ほぼほぼFGOの冬木の話の一部を、視点変更してお借りした感じになります。
思いつきなので、FGOの背景を理解してないとわかりにくい脆弱仕様。
思いつきを許せる人だけ読んでくださいませ
やっと帰れる。
特異点として指定したこの冬木と呼ばれる地。
聖杯戦争の結果、この地は荒廃し聖杯を手にしたサーヴァントによって支配されている状況であった。
その上この聖杯戦争はどこか狂っていて、遭遇したサーヴァントは皆反転しており、マスターの姿はなかった。
そんな状況の中、実験段階であったデミ・サーヴァント化の成功と、唯一生存していたこの地のサーヴァントであるキャスターの協力のおかげで何とかこの無法地帯を抜け、敵の首領である黒いセイバーを打倒した。
後は聖杯を回収すれば特異点からの脱出は叶うはず、そのはずであったのに。
「れ、レフ?ウソ、よね。戻れないって。わ、わた、わたしがっ...私が死んでるって、ウソよね。ねぇレフ、ウソなんでしょ?冗談なんでしょ?」
「いいや、オルガ。私は嘘など言ってはいないさ。正しくは肉体的にだが、どの道この特異点が崩壊すれば結果はかわらない。後ろにいる彼らと違い、君には帰る身体がないのだからね」
戻れない、帰れない。一番信頼していた相手から伝えられた言葉はあっけなく私の心をへし折った。
「いや....いやあ!!そんなどうしてわたしが、どうして私がこんな所で死なないといけないのっ!やっと、やっとの思いでレイシフトまで漕ぎつけて、やっと認めて....なのにどうして...」
どうして。何で。そんな言葉が頭の中をぐるぐると廻る。思考が定まらない。身体に力が入らない。支えられずによろめいてしまう。
「そう、そうよ、レフ、レフなら何とかしてくれるわよね!だってこうして来てくれたんだからっ!」
そんな縋るものを探して視線を彷徨わせた先には聖杯を手にしたレフの姿があった。彼ならきっと私を助けてくれる。そう思って、そう信じて、ふらふらと彼のいる方へ身体を動かす。
「だめです、所長!その人はもう、私たちの知っている教授ではないです!!私よりもっと、強大な.....!!」
マシュ・キリエライトとそのマスターが後ろで何か言っているが私には聞こえない。いや、聞きたくない。
だって、カルデアでやってこれたのはレフがいたから。彼がいなければ、私の心はとっくの昔に軋轢に耐えられなくなっていた筈だから。
だから、レフの所に行かなくちゃ。私にはレフしか―――
「私が?君を殺した私が君を助ける?オルガ、それこそ何かの冗談かな」
「.......ぇ」
彼は今なんて。彼が私を殺した?そんなでも、なんで。
「爆弾は君の足元に仕掛けたのにこうして目の前に存在されるとどうしてかと疑問におもいそうになったが、実になんてことはない。肉体はもう完全に死んでいて、残った魂がレイシフトに巻き込まれただけのことだ。」
そうして薄く笑う彼は私の知るレフではなかった。いや、私が知っているレフがそもそも紛い物だったのかもしれない。
「だが、よかったじゃないか。肉体を失ったことで念願のレイシフト適性を得られたのだから。最も、マスター適正は得られなかったようだが。」
そう淡々と語る目の前の男の姿から今まで頭の中を廻っていた疑問が解ける。
アレはダメだ。アレは私の死をなんとも思っていない。
いや、実験のモルモットの様に、死をひとつの結果としか見ていない。
彼はきっと私のアニムスフィアの立場を後見人として得てカルデアという組織に取り入って何かを成したかったのだろう。
そしてそれは成された。つまり私は用済みということだ。
「ぅぁ…あぁぁ……!」
ダメだ。わかる。解ってしまう。
私がうまくいかない時に話を聞いてくれたのも、成功したとき良くやったねといってくれた事も全部、事がうまく運ぶための作業。
「あぁぁぁああああっ!!!」
むしろまだ悪意があったほうが良かった。
私が失敗したから、とてつもないミスをして彼の機嫌を損ねたから。だから殺されると言う方がまだマシだ。
でも今の私は違う。飲み終わった缶ジュースが道端のゴミ箱に無造作に捨てられるソレと変わりはない。
その行為はきっと意味はなく、私は結局誰一人にも認められてなどいなかった。
