賢者の石拾って、超能力が使えた件   作:MrM3

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シリアルコーンをたまに食べると美味しいでござる(´・ω・`)





10話

 

フェイト

 

 

 

私は今、母さんが住む"時の庭園"へと帰還していた。

時の庭園は次元空間航行が可能な庭園で、本来なら花が咲き乱れ、明るい場所であると私の師匠であるリニスから聞いた。

しかし、私が知る時の庭園は常に暗い印象だ。

太陽ではなく魔力炉から生成される光のみで照らされ、花も一部を除いてほとんどが存在しない場所となってしまっている。

 

「フェイト、本当にあの鬼ババァのとこに行くのかい」

 

「アルフ、母さんをそんな風に呼んじゃダメだよ」

 

アルフは私を心配してくれている。

その理由はわかっているが、私の気分はアルフの心配とは裏腹に、少しそわそわしている。

何故なら、私の手元にはジュエルシードが7個あるからだ。

 

昨日母さんに集めるよう指示され、そして1日でこれだけ集めた。

彼が持っていた7個のジュエルシードには逃げられたけど……でも、きっと今回は褒めてくれる、そんな確信めいたものが私にはあった。

 

そして、アルフと庭園を歩き、母さんが居る扉の前へとたどり着いた。

 

 

「それじゃあ、アルフ待っててね」

 

「わかったよ……でも、酷い事されそうになったら逃げるんだよ?」

 

「うん、大丈夫だから」

 

私にはアルフが心の底から心配しているのが分かる。

でも、『少し心配しすぎ』と思いながら、私は目の前の扉へ手を掛けた。

 

 

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母さんが居る広間は、玉座と少しの備品が置かれるだけの寂しい風景だが、それ以上にこの空間にはどことない冷たさがある。

その冷たさを感じると、私の体は一瞬であるが少し強張ってしまった。

 

――大丈夫、今回は大丈夫

 

私は何度も自分に言い聞かせていた。

そして、ようやく動いた足で母さんの待つ玉座へと足を歩めた。

 

「……フェイト、貴女何しに此処に戻ってきたの?」

 

玉座から見下ろす、母さんは冷ややかな視線を向けていた。

いつものように黒いドレスを身に纏い、下した黒い髪がいつもと同じであるように。

私に向ける視線はいつもと同じであった。

 

「ほ、報告があって戻ってきました」

 

「報告?――たった1日出て行った貴女に何かできたの?」

 

「は、はいコレを」

 

私はバルディッシュから出したジュエルシード7個を母さんへと送った。

それを見た母さんは驚き、手に取って1つずつ確認し、本物であると確信したようだ。

 

「驚いたわ……フェイト、貴方もやればできるのね」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

――やった! 母さんから褒められた!

 

私は自分の頬が緩が我慢できなかった。

いつも母さんの期待を裏切っていた私が、ようやく役に立てたのだ。

その事がどうしようもなくうれしくて、堪らなかった。

 

「フェイト、その弛んだ顔をやめなさい。

言っておくけど、私の娘なら当然の事なのよ?」

 

「は、はい、すみません」

 

「……それで、報告は以上なの?」

 

いけない。

まだ報告は終わっていない。

私は緩み切った頬を引き締め、あの町で起きた事を母さんに説明していく。

私以外にも魔導士がいたこと。

母さんが襲撃した船の生き残りがいたこと。

まだ管理局は来ていないこと。

そして、ジュエルシードを持つ彼の事を母さんに説明していった。

 

話す内容は事務的なモノであった。

でも、私が話す事を母さんが聞いてくれている、というこの状況が私にはうれしかった。

何故なら、母さんと会話が続いた事は滅多にない。

そのせいか、私はこの報告が永遠に続けば良いのにと思っていた。

 

「……ジュエルシードの暴走を止めたですって?」

 

私が説明をする内容で、母さんが興味を引いたのは彼に関することであった。

そこで私はユーノ・スクライアが言っていたように、次元震あるいは次元断層になる寸前の所を彼が止めたのだと、私は説明した。

 

「そう、それでその子とジュエルシードはどこにいるのかしら。

貴女の報告通りならその魔導士から7個とその子の分でもう7個あるはずよね?」

 

母さんの表情はいつもより明るかった。

だが、逆に私は顔から少しずつだが血の気が引いていくのを感じ取った。

私は母さんの言葉を聞き、自分が彼に逃げられたという事実を伝えていなかったのを思い出したのだ。

 

しかも――

 

「フェイト、私はどんくさい子は嫌いと言っているでしょう?

早く外にいるその子をこの部屋に呼びなさい」

 

母さんは、私が彼を捕まえたものだと思ってしまったようだ。

だが、母さんからしたらそれが当然なのだろう『大魔導士プレシア・テスタロッサの娘が、魔力を持たない者を逃がす訳がない』と思っているのだから。

 

「す、すみません母さん、彼には逃げられました」

 

「――――フェイト、よく聞こえなかったからもう一度言ってくれる?」

 

私は母さんのいつも以上に冷たい言葉を聞き、体の震えが止まらなかった。

そして、口も震えてしまい、うまく言葉がでなくなってしまった。

そんな私の状態を見た母さんは、これまでに見たことない表情で私を睨んでいた。

 

「フェイト! 貴女は私がジュエルシードを集めている事を知っていながら!

