TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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修学旅行編⑥

京都を一望できる高級ホテルのVIPルーム。

 

 

 

そこに併設されていたバーには下で起きている戦闘を気にも留めず、鼻歌を歌う者がいた。

 

 

 

「束様、ここにおいででしたか」

 

 

 

 

透き通るような白い髪を持つ盲目の少女、クロエ・クロニクルは主人へ向かってそう言った。

 

 

 

 

「ねぇくーちゃん。今束さんはどんなことを考えてると思う?」

 

 

 

 

振り返ったその主人―篠ノ之束は笑みを浮かべそう聞いた。

 

 

 

 

「白騎士のこと…でしょうか?」

 

 

 

 

「あったりぃ!まさか失敗作の白式がこんなことになるなんて、()()()()()()()()()()()()分からなかったなぁ」

 

 

 

 

束の眼前にある空中投影ディスプレイには群咲の、冬香の目を通した白騎士の姿が映っていた。

 

 

 

 

「束様、今後の計画はシナリオ通りでよろしいんでしょうか?」

 

 

 

 

束が書いた本来のシナリオなら適当に群咲と千冬を戦わせ適当なタイミングで戻させる予定だった。

 

 

しかし、白騎士という不確定要素の介入によって事態は大きく変わってしまった。

 

 

 

 

「大まかにはね。でも、()()()()()()()()()()と変えなきゃいけない所、出て来るよねぇ…」

 

 

 

 

束はそう言いつつ先ほど出されたシャンディガフを口にした。

 

 

 

 

「うーん、よく分かんないや!くーちゃんの紅茶のほうが何千万倍も美味しい!」

 

 

 

 

そう言ってグラスをテーブルに置いた束はスッと立ち上がった。

 

 

 

 

「それじゃあ……気晴らしに、面白いものを見に行こう。くーちゃん」

 

 

 

「はい、束様」

 

 

 

 

束が掲げた腕を下げると、まるでそこに二人が存在しなかったかのように消え去った。

 

 

 

 

そして次の瞬間、その部屋は無数の風の槍によって見るも無残に引き裂かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ落ちないのかッ!」

 

 

 

隣でレールガンを放ちながらボーデヴィッヒさんが言う。

 

 

私たち三人は迫りくる二機のゴーレム・クロアザミを何とか抑え込んでいた。

 

 

 

「……違う」

 

 

 

しかし、私はさっきから眼前のゴーレムに違和感を感じていた。

 

 

以前、私と冬香で戦ったときの動きよりも明らかに動きが違う。

 

 

まるで、時間稼ぎのためにわざと手加減しているような、そんな感じだった。

 

 

 

 

「簪さん!」

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

デュノアさんの声ではっと現実に戻る。

 

 

私の直前まで迫っていたビームを、私はスラスターを使って強引にかわす。

 

 

確かにゴーレムの動きはおかしい。だからといってゴーレムが攻撃をしてこないわけではない。

 

 

今だってデュノアさんが言ってくれなければ直撃していた。

 

 

 

 

「ごめん。デュノアさん」

 

 

 

「ううん、それよりも……」

 

 

 

「ああ。私たちの火力ではまるで歯が立たない……」

 

 

 

 

今までの十数分の戦いで私たちが当てられた攻撃はいくつもある。

 

 

だけれども、どちらも致命傷どころかかすり傷になっている様子もなかった。

 

 

無人機だから、というのもあるだろうけれどそれを考慮しても私たちの無力さがひしひしと伝わってくる。

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

 

 

 

突然、ゴーレム達は私たちに向けていた攻撃をぴたりと止め、明後日のほうを向く。

 

 

 

次の瞬間、私たちに山田先生からの通信が届いた。

 

 

 

 

『みんな聞こえますか!!?たった今、白式の反応がロストしました!同時に黒騎士とは違うアンノウンが出現!既に交戦に入っているようです!織斑先生に伝えようとしたら強引に通信が切れて……』

