ソードアート・オンライン -sight another-   作:紫光

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初投稿です。誤字や脱字等もあるかと思いますが、読んでいただけたら幸いです。


1章:Sword Art Online
1話『始まりの日』


2022年11月6日、初のVRMMOと呼ばれるゲームがサービスを開始した。名を〈ソードアート・オンライン〉。1万人という人を仮想世界の巨城、〈アインクラッド〉へと招き入れたそのゲームは、製作者…茅場晶彦という天才の手によって、ログアウト不可能。HP全損=現実世界における死、というデスゲームへと変化した。

戸惑い、嘆き、怒り。そんな人々の感情がひしめき合う〈はじまりの街〉の広場からさっさと抜け出した俺は、走っていた。〈圏内〉を抜け、死と隣り合わせの世界へ。

 

俺…プレイヤーネーム〈アキヤ〉がSAOにダイブしたのは、母親からのプレゼントとしてナーヴギアを貰ったからだ。ゲーマーとして俺は歓喜した。ベータテストにも幸運に恵まれ当選し、日夜ゲームに励んだ。

もちろん、その知識を披露して、初心者を導くことも可能だが、まずは俺自身が強くならないと意味がないと考えた。この先のホルンカという村のクエストで片手剣を手に入れ、レベリングをして。先陣を切る。

 

「…無理せず付いてきてくれればいいんだけどな…そのためには俺が強くならなきゃな」

 

ニュービーがどれだけ生き残ってくれるか。MMORPGとしてボスに挑むには人数も必要だ。そのために、序盤の危険な橋くらい渡ってやろう。そして情報屋辺りに情報を渡せば、死亡者は増え続けるということは無くなると信じて。

それが、ベータテスターとして俺が進むべき道だと決めた。決意を胸に、ホルンカへ走る足に力を入れた。

 

 

 

ホルンカの〈森の秘薬〉クエストで〈アニールブレード〉という片手剣を手に入れ、背中に装備すると、入り口で一人の少年と会った。背は俺とほぼ同じだが、痩せ身で女の子っぽい顔をしている。

 

「…あんたもβテスターか」

 

俺が声をかけると、少年は一瞬ピクリと足を止めた。この早期からホルンカのこのクエストを受けに来るのは余程運が良くなければβテスターだと推察できる。

 

「ああ。あんたもそうだろ?もう終わったのか…」

「まあな。〈花つき〉の確率自体は変わってねえみたいだし、根気よくやるんだな。安全第一でな。」

 

それだけ言うと、俺は再び歩き出そうとする。しかし、その足を止めたのは、少年の声だった。

 

「…なあ、一緒にやらないか?レベリングにもなるだろうし。二度手間になるのは否定しないけど…」

「…まあ、いいだろう。勝手に死なれても目覚めが悪いしな。このクエストだけ、一緒にやってやるよ。俺が〈花つき〉を見つけたらお前にやる。」

 

決まりだな、と言って少年が名乗り、俺も名乗ると、二人は共に不敵な笑みを浮かべた。

 

「…なるほどね、確かβテストでも片手剣使いだったな…キリト」

「ああ。お前とはまた組んで見たかったんだよ…アキヤ」

 

 

βテストで三日目。俺はとあるアバターに声をかけられ、パーティーを組んだ。名前は〈Kirito〉。βテストで徐々に頭角を現していく彼と組んだ時は、戦闘がかなり楽になったのは覚えている。そんな彼とは、ベータテスト最終日まで、前線を共に走り抜ける良きライバルだった。

 

 

そんな再会からおよそ20分。二人で20匹余りの〈リトルネペント〉を狩るが、未だ〈花つき〉は姿を見せない。キリトがちらりとこっちを見て聞いてきた。

 

「出ないな…アキヤは何分くらいかかった?」

「俺は40分くらいかな…βでこの辺は大分狩ってたからそこまで苦戦はしないけど。運も関係してくるからな…」

 

21、22体目となるネペントをキリトと同時に葬ると、ファンファーレが響いた。同時に、キリトと俺の体が金色のライトエフェクトに包まれる。

パーティーを組んでいないのは、このクエストが一人用であるのと、キリトが一瞬の躊躇いを見せたからであった。俺もそこまでパーティープレイが得意なわけじゃないので、別々のソロとして、俺はキリトの手伝いをしている。

 

「おめでとう、キリト」

「ああ、アキヤこそ。」

 

二人でレベルアップを讃えながら、ステータスポイントを割り振る。少しだけ敏捷寄りの、バランスタイプを目指して振ると。

 