ロストロギアを操るスキルを持った子供を取り逃がしたのっ!?」

 

「ご、ごめんなさ――っ!?」

 

謝ろうとした私に目がけて、何かが風を切り、私へと激痛を与えた。

身に覚えのある痛みに、恐る恐る母さんへ視線を向けると、その手には鞭が握られていた。

そして、一度では終わらない痛みが5回10回と振るわれていく中で、私は母さんに謝る事しかできなかった。

 

――ごめんなさい、ごめんさない、ゴメンナサイ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフ

 

 

 

――なんでだよ。

 

アタシは入る事の許されない扉の前で、人間モードの状態でしゃがみ込む事しかできなかった。本当ならこんな扉なんか壊して、中のフェイトを助けてやりたい。

でも、あの鬼ババァは腐ってもオーバーSランクの魔導士だ。そんな者が張った結界を私が破れないことは既に知っている。

 

『貴女は本当に役立たずね、フェイト!!』

 

『ごめん、なさい……ごめんなさい』

 

扉の外からでも聞こえる怒号とフェイトから繋がる魔力パスで聞こえる声、そして、フェイトを叩いたであろう乾いた音を聞くたびに、アタシは鬼ババァに対する憎悪を燃やしていた。

 

フェイトはたった1日でジュエルシードを7個も集めたんだ。

それなのに、たった1回あのガキんちょに逃げられただけで、何でこんな仕打ちをされなければならないんだ!

 

フェイトは元々優しい子なんだ。

狼の群れに迫害されて死んだアタシを、使い魔として生き還らせて育ててくれたんだ。

そんな良い子に何でこんな事をするんだよ……。

 

 

 

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周囲に誰の声も音も聞こえなくなってから、ようやく扉は開いた。

急いで開けた扉の中には、いつも以上に酷い状態のフェイトと玉座に座って見下す鬼ババァの姿があった。

 

「フェイト! しっかりしな、大丈夫かい!?」

 

「ア……ルフ、ゴメンね。

魔力パス……きれないから……いやな思いさせちゃって」

 

全身が痣や鞭打ちで自分が一番痛いくせに、使い魔のアタシの方を心配するフェイトを見て、握った拳から血が出るのを抑えれなった。

なんで、どうして!

 

「アルフ、それを片付けなさい」

 

「ふざけるな! これが親のする事かい!!」

 

アタシにも我慢の限界がある。

成果を持ち帰ったフェイトにこんな仕打ちはあんまりだ。

それに成果を持ち帰ってコレなら、失敗した時はフェイトが殺されるに決まってる。

 

――なら、いっそここで殺してやる!!

 

「ダ……メ、アルフ」

 

魔力パスによって、アタシが何をするのか察したフェイトが、弱弱しくもはっきりした声で私を止めてしまう。

なんで、どうしてそこまであんなヤツを庇おうとするんだい……あいつはフェイトの事を肉親だなて思っちゃいない、道具か何かとしか思ってないのに!

 

「アルフ、5日以内にロストロギアを操る子供を連れてきなさい。

能力が使えれば問題ないから、腕の一本や足の1本が無くなっても構わないわ」

 

「……フェイトの怪我が治り次第だ。

どっかの誰かがフェイトをこんな風にしちまったからねっ!」

 

怪我の状態を見る限り、半日もあれば治る。

でも、今はフェイトに休息を与えてやるべきだと判断した。

だからあえて時間が掛かる事を告げたが、あの鬼ババァは鼻で笑っていた。

 

「ふん、この程度の怪我を治すのに時間を掛けるなんて……。

やっぱり、それが作った使い魔もその程度という事ね」

 

「っ!?――プレシアッ!!」

 

「ダメ……アルフ」

 

アタシの服にしがみ付くフェイトを見ると、その必死さが伝わってくる。

そして、『母さんとアルフには喧嘩してほしくない』そんな思いがいやでも伝わってきてしまう。

どうしてもフェイトが嫌なら、せめてフェイトと鬼ババァとは一旦距離を置いた方が良い。

そうだ、こんな場所からは立ち去る方が良いに決まっている。

アタシはもはやプレシアには目もくれず、転移魔法を展開することにした。

 

――フェイト、今度は成功してくることを祈ってるわ

 

転移魔法が発動した後に聞こえた声は、ねっとりと耳に残る、まるで何かの呪いのようであった。

そして、それを聞きいたフェイトが小刻みに震えていることに気付いたアタシは、抱きしめるようにフェイトを抱え、時の庭園を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 






うん、やっぱり主人公は罪滅ぼしにもう10回脱糞してこいよ(´・ω・`)
それでフェイトの境遇に釣り合うお。




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