TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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修学旅行編⑨

「ふふふ、これで全部キーは整ったね。あとは束さんがもう一働きするだけかな~」

 

 

太平洋上に浮かぶ人工島。そこの奥深くのラボルームに束はいた。

 

 

忙しく画面が切り替わり、その全てを束は修正していく。

 

 

 

「束様。お茶の時間です」

 

 

「ああ!もうそんな時間かぁ~どれどれ。わぁ!金平糖だぁ!」

 

 

「スコール様から頂いた生チョコ八つ橋があったのですが、全て毒入りでしたので処分しました」

 

 

「うん、()()()()()()()()()()()()()()()()。別にいいよ。」

 

 

 

束は淡い色の金平糖を口の中に放り込んだ。それほど高いものではなかったが、上品な甘さを感じる。

 

 

「束様、次の作戦、私は爆弾の調整のみで本当によろしいのですか?」

 

 

「うん。キーはそろったし、後はゴーレムがやってくれるしね。今回はのんびりだよ」

 

 

そう言って束は紅茶を一気に飲み干す。

 

 

「ISに対しての絶対天敵(イマージュ・オリジス)か…。白騎士も少しは成長してるみたいだし、ふゆちゃんにももっと頑張ってもらわないとね」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

窓の外の景色は次々に代わってゆく。消えては現れ、また消えては現れ続ける。

 

 

俺は頬杖を突きつつ、その景色をぼんやりと眺めていた。

 

 

昨日の夜。俺達が千冬姉から聞かされた話は到底信じられないような事ばかりだった。

 

 

あの黒いISと謎の操縦者、角谷奈津美のことは楯無さんに以前それとなく聞いたことがある。

 

 

だが返ってきたのははぐらかされた答えだけだった。

 

 

初めて無人機に襲われた時も、ラウラが飲み込まれた時も、銀の福音が暴走したときも、俺たちのことを助けてくれたのはいつだって彼女だった。

 

 

千冬姉は、冬香はそのたびに傷ついて、悪夢にうなされて、それでも何度も立ち上がってきたと言っていた。

 

 

 

「俺は……」

 

 

強くなったと勘違いしていた。みんなを護る力が少しは付いてきたんじゃないかと、そう思っていた。

 

 

弱い。自分が思っていたよりもずっと弱い。

 

 

戦い方だけじゃない。他人を想う心も、どんなことにも立ち向かっていける心も、何もかもだ。

 

 

帰ったら…また楯無さんに稽古をつけてもらおう。箒にも久しぶりに剣道を教えてもらおう。シャルとセシリアには雪羅のコントロールを。鈴とラウラにも模擬戦の相手になってもらおう。

 

 

強くならなくちゃいけない。冬香を、千冬姉を、皆を護るために、俺は誰よりも強くならなくちゃいけないんだ。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

「あ、ふゆふゆおかえり~」

 

 

「ただいま。のほほんさん。はいこれ」

 

 

「わぁ~金平糖だぁ~」

 

 

生徒会室にはのほほさんがまだ仕事をしていた。虚さんはさっき校門で会って、今は楯無さんと個人的な話をしている。

 

 

「どうだった、京都?」

 

 

「あー、うん。良かったよ。宿泊予定の旅館も綺麗で温泉付きだったしね」

 

 

「そっかぁ~じゃあ楽しみだね!そうだ。ふゆふゆは誰と一緒にまわるか決めてる?」

 

 

「ん?まだって言うか多分簪とかな」

 

 

「そっかぁ…じゃあさ、()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「えっ!?」

 

 

のほほさんの発言に私は思わず声が出た。

 

 

確かのほほんさんは相川さんと谷本さんと一緒に回るって言ってた気がするけど……

 

 

 

「かんちゃんには私が言っておくからさ~。……だめ?」

 

 

 

うぅぅ、そんな上目遣いで見られたら断れない…と言うか二人っきりって何!?

