愛「どうも、魚江愛です! 妖かぁ……そういえば、書いてる作品にも妖が出てくる物が多いよね」
政実「そうだね。まあ、自分にとって妖は一生に一度は会いたい存在達だし、その思いをこめながらこれからも書いていくつもりだよ」
愛「ふふ、そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか!」
政実「うん」
政実・愛「それでは、第3話をどうぞ」
「うーん……! 今日も良い天気だなぁ……!」
文芸部へ入部した一週間後、晴れ渡る空を見上げながら晴れやかな気分で私は少し大きめな声で独り言ちた。雨の日も嫌いじゃないけど、やっぱり晴れの日の方がスッキリとしていて気持ちが良いし、何より髪や服なんかが濡れる心配が無い事が嬉しいかもしれない。
帰ってから乾かすまではそのままになっちゃうから、その分気持ちの良くない思いをしないといけないからね。もっとも、雨の日も傘とかレインコートとかでオシャレが出来る上、雨の日ならではの色々な事があるから、それはそれで楽しいかな?
そんなちょっと弾んだ気持ちで歩いていた時、隣を歩いていた友達の
「……愛、アンタって本当に朝っぱらから元気だよね……。何で朝からそんなに元気でいられるのさ?」
「うーん……一応、早寝早起きは心掛けてるから、それが理由になる……のかな?」
「なるほどね。まあ、規則正しい生活をするのは悪くないし、それはそれで良いんじゃない?」
「ふふっ、だよね♪」
「ただ、朝からそのテンションのままでいると、授業中に眠くなりそうだけど?」
「う……そ、それは……そうかも……」
その言葉に思い当たる節が結構あったため、そんな反応を返すと、菊香ちゃんはまた溜息をついた。
「……はあ、やっぱりね。気分良く登校したい気持ちはスゴく分かるけど、勉学に差し障りが出ない程度に留めておいた方が良いとアタシは思うよ。授業中にうっかり居眠りをして教師に叱られたり、重要なところを聞き逃したりしたらその弾んだ気持ちだってすっかり萎んじゃうからね」
「……はーい」
ほんの少しだけテンションを抑えて返事をすると、菊香ちゃんは小さく笑いながらコクンと頷いた。
菊香ちゃんの言葉はもっともだし、私もこうして高校生になったわけだから、少しは落ち着きのある行動をした方が良いのかな?
「……もう『あんな事』を繰り返したくないし……」
思わず呟いてしまったその言葉にハッとし、心臓をバクバクさせながら横目で菊香ちゃんの様子をチラリと確認してみると、菊香ちゃんは電線にとまる雀達が
良かった……聞かれてたらどうしようかと思ったけど、聞かれてないなら安心……かな?
ホッとしながらそんな事を考えた後、気持ちをすっかり切り替えてから未だ雀達の事を見ている菊香ちゃんに対してクスリと笑いながら声を掛けた。
「菊香ちゃん、そんなにあの雀達が気になるの?」
「んー……まあ、そんな感じかな。ほら、雀に限らず鳥の囀りって何か聞いていてスゴく落ち着くだろ? だから、さっきみたいにちょっと聴き入っちゃう事もあるんだよ」
「ほほう……流石は文学少女の菊花ちゃん、趣味も読書な上に鳥の囀りまで楽しむとは……本当に文化的な女の子ですなぁ」
「……何なの、その喋り方。というか、愛はそういうのは無いの? 例えば、白い雲を見て何かを連想する……みたいな」
「そうだね……強いて言えば、そういうのはソフトクリームとか綿菓子とかに見えるかな? だから、あのフワフワッとしたのを見てると、いつもお腹が空いてきちゃうんだよね」
「なるほどね。それにしても……愛って意外と『花より団子』って感じなんだね」
「いやいや、お花見の時はちゃんと花も愛でるからね? ただ、お菓子が目の前にあったら食べたくなっちゃうだけで、そういう景色とか物とかを楽しむ気持ちはしっかりとあるから、そこだけは勘違いしないでよ?」
「ははっ、分かった分かった」
「むぅ……本当に分かってるの……?」
「分かってるって。ほら、むくれてないでさっさとガッコに行くよ」
「……はーい」
菊花ちゃんのその様子にまだちょっとだけ納得はいってなかったけど、学校に行かないといけないのはその通りだったため、私はその場はとりあえず納得する事にして菊花ちゃんと色々な事を話しながら通学路を歩いていった。
