圧倒的感謝!嬉しすぎて泣きそうです。
太陽の眩しさに薄らと目を開く、起き上がり腕を伸ばし欠伸を一つ。
見た目も相まって完全にミイラの目覚めである。
つい先日漸くこの世界の住人とコンタクトに成功した。
結果はアレだったが、あろまボットンは名乗った偽名を後悔している位であった。
他のプレイヤーが存在した場合、なぜか自分の名を聞いた大体の人間種のプレイヤーは気が狂ったように襲い掛かってくる傾向があるのだ。けしからん。
だからと言ってギルド名の頭からポンっと取っただけの『妖精』は流石にアホだった。
でもでもこれならモモンガさんも気づくんじゃね?結果オーライ結果オーライと自分を納得させ重い腰を上げる。
「それにしても冒険者かぁ」
冒険は良い。
未知の探求の末に誰も見たことがない美しい自然を発見出来たら。
男の子として心惹かれる職業である。
「あの四人組どれも
漆黒の剣の面々に渡した『拒絶の聖華盾』は白を基調とした茨の様に刺々しい針が表面に無数に生えた小盾で、一定範囲の敵を押しのけ強制的に後ろへ下げる事が出来る。インターバルはそこそこ短い。あまりにもレベル差が開くと距離が短く変化してしまうのがネック。
『千里の瞳』は探知領域の拡大と一定周囲の気配遮断の看破する。ちなみに看破の方は専門職のプレイヤーには意味をなさない模様。金色の首飾りで形はロケットの様な形をしており、装備すると血走った目がぎょろぎょろ動く。
『霧隠れのローブ』は見た目はボロイ穴だらけの色褪せた淡い青一色のローブだが、認識阻害とMP増加の特性を持っていて
『木彫りの霊獣』はグリフォンをデザインとした手の平サイズのもので、使用すると長時間レベル30~50のグリフォンやベヒーモス等を呼び出すことが出来る。このアイテムは使用しても消費されず、一応装備しているとHPを僅かにだが断続的に回復する特性も持つ。ただしインターバルは長くゲームでは丸三日以上はかかるとされている。
正直レベル上がったら使わないようなしょうもないアイテムだし、逆に迷惑だったのかもしれないと溜め息1つ。
「嫌々言っててもしゃーない!俺は街に行くぞ!」
これは通称見掛け倒しドッキリ装備で頑丈そうに見えて防御率は紙である。
ガチャのネタ枠装備の為に、よくわからないギミックがある。
変声機能に暗闇で光ったりするなどネタとしても微妙で、こんなのあったんだ程度の認知度の糞アイテムだ。
ちなみに初ガチャがこれである。ある意味思い出の品である。
物を捨てられない系の自分はとりあえず残してそのまま忘れる人間である。
幸い滅茶苦茶軽いのでアイテムボックスは圧迫していない。
「貧弱すぎて後ろからグサリなんてされたらヤバいな」
一応緊急用の対策を取っておこう。
一撃だけ完全に無効化してくれる使い捨ての指輪とインターバルなしで装備を変更できるアイスバーの木の棒的なもの等。
「さーて街へー・・・・・あっ街はどっちに行けばいいんだっけ?」
まぁまっすぐ進めば森は抜けれるだろう。うんきっと大丈夫。
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うんとね迷いましたねこれは間違いなく。
「なんかやけに薄暗い森に来てしまったな」
どうしたものか困り果てていると
「ん?」
何か巨体が近づく気配に身構える。
「この森をざわつかせるものはそなただな?大人しく巣に戻るか拙者に無残にも破れ苦汁を舐めながら息絶えるか選ぶがいい!」
「パラライズ・バインド」
「あふぅ!う、動け、な、い、で、ご、ざ、るぅ」
声のする方へと無数の黄色く淀んだ大量の茨が対象に向けて一気に伸びていく。
見事捕まえられたのか先ほどの威勢もない。
追加効果で麻痺状態と確率でだが一定時間の認識阻害が付くスキルで、大体のユグドラシルプレイヤーには耐性や対策付きであまり効果を発揮しなかったものだ。
