ソードアート・オンライン -sight another-   作:紫光

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14話です。今回は少し長めです。

現状、アインクラッド編のプロット?のような物はあらかた出来ていて、それまでは早めに投稿できるかと思っています。




14話『情報収集』

「おつかれ。…誰も通ってないか。ありがとう」

 

キリトがロープを回収した後、塔の入り口を封鎖してくれていたプレイヤーに礼を言って外に出ると、外はまだざわめいていた。俺たちが塔から出ると、視線が徐々に集まる。

 

「すまない、さっきの一件を最初から見てた人、いたら話を聞かせて欲しい。」

 

キリトの声に、女性プレイヤーが一人手を上げた。装備を見る限りは中層のプレイヤーだろうか。アスナが名前を聞くと、か細く〈ヨルコ〉と名乗った。

 

「…悪いけど、幾つか質問するから答えて欲しい。もちろん無理にとは言わない。答えられる限りでお願いしたい…大丈夫かな」

 

俺が言うと、ヨルコは震えながらも頷いた。俺、キリト、アスナが質問をして、得た情報は以下の通り。

 

・ヨルコは、殺されたフルプレートアーマーの男、〈カインズ〉とは元同じギルドで、たまにパーティを組む。今日も夕飯を食べに来ていた。

・広場ではぐれたあと、教会からカインズが教会から降ってきて宙吊り。槍は刺さっていた。その際に、後ろに人影のようなものを見たと供述。見覚えはなし。

・カインズが狙われた原因に関して心当たりはなし。

 

以上の点を聞くと、最寄りの宿場にヨルコを俺とアスナが送り、残っていた攻略組のプレイヤーにキリトが説明をして、再び3人は集まった。

 

「さて…次調べる物って言ったら…あれか。」

 

俺の言葉に、アスナが頷いた。続けて俺の言葉を補足するように話し出す。

 

「ロープとスピアね。出所が分かれば犯人が追えるかも。物証から行ければいいんだけど…」

 

そこで切ったのは、ここで必要なスキル…〈鑑定〉スキルをどうするか、ということだろう。キリトはアスナを見て尋ねた。

 

「おまえ、上げてるわけないよな」

「こいつが上げてたら驚きだな」

 

俺が続けると、アスナはじろりと俺たちを交互に見た。

 

「君らもでしょ。…ていうか、〈おまえ〉とか〈こいつ〉ってのやめてくれない?」

 

急な話題の変換に、俺たちが首を傾げて2秒後、キリトが我に返ったように声を出した。

 

「…あ、ああ。えーと…〈貴女〉?」

「…〈副団長〉とか?」

「…〈閃光様〉?」

 

俺とキリトが交互に言うと、最後のキリトの言葉にアスナの視線がより厳しくなった。確かアスナのファンクラブの呼称だったか…機嫌を悪くしたのか、顔を背けたアスナが言った。

 

「普通に〈アスナ〉でいいわよ。さっきそう呼んでたし。」

 

本人の許可を得たので、これからはそう呼ぼうと決めた所で、話題を戻すことにしたキリトが声を出した。

 

「で、鑑定スキルだけど…フレンドにアテは?」

「友達の武器屋やってる子が持ってるけど時間が…アキヤくんは?」

 

今の時間は武器屋はメンテの依頼が多いとアスナは踏んだのか、俺に振ったが、あいにく俺のフレンドの少なさは異常な程だろう。何せ、目の前の二人を入れても一桁なのだから。

 

「…一人知ってるけど、二人も知り合いだろ。攻略組だし。」

「…じゃあ、そこに行くか。忙しいかは…知らん」

 

そう言うと、速攻でメッセージを打ったキリトが、容赦なく送信ボタンを押した。

 

 

50層主街区、〈アルゲード〉。目的地に着いた俺を、どっかりと大きな背中で迎えた店主に声をかけた。

 

「よお、久しぶりだな、エギル」

「んお?アキヤじゃねえか!キリトから連絡は来てるけど、お前は珍しいな」

「悪いな、俺もキリトの連れなんだ。買うのはまた今度な」

 