お昼休み、お弁当を食べ終えた後に私は菊花ちゃんと一緒に校内を散歩していた。新しいクラスになってからまだ日も浅かったから、クラスメイト達と話して親交を深めていても良かったんだけど、やっぱり早めに校内の様子は把握しておきたかったのもあって、お弁当を食べていた時に菊花ちゃんを誘ってみた。すると、菊花ちゃんも同じ考えだったため、こうして二人で校内の散歩をする事にしたのだった。そして、中庭に差し掛かったその時、中庭のベンチに見覚えのある二人組が座っているのが見えた。
「あ、あそこにいるのって……
「ん、本当だ。これから部活でお世話になるわけだし、ちょっと挨拶をしに行くか」
「そうだね」
二人で頷き合った後、私達はベンチで仲良く話をしている津藤部長達へと近付いた。
「津藤部長、王子副部長、こんにちはです」
「……ん? ああ、魚江さんに筧さん。はい、こんにちは」
「こんにちは、二人は校内の散策中だったのかな?」
「はい、一応クラス単位で校内の案内は受けてますけど、早めに校内の様子は知っておきたかったので、こうして二人で校内を歩き回ってるんです」
「なるほどね。この文月学園は色々な教室もある上、旧校舎なんてのもあるから、早めに知っておこうというのは確かに良い考えかもね」
「うん、そうだね」
津藤部長と王子副部長が笑い合う中、菊花ちゃんは少し不思議そうな表情を浮かべながら二人に話し掛けた。
「ところで……部長達はここで何を話していたんですか?」
「そうね……さっきまで色々と話してはいたけど、内容は主に部活動の事についてかな。今年は新入部員が
「三人って……私と菊花ちゃんの他にもいたんですか?」
「うん、君達が帰ってから少し経った頃に一年生の男子生徒が一人だけ来て、君達にしたような簡単な説明と雑談をした後に入部届を受け取った感じだね」
「ハキハキとした話し方だけど、ちょっと大人しそうな雰囲気──具体的に言えば、
クスクスと笑う津藤部長の横で、王子副部長は頭をポリポリと掻きながら苦笑を浮かべた。
「あはは……そういえば、そうだったね。筧さんの時と同じで、パラパラッと捲ってたと思ったら、急に顔を引きつらせながらすぐにパタンッて閉じてたもんね」
「いや……それは結構普通の反応だと思いますよ? 色々とホラー作品は読んできたつもりですけど、アレはアタシでもかなり怖かったんで……」
「あはは、ごめんね。でも、
「あ、はい。分かりました」
優しい笑みを浮かべる王子副部長に対して頷きながら答えていると、津藤部長が突然何かを思い出したようにポンッと両手を叩いた。
「……あ、そうそう。昨日で部活動見学期間が終わったから今日から本格的に部活動が始まるんだけど、今日の部活は貴女達新入部員と他の部員達との自己紹介や質問タイムを兼ねた交流会にしようと思うの。貴女達やもう一人の新入部員が帰った後、作品作りから帰ってきた部員達に貴女達の話をしたらスゴく興味を持っていたようだったしね」
「はい、分かりました」
「それと、もしもう一人の新入部員──
「……分かりました、伝えておきますね」
「うん、お願い。さてと……それじゃあそろそろ私達は行くわね」
「二人とも、また後でね」
「「はい」」
そして、津藤部長達が校舎の方へ向かって並んで歩いて行くのを見送った後、次はどこに行こうか考えていると、菊花ちゃんが少し不思議そうな表情でポツリと呟いた。
「相和良音……って、たしか愛の隣の席の奴だっけ……?」
「うん、そうだね。でも……まさか、文芸部で固まる事になるなんてね……」
「……ほんと、何の偶然なんだろうねぇ」
「本当にね。でも、同じ部活の仲間になるわけだし、これからは部活以外でも仲良くした方が良さそうかな?」
「それが良いだろうね。さて……それじゃあアタシ達も教室に戻ろうか。そろそろ午後の授業が始まる頃だろうからさ」
「うん」
そして、放課後の部活動の話や午後の授業の話をしながら菊花ちゃんと一緒に教室へ向かって歩いて行く中で、私はもう一人の新入部員である相和君の事を考えていた。
相和良音君……かぁ、まだちゃんと話した事は無いけど、確かに王子副部長のように優しそうな感じではあったし、菊花ちゃんみたいに仲良くはなれそう。でも、どうして文芸部に入部しようと思ったのかな……?