 

 

 

通信の途中にゴーレムが向いた方向からドォォォォンと轟音が響く。

 

 

 

その音の先に見えたのは深紅と純白の二つの光が闇夜の中でぶつかり合う姿だった。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

目覚めろ……

 

 

 

 

―声が聞こえる

 

 

 

 

力を示せ

 

 

 

 

―ここは……どこ

 

 

 

 

―暗い、闇の中……()()()()()()()

 

 

 

 

天利冬香

 

 

 

―その名前……誰……?私は……群咲……

 

 

 

 

―群咲……?私は……群咲?

 

 

 

 

闇の中に、真っ白な光が見える。

 

 

 

 

―違う、私は……私の名前は……

 

 

 

 

頭の中で見ていた歪んだ映像がだんだんと鮮明になってゆく。

 

 

 

 

―私は……

 

 

 

 

自分が自分ではなくなる

 

 

 

織斑千冬(大切な人)へ刃を向け……

 

 

 

更識簪(大好きな友達)を裏切り……

 

 

 

 

 

 

絶対天敵(イマージュ・オリジス)!』

 

 

 

 

 

―その……言葉は……

 

 

 

 

どこか聞いたことがあるようで、でも違和感を感じる言葉。

 

 

 

 

それが何か思い出す前に、私の目の前には黒い手が現れる。

 

 

 

 

≪ごめんなさい。冬香。少しだけ、身体を貸して……≫

 

 

 

 

聞き覚える優しい声色と手が私を包み込む。

 

 

 

―くろ…あざみ…?

 

 

 

≪冬香をアイツ(群咲)から引き放すためには…白騎士と戦うしかないの≫

 

 

 

 

頭の中に声が響く。

 

 

 

 

すべてを私に(コード・ブラック)……そして力を!(ワールド・パージ!)!≫

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

「何が…起きて……」

 

 

 

 

白騎士が冬香に触れた途端、彼女の身体に光が集まってゆく。

 

 

そしてその光は、彼女の身体を多い漆黒の鎧へと変わっていった。

 

 

 

 

 

『そうだ。それこそが、私の望む道!』

 

 

 

 

白騎士はそう言って右手に掴んでいた刀、雪片を構えた。

 

 

 

黒薊を纏った冬香はその言葉に相対するかのようにその手に刀を出現させる。

 

 

 

 

「あれも…雪片か……?」

 

 

 

 

白騎士、白式の雪片とは異なり黒薊が手にした雪片は漆黒の柄に深紅の刃が伸びていた。

 

 

次の瞬間、空中にはプラズマのような光が走り辺りには衝撃波が走る。

 

 

 

 

「織斑先生!」

 

 

 

その衝撃波から私を護るかのように大型シールドが姿を現した。

 

 

 

「山田先生!他は!」

 

 

 

現れたIS、ラファール・リヴァイブ・スペシャル・ショウ・マスト・ゴー・オンを纏っているのは山田先生だった。

 

 

彼女が候補生時代に用いていた専用機。先ほど彼女が受領したものだった。

 

 

 

「亡国企業の部隊は撤退、追撃したアリーシャさん以外は全員ここに集まるように指示しました!」

 

 

 

「更識妹とラウラにシャルロットは?」

 

 

 

「無人機型アンノウンはあの二機(白騎士と黒薊)が現れたら撤退したそうです。それにしてもあれは……」

 

 

 

「…………」

 

 

 

二機は何回もぶつかり合いっている。

 

 

 

しかし、互いに避けようとはせず、むしろ積極的に攻撃を喰らっているようにも見えた。

 

 

 

 

「織斑先生!」

 

 

 

後ろから聞こえてきたのは楯無の声だった。皆を集め、連れてきたようだった。

 

 

 

「何よあれ!」

 

 

そう叫んだのは鈴だった。

 

 

 

