前回の無人島の続きでござる(´・ω・`)
私と怪鳥が戦闘してから数時間後、太陽が沈みかけた時の事である。
『家に帰ろうか』と一回は思ったが、また神が刺客を送り込んできたら両親が危ない目にあってしまうかもしれない。
そう考えると家に帰るという選択肢が無くなり、野宿することにした。
そして、野宿にさしあたり『まず必要なのは食料だろう』と思った私は、透視能力で食べれる物はないか探しに密林へ入ったのだが……程なくして、私はあるモノを発見してしまった。
それは密林の中に巧妙隠された建物である。
天井上部を草木で覆ったその建物は、学校の校庭を3・4倍した程の大きさであった。
――これは怪しい。
そう思った私は早速、侵入を試みたのである。
正面の扉には、何やらロボットみたいな縦長の機械や兵器みたいなのがあったので、
正面突破は遠慮したいと考え、建物の周辺で近寄れそうな場所がないかを見回った。
そして、警備が手薄な場所を発見し限界まで近づき、透視能力で建物の内部を把握後、テレポートを発動した。
そうして無事に侵入を果たした訳だが、施設の中を透視した限り、誰も居ないという事が既に判明している。
しかも、内部に設置してある道具や備品が埃を被っている事から、使われていないか、既に廃棄された建物のようである。
――なるほど、使わない手はないな。
「此処を拠点にしよう」
これは幸いという考えに到り、私はこの建物に住む事を決めた。
建物の内部に何があるかは不明だが、周りの防衛能力はそこそこ強そうな建物である為、そこらで野宿するよりはよっぽど安全である。
それに、今私がいる場所にはシンクやコンロのような物が設置してある。
食事を取る為の場所である事は間違いない為、『探せば保存食ぐらいは出てくるのでは?』
と思い探してみれば、やはり缶詰めや水が出てきた。
これで食料の心配はないが、まだ施設内に防衛機能が残っていたら? と思うと完全に安心はできない。
その為、今度は内部を1時間ほど散策し、安全の確認を行った。
結果として、この施設の内部には防衛設備を何も設置していないらしく、アニメやゲームであるような有毒ガスが出たり、いきなり天井から何かが落ちてくるといった罠もなかった。
そして、散策してわかった事がもう1つ。
どうやらこの施設は何かの実験施設だったらしく、大きなガラスに培養液などが入ったり、何かの肉片がプカプカと浮遊していたのだ。
SFちっくな光景に胸が躍ったが、異臭やらグロい肉片を長時間見ているのは流石に気分が悪くなってくる……ボエェ。
「……まぁでも、とりあえず害は無いか」
これで一安心だ、という思いで、私は散策した際に見つけた洗い場へ直行した。
そしてシャワーを浴びた後は、勝手に拝借した衣類を身に纏い、着ていた制服と下着はそのままゴミ箱へ捨てた。
何しろ脱糞したり、海に落ちても何の処理もしなかったのだ。
念のためにと匂いを嗅ぐと、案の定衣類からは排泄物の匂いや海水の匂いが交じり合った異臭がしたため、あの制服と下着を着ようとは思わなかった。
ここで私の着ている服だが、さすがに子供の服は無かったので、少し大きめの青いバトルスーツみたいなのを発見したので着用している。
さらに、研究所という事もあり科学者が着る白衣が有った為、かっこいいのでそれも羽織っている。見た目は大事だ、うん。
無論白衣はぶかぶかであるため、腕をまくり、後見項を引きずりながらになっているが……まぁ問題はない、所詮は借り物だ。
「さて、いよいよ食事だが……コレ、賞味期限大丈夫だろうか?」
身なりも綺麗になり、食事となった訳だが……この缶詰に書かれている文字が読めない。
匂いは大丈夫っぽいので食べたが、食べた事のない触感と味に思わず不安になってしまう。
だが、これを食べねば空腹でいずれ倒れてしまう。
無理してでも食べなければならないし、いざという時はトイレにいけばいいのだ。
そう、トイレが常備されているのだから、食当たりになっても問題はない。