そんな事を考えてみたものの、まったくその答えは浮かばず、その内私はそれを考える事を止めた。
……まあ、いっか。それは本人に聞けば良いし、今は文芸部の先輩達の事や午後の授業の事について考えるのが先だよね。
「……よし、午後も頑張っていこう……!」
ガッツポーズをしながら私は小さな声で自分を鼓舞するようにそう言った。
放課後、カバンの中に教科書やノートをしまった後、私は隣の席の相和君に声を掛けた。
「ねえ、相和君」
「ん……魚江さん、どうかした?」
「相和君って文芸部に入部したんだよね?」
「う、うん……そうだけど……?」
「実は……私と菊花ちゃんも文芸部に入部したんだけど、良かったら私達と一緒に部室に行かない?」
「僕が魚江さん達と……?」
「うん、こうして同じクラスで同じ部活になったわけだし、津藤部長から伝えて欲しいって言われてた事もあるから。それで……どうかな?」
ちょっとだけ不安を感じながら訊くと、相和君は「え、えーと……」と少しだけ頬を染めながらちょっと困ったような表情を浮かべ、それを見た菊花ちゃんは呆れたように溜息をついた。
「相和、愛が可愛い子だから照れるのは分かるけど、そのくらいちゃちゃっと答えてやんなよ」
「筧さん……」
「菊香で良いし、タメ口で良いよ。それで、アンタの気持ちはどうなんだ? 愛と一緒に部活に行きたいのか行きたくないのかどっちなのさ?」
「僕の……気持ち……」
相和君はとても真剣な表情を浮かべながら軽く俯いた後、何かを決心した様子でコクンと頷いたかと思うと、ゆっくりと私の方へ向き直った。
「うん、僕も魚江さん達と一緒に部活に行きたい。せっかくこうして同じ部活動になったからには、仲良くしたいと思ってるから」
「相和君……うん、分かった! これからよろしくね、相和君!」
「うん。こちらこそよろしく、二人とも」
「ああ、よろしくね、相和」
そんな事を言いながら三人で笑い合った後、私は席を立ちながらカバンを持った。
「よっし、それじゃあ行こっか!」
「ああ」
「うん」
菊花ちゃんと相和君が返事をしながら席を立った後、私達は揃って廊下へと出た。そして、文芸部室に行くまでの間、私達は同じく部活動に向かう生徒達の中を進みながら話を始めた。
「それにしても……文芸部の先輩達は、どんな人達がいるんだろうね」
「うーん……部長達は良い人達だし、他の先輩達も良い人達だとは──あ、そういえば……津藤部長から伝えて欲しいって言われてた事があるって言っていたけど、それって何だったの?」
「あ、うん……今日の部活動は、私達新入部員と先輩達との交流会にするから、準備するものは無いよーってさ」
「なんでも、先輩達はアタシ達に興味があるんだってさ。まあ、自分で言うのもアレだけど、アタシみたいなのが入ろうとしてるんなら興味は持つだろうからね。相和、アンタだってアタシが文芸部に入るのは意外だって思うだろ?」
「それは……まあ……」
「……だろうね。アタシ自身、自分はそういう柄じゃないし、そんな事を思われるのももちろん分かってる。だから、読書が趣味だって事を今まで誰かに言いだす事も出来なかったし、文芸部に興味はあっても入ろうとまでは思わなかった。けどさ、そんな事を思っていた時、愛からこんな事を言われたんだよ。そういうギャップを良い方に利用すれば良いってね」
「ギャップを良い方に……」
「そう。他人が自分に歩みずらそうにしてるならそう自分からそういうポイントを作ってしまえば良い。そして、そうやって自分をアピールしていけば良いってね。だから、アタシは文芸部に入った以上、何かしらの成果は残すつもりだよ。そういう事もせずにただダラダラとやるのは、アタシの性分じゃないからね」
「そっか……かけ──菊香にはそういう目標があるんだね」