耐性持ちでなかったのは助かったとホッと胸をなでおろし、ゆっくりと近づいていく。
「ま、負け、たで、ご、ざ、るぅ」
自分はいけないことをしてしまった気分だ。
巨大なジャンガリアンハムスターの生け捕りがシュールすぎて思考停止してしまう。
だんだんとかわいそうに思えてきた為、スキルを解除して麻痺状態を癒してあげる。
スリップダメージ入るやつ使わなくて良かった。
「恐れ入ったでござる!へんてこな見てくれに騙されてしまいましたぞ!」
「見た目のインパクトはどう見ても負けてるんだけどね」
「そうでござるか?それにしてもあなたのようなお強い御仁がいかようでこの森へ?」
頭をコテンコテンと首をかしげる姿は愛くるしさ全開である。
「実は近くのえらんてるとかいう街に行こうとしたら道に迷ってね」
「それはそれは方向音痴でござるなぁ」
カワイイは正義。
お前がトロールやゴブリンだったら、首を絞めてそのまま空中ブランコの刑だぞ♪
おっと謎の人格が目覚めかけた危ない危ない。
「街への方向を知ってるのか?」
「知らないでござる」
「パラライズ・バインド」
「ひぎぃ!お、お助、けええ」
涙目カワイイ、よし免罪。
「うう酷いでござる」
「おかしい実力差を見せつけてるはずが、逆に舐められてる?それともこのハムスターマゾか?」
「マゾ?それは拙者の種族でござるか!?それがし番がおらず子孫を残せず生物として失格なのでござる。」
「ぐふぁっ!」
「何事でござるか!?」
強烈な精神攻撃に打ちのめされ、膝が折れ倒れかける体を腕を伸ばし何とか支える。
こいつなんてこと言いやがるんだ......
「いやなんでもない・・・・・なんでもないんだ。マゾはたぶん違うかな・・・・・」
「ええ?本当でござるかぁ?」
「ホントしばき倒してやろうか」
このままでは埒が明かない上に、心をズタボロにされかねない。
土を払いよいしょと立ち上がる。
「まあなんだ知らないなら仕方ない。邪魔したな。」
「拙者も連れてって言って欲しいでござる!殿の強さに惚れたでござる!」
「絶対嫌だ」
「そんなぁぁ」
涙目で縋り付いてくる巨大なジャンガリアンハムスターを引っぺがす。
「もっといい主を探せ」
「御仁よりも?そんな方が本当にいるでござるかぁ?」
「あぁ。自分一人の物差しで計ったものなんて所詮井の中の蛙だよ、ということで探せばきっとゴロゴロいるってたぶん」
今だ碌にこの世界を見て回っていないが、そんなもんだろうと適当に納得できそうな言葉を選ぶ。
当のハムスターはうむうむと相槌を打っている。
「分かったでござる!だがここで会ったのも何かの縁、何か繋がりが欲しいでござるな」
「それもそうだな。ならこれやるよ」
「む?これは?」
「もし死にそうなったら助けてくれる便利アイテム」
黄金と漆黒の連なった腕輪サイズのリングを投げ渡した。
「ありがたいでござる!友の証として大事にするでござる!」
器用に尻尾にリングを嵌め、愛くるしい顔は実に嬉しそうである。
勝手に友達認定されているが、悪い気はしない。
この世界に来て初めてフランクに話せた奴だし、ちょっと奮発してしまった。
「達者でな」
「いずれまたでござる!」
手を大きく振り見送ってくれる大きな友達に手を振り、ゆっくりとまた歩き出す。
気づけば日が暮れ始め森の中は暗くなり始めていた。
「さーて街はどこかなー」
呑気な足取りで明後日の方向へ進み始める。
ちなみにエ・ランテルは逆方向であるのは知る由もない。
次回モモンガさん側の視点で話を進めるか、今作のヒロイン()出す話をやるか悩み中。
前書きでも書きましたが、お気に入り登録並びに評価して下さった方々にお礼申し上げます。
これからも精進します!!
追記:誤字報告ありがとうございます。見落とし等がまだありましたらご指摘して頂けらばありがたいです。