ソードアート・オンライン -sight another-   作:紫光

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タイトル通りです。原作では一番に出てきたあの人の登場です。

結構すんなりと書けました。
何か誤字などがあったらご指摘お願いします。




7話『赤髪の侍』

剣の強化素材を集めようと、最前線から数層下のフィールドに顔を出すと、とある一団が見てとれた。赤を基調とした格好の一団で、カタナや槍を持って戦う様はさながら戦国時代の合戦だ。

 

「…バランスは良いけど、敵の数が多いな」

 

10人にも満たないパーティーだが、タンクやダメージディーラーらしき人物も見てとれ、バランスは良いだろう。しかし、囲むようにいる敵の数は6といったところ。適正マージンを取ってても、危うい状況ではあるだろう。

 

「…おい、そこの赤髪!手伝うか!?」

 

俺の声に振り向いた赤髪にバンダナの男は、こくりと頷いた。

 

「すまねぇ!2体…いや、1体引き受けてくれると助かる!」

「了解…っと!」

 

辺りのモンスターに向けてピックを投げる。ドスっと胴体に刺さると、モンスターの2体はこちらを向いた。

 

「悪いけど、仕留めるぞ。いいよな?」

「あ、ああ…おいあんた、無理すんじゃねえぞ!」

 

赤髪は俺が2体のタゲを取ったことに驚いたようだが、すぐさま別の敵に向かっていった。この敵は狼型のモンスターで、耐久力はそこまで高くないが、少し攻撃力が高いのと、狼同士で軽い連携を見せるのが特徴だ。俺を標的とした2体もおよそ60度ほど角度を離して陣取っている。

狼が地を同時に蹴る。2方向からの同時攻撃はなかなかに面倒だが、俺はこの層の攻略は済ませている身で、こいつらの相手も慣れたものだ。

 

「…せいっ!」

 

短い気合いと共にソードスキルを放つ。片手剣二連撃ソードスキル〈スネークバイト〉。左右に振るった剣がそれぞれ狼を直撃し、2体ともポリゴン片へと変わる。

 

「一丁上がり…っと」

「…すげえな、あんた」

 

いつの間にか赤髪が近くまで寄ってきていた。すごい、と俺を称したものの、このスピードで残りを葬ってきた彼らもなかなかの実力があるのだろう。赤髪の男は俺に向けて笑みを向けた。

 

「なあなああんた、これから暇か?もし良かったらお礼させてくれねえか?軽く奢るぜ?」

「あ、いや俺は…」

 

断ろうとした時に、目の前の赤髪の目を見た。ぜひとも奢らせてくれと言わんばかりの目を。

 

「…分かったよ。そこまでお礼とかは要らねえけど…」

「まあまあ、メシでも食おうぜって話だ。俺はクライン!あんたは?」

 

クラインと名乗った男に、俺は無愛想に答えた。

 

「アキヤだよ。行くなら行こうぜ。」

 

 

 

「…やっぱ攻略組だったか。あの剣技見たらそりゃそうだよな、って納得だ。」

 

クライン以外のメンバー…ギルド〈風林火山〉は一度帰ると言って、今はクラインと二人で近場のNPCレストランに入った。辺りに人が少ないのは幸いか。クラインは更に続けていく。

 

「俺達も攻略組目指して頑張ってんだけどよ。もうちょいかな、って所なんだよな。」

「…まあ、確かにもうちょいなんじゃねえか。」

 

そう返したのは気を遣って、というわけではない。実際、あの狼のモンスターは倒すのには若干苦労するのが定石だが、俺とほぼ同じスピードで葬って見せた辺り、実力は相当なものだろう。足りないのはレペルか場数か。

 

「だろ?攻略組に入ったらそんときはよろしくな、アキヤ」

 

クラインがニカッと笑うのに対し、俺は笑い返すことはなかった。

 

「…あいにくだけど、俺と仲良くしてもあんまりいいことは無いぞ。別のギルドとか、そういったとことの繋がりを大事にした方がいい。」

「なんでぇ。オメーといて何か問題があんのかよ?」

 