「ああ、もちろん。もっとも、文芸部に何かを感じたっていう理由で入部を決意した奴もいるんだけどね」
そんな事を言いながら菊花ちゃんが私の事をチラリと見ると、相和君も私の方に視線を向けたけれど、その表情は明らかに驚いていたため、私は苦笑を浮かべながら軽く頷いた。
「うん……実はそうなんだ。私、国語だけがどうにも苦手なんだけど、文芸部の紹介を見た時に何かを感じた気がする。言葉では説明出来ないけど、確かに何かを感じた気がするの」
「それじゃあ……魚江さんは、それが何かを知るために文芸部に入部した感じなのかな?」
「あはは、愛で良いよ。でも……一応はそうなるのかな? もっとも、見つかるのかは分からないけど、見つけたいとは思ってるよ。このモヤッとした物をこのままほっとくつもりは無いからね」
「そっか……うん、愛ならきっと見つけられるよ。なんだかそんな気がする」
「良音君……うん、ありがと」
「どういたしまして」
優しく微笑む良音君に対して微笑み返していた時、私達の事をジッと見ている菊花ちゃんが目に入り、私は小首を傾げた。
「菊花ちゃん、どうかした?」
「……いや、愛って本当に誰かと仲良くなるのが上手いなと思ってただけだよ」
「そう……かな?」
「ああ。何というか……無理なく相手との距離を詰めてる感じかな? 最初からグイグイと行くんじゃなくて、適切な距離を見定めてから徐々に近付いて仲を深めていく。具体的に言えば、そんな感じかな。まあ、アンタが人懐っこい性格だったり、人から好かれそうな容姿だったりするのもあるのかもしれないけどね」
「うーん……私自身はそう思ってないけど、菊花ちゃんが言うならそうなのかもしれないね」
「アタシが言うならって……まあ、良いけどさ」
菊花ちゃんがやれやれといった様子で小さく溜息をついていたその時、『文芸部室』と書かれたプレートが目に入り、私達はその部屋の前でピタリと足を止めた。すると、中から賑やかな話し声が聞こえ、私達が小窓から中の様子を窺うと、中には教卓の傍で話す津藤部長と王子副部長の他、席に座っている数人程度の先輩達の姿があり、私達はその様子を見ながら小声で話し始めた。
「ずいぶん賑やかだけど、何の話をしてるのかな?」
「さてね……ただ、このままここにいてもしょうがないし、とりあえず入るとしようか」
「そうだね。それじゃあ──」
良音君がノックをしようと拳を軽く握ったその時、中にいた王子副部長が私達の方に気付いた様子で、ゆっくりとこっちへ向かって歩いてきた。そして、部室のドアをガラガラッという音を立てて開けると、ニコリと微笑んだ。
「三人とも、こんにちは。今、ちょうど君達の話をしていたところだったんだよ」
「あ、そうだったんですね」
「うん、そうだよ。さあ、入って入って」
王子副部長に促されるまま部室に入ると、先輩達の視線が私達に集中したけれど、その視線は興味や期待といったものだったため、私はそれに少しだけ嬉しさを覚えながら、菊花ちゃん達と一緒にそのまま津藤部長が立っている教卓の方まで歩いていった。そして、津藤部長の目の前でピタリと足を止めると、津藤部長は優しい笑みを浮かべた。
「こんにちは、みんな。さて、これで後は……」
「顧問の魚江先生だけだよ、恵愛」
「そうね。あ、そういえば……魚江さん」
「はい、なんですか?」
「魚江先生から聞いたんだけど、あなたは魚江先生の姪っ子さんなんですってね」
「はい。魚江先生──
「後、愛とアタシ、良音のクラスの担任でもありますよ」
「あはは、スゴいね。まあ、全然知らない先生が顧問だったりや担任だったりするよりは、ずっと気が楽ではあるよね」
「……それ、私も昨日似たような事を思いました」
クスリと笑いながらそんな事を答えていた時、「ほう、それは良かった」と言う声がドアの方から聞こえ、私達は一斉に視線を向けた。すると、そこにはニヤニヤと笑いながら私を見る魚江先生の姿があった。