一瞬嬉しそうな表情をした店主は、キリトの名が出ると険しい表情を浮かべた。この店主は一層攻略からの知り合いで、俺やキリトがよく世話になる商人兼斧使い、エギル。店を開いてからも時々顔は出すようにはしている。

当のキリトたちは途中で買い食いをしていたので遠慮なく置いてきたが。

 

「うーっす来たぞー」

「…客じゃないやつに〈いらっしゃいませ〉は言わん。」

 

キリトが悪びれる様子もなく入ってくると、エギルは店にいた人を、今日は閉店だ、と言って追い出した。その後も厳めしい面をしていたが、とある人物の登場でそれはだらしのない顔に変わった。

 

「お久しぶりです、エギルさん。急なお願いで申し訳ないんですけど、火急に力を貸して頂きたくて…」

「任せてください。」

 

そう即座に答えたエギルに、今度買いに来る日をもうちょっと遅らせようかと考えた。

 

 

 

2階に上がり、事件の概要を聞いたエギルは当然かのように尋ねた。

 

「圏内でHPがゼロになった…デュエルじゃないのは確かなのか」

「デュエルのウィナー表示が数十人でも発見されてない、心当たりもなし、証人の証言で〈睡眠PK〉の件もなし、だ。デュエルは無理と言って良い」

 

俺の言葉に、キリトとアスナが頷く。次いで、キリトはウィンドウを操作しながら続けた。

 

「突発的なデュエルにしては遣り口が複雑だし、事前に計画されたPKだろう。そこで…こいつだ。」

 

例のロープをキリトが実体化してエギルに渡すと、エギルはそのロープを指でタップした。〈鑑定〉メニューをエギルが選べば、スキルを持っている彼の目には情報が映るだろう。

 

「…残念ながら、NPCショップの汎用品だな。ランクも高くないが、耐久度は半分ほど減ってる。」

「まあ、ロープに関しちゃそれだけ分かれば充分だろ。…本命はこっちだからな」

 

続けてキリトが出したのは、例の槍。黒い同一素材の金属で、柄にびっしりと逆棘が生えているのが特徴の武器だ。エギルが鑑定すると、エギルはシステムウィンドウを見ながら答えた。

 

「PC…プレイヤーメイドだ。〈Grimlock〉…〈グリムロック〉だな。聞いたことねえし、少なくとも一線級の刀匠じゃあねえ。固有名は…〈ギルティソーン〉」

 

罪のイバラとでも訳される武器にしばらく皆が無言だった。人の意思が介入しないシステムのこの世界で、それだけには人の意思があるように思えたからか。

 

「話を聞きに行くんだけど…何とも、話したくないな。」

「…まあ、情報料を請求されたら折半でいきましょ。まずは生きてるかどうかを〈生命の碑〉で確認してからね」

 

そう言うアスナたちは一度一層に降りるようで、立ち上がり始めた。

 

「…悪い、ちょっと別行動して良いか。ちょっと確かめたいことがあるんだよ」

「あら、じゃあそっちに行きましょうか?」

「いや、もしかしたら空振りになるかも知れないし、そっちはそっちで動いてくれよ。報告はちゃんとするから。明日昼辺りに合流して情報を交換しよう」

 

そう言うと、アスナ達は渋々と俺の別行動を了承した。アスナ達が転移するのを見送ると、俺はゆっくりと歩き出す。人目が付かない路地に入ると、辺りから5、6人プレイヤーが出てきた。

 

「…やっぱな。久しぶりだな、あん時は30人くらいいたけど…また吹っ飛ばされたいのか?DDAは」

 

DDA…〈聖竜連合〉のプレイヤーが俺を取り囲む。エギルの店に入る前に、何やら嫌な予感がしたので、こうして誘き寄せて見たわけだ。DDAとは昨年のクリスマスにデュエルを20戦程して、それ以来特に仲も良くはないのだが。一人が口を開いた。

 

「…シュミットさんからの指令だ。『今日の事件の武器を持ってるなら寄越せ。』それだけだ」

「シュミット…ああ、あのランス持ったやつか。あいにく俺は持ってねえよ」

 

