TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
「これが……私の……」
「そうだよ!これが君の新しいIS、その名も黒騎士!」
イギリスから奪取したIS、サイレント・ゼフィルスは私の身体に馴染む機体だった。
だが、絶対的な、織斑千冬のようにすべてをねじ伏せる絶対的な力ではなかった。
それがどうだ。篠ノ之束の手によって私は誰をも超える力を手にした。
「まぁ、でもこれは仕込みが終わっただけ。本当の力が手に入るのは……」
「分かっている。織斑一夏と戦い、セカンドシフトさせる……という事だろう」
「当ったり!でも束さんは太っ腹。さらにぃ、おまけもつけちゃおっかなぁ~」
「おまけ……?」
ピンッと彼女が指を鳴らすと、二機のISが現れた。
無人機―それも、スコールに渡した機体とは違う……
「黒薊……」
まさしくそうだった。天利冬香の駆る、黒薊に似ていた。
「君がいっくんとの戦いに専念できるように、この子たちと群咲と私でサポートさせてもらうよ!」
ムラサキ、という聞きなれない単語が聞こえたが、それよりも私はまだ聞けていなかったあのことについて彼女に聞きたかった。
「束博士、その冬香が私たちのもとに来たという話を聞いたんだが、本当か?」
「あれ?すこーりゅんから聞いてないの?うーんじゃあここで会っちゃおうか。群咲~!」
彼女が虚空にそう言うと、上から『影』が落ちてきた。
しかし、まるでISのように重力制御を行っているのか、一般的な落下の物理法則とは大きく違っていた。
「はぁい、マスター。呼びましたぁ?」
「ッ!!?」
私はその異様な影に対し、とてつもない寒気を感じていた。
今までにない感覚が全身を駆け抜ける。
(目が……なんだ!?)
一般的なソレとは大きく違う、まるでドイツの実験体のような漆黒の中で光る金色の瞳。
その影の姿が格納庫のライトに照らされ、その顔が見えた。
その異様な影の正体は、天利冬香だった。
「なッ!?」
「あはぁ!マスター!この子可愛い!私の事を見て怯えてますよぉ?」
「貴様!何者!!」
私は咄嗟にナイフを抜き、彼女から離れ距離を置く。
「ふふん、初めまして。私の名前は群咲。あなた達織斑を滅ぼすもの」
「私たちを、滅ぼす!?い、いや。それより冬香は!」
私は明らかに狼狽えていた。
「今は眠ってるわぁ。黒薊の中でゆっくりと安らかにね。さっきは半分起きてもらったけれど」
「眠っているだと……?」
「そう。彼女が起きた時に覚えているのは友人を裏切ったという罪悪感と……ふふふ」
彼女の邪悪な微笑みに私は恐怖を覚えずにはいれなかった
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「ここに本当に亡国企業の連中が……?」
夜七時、作戦を開始した俺たちは倉庫に来ていた。
「そのはずだが……妙だな」
俺の後ろであたりを見まわしていたラウラがそう言う。
「うん、やけに……静か」
同じく後ろにいた簪さんもそう言った、
二人の言う通り、俺たちは到着した瞬間から大量の攻撃を浴びせられることを覚悟していた。
だがしかし、そんなことはなくただ夜風の音が聞こえるだけだった。
「よく来たな。織斑一夏」
「!!」
眼前、積み上がったコンテナの上に佇む少女の姿が現れた。
英国から強奪したサイレント・ゼフィルスを纏ったその少女は、織斑マドカだった。
「サイレント・ゼフィルスかッ!」
その声に一番素早くに対応したのがラウラだった。
すぐさまISを展開し、そのレールカノンをマドカに向かって放っていた。
「私の狙いは貴様のような失敗作ではない。織斑一夏だ!」
放たれたレールカノンを易々と避けると、彼女は大型のライフル、スターブレイカーを撃ってきた。
「させない!」
しかし、その一撃は俺たちの前に届くことはなかった。
咄嗟にシャルがリヴァイヴの実体シールドでスターブレイカーのビームを弾いたのだった。
「今は!貴様らの出る幕ではない!ゆけッ!ゴーレム!」
マドカがそう叫ぶと付近にあった二つのコンテナが爆発し中からISが現れる
「あれはッ!」
そう叫んだのは簪さんだった。
漆黒の装甲に赤く光るライン。そうそれはまるで……
「クロアザミ。そっくりでしょう?この子たちはゴーレム・クロアザミ。黒薊のコピー品よぉ」
何もない空間から、声が聞こえた。
「!?」
聞こえたのは俺だけではないらしく、シャルもラウラも簪さんも、みんながその聞きなれた声に、聴いたこともない話し方で放たれた言葉に困惑していた。
「あははははぁ!こっちよぉ」
声の先は、俺たちの真後ろ。暗闇の中でその姿だけが異様に目立っていた。
「はじめまして。私の名前は群咲。漢字だと群れ咲きという字を書くのかしらぁ?今はこの子の身体を借りている者……といえば想像力豊かな10代には分かるわよねぇ?」
IS、黒薊は展開せず、ただ生身の、冬香の身体だけがそこに存在していた。
