようだ。

それでいいのかとも思うが、セイバーが負けず嫌いな性格だった事を思い出して諦めることにした。

現に何回か、士郎の事を気付かせようとしたが…うん、気付いてないね!

 

 

(一回本気で戦った方が良いのかな…いや、それだと最悪楽しくなっちゃってヒャッハーしそうなんだよな…。)

 

 

前にも言ったかもしれないが、俺には【狂化】のスキルは働いていない。

その理由は、元から狂っているからと思ったんだが、どうやら話はそんなに単純でもなさそうだ。

本来のバーサーカー達ほどではないが、少なからず俺自身もスキルの影響を受けているのが実感する。

具体的に言えば…「戦いが楽しい!」って感じで、長期戦になるほど楽しんでいく自分が分かる。

さっきの件が良い例だろう。紛うことなき、俺は狂戦士であると実感したわ。

 

 

 

 

さーて、どっすかなぁ~

 

 

 

 

(よし、逃げよう。)

 

 

セイバー倒す気ないし。

さっきまであったイライラは戦っていくうちに無くなって楽しさに変わったため、もう満足である。

ここまできたら、さっさと逃げることにしよう…我が主様も城で待っていることだし、これ以上待たせるのはいけないと思う。うん。

 

 

(そうと決まれば――――…!)

 

 

名誉がない逃亡を選択した俺は、セイバーへ向かって突進をかます。

作戦はこうだ、大剣で突っ込んで鍔迫り合いになった途端に蹴り飛ばして距離を置く。

その隙に『加速』使って速攻、戦闘離脱する!我ながらに中々に完璧だと思う。

ってなわけで、悪く思うなよセイバー!気が向いたら、今度また遊んでやるから逃げらせてもらうぞ!

 

 

 

 

そうして、俺は“力を溜めているような構え”をしているセイバーにひたすら向かった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まて、力を溜めている…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感が頭の中に過る。

しかし、止まることはできずに俺はセイバーに向かっていきそして――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“風王…鉄槌ッ(ストライク…エア)”!!」

 

 

 

 

 

とんでもない規模の暴風が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

おい、それは反則だろ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

風によって巻き上がった、砂埃に視界を遮られながら両腕で防ぐように耐える俺こと衛宮 士郎。

目に入るのを防ぐために、思わず閉じてしまったが最後に見たのは…。

セイバーの放った暴風が、バーサーカーを巻き込んで蔵の方へ直撃した光景だった…我が家の蔵が…。

…いや、まて蔵どころか隣の家まで巻き込んでいるな!?

悲鳴なのが聞こえないことから、留守なんだろうと思うがそれでも心配だ!!

 

 

 

(それより…バーサーカーは!?バーサーカーは無事なのか!?)

 

 

 

やがて、風が穏やかになり目をうっすらと開けると、セイバーの姿。

 

 

そして、彼女のその先に続く暴風で荒れ果てた地面と半壊した蔵。

 

 

その中に黒い狂戦士の姿はない。

 

 

 

(バーサーカー…!)

 

 

自分を助けてくれた恩人を手に掛けてしまったことが、胸の内にずしりと圧し掛かる。

俺は、セイバーを止めることが出来なかった…バーサーカーは俺を助けてくれたのに…!

膝を付いて、血が出るのではないかと思うほど、拳を握り締める。

 

 

「セイバー…どうして話を聞いてくれないんだ…!バーサーカーは…!!」

 

 

「…シロウ!まだです!、まだ“終わって”いない!!

 

 

 

セイバーがそう言うや否や、半壊した蔵の瓦礫の中から凄い音を立てて何かが飛び出してきた…つい先ほど、俺の目の前で暴風の波に飲み込まれたはずのバーサーカーだった。

 

 

「…確かに【風王鉄槌】はバーサーカーに直撃したのは確認した。だが、当たる直前に奴は、何らかの魔術を唱えて剣を盾にして防いだのです。」

 

 

悔しそうにしつつ、セイバーは自ら放った攻撃を凌いだバーサーカーに称賛を送っているようにも聞こえる声音で答える。

あの目すら開けていられないほどの暴風を、黒い狂戦士は凌いだ…腕や足など服のあちこちが、切れているものの外傷と呼べるものは何一つない。

その服の痕も、闇が蠢くように独りでに縫い合っていき…やがて、何もなかったかのように元に戻った。まじかよ…。

 

 

「シロウ、下がってください!」

 

 

 

セイバーが庇うように俺の前に立つ…って、おい!まだやる気かよ!?

 

 

 

「おい、いい加減にしろ!バーサーカーは…!!」

 

 

 

 

「…たぞ。」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

今、俺ともセイバーのでもない声が聞こえた。

今の声は――――…?