こんな施設のトイレを流石に公衆トイレの神が妨害できるはずはない。
なので安心できる。
そして、安心しきったからか眠気が急激に襲ってくる。
そもそも1日であんなに超能力を使う事はなかったし、あんな奇妙奇天烈な事だれけな事が起きたのだ。
ただの子供である私には負担が大き過ぎる……しばらくはこの拠点で休むとしよう。
こうして、私はここで長い1日を終えるのだった。
■
なのは
私は今日、体調不良で学校を休んでいた。そして、ベットで天井を見つめる私は、昨日の失敗を何度も思い出していた。
――私は何もできなかった。
花園君からジュエルシードの回収は失敗し、同じ魔導士の子にも負けた。
さらに言えば、あの女の子の狙いは花園君ではなくジュエルシードだったらしく、
今私の手元にはジュエルシードが1つもない上、ユーノ君の推測が正しければ、
私が気絶してから発生した、ジュエルシードの複数の暴走を止めたらしい。
私は1つに対処するだけでも手一杯なのに、1回で複数も対処できてしまうあの子と自分の実力の差にただただ口惜しさしかでない。
このままではダメだ……もっと強くならないと。
「ユーノ君……私に戦い方を教えて」
「なのは……」
私はジュエルシードの回収を諦めた訳じゃない……なら、またあの子と会うはずだ。
その時はきっと、また戦う事になる。
「正直なところ、時空管理局が到着するのを待った方がいいと思う。
もし僕の推測通り、彼女達のみでジュエルシードの複数暴走を止めたのだとしたら、
彼女達はオーバーSランクの魔導士だ」
「オーバーS?……因みに私はどのくらいなの?」
「なのはは今だと大よそAAぐらいだと思う。
正直、AAとSランクオーバーでは勝つ可能性は0に近い」
ユーノ君曰く、魔導士ランクは魔力保留量や戦闘能力だけで決まるものではないが、
大よその指数はそれで決まってしまうものらしい。
そして、その数字に基づいた結果から言えば、私が勝つ可能性は0との事。もう笑うしかない。
でも……例え可能性が0だとしても、諦める事はできない。
あの子にはジュエルシードだけではなく、他に聞かなければならない事があるのだから。
「私はそれでも諦めないよ。
それに、花園君がどこに行ったのか、あの子には聞かなきゃいけないもん」
花園君は昨日からお家に帰っていないらしい。
それは学校の緊急連絡網により判明し、さらには警察でも捜索願いが出されているらしいが、お昼を過ぎても見つかったという連絡は受けていない。
あの子の狙いはジュエルシードだから、ジュエルシードを持っている花園君を知っている可能性が高い……あるいは…。
「ユーノ君、本当にあの子達はジュエルシードだけが目的なんだよね?
あの子達が花園君を誘拐したとかじゃないよね?」
「うん。彼女達の狙いはジュエルシードで間違いはない。
でも、何の目的で集めているのかがわからないから判断しようがないんだ。
もしジュエルシードを使って、何かをしようと企んでいる時に、彼のレアスキルに気付いてしまったら……彼は確実に狙われる」
「……なら、やっぱり私は諦める事はできないよ」
ユーノ君の話を聞き、尚更諦める訳にはいかなくなった。
自分が守りたいと思った者を守る為にも、私は強くならなければいけない。
その為にも――
「だからユーノ君、レイジングハート、私を強くしてほしいの」
《
「レイジングハートまで……わかった、僕も協力するよ」
渋々といったユーノ君だが、本当は私にジュエルシード集めてほしいんだと思う。
だけど、相手が強いから、私に怪我をしてほしくないから、そういった気遣いの気持ちから、私が戦うのを避けようとしているのは察している。
でも、それでは逃げてるのと変わらない。
次も負けるかもしれない、次も痛い思いをするかもしれない……でも、それがどうしたと言うのだ。
私はそれで折れたりしない、不屈の心はこの胸にあるのだから。
うん、主人公が主人公してないと思うのです(;´・ω・)