「魚江先生……聞いてたんですか?」
「ああ。けど、魚江──愛がそう言ってくれるのは本当に嬉しいし、俺も同意見だぞ? 自分の受け持つ生徒の事を何も知らないよりは気持ちは楽だし、クラスに何かあった時には愛を通じて話を聞けるわけだからな」
「魚江せんせ──」
「ああ、そうそう。部活の時や筧と相和以外の生徒が近くにいる時以外は青一先生と呼んでくれ。俺とお前、どっちも魚江だからややこしくてしょうがないしな」
「……わかりました、青一先生」
小さく溜息をつきながら答えると、青一先生はニッと笑いながら文芸部室の中に入り、私の頭に軽く手を置きながら静かに口を開いた。
「さて……それじゃあ改めて自己紹介といくか。俺は魚江青一、文芸部の顧問でお前達の担任だ。受け持っている教科は国語だ」
「国語……だから、文芸部の顧問に?」
「そんなところだ。それに、これでも趣味は読書なんだぞ? なあ、愛?」
「……それについては否定しませんけど、頭に手を置くのは止めてくれませんか? 恥ずかしいです」
「はっはっは、すまんすまん」
笑いながら青一先生が手を放した後、私がまた小さく溜息をついていると、津藤部長はニコリと笑いながら私達に声を掛けてきた。
「それじゃあ、今度はあなた達に自己紹介をしてもらおうかしら」
「あ、はい。えっと……私は魚江愛といいます。好きな物は可愛い物で、お菓子作りやショッピングが趣味です。文芸部に何かをビビッと来る物を感じて入部しました。これからよろしくお願いします」
「はい、ありがとう。それじゃあ次は筧さんね」
「はい。アタシは筧菊花といいます。こう見えて趣味は読書です。作品を書いた事は無いですが、入部した以上は何か一つでも実績を残したいと思っています。これからよろしくお願いします」
「うん、ありがとう。それじゃあ最後は相和君だね」
「は、はい……! 僕は相和良音といいます。趣味はお菓子作りや裁縫ですが、本を読むのももちろん好きです。部活動紹介で文芸部に興味を持ち入部しました。これからよろしくお願いします……!」
良音君の緊張気味な自己紹介が終わると、先輩達や青一先生からパチパチと拍手が上がり、津藤部長は拍手をしながら私達に微笑みかけた。
「みんな、ありがとう。それじゃあ今度は私達ね。私は津藤恵愛、この文芸部の部長よ。趣味は読書で特に好きな物は推理小説ね」
「なるほど……だから、推理小説を書いているんですね?」
「あははっ、まあ、そんなところ。それじゃあ次は蒼空」
「うん。改めまして、僕は王子蒼空。この文芸部の副部長で恵愛の幼馴染みだよ。恵愛と同じく読書が趣味で、特に好きな物はホラー物だよ」
「「ホラー……」」
文芸部誌で読んだ王子副部長の作品を思い出したのか菊花ちゃんと良音君が身を震わせていると、それを見た津藤部長は苦笑いを浮かべた。
「あはは……やっぱり、蒼空の作品は初めて読む人にかなりの衝撃を与えるみたいね。さて、それじゃあ今度は先週は作品作りに出てた皆の自己紹介ね」
「はいはーい! それじゃあ私から行くよー! 私は
「んじゃあ、次は俺だな。俺は
「じゃあ、次は私が行こうかな。私は
「……次は俺だ。名前は
「最後は私だね。私は
最後の邑楽先輩の自己紹介が終わると、津藤部長は満足げに頷きながら、私達を軽く見回した。
「うん、これで全員の自己紹介が終了。それじゃあ質問タイムの前に魚江さん達にはこれからの活動について簡単に説明をするわね」
「はい」
「ウチの部活動は、どこかのコンクールに出したりするような事は基本的にはせず、月一で文芸部誌『ムーサ』を出すのがメインよ。まあ、中にはそういうコンクールに自分で出してる部員もいるけど、その時は魚江先生に予め連絡をするのを忘れずにね」
「わかりました」