「―――っっ!!!!」
その事実が浮かんだとき、棒立ちになった身体が跳ね、後ろに跳ぶ―――
はずだった。
「おや?どこに行こうとしているのかな」
「「所長!!」」
後方に跳ねる筈だった私の体は、見えない何かに引っ張られるようにして宙に浮く。
「いや…!はっ、はなして!!」
「おいおい、それはないだろう。せっかく私が君が望んでやまなかったモノを与えあげようとしているのに」
「望んでいるもの…?」
「そうだ。君にはカルデアの所長としての座から、今回のレイシフト適性まで、私のおかげで手に入れて来れた筈だ、そうだろう?なのに君ときたら、下手に魔術師として優秀なせいか半端に成果を残したがる。今回もそのお陰で私自ら聖杯を回収しにこなければならなかった。…わかるか?お前は恩を仇で返したのだよ、オルガ」
ここにきてようやくレフは感情を露にしたように思えた。
「お陰で私はあのお方に謁見する貴重な時間を失い、ヤツらには白い目で見られる羽目になった。全部、オルガ、君がきっちりあの場で爆発に巻き込まれ死んでいなかったせいだ。中途半端に生き残ってコソコソと…!」
私を宙吊りにしながら彼は憎憎しげに私を見る。いや、私を、ではない。私を通して彼が今しがた滅し切れなかった存在、ヒトに対して憎悪を一身にぶつけてくる。
「レフっ!お前…!!」
「ダメです、先輩!今飛び出したら、先輩まで!」
後ろで今にも飛び出しそうな48番目のマスターをマシュが懸命にとめている。盾を握る手を震わせながら、泣きそうな声で。
あぁ、見ていなかったのはきっと私のほうであった。
だって彼の名前を知らない。一般募集のマスターで魔術の魔の字も知らない状態で急に爆発事故に巻き込まれ、目を覚ましたら違う時代にいて。
マスターという立場に仕立て上げられたにもかかわらず、文句ばかり言って命令を下す私に付いてきてくれた。
マシュと最後に話をしたのはいつだろう。私は命令ばかりで彼女とした会話が思い出せない。
だが彼女はデミサーヴァントになったことを受け入れて、迷いながらも先頭に立ち、私たちを守るべく闘ってくれた。
自分は認めずに認めてもらおうなど生意気にも程がある。
「何で今になって…気づくのかなぁ…」
涙があふれる。
確かに肩身は狭くつらい毎日であったが、少しくらい立ち止まってあたりを見渡すくらいできたはずだ。
なのにしなかった。望んでやまなかった癖して、どうしようもなく身勝手だった。
だからこうなるのは必然だったのかもしれない。罰が当たったのだとそう思えてしまう。気づけたのは幸運だが、そのタイミングが悪すぎる。だってこれじゃあ報われないし、このままでは意味がなくなる。
「そうだ、マシュ・キリエライト、余計なことはさせるな。今からオルガには私からこれまでの事の礼として、彼女の悲願であったカルデアスを与えてやるのだから」
身体が意思に関係なく動く。赤々と渦巻く球体に吸い寄せられていく。
触れたらダメだとわかっているけど、どうしようも出来ない。出来ることとしたら、叫ぶことだけ。
「いや!いやいやいや!せっかく、せっかく気づけたのに!やっとわかったのにぃ!なんでこんな…!こんなどうしようもない所でしか気づけないの!?」
これからだったのに。どうしようもない後悔が身を蝕む。
だがもう遅い。それでも私は叫び続ける。
「やだ、まだ認めてもらってない!まだ、人に褒めて貰ってない!まだ他人を知ってない!」
だってまだ諦めたくないから。
どうしようもなく絶望的な状況なのに。心なんてとっくに折れているはずなのに。知ってしまったら止められない。
赤が近づいてくる。飲み込まれる。
レフの高笑いが聞こえる。彼らの泣き叫ぶ声が聞こえる。
「だって、だってまだ……!この手は一度も自分の意思で闘ってすらいない!だからっ、まだ、終わりたくなんてない!!」
そうして私は――――
蒼に飲み込まれた。
FGOのアニメをみて
「あれ?このセリフどこかで…」
ってなった人は多いはず
というか、クロス要素一文しかないとか、後から気づいて愕然となりました。
こうなったらいいなぁって書いたので、
どこまで続くかわからないですけれど、週一投稿が出来ればと思っています。