「お前!お前が冬香を!」
そんな彼女に真っ先に敵意を向けたのが、いつもは大人しい簪さんだった。
「ふふ、嬉しいわぁ。まさか貴女がそんなに感情を最前面に出してくれるなんてねぇ?」
そう言って、群咲はIS用の刀、葵をまるでゲームの実体化のようにその手に現出させる。
「下がっていろ!更識妹!」
「おっと」
次の瞬間、ドォンというけたたましい音共に現れたのは千冬姉だった。
いつものスーツ姿ではなく、一体型のスーツを着て、右手には対人用には少々大型の刀が握られていた。
「あははははぁ!千冬さんだぁ!」
「くッ!」
「千冬姉!」
群咲の一撃は重く、千冬姉も受け止めるだけで精一杯のようだった。
「よそ見をするな!織斑一夏ァ!」
「ッ!!」
マドカの一撃を何とか俺は回避し、体制を立て直す。
一瞬辺りを見回すと、あの無人機、ゴーレムクロアザミは皆に襲い掛かっていた。
助けは望めそうにもない。
「いくぞ、白式!」
俺は瞬時加速を用いマドカへ接近する。
一瞬の隙をつき、零落白夜で最大のダメージを与える。
俺の戦術はただそれだけだ。マドカなら雪羅での射撃はやすやすと避けられてしまう。
エネルギーを唯無駄に消費するだけだ。だからチャンスは一度だけ。
「ハァッ!」
だがしかし、そう易々と隙を見せるマドカではない。
断続的に、かつ効果的にビットやライフルでこちらの接近を阻止している。
マドカにしてみれば最も脅威なのは零落白夜。それを封じさせようとすることは至極当然だった。
「ふふふ、どうした。こないなら、こちらから行かせてもらう!」
そう、マドカが言うと彼女のサイレント・ゼフィルスは金色の光に包まれる。
蝶を思わせる、濃い紫色の装甲が、漆黒の装甲へと包まれてゆく。
「ハハハハハ!これだ!この力だ!私は、私はァ!」
今までの射撃主体の装備とは打って変わり、その手には超大型のバスターソードが握られている。
「名乗りを上げさせてもらう。織斑一夏。貴様をここで殺すのはこの私織斑マドカと愛機『黒騎士』であるとな!」
その巨大なバスターソードを、試し切りと言わんばかりに俺へ振り向ける。
「くそッ!?」
俺は何とか雪片弐型でそれを受け止めるが、圧倒的なパワー差に為す術がない。
「どうした!その程度か!」
更に二基、巨大化したランサービットが俺を襲う。
素早く、そして正確に。その姿はまるで黒薊の持つビットのようだった。
(ダメだ!押し切られる……ッ!)
咄嗟に雪羅のシールドで防御したが、エネルギーの消費が早すぎる。
このままではどちらが先に戦闘不能になるか明白だった。
「一か八かッ!うぉぉぉぉッ零落白夜ァァ!」
俺は
「甘いッ!」
だがしかし、ランサービットに阻まれ、その隙を突かれバスターソードの一撃を喰らってしまう。
次の瞬間、俺はさらなるランサービットの攻撃により、地面へたたきつけられていた。
「ガはッ!」
辺り一面が炎上している中でマドカは俺のことを何度も蹴りつける
「ふふふふふ、無様だな。織斑一夏。以前に冬香と戦った時のほうが数百倍も苦戦した」
ガシュッ ガシュッと留まるところを知らないその攻撃に俺は意識を失いそうになる。
(まだ……だ。まだ……。俺は……ッ!冬香を……!)
視界がぼやけ、音が遠ざかり、そして呼吸をする感覚がどんどん薄れてゆく。
「ふん、こんなものか。存外あっけなかったな。では、終わりにさせてもらう」
そう言ってマドカがバスターソードを振り下ろした時だった。
「な、何ッ!」
確かに気絶したはずの織斑一夏が左手でバスターソードを掴んでいた。
そしてその身体は、何者かに無理やり押されたように強引に立ち上がった。
「なんだ……何が起こっているッ!」
瞬間、マドカは恐怖に包まれた。
何か得体の知れないものを、全身で感じる。
そう、初めて群咲を見た時のような恐怖に襲われた。
「貴様は……いったい……」
上空へと飛んだ白式は、まばゆい光を発し、外の装甲がボロボロと崩れ去ってゆく。
「『白騎士』だとッ!?バカな!データは完全に初期化されているはずだ!」
マドカの眼前に現れたのは、世界で初めてのIS。白騎士だった。
「織斑千冬の……いや、違う!そんなはずはない!ISの防衛本能だとでも言うのか!」
弟への愛情という最も憎むべき言葉を口にしそうになったマドカは、強引にも一番初めに考え付いた言葉を発した。
『力ある者よ……私と戦え……!』
織斑一夏と千冬のどちらにも聞こえる二重の声がマドカを戦いへと誘う。
「い、いいだろう!暴走だろうが、織斑千冬の残留無意識だろうが私が全てこの力でねじ伏せてやる!」
かくして戦いの第二ラウンドは始まった。
修学旅行編は誰の視点で展開するか、非常に悩みどころです。
一応、次回ではマドカと白式の後群咲関連のことを書こうと思っています。
多分ゴールデンドーンやらレインやらのほうは原作とほとんど相違点がない(オータムがいるかいないか)ぐらいなので端折ると思います。
感想、評価、よろしくお願いいたします。