「後は……しばらくの間、魚江さん達新入生には『ムーサ』に作品を出してもらう必要は無いから、その間の時間を使って自分が何を書きたいかを考えてもらおうかな」
「自分が何を書きたいか……」
「ええ。まあ、あまり難しく考える必要は無いから、気楽に構えていてくれて構わないわ。それと……一応、部員には全員専用のパソコンが支給されているんだけど……」
そう言いながら津藤部長がパソコンの方に視線を向けると、王子副部長は同じようにパソコンの方を見ながら申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「一台だけパソコンが足りないね……魚江先生、新しいパソコン代を部費から出しても良いですか?」
「うーん……良いと言いたいところだけど、この前色々買いこんだから、次の予算が出るまでは買えないぞ?」
「そうですか……」
「となると、しばらくの間は三人の内の二人にパソコンを共有してもらう事になるわね」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず手を挙げていた。
「あ、それなら私が──」
「僕が──」
「「……え?」」
同じように手を挙げていた良音君と一緒に顔を見合わせていると、それを見ていた菊花ちゃんが面白そうにクスリと笑った。
「……アンタ達、趣味もお菓子作りが共通してるし、以外と気が合うのかもしれないね」
「あはは、そうかも。それじゃあ良音君、私達がパソコンを共有するって事で良いよね」
「うん、もちろん。愛、よろしくね」
「うん、こちらこそ♪」
そう言いながら良音君と握手を交わしていると、「ほうほう、これはこれは……」と青一先生が面白そうにニヤニヤと笑い出したため、私はそれを不思議に思いながら青一先生に話し掛けた。
「青一先生、どうかしましたか?」
「いやぁ……愛も青春してるなぁと思ってな」
「青春って……別にそんなんじゃないですよ」
「そうかい。まあ、パソコンを共有するとなったからには、二人とも仲良く使うんだぞ?」
「「はい」」
青一先生の言葉に良音君と一緒に返事をした後、津藤部長は申し訳なさそうな表情を浮かべながら私達に話し掛けてきた。
「二人とも本当にごめんなさい。パソコンは早めに支給できるようにするわね」
「いえ、気にしないで下さい」
「そうですよ。むしろ、支給してもらえているだけありがたいですから」
「……二人ともありがとう」
津藤部長がニコリと笑いながら私達にお礼を言った後、王子副部長は私達を見回しながら全員に声を掛けた。
「さて……それじゃあそろそろ質問タイムと行こうか。みんな、質問があったらどんどんしていってね」
その王子副部長の言葉の後、根尾先輩達から私達に色々な質問が投げかけられ、私達はそれを次々と答えていった。
……他の先輩達も良い人達みたいだし、この文芸部に入るって決めて良かったかも。後は、この文芸部にビビッと来た理由がわかれば良いんだけど……。
「まあ、すぐにはわからないだろうし、ゆっくりとその理由を見つけていけば良いよね」
そんな事を独り言ちた後、私は開け放された窓から入ってきた春風と桜の花弁にニコリと笑ってから、また投げかけられた質問に笑顔で答えていった。
政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
愛「今回は良音君や津藤部長達以外の先輩達の登場回だったね」
政実「そうだね。次回はどうなるかはまだ未定だけど、愛達のクラスメートに他の部活動の生徒に、と色々なキャラクターもこれから出していくつもりだよ」
愛「りょーかい♪ そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
愛「アイアイサー!」
政実・愛「それでは、また次回」