「…誰だ?」

 

〈索敵〉システムに1つの反応。モンスターではないな、と思い振り向くと、一人の少年が立っていた。キリトは一瞬ビクリとしていた。

 

「ご、ごめん。驚かせたかな。…レベルアップおめでとう」

 

真面目そうな少年は片手剣にバックラーというセオリー通りの片手剣使いのようで、〈コペル〉と名乗った。見たところ彼もベータテスターか。

 

「せっかくだから、クエ、協力してやらない?君は…終わってるんだね、彼を手伝ってるのかな?」

 

俺の装備しているアニールブレードを見て言ったのか、コペルの問いに、俺は頷きも首を振りもしなかった。

 

「いや、俺はレベリングしてるだけだよ。まあ、花つきはこいつに押し付けるから手伝ってるとも言えるのかな」

「えーと、コペル、だったよな。俺は…キリト。こっちはアキヤ。まあ胚珠を2つ出すまでなら…」

 

それで構わない、というコペルと共に狩りを再開し、3桁はとうに登っただろう、と思ったその時。キリトとコペルがとある方向を見ていた。そちらに目を向けると、ゴツゴツとした青いポリゴンが積み重なり、モンスターが湧出する前兆が見てとれた。3人で眺めること数秒。ネペントはその全貌を漸く現した。頭上に花をつけたネペント…〈花つき〉が。

 

それと同時に、俺たちを挟むようにしてネペントが2体湧出した。全員で〈花つき〉に行ってもいいが、音に気付かれて背後を取られるのは危険か。そう考えた俺は、キリトとコペルに小さく声を出した。

 

「…こっちは受け持つから、行ってこいよ」

 

それだけ言うと、地を蹴り、2体の気を引く。相手の蔦を軽々と避け、ソードスキル〈スラント〉で一匹を葬る。硬直が解けると、続けて〈ホリゾンタル〉でもう一匹も葬る。

 

「…さて、キリトたちは…」

 

振り向こうとしたその時。パアァン!という破裂音が響き、体に仮想の冷や汗が走った。直後、辺りにカラーカーソルが続々と現れる。キリト達の方を見ると、キリトが呆然と立っているのが見えた。

今の音は、リトルネペントの中でも、〈実つき〉と呼ばれるモンスターの〈実〉を割ったときの音だろう。〈実〉を割ると、凄まじい臭いが立ち込め、辺りのネペントを呼び寄せる。βテストでもうっかり割ったパーティーがいたらしいが、その結果は、全員が死亡し、はじまりの街に死に戻りしたと記憶している。

 

「…コペルが割ったのか。そうすると…」

 

MPK、という言葉が頭をよぎる。モンスターを他人に擦り付け、レアアイテム…この場合は〈胚珠〉を奪おうとしたのか、俺の剣を奪おうとしたのか。

 

「何にせよ、この状況の打破が先だな。…さて、やってやるか。まだ死ぬわけにはいかねえんだよ。茅場の顔面に一発でも入れてやりたいんでな」

 

剣を握り、ネペントの群れへ突っ込んだ。

 

 

 

何分経ったかは定かではない。目の前に現れたネペントをひたすらに斬って、斬って、斬った。数にしても数える余裕などなし。視界からネペントを葬り去ると、後ろに近づく影があった。

 

「…キリト」

 

HPはレッドゾーン間近で、顔は暗い。俺としては生きている方が不思議なほどだった。彼の武器はいつ折れてもおかしくなかっただろう。

 

「コペルは…死んだよ。リトルネペントは〈隠蔽〉の効果が無いって知らなかったんだな」

 

キリトの声は淡々と紡がれ、俺はその声に、労いをかけることは出来なかった。

 

「そうか。…じゃあ、俺たちの協力もここで終わりだな。〈胚珠〉、手に入れたんだろ?」

「…ああ。ここにある。そういう約束だったもんな…またな」

 

剣を背中に収めた俺は、ホルンカからその先へ歩き、キリトはクエスト完了を伝えるため村へ。少しだけ二人の距離が開く。俺は振り返り、一時間半ほど力を合わせた人物の名前を呼ぶ。

 

「キリト」

 

目の前の少年が振り返ると、俺はアイテムから1つポーションを取って、キリトに放る。

 

「…また、何かあったら組もうぜ。」

 

それだけ告げて、再び歩き出す。今日で次の村まで行けるだろうか。後ろの少年は必ず追い付いてくるだろう。もう一度、組む日があれば、今度はちゃんとパーティーでも組むか、と考え、俺は足を再び速めることにした。




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