記憶からシュミットを引っ張り出してから答えたが、恐らくこいつらは指令だけ聞いて事情は知らないのだろうか。目の前にいる人物は訝しげな表情をしている。

 

「…何だよ、本当に持ってねえよ。それでも不満なら、力づくでもいいぜ?俺の二つ名をつけたのはあんたらなんだから、怪我しねえ内に帰った方が身のためだと思うぞ?」

 

俺の二つ名…〈雷剣〉は、クリスマスに俺と闘ったやつが俺を『雷みたいに剣を振る男がいた』と言ったのが始まりだとアルゴから聞いた。俺と闘ったのはDDAの奴らだけなのだからそれ以外にはあり得ないだろう。

 

「…退却。」

 

目の前の男が短く言うと、辺りの団員は素早く捌けていった。それを見届けると、俺は短く息を吐いた。

 

「シュミット、ね…また新しい人物が出てきたな。」

 

カインズ、ヨルコ、グリムロック、シュミット。この四人の共通点や今回の事件との関連性。分からないことばかりだ。明日またアスナやキリトと情報を交換しなければならないだろう。

明日までにもう一度情報を整理しておくか。と慣れない頭を動かし始めた。

 

 

 

翌日、時刻は11時頃。俺は50層主街区にそのまま顔を出した。事前にヨルコに話を聞いたらしいアスナとキリトにこちらも軽く情報を話す。

 

「やっぱりDDAはアキヤの方にも来てたか。俺の方にも来たよ。シュミット本人だったし、あの武器から情報ももうそんなに取れないだろうから渡したけど」

「まあDDAのそいつが犯人…ってのは無いだろうな。回収するなら最初から持ち去るだろうし、わざわざ回収に来るメリットもない。」

 

俺とキリトがシュミットが犯人の線を大分薄くした所で、俺はアスナから聞いたギルドのことが気になっていた。

 

「ギルド〈黄金林檎〉…関係者が全員かつて所属していて、レアアイテムを売りに行ったリーダーの死亡によって解散した…か」

「ええ、死因は〈貫通属性ダメージ〉。恐らく睡眠PKでしょう。関係性は濃厚だと思うわ。…それで、次は圏内PKの手口を検証していこうって話になったところ」

「うーん…それについては俺も気になる点はあるけど、システムに詳しくないと解決できなさそうなんだよな…」

 

俺の言葉に、キリトはニヤリと笑みを浮かべ、アスナははあ、と憂鬱そうに溜め息を吐いた。。キリトは指を鳴らし、得意気に言った。

 

「さすが、俺たちと同じ結論に着いたな。そこで、スペシャルゲストをここに呼んでるんだ」

「スペシャルゲスト?システムに詳しい知り合いなんていたか?」

 

俺が記憶の人物を漁ると、確かに一人思い当たる。しかし、その人物を呼び出すとは、目の前の男はどれだけの度胸があるのだろうか。

 

「…まさか…〈血盟騎士団長〉とか言わないよな?」

「当たりよ…はあ…団長を呼び出すなんて…」

 

アスナがより一層憂鬱そうにする。直属の上司を呼び出すとは気が引ける行為だろう。呼び出したのは恐らくキリトだろう。今回のことが、彼女の今後、負担にならなければいいが…

 

「…まあ、知識を貸してくれれば助かるけどさ。アスナももうちょっと軽く考えようぜ。呼び出したのはキリトなら、全責任はキリトにあるってことで」

「ちょ、おい!何でそうなるんだよ!?」

「いや、俺なら最低でも〈グランザム〉までは出向くぞ。」

 

そう言うと、キリトはうっと言葉を詰まらせた。大方ここに呼び寄せたのだろう。煩雑極まるこの街に。

 

「…ま、まあヒースクリフの分のメシは奢るって言ってるから、それで何とか…」

「へえ。…じゃあ向かおうぜ。流石に待たせるのは気が引けるし」

 

アルゲードの迷路のような街を、広場目掛けて歩き出したが、この後会う男もまたどうにも苦手なんだよなあ、とどうにも気が進まなかった。

 

 

 

まるで杖でも持ってるのか、というような、魔法使いのようなローブを着て、その男は現れた。SAO最強の男、〈神聖剣〉ヒースクリフ。突然アスナがびしっと敬礼をした。

 