 

 

つい、バーサーカーの方を見るとわなわなと肩を震わせて持っている剣をギリリ…と握り締めていた。

 

 

まさか、今のは――――…と考えていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺は、キレたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!セイバァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっかで聞いたことがある、地を這うような絶叫が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

キレました。

はい、キレましたよ私。

【悲報:バーサーカーは完璧にキレました】が脳内のメッセージログが流れまくっている状況下の俺ことバーサーカー。

全身の水分が沸騰するかの勢いだ…やかんが無くても、カップ麺でも作れそうだ。

いや、カップ麺どころじゃないぜ!心の火、心火だ!心火を燃やしてぶっ潰しちゃうほどの怒りが爆発したぜ!!

 

 

意識外も良いところのセイバーの反撃に、危うく木っ端微塵にされるかと思ったが、咄嗟に『反射(リフレクト)』の魔術を発動出来たため何とかなった。

 

 

俺が使用する魔術の一つである『反射』の魔術は物理的な攻撃(物体)や衝撃に対して、文字通り撥ね返す魔術だ。

発動すれば、切れ味の良い刀だろうが弾丸だろうが反射する。

攻撃は最大の防御を字でいく代物だ。

ただし、これにもデメリット――――…っていうか制限は存在している。

それは、武器や衣服等の無機物にしか、かけることができないという事だ。

過去に何度か自分自身にかけようとやってみたが、礼装や衣服等にしかかけられなかった。

 

 

最初こそ、これを自分に発動しっぱなしにすれば最強じゃね?とか考えていた時期があったが――――…うまいだけの話は無いってことだな。

 

 

しかも、対象の物体の形状や大きさ次第では攻撃の質量によっては押し負ける可能性もあるのだ。

さっきの俺がいい例だな……俺が魔術をかけた対象は持っていた武器だが、セイバーが繰り出した風の規模がデカ過ぎて返しきれなかったのだ。

 

 

重機にぶん殴られたかのような衝撃と共にぶっ飛ばされるはめになった訳だが…まぁ、礼装の強度をぶち破るほどではないので目に見えたダメージはない。ノックバックの衝撃はあったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てか、セイバーマジでゆるさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こっちが手心を加えているというのに、お構いなしに吹っ飛ばしやがって!

キレたからな!もうこっから先は、派手にやらせてもらうからなあああ!!

 

 

双子大剣を解除して、銃形態へ戻しディーヴァの銃口をセイバーへと向けて詠唱を始める。

 

 

 

「“trick,burs(魔力開放)”――――…“the,『accelerate(加速)』”!!」

 

 

 

 

再び加速……からのぉ!!

 

 

 

 

「“set(接続)”――――…『形成変換(トランス・フラクタル)』“全弾丸(フルバレット)高速発射(ラピットファイア)”」

 

 

 

 

詠唱を終えると同時に準備は整った。

ディーヴァの引き金を引く、瞬間――――…その銃身がブレ、周囲に幾つもの残像が発生する。

そこから放たれる弾丸は、さながらマシンガンのように発射され、セイバーを蜂の巣にするが如く一斉に向かう。

 

 

 

見たか!『加速』はこんな風に使えるんだぜ!!

 

 

 

これは普段使っている俺の魔術の応用版だ。

特定の一部に限定し能力を発動する事で本来よりも強力な攻撃を放つことができる技だ。

普段、あまりやらない手だが強いことは確かだ…証拠としてセイバーは避ける事が出来ずに防御に徹した。

 

 

 

雨のように降り注ぐ弾丸は確実にセイバーを追い詰めている。

 

 

直観と剣術で防いではいるものの、逃した弾は彼女の肩や太腿を掠り、血肉を抉る。

 

 

そして――――…

 

 

 

 

 

崩れろ(壊れろ)セイバー」

 

 

 

 

 

セイバーの右の脇腹を一つの弾丸が突き抜けた事で、遂に最優のサーヴァントが膝を着いた。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

暴雨のようなバーサーカーの銃撃は凄まじかった。

いつものように狙いを定めて放った訳ではないその攻撃は、ある意味今まであいつが見せてきた能力の中で一番恐ろしかった。

質より量(数撃ちゃ当たる)がいかに脅威であるかを思い知らされた。

規格外――――…前に遠坂はバーサーカーをそう言っていた…あの時は返答こそ返さなかったけど、俺も同感だった。

 

 

 

けれど、それは間違いだったかもしれない。

 

 

 

規格外ではない、このサーヴァントは――――…

 

 

 

底が知れない(勝てる気がしない)

 

 

 

 

崩れろ(壊れろ)セイバー」

 

 

 

セイバーが膝を着く。

命中した脇腹から鮮血が溢れ出している。

すぐに手当した方が良いのが分かるほど夥しい量だった。

彼女の額から玉のような汗が頬を流れる…痛みを堪え、そしてなにより悔しそうな表情で翡翠の瞳がバーサーカーを睨む。

 

 

 

目の前にいる狂戦士の表情が分からない。

 

そのフードの下にあるのは一体どんな顔をしているのか。

 

 

 

ただ、じっとセイバーを見下ろし…左手の銃を再び向けた。

 

 

 

「待ってくれバーサーカー!!」

 

 

 

咄嗟に体が動いた。

セイバーの前に立ち、バーサーカーと向かい合う。

自然と銃口が自分に突き付けられる事となり、自分から行ったとはいえ背筋が薄ら寒くなるが…これ以上、二人が戦うのは見たくない。

 

 

「せ、セイバーがやった事は謝る…悪かった!