クラインの声に、俺は少しだけ小さい声で、しかしハッキリと答えた。

 

「…俺は、〈ビーター〉だ。ビギナーを見捨てて、知識を独占して。攻略組でも他でも、俺を妬ましく思ってる奴は少なくない。」

 

その言葉を言うと、目の前のクラインは俺を罵ることもなく、ゆっくりと話し始めた。

 

「…〈ビーター〉か。じゃあ礼を言わなきゃならねえな。ダチを救ってくれた礼をよ。」

「ダチ?あいにく俺は誰かを救ったことなんて…」

 

俺が否定しかけた時、クラインは首を横に振った。とんでもないと言わんばかりに。

 

「いんや、オメエは救ってくれたさ。俺のSAO最初のダチ…キリトをな」

「…キリトの知り合いだったのか」

 

俺の言葉にクラインは頷く。SAOベータテストで共に最前線を駆け抜け、第一層でクエストとボス戦を共にした男、キリト。彼との関係はあれ以降悪くはない、と言ったところか。

 

「アイツはあのチュートリアルの前にオレに色々レクチャーしてくれててよ。俺はさっきの連中と合流しなきゃだったから〈はじまりの街〉で別れたんだ。あいつ、辛そうな顔でよ…」

「…そうか。」

 

短く答えたのは、クラインの顔が悲痛そうに見えたからだった。恐らくだが、キリトも同様の話題を振ったら同じ顔をするのだろう。互いに別れるしかなかったという状況で、互いに取った行動は恐らく正しい、それでも。

 

「で、何で俺にお礼なんだ?キリトを救ったなんて覚えがねえけどな」

 

そう言うと、クラインは頭を掻いた。話すことを躊躇っていたのか、俺が振ると徐々に言葉を出した。

 

「…第一層で、キリトは自分が〈ビーター〉となる覚悟を決めたそうだ。けど、それを阻んだのはアキヤ、オメーが〈ビーター〉になったからだって聞いてる。キリトに良い行動を全部押し付けてな」

「あいにく、それは俺が勝手にやったことだ。礼を言われることじゃねえな」

 

そう言うと、クラインは頷いた。

 

「分かってる。でもアイツが無事でいれることに、オメーの影響が無かったとは言い切れねえだろ?」

「それは…はあ、もうそういうことでいい。」

 

このクラインという人物は、それこそいいやつなのだろう。先程の集団をまとめる姿からも、人が良く、今のこの姿からも、義に厚い男だと言うことは伺い知れる。だから話を切った。これ以上話してもいたちごっこになりそうだったからだ。

 

「オレも力になれることなら協力するからよ、アキヤ。オメーも何かあったらオレんとこ来いよ。フレンドになっとこうぜ。攻略のことも色々と聞きてえしよ」

「…ああ。」

 

一層突破時0だったフレンドも、少ないながら人はいるようになった。ベータテストから戦線を共にするキリト、キリトと共に攻略を進め、時折話すこともあるアスナ。一層で俺を誘ってくれたエギル、情報の交換をするアルゴ。そして、今回のクライン。皆、俺が〈ビーター〉であっても変わらず接してくれる人ばかりだ。

 

「うっし!じゃあ次は攻略組で会おうぜ!ちゃっちゃとオメーやキリトに追い付いてやるからよ!」

「…別に、ゆっくり来いよ。死んじゃ元も子もねえ。」

 

それだけ言うと、ちょうど良く料理なども無くなったので、俺は席を立った。クラインも立ち、店を後にする。

 

「んじゃ、今日はあんがとよ。また会おうぜ、アキヤ」

「ああ。最前線で待ってるぜ、クライン」

 

そう言うと、互いに別の方向へ歩き出す。俺は最前線へ、クラインは仲間の元へ。

次は一緒に戦ってみたいものだ。そんな思いを馳せながら、俺は転移門で最前線の街の名前を唱えた。

 

 




少し短いでしょうか?

次回は原作に準拠した話になるかと思います。

次回の更新も頑張りたいと思います。

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