異世界にギルドごと転移してしまう異常事態に対し、ナザリックの主としてNPC達の厚すぎる期待に応える為日夜知恵を絞り出すモモンガ。
こちらに来ている可能性があるアインズ・ウール・ゴウンのメンバー達、そして玉座の間から忽然と消えてしまったあろまボットンをいち早く見つけることが現在の第一目標である。
この間捕らえた陽光聖典とかいうスレイン法国の特殊部隊からは情報が得られず、流石にことはそう簡単にいかないものだと肩を落とした。
冒険者となってこの世界の情報を得る方が得策だとアルベドを説得をするのに苦労した。
確かにアルベドが反対するのも分かる。ナザリックを犯す未知の脅威の可能性が例え0.1%であろうと仲間が残した愛すべきギルドとNPC達の為、細心の注意を払うのは当然である。
だがデミウルゴスがアルベドに何か耳打ちするとすぐに納得し首を縦に振ったのだ
デミウルゴスになんと言ったか聞けばすぐに答えは分かるが、アンデットであるはずが寒気を感じそっとしておくことに決めたのだ。
このナザリックに居続けるとどこでボロが出るか分からないのも大きな理由の1つである。
私室のいい匂いのするベットに横になりゴロゴロ。
思えばあろまボットンのことを正直よく知らない。
かなりロールプレイに偏ったステータス構成で、基本戦闘スタイルは確かサポート担当だったはず。
ギルドではアタッカーとしても役目を果たしていたと聞いたこともある。
その際にはタンクばりのタゲ集中を受けたとか。
その程度のことだけだ。
絶対に見つけてまだ語り合いたいことを語り合って、友人としてこの世界を共に冒険したいものだ。
例え遠い地にいようが必ず見つけ出す!と心の中で再び決意する。
・・・・・・
プレアデスのナーベラル・ガンマを連れ、『モモン』と『ナーベ』としてエ・ランテルの冒険者組合に登録し、昨夜宿でひと悶着あったりもしたが今のところ特に問題なく進んでいる。
ナーベラル・ガンマの言葉遣いは自然と治るだろう。
今は冒険者組合に足を運び、依頼の紙が張り出された掲示板の前に立っている。
やはり読めない。
文字もいずれ覚えなければならないな。
「今日もやっぱ見つからなかったな」
「もうこの辺りにいないんじゃね?」
背後から会話の声が近づいてくる。
「どこに行ったのであろうな」
「
「それは俺も何となく思っていたことだ」
なにやら四人組のチームが気になることを言っていたな。
ほう、レアモンスター的な奴もちゃんといるんだな。
アウラ辺りに捕まえさせてみるかな。
盗み聞きをやめ、適当な依頼の紙を取る。
ええいままよ!
今はそんな事より金だ金。
・・・・・・
ンフィーレア・バレアレという少年からの名指しの依頼でトブの大森林に薬草採取の護衛として足を運んでいた。
名の知れた薬師の孫で、
道中の話を聞いているとこの辺りに森の賢王と呼ばれる魔物が存在するらしい。
それは大変興味があるとアウラにこちらに誘導するようにメッセージを飛ばし、ンフィーレアにナーベを付け避難させる。
さあ掛かって来い!
近づく足音に期待を膨らませ、剣をぎゅっと握りこむ。
金属に匹敵する高度の尻尾の一撃が飛び込んでくる。
難なく剣でその一撃を防いで見せる。
「ほう!それがしの一撃を見事防ぐとはやるでござるな!」
森の賢王は未だ姿が見えず、声だけが森に響いている。
あの尻尾面倒だな。
「姿を見せたらどうだ?恥ずかしがり屋さんかな?」
「ならばこの姿に恐怖し、後悔するがよい!」
勢い良く表れた巨体の姿を見て、体が硬直してしまう。
「ふふふ、恐怖で声も出まい!」
「これは・・・・・」
その巨体は元いた世界に存在したジャンガリアンハムスターにサイズ以外の容姿が酷似していた。
当然やる気もなくなるわけで、とっとと終わらせようとスキルを開放する。
「絶望のオーラレベル1」
「む?何かしたでござるか?」
「!?」
レベルで言えば30かそこらの相手に見えるが、特殊な耐性で持っているのか?