「一夏に……冬香!?」

 

 

 

「ねぇ、あれって白騎士じゃあ……」

 

 

 

篠ノ之にデュノアがそう言う。ラウラも焦りを消せないようだし、オルコットも同様だった。

 

 

更識妹は不安そうに冬香を見つめている。

 

 

 

 

「全員いるな。よく聞け。私たちはあの二機を止めるために手を打たねばならん」

 

 

 

私がそう言うと全員察したようで各々ISを展開する。

 

 

ふと、私は篠ノ之の紅椿を見て、暮桜の事を想った。

 

 

アレがあれば私も……と。あの時冬香が起動した暮桜はいまだにこちらのどのような解凍アプローチにも反応を示していない。

 

 

 

(……今考えることじゃない)

 

 

そう、ないものねだりをしていても意味はなかった。

 

 

 

「山田先生、更識姉。頼む。」

 

 

 

 

「「はい!」」

 

 

 

二人はそう返事をし、ISを展開させる。

 

 

 

 

「邪魔はさせないよ~」

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

次の瞬間、急に体が地面に引き寄せられ身動きが取れなくなるほど重くなる。

 

 

 

 

「きらきらぽ~ん!ちーちゃんだけは解除してあげるね~」

 

 

 

「束ぇぇぇぇッ!」

 

 

 

突然現れた束がステッキを振るうと、重さが元に戻った。

 

 

私は素早く刀を構え束に向かって切りかかる。

 

 

 

 

「おっと、やるねぇちーちゃん!」

 

 

 

「お前はッ!何を企んでいるんだッ!一夏を!冬香を!」

 

 

 

「ふふん。いっくんもふゆちゃんも一から十まで束さんが操ってるわけじゃないからねっ!」

 

 

 

「たとえそうだとしてもお前が関わっているのは事実だろう!」

 

 

 

「あははッ!だったら束さんの計画を暴いて止めてみてよ!ちぃぃぃぃちゃぁぁぁん!」

 

 

 

ガキンッと強化刀が砕かれ、その刀身は粉々になっていた。

 

 

 

「ふふっもう少し楽しみたかったけどもう終わり。それじゃあね!ちーちゃん!」

 

 

 

「待てッ!束ッ!」

 

 

 

束の姿が一瞬にして消える。それと同時に空が一瞬まばゆい光に包まれた。

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

私の目に入ったのはISが解除され空から落ちて来る一夏と冬香の姿だった。

 

 

私は必死になって走り出した。しかし、あまりにも遠く、そして落ちる速度が速かった。

 

 

 

(クソクソクソッ!)

 

 

 

そして二人は猛烈な勢いで地面へ叩きつけられ……

 

 

 

 

「やるのサ!テンペスタッッ!」

 

 

 

 

はしなかった。

 

 

間一髪のタイミングでアリーシャのテンペスタが生み出した風がクッションとなり、包み込んだ。

 

 

 

「ふぅ。危ないトコロだったのサ。せっかくシャイニィが懐いた二人を死なせたら悲しむのサ」

 

 

 

アリーシャはそう言って抱きかかえた二人をそっと地面に置いた。

 

 

 

「助かった」

 

 

 

「ふふん、良いのサ。お前にお別れを言いに来て良かったのサ」

 

 

 

「本国から連絡が?」

 

 

 

「まァそんなトコロ。……そうだ。旅館に預けてるシャイニィ。そっちでちょっと面倒を見てほしいのサ。それじゃあ、また会おうサ。織斑千冬」

 

 

 

こちらの返事も聞かず、アリーシャは飛び去って行った。

 

 

 

私は彼女の動向よりも、先ず無事だった二人の姿に安堵した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文章の不出来をいつもより多く書くことで取りまとめるスタイル。


修学旅行編はイベント系○○編だと最長になる予定です。あと3回くらいを予定しています。


感想とか評価とかよろしくお願いします。

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