ソードアート・オンライン -sight another- 作:紫光
2ヶ月程空いてしまいました。忙しかったり、書いたはいいものの納得いかなかったりで、書き直していたりしたらいつの間にかだいぶ空いてました。
元々不定期ではあるものの、辞めることなく続けていきたいと思います。
今回は久しぶりということもあって、かなり短いです。
「キリトくん!キリトくん!」
アスナが呼びかけながら抱き抱えると、キリトはすぐに目を覚ました。恐らく極限の集中状態が終わったことによる一時的なものだろう。休めば問題はないはずだ。
「バカっ…!無茶して…!」
「…あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ」
そう言うと、キリトはこちらを見た。俺を見ると、軽く笑みを浮かべた。
「アキヤ、最後ありがとな。あれが無かったら俺は今ここにいないかもしれない」
「…そんなことはねえよ。俺の手助けが無くてもお前なら勝てたと思うぜ。いいからとっとと回復しやがれ」
俺が言うと同時に、アスナがキリトの口に小瓶を突っ込んだ。キリトが飲み干すと、アスナはキリトの肩に沈み込むように突っ伏した。
クラインがこちらに寄ってきた。〈風林火山〉の連中も後ろに続いている。
「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ…こんなのが攻略って言えるかよ。死んじまっちゃ何にもなんねえだろうが…」
そこで一度切ったクラインは首を振り、切り替えるようにキリトに聞いた。
「そりゃあそうと、オメエ何だよさっきのは!?」
「…言わなきゃダメか?」
「ったりめえだ!見たことねえぞあんなの!」
一瞬の沈黙。キリトは少し控えめに答えた。
「…エクストラスキルだよ。〈二刀流〉」
「しゅ、出現条件は」
「解ってりゃもう公開してる」
そうだろうなあ、と唸るクラインに、俺も同感だった。クラインの〈カタナ〉や〈体術〉を含むエクストラスキルは大まかにではあるが条件は明らかになっている。例外が、ユニークスキル。ヒースクリフの〈神聖剣〉だ。今まであの男のみとされてきたユニークスキル使いの二人目が目の前に現れた訳だ。
「ったく、水臭ぇなあキリト。そんなすげえウラワザ黙ってるなんてよう」
「スキルの出し方が判ってれば隠したりしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ」
ふむ、とクラインは大きく頷いた。そして、目の前の二人をにやりと笑う。
「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレは人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうなあ。それに…まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」
「勝手なことを…」
そう言って、クラインは〈軍〉の方へ向かった。俺はキリトに聞いた。
「俺はこの後75層の転移門アクティベートしに行くけど…キリトはどうする?文句なしにMVPだしやるか?」
「いや、任せるよ。俺はもうヘトヘトだ」
俺が振り向くと、〈軍〉の連中に話をつけたらしいクラインと合流し、奥の扉へと向かうと、扉の前でクラインは振り返った。
「その…キリトよ。おめぇがよ、軍の連中を助けに飛び込んでいった時な……オレぁ、なんつうか嬉しかったよ。そんだけだ、またな」
そう言って、扉を開けて、75層へと向かう。
何事もなく主街区に着くと、特にどこかに寄ることもなく転移門に到着した。
「ほれ、アキヤ。お前がやれよ。キリトを抜けばお前が今日のMVPだからよ。」
「…んじゃ…」
クラインの提案に、俺が転移門に触る。すると、転移門は光を灯した。アクティベートされた証だ。
「…うっし!じゃあ75層攻略も頑張ろうぜ!今日はゆっくりして、明日からな!」
クラインの一声に、次々と転移門に〈風林火山〉の連中は消えていった。クラインもやがて転移門に消えていき、俺は75層転移門近くの柱に寄っ掛かった。