まさか効かないとは・・・・・ん?
森の賢王の尻尾の付け根の部分に目が入る。
「お前!それをどこで手に入れた!」
「生死をかけた戦いの真っ最中に何でござるか?この装飾はそれがしの友から貰った友の証でござる!まさか!?これを盗もうだという考えならば、ここから生きて帰すわけにはいかないでござるよ!」
そのアイテムは期間限定のガチャであまりの確率の低さに数多くのプレイヤーが大爆死を起こして、ネットでかなり炎上したものだ。
こいつが付けている『天理と冥刻』はカルマ値が極善・極悪の敵からの状態異常を完全無効とし、インターバルはあるが自動蘇生能力が付いたぶっ壊れアイテムだ。
興奮した頭をアンデッドの特性で沈静化されていく。
「今戦いはどうでもいい、そいつは紫色の棘が生えた蔓がいくつも絡まった人型の異形種ではなかったか?」
「いや変てこな鎧を着たただの方向音痴でござるが?」
「そいつの名は?」
「そういえば知らないでござるな」
「はぁ!?・・・・・ふぅ、まあ仕方ない。この辺りの人員をもう少し増やしてみるか」
他のプレイヤーの可能性もあるから、慎重に事を進めなくてはならないな。
「話は終わったでござるか?ならばいざ尋常に!」
ああそういえばこいつをとっと倒してしまうか、まだ聞き出したい情報もあるしな。
練習台にはちょうどいい手頃でもあるしな。
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激闘というほどではないが何とか勝利を収めると、「殿ー殿ー」と縋り付くこの名前負けしているハムスターが必死に仕えたいと懇願してきた。
森の賢王を下したというのは、早く名を上げるのには役立つはずだと渋々許す。
ただこいつにまたがって凱旋とか恥ずかしすぎて、何度沈静化したことか。
と、とにかく成果を上げられたので良しとするか。
・・・・・・
とある満月の夜のこと。
闇にまぎれ疾走する一つの影。
目的地はエ・ランテルという三重の城壁に取り囲まれた城塞都市と呼ばれるリ・エスティーゼ王国の都市である。
彼女の名はクレマンティーヌ。
スレイン法国の最強の特殊部隊である漆黒聖典で元・第九席次という経歴を持つ。
そんな彼女の形相は酷く焦燥し、何度も後ろを振り返る。
「なんだあいつ!なんだあいつ!なんだあいつ!」
背後から近づいてくる化け物に激しい恐怖を覚えてしまっている。
得物も持っていかれまともに戦うすべはなく。
今はただ逃げることしかできない事に苛立ちを覚える。
「糞が!なんでこんな目に!」
原因はただ一つ。
夜更けに森の中を歩く人影を見つけ、ご無沙汰であった殺人衝動にかられ背後から一刺し。
刺した瞬間の違和感と抜けない得物。
月が雲から顔をのぞかせ、月明りに照らされた全身植物の化け物。
悲鳴を上げそうになるが、直感で後ろへ大きく飛びのく。
何か発しているがモンスターだ、真面目に聞く必要なない。
そこから武技を使い殴る蹴るの激しい猛攻を仕掛けるが、植物の様に見えて硬度が滅茶苦茶に高い。
こちらの装備と体が見る見る破損し、一方は無抵抗にこちらへ何もしてこない。
完全に舐められていたのだ。
そこからは長い夜の逃走劇の始まりである。
自身はこの世界では強い方だという自信がある。
それがこの有様だ、屈辱と恐怖の感情が混ざり合い自分が今どんな顔をしているか見当もつかない。
「このクレマンティーヌ様が舐められてるだと!?畜生が!」
今すぐ殺してやりたいという殺意の念を浮かべる反面、体は動いてくれない。
間違いなく人生最速の走度を出ている自信がある。
心なしか奴の気配も薄くなっている気がする。
しばらくして気配は消え、漸く諦めたと足を止めてホッと安堵の域を漏らす。
散々な目に遭ったとふてくされながら歩き始めると・・・・・
「やーっと見つけた」
その時確かにクレマンティーヌの心の臓は止まってしまった。
残業終わりに書いているので意味不明な部分がありましたら、申し訳ないです。
次話もよろしくお願いします。
おやすみなさい