 頼むからこれ以上はやめてくれ!俺はただ、お前と話してみたいだけなんだ!」

 

 

「……」

 

 

今、自分ができる精一杯の誠意でバーサーカーに頭を下げて言う。

すると、スッ…とバーサーカーは銃を下した。

驚いた…意外と話せば分かるやつなのかもしれない。

 

 

「シロウ…下がって下さい…!!」

 

 

見えない剣を杖代わりにしてセイバーは立ち上がった。

そして、たどたどしい歩みで俺の肩に手を乗せゆっくりと前からどかす。

負傷している為か、いつもよりも弱弱しい力だった。

 

 

「バーサーカーは敵です…倒すべき相手です…対話をしたいなどと…どういう、つもりですかっ」

 

「もうよせセイバー!今はバーサーカーと戦う必要なんてない!いいか、バーサーカーは――――…」

 

 

 

 

 

「よろしい。ならば、続行だセイバー。」

 

 

 

 

 

吐き捨てるようにバーサーカーが言う。

両手の銃を合わせて再び大剣へと変えてゆっくりとこちらへ…否、セイバーへと向かっていく。

バーサーカーの足がだんだんと速くなっていき…やがて、走り出す。

大剣を振り上げ、そのまま斬りかかろうと高く飛び上がった!!

 

 

 

 

くそ!!どうしてどっちも俺の話を聞いてくれないんだよ!!

 

 

 

 

さすがの俺もここまでくると、なんだか苛ついてきた。

こっちが何度もやめろと言っているのに何で二人ともやめないんだよ!!

自分の事ばかり――――…!!

 

 

 

「いい――――…そっちがその気なら!!」

 

 

 

俺だって勝手にやらせてもらう!!

心の中でそう叫んだ時には、俺は既にセイバーの前に立っていた。

 

 

「い”ッ!?ばッ、バカ!!何やってんだ!?」

 

「マスター何をッ!?」

 

 

 

二人の戦慄した声が耳に入った。

それからはまるで、時間が止まったかのように錯覚した。

同時に沸騰した頭がスッと冷えていくのが分かる…そして、今目の前に振り下ろさんと迫ってきている大剣を見て思う。

 

 

 

 

 

あっ――――…俺、死んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「令呪を持って命ずるわ――――…!!そこから吹っ飛びなさい!バーサーカー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこからともなく声が聞こえると、目の前にいたバーサーカーが物理法則を無視した動きで真横に吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

「あーもう、滅茶苦茶だよ…」

 

 

 

心底絶望した声音でぼつりと呟いた俺は本日、二度目の倉の方へ激突した。

身に起こったあまりの出来事に一瞬、何が起きたのか分からなかったが…おそらく、今のは令呪による強制力が働いたんだろうと推察する。

あの時、セイバーへと斬りかかり、シロウが彼女を庇うように立ちはだかった。

突然の行動に反応できなかった俺は…そのままシロウへと刃を振り落としそうになった途端、体が謎の力によって動かなくなった。

 

 

そこからは、あの通りだ。

何だこれはと思考を進める前に体が爆発したかのようにとんでもない動きで吹っ飛んだのだ。

…いや、俺自ら倉へ向かって飛んだと表現すべきなんだろうか。

とにかく、何が言いたいかといえば…。

 

 

 

 

 

令呪の力ってすげー(棒読み)

 

 

 

 

 

「バーサーカーなにやってるの、さっさとそこから出てきなさい。」

 

 

 

冷たい声が飛んできた。

声の主なんて言うまでもなく、我が主様であるイリヤだった。

俺はすぐさま、立ち上がり砂埃を払うことなく主のもとへ向かう。

 

 

 

…最悪だ。

 

 

 

胸中に思い浮かんだ言葉はそれだけだった。

 

 

 

「……」

 

 

突き刺すような赤い瞳がジト目で俺を写す。

ああ、見たら分かる…絶対、怒ってるやん…でもそれでも聞かなければ。

 

 

「イリヤ、何でここにいるんだ…」

 

「貴方が私の言う事を聞かずセイバーと戦い始めたから。」

 

 