「やっと、4分の3…か」
今回はキリトがいたから何とか勝てた。50層ではヒースクリフが敵のタゲを取ってくれたから勝てた。こうして考えると、〈ユニークスキル〉使いが今後の戦況を左右するだろう。あの二人の戦力が不可欠になる。
「大変だねえ…っと、アルゴに一応75層開通したって送るか…」
アルゴにメッセージを端的に送ると、俺も今日は休もう、とねぐらへと足を進ませた。
翌日。48層〈リンダース〉にある〈リズベット武具店〉に俺は来ていた。昨日のボス戦で耐久値を大幅に減らした剣のメンテに来ていたのである。
「…はい、終わり!」
「サンキュ。しっかし、すげえ騒ぎだな…」
リズから剣を受けとり、お代を渡す。昨日のことは瞬く間にニュースとなり、アインクラッドではその話題でもちきりだ。
「まあそうでしょうね。『〈軍〉の大部隊を全滅させた悪魔!それを単独撃破した二刀流使いの50連撃!』とか言われてれば。」
「大部分は合ってるけど50連撃は明らかに嘘だな。行っても20位じゃなかったか…よくは見てねえけど」
さて、と出口へ向かう。リズはそんな俺にまた来なさいよ、といつも通りの挨拶をした。
リズに別れを告げ、俺は50層へと向かう。フレンドのキリトの位置を追跡すると、どうやらエギルの店にいるようだ。
「…シケ込んだか」
これだけ有名になれば逃げるのは必至。大方エギルの店の2階にでも逃げ込んだのだろうと推測し、48層の転移門に向かった。
50層が煩雑しているのはいつものことだが、先日訪れた雑貨屋に顔を出すと、店主はいなかった。予想通り2階にいるらしい。まあノックも要らないか、と思いながらドアを開けると。
「…するか!」
「おわっ…と」
目の前に飛んできたものを何とかキャッチする。紫色の障壁が〈圏内〉だと言うことを告げるが、キャッチしたため元々ダメージはない。
「…ティーカップ?」
「わ、悪い、アキヤ」
飛んできたのはカップ。声の方向を見ると、噂の人物…キリトが手を挙げて謝っていた。こちらを後ろ向きに見るのはエギル。どうやら鑑定の途中だったようだ。
「おう、アキヤ。今日はどうした?」
「買い取りを頼みに来たんだが…今途中か。じゃあそれ終わったら頼む」
エギルにそう返すと、ティーカップを机の上に置き、俺はキリトと同じテーブルに腰かけた。
「よう、有名人」
「勘弁してくれ…転移結晶まで使って逃げてきたんだから。やっぱすげえ田舎フロアの物件探しとくか…」
そうぼやくキリトだが、ここから動く気配はない。そういえば、と昨日の連れの話を振ってみた。
「アスナは?」
「ギルドに休暇届けを出しに行ったんだけど…待ち合わせの時間からはだいぶ経ってるんだよ。やっぱ付いてった方が良かったかな」
なるほど、と答えると同時に、階段の方から音がした。勢いよく扉が開かれる。
「よ、アスナ…」
キリトの声がやや落ち気味だったことに、俺もそちらを見た。そこに立つアスナの顔はやや青ざめていて、平常とは言いがたい。
「キリトくん…どうしよう、大変なことになっちゃった…」
「…俺たちは外すか、エギル。ついでに下で買い取り頼むわ」
エギルと共に下に降りると、昨日のボス戦で得たドロップ品などをエギルに買い取ってもらうことにした。数分後、キリトとアスナは降りてきた。
「お、終わったのか」
「ああ。ちょっと〈グランザム〉まで行って話してくる。」
〈グランザム〉は55層主街区。鉄の街と呼ばれ、あるものと言えば…〈血盟騎士団〉本部。
「あの男か…大丈夫なのか?」
「まあ、話してくるだけだよ。…またな。エギル、世話になった。」
そう言って、キリトはアスナと共に出ていった。俺は思ったことをそのままエギルに聞くことにした。
「…本当に話すだけで済むのかね。」
「さあな。あいつのことだし…ホラ、鑑定終わったぞ。」
「サンキュ。じゃ、またな」
エギルに別れを告げ、今日の攻略どうしようかなあ、と考えていた。
とりあえずSAO偏は完結まで走り抜けたいと思っています。
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