TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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修学旅行編②

「よし、じゃあやりますか!」

 

 

 

記念写真を撮り終えた俺達は、亡国機業との決戦に向け気合を入れる…のだったが、

 

 

 

「ああ、今は自由にしてていいわよ」

 

 

 

そう楯無さんに言われてしまった。

 

 

 

「情報提供者と連絡が取れないの。京都に入ったところまでは確認してるから私が探そうと思うの」

 

 

 

「えっと、じゃあ」

 

 

 

「ええ。取りたい写真もあるんでしょ?行っておいで」

 

 

 

そう言って楯無さんは俺の背中を押す。

 

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

 

そう言われたならそうと俺は気持ちを切り替えみんなのところへ行く。

 

 

本来なら一人で行動する予定だった天利さんも俺達と一緒に行動するらしい。

 

 

 

「ほら一夏!いくわよ!」

 

 

「お待ちなさい!もともとのペアはわたくしですのよ!」

 

 

「嫁と夫は常に一緒と言うのが夫婦だろう?」

 

 

そう言って皆が一斉に詰め寄ってくる。

 

 

「ねぇ、それならみんなで別々のところに行かない?せっかく二人一組なんだし」

 

 

自己主張をやめない皆に変わり、助け舟を出してくれたのはシャルロットだった。

 

 

 

「俺はそれでもいいけど……」

 

 

 

「それじゃあ決まりだね。僕は簪と