「突然のお呼び立て、申し訳ありません団長!このバ…いえ、この者がどうしてもと言って聞かないものですから…」

「何、ちょうど昼食にしようと思っていたところだ。かの〈黒の剣士〉キリト君にご馳走して貰え、更に〈雷剣〉アキヤ君と同席する機会など、そうそうあろうとは思えないしな。しかし、夕方までで頼むよ」

 

そう滑らかに答えるヒースクリフを見て、キリトは肩をすくめて答えた。

 

「あんたにはここ、50層のボス戦で10分もタゲ取ってもらった礼をまだしてなかったしさ。そのついでに、ちょっと興味深い話を聞かせてやるよ」

 

そう言って、キリトは歩き出し、俺たちもそれに続く。アルゲードを右往左往すること5分。薄暗い店の前でキリトが止まると、アスナは辺りを見て、店を眺めながら言った。

 

「…帰りもちゃんと道案内してよね。わたしもう広場まで戻れないよ」

「俺もだ。やっぱホームでもないと覚えてられないなここは」

「不安なら道端のNPCが10コルで広場まで案内してくれるから頼むといい。その金額すら持ってない場合は…」

 

俺の言葉に注釈を加えたヒースクリフが両掌を持ち上げ、店へと入っていく。それに続いて店を見渡すと、全くの無人。安っぽいテーブルがいくつかと、カウンターがこれまたいくつか。その中の、四人がけのテーブルに座る。俺の隣がヒースクリフなのは気にしないでおこう。アスナが氷水を一口含んで呟いた。

 

「なんだか…残念会みたくなってきたんだけど」

「気のせい気のせい。それより、忙しい団長どののためにさっそく本題に入ろうぜ」

 

キリトが言うと、〈アルゲードそば〉なるものを頼んだ。説明は主にアスナが行い、キリトや俺は多少の補足を入れる程度。

 

「…そんなわけで、ご面倒おかけしますが、団長のお知恵を拝借できれば、と…」

「ふむ…ではまずはここの二人の意見から聞こう。キリトくんはこの〈圏内殺人〉の手口をどう考えているのかな?」

 

アスナの締めくくりを聞いたヒースクリフは、まずキリトに話を振ると、キリトは指を三本立てた。

 

「大まかには三通りだよな。1つ目は正当な圏内デュエルによるもの。2つ目は、既知の手段の組み合わせによるシステム上の抜け道。3つ目は…アンチクリミナルコードを無効化する未知のスキル、あるいはシステム」

「3つ目の可能性は除外してよい。もし君らがこのゲームの開発者なら、そのようなスキルを設定するかね?」

「しないね。フェアじゃない。まず、そんなスキルがあるならデスゲームなんて全員死亡で終わりだ」

 

キリトの発言に即答したヒースクリフ。その発言にまた即答した俺とテンポよく会話が進む。俺の発言に、ヒースクリフがフッと笑った。

 

「ほう。では、次はアキヤくんの意見をお聞かせ願えるかな。何ともキリトくんとは違う見解がありそうだ」

 

そう言ったヒースクリフの声に、俺は目の前の二人の顔を一瞥して、水を少し飲んでから話し出した。

 

「俺が考えた可能性は2つだ。とは言っても、キリトと同じ〈システム上の抜け道〉と〈未知のスキル〉。まあ、2つ目は今除外したから無しでいいだろう。」

「…〈圏内デュエル〉の可能性は?」

 

尋ねたアスナに、俺は首を横に振った。

 

「デュエルってのは勝敗を決するもの…つまり、〈win〉と〈lose〉、まあ〈draw〉も含めて、結果を出すものだと考えた。つまり、勝った方にも負けた方にも結果が伝わる位置に表示は出ないとおかしいだろ。カインズの位置は固定されてて、あれだけの人がいて表示が見つけられないならデュエルではないと考えたが。」

「ほう。確かに。ちなみにだが、デュエルのウィナー表示は決闘者二人の中間位置。離れていた場合は双方の至近にウィンドウが表示される。」

 