どうやら、通信機から何度も呼び掛けていたようだ。

さっぱりわからなかった…かなり、頭に血が上っていたようだ…やっちまった。

 

 

「バーサーカー。貴方、シロウを斬りかけたわね?」

 

 

ぞわり、と背中が底冷えするような声…正直、めっちゃ怖い。

だが、事実は事実だ。あの時、俺の意思ではないにしても士郎に刃を振ってしまった。

イリヤが令呪を使用していなければ、確実に士郎の体を斬っていた…確実に殺してしまってたハズだ。

 

 

 

「私はセイバーと戦いなさいとは言ってないわよね?なんで、勝手に戦い始めたの?」

 

 

 

い、いや…それはセイバーの奴が――――…

 

 

 

「バーサーカー?」

 

 

ダメだ、言い訳として見なされる…!

いやいや、俺悪くなくない!?ちゃんと計画通りに動いてたら、士郎がピンチになっててそれを助けてライダーと戦ってetc…

俺が悪いところ何処ですかねぇ…強いて言うなら、お茶に誘われて承諾してしまったところですかね。

ちゃんと断らなかったことですかね…しかし、それはセイバーと戦闘になった理由にはなりませんよね。

我が主様が現在お怒りになっている原因というのはセイバーと戦闘した事で、決してお茶をしようとした事じゃあないと思うんですがこれ如何に。

 

 

 

つまるところ、自分に落ち度はない。

 

そう伝えよう…うん、大丈夫きっとわかってくれる。

 

 

 

「我が主様よ、俺のせいじゃない。セイバーの奴から先に――――…」

 

「言い訳は結構よ。」

 

 

 

一蹴された…なんだか悲しくなってきた。

 

 

 

だ、だってマスター!!あいつがぁ!あいつがぁぁ!!

 

 

 

もはや、俺が無実を訴えるには、このように何度も足搔くしかなかった。

必死な形相でセイバーの方を何度も見ていたら、流石の主様も気の毒に思ったのか少しバツが悪そうな表情をした。

 

 

「そんな小動物みたいな顔しないでよ…私が悪いみたいじゃない…」

 

 

決まりが悪そうな自分の主君を見て、ちょっと自分を顧みることにした。

うん…セイバーと戦った云々は別として士郎を危うく傷つけそうになったのは確かだ。

俺が冷静になって対処していれば少なくとも、令呪を使って止めてもらうような事は絶対になかったハズだ。

くそ…今まで思う通りに進まないから焦ってたのか?苛ついてたのもあるし…。

 

 

 

ひとまず、悪いのは俺だ。

 

 

主様にわざわざ来てもらって、令呪まで使わせちまった。

 

 

 

「すまん…俺が悪かった。同時に助かった。イリヤがいなければ確実に士郎を殺してた。」

 

 

頭を下げて謝罪と感謝の気持ちを伝える。

我が主様が令呪の使用を切り出してくれたおかげで助かった。

あと数秒遅かったら確実にdead endだった。

 

 

「分かれば良いのよ。いい?貴方の主は私なんだから、ちゃんと私の指示を聞く事!!」

 

「…そうだな。すまんかった。」

 

 

少し落ち着いていこう。

今のところ、致命的な結果には陥っていないのだから。

改めて自分のマスターがこの子で良かったわ…本来なら、この程度で済ませてはもらえないだろう。

これ以上、失態を犯す前に計画の軌道修正を行うべきだ。

 

 

「マスター、とりあえず撤退しないか?今後について話そう。」

 

 

今日は色々な事が起こりすぎた。

アーチャーとの突然の戦闘に加え遠坂と士郎が決別し、それを付け狙ったライダーの襲撃…。

おまけに何故か、アインツベルンと士郎が裏で手を組んでいると勘違いされた!

 

 

 

何なんだこれ、いったい俺は何処のルートに進んでるんだ!?

 

 

 

 

fateルートでもUBWルート、ましてやHFでもない。

 

 

 

 

全くの未知なる展開に俺は困惑せざるを得ない。

士郎には屋敷をめちゃくちゃにして悪いとは思うが、今は撤退すべきだろう…あちらもセイバーが負傷しているから傷を癒したいはずだし。

故に、ひとまず城に戻って対策を練りたい―――――…てか、帰りたい。

しかし、半ば出口の方に体を向きかけている俺とは裏腹にイリヤはその場から離れようとしない…はて?

 

 

 

「いいえ、バーサーカー。撤退の必要はないわ…シロウと話さなければいけないもの。」

 

 

 

!?

 

 

今、なんて言った!?

 

 

 

「は、話す…って何を…?」

 

 

 

 

 

「バーサーカー、私ね―――――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シロウと同盟を結ぶわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(゚◇゚*)(゚◇:;.:… (゚:;….::;.:. :::;..サラサラ…

 

 

 

 






バーサーカーは砂になったんや…


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