 

 

 

「…いいよ」

 

 

「うわぁーい、やったぁ!ふゆふゆとデートだぁ!」

 

 

 

そう言ってのほほんさんはぴょんぴょん飛び跳ねていた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「オイルはどのあたりだったっけな」

 

 

週末、俺は久しぶりにオイルマッサージを千冬姉にしてやろうと思い一人でレゾナンスへやってきた。

 

 

最近はみんなとばっかりいたからこうやって一人でじっくり買い物をするというのもなかなか久しぶりでいい気分だった。

 

 

「お、あった。えっと、ウィンターグリーンにローズマリーと……」

 

 

いろいろなオイルがあって悩む。もしかして女の子が化粧品を選ぶのってこういう気分なんだろうか。

 

 

「あら、奇遇ねぇ」

 

 

うしろから声が聞こえた。

 

 

「ッ!!スコール…さん…」

 

 

金髪に真っ赤なドレス姿の女性―スコールが立っていた。

 

 

「そう身構えないで。私も買い物に来たのよ。専門店を回るよりこっちのほうがいろいろと楽なのよ。

 

 

彼女の手には高級そうな紙袋がいくつも握られていた。

 

 

「そろそろいい時間ね。織斑一夏くん。私とランチにしない?あなたに話しておきたいこともあるのよ。いろいろとね」

 

 

「…………」

 

 

「敵とはご飯は食べられない?安心して。今回ばかりは本当に何の裏もないわ。」

 

 

「なら…。会計してきます」

 

 

そう言われた俺は、せっかくの好意に甘えることにした。

 

 

会計が終わった俺達はレストラン街があるフロアへと移動した。

 

 

「好きなジャンルを言ってちょうだい。もちろん値段は気にしなくていいわ」

 

 

そう言われると逆に委縮してしまうのが日本人の性ではないだろうか。

 

 

「スコールさんのおまかせで」

 

 

俺は万能なその一言を言うと、少し考えた後でフロアの端にある喫茶店の中へ連れて行ってもらった。

 

レゾナンスのレストラン街はもちろん学生が気軽に頼める値段の店から、結構お高いミシュランに乗っている店まである。

 

この喫茶店は俺も入ったことがあったが、確か少し高かった印象があった。

 

 

「私はランチのB。ドリンクはアイスコーヒーを。あなたは?」

 

 

「えっと、じゃあランチのAで。ドリンクはジンジャーレモンティーのアイスで」

 

 

パンかライス、サラダにメインとスープにデザートでAは1500円、Bは1800円だった。

 

 

今日のAはハンバーグ、Bはシュニッツェルだった。

 

 

十数分後、俺達は言葉もなく出てきた料理を食べ終え、食後のドリンクを飲んでいた。

 

 

「さて、少しお話ししましょうか。何か聞きたいことはある?」

 

 

「なんであなた達は冬香を狙ったんですか!」

 

 

「織斑千冬から聞いてるでしょう?天利冬香は二人目の適性S+。そんな逸材をわざわざ無視するわけにはいかないわ。……というのは建前ね」

 

 

「建前?」

 

 

スコールはもっともらしいこと言っている。一体その裏に何があるのか、俺には考えつかなかった。

 

 

「ええ。本当はね、篠ノ之博士が私達にそう依頼したのよ」

 

 

「束さんが……」

 

 

「心当たり、あるみたいね。織斑千冬にでも言われた?」

 

 

どうして束さんはそんなことをするんだろう。俺はそれも分からなかった。

 

束さんの性格は俺も理解している。面識のない人物を研究対象にするなら、拉致して解剖でもしそうなのが束さんだ。

 

だがそうはしなかった。冬香にISを与える一方で、彼女を無理やり戦わせている。

 

だが、単純なデータの取得には効率が悪いのではないか。

 

俺には何もかも分からなかった。

 

 

「ふぅ。そろそろ帰りましょうか。私が払っておくわ。あなたは好きなタイミングで帰って頂戴」

 

 

そう言ってスコールは立ち上がった。

 

 

「そうだ。一夏君。織斑千冬には気を付けなさい。それと、倉持技研の動きもね」

 

 

そう言って彼女は去っていった。

 

 

 

「どういうことだよ…それ……」

 

 

俺は一人残ったテーブルでそう呟いた。




いえいえまだですよ(修学旅行ほんへ)

次回よりアニメ版修学旅行編です。

あ、そうだ。CHOCOO先生のISラフ集であるインフィニット・エミッションが届きました。この作品では出てきてないイレイズドの空母ってかなりちっちゃな奴だったんですね……


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