ヒースクリフの補足によって、俺の理論が証明されると、残るは〈システムの抜け道〉の線しか残されていないが、やり方事態は闇の中のままだ。

 

「槍…か。あの槍ってランクはそこまで高くなかったよな、アスナ?」

「ええ…まあ、攻略組の武器よりはかなり劣ると思うけど、それがどうかした?」

「あのショートスピアでガチガチのタンクのHPをどこまで削れたもんかな、って思ってさ。」

 

俺の言葉に、キリトは少し考えてからその方法を示唆した。

 

「なるほど。圏外でカインズのHPを全損させてから何らかの手段…回廊結晶とかでテレポートして、実際にHPバーが減りきる前に窓からぶら下げる…か。何とも面倒な手段ではあるけど、どうなんだ?」

「…不可能ではない。が、高ランクでないショートスピアで中層のタンクを1撃死させるとするなら、現時点でレベル100には達しているだろう」

「ひゃくぅ!?い、いるわけないでしょ。」

 

素っ頓狂な声を出したアスナに驚くと、キリトは諦め悪く言い返した。

 

「…ステータスの問題じゃなくて、スキルの強さってセンもあるぜ。例えば、さ…じゃない、二人目の〈ユニークスキル〉使いが現れた、とかさ。」

「ふ…もしそんなプレイヤーが存在するなら、私が真っ先にKoBに勧誘している」

 

僅かに笑ったヒースクリフの声に、一同無言になった。その瞬間を計ってか偶然か。店主が〈アルゲードそば〉を四つテーブルに置いてのそのそと戻っていった。

 

「…なんなの、この料理?ラーメン?」

「…じゃねえのか?」

「似た何かって答えとくよ」

 

アスナ、俺、キリトの順に声を出し、ヒースクリフは無言で、〈アルゲードそば〉を口に運ぶ。ズルズルという音が暫し無人の店内に響いていた。

 

「…で、団長どのは何か閃いたことはあるかい?」

「…これはラーメンではない。断じて違う。」

「それに関しては全面的に同意する」

 

隣の男に、スープまで飲み干しておいてそう言うか、と思いつつも、俺もラーメンではないという件については同意した。ラーメンにしては何とも侘しい味だ。それに続けて、ワリバシを置いたヒースクリフは、続けて話した。

 

「この偽ラーメンの味の分だけ答えるならば、現時点の材料だけで、〈何が起きたのか〉を断定することは出来ない。だが、言えるとするなら…この事件に関して絶対確実と言えるのは、君らがその眼で見、その耳で聞いたもの…一次情報だけだ。つまり、己の脳がデジタルデータとして受けとることが出来るものが信じることができるものだ」

 

そう言って、ヒースクリフは、立ち上がり、ご馳走さまと言ってアルゲードの喧騒へと消えていった。

 

 

それから数分。街にいる俺たちは再び話し合うことにした。

 

「…お前ら、さっきの意味分かった?」

「…うん。アレだわ」

「何となくはな」

 

キリトの問いにアスナと俺の順で答える。そう言うと、アスナが続けて答えた。

 

「〈醤油抜きの東京風しょうゆラーメン〉。だからあんな侘しい味なんだわ。…決めた。わたしいつか必ず醤油を作って見せる」

 

いきなりの言葉に、俺もキリトも一瞬呆けた。キリトが聞きたいのはそれでは無かったらしく、今度は俺に視線を向けてきた。

 

「…一次情報だけ信じることができるってことは、二次情報…伝聞で聞いた話は鵜呑みにできないって話だろ。」

「ええー?この場合だと二次情報はギルド黄金林檎の件になるけど…ヨルコさんを疑えってのか?」

「うーん…にしても、材料が足らない。PKにしても、黄金林檎の件についても。」

 

キリトの疑問に俺がそう答えると、ようやくラーメンの件から考えが離れたらしいアスナが頷いていた。

 

「…じゃあ、もう一回関係者に直接話を聞きましょう。アキヤくんはヨルコさんに聞きたいことがあるなら聞いてきたら?私たちはもう一人に聞いてくるから」

「…誰?」

「もちろん、この人から槍をかっぱらってった人よ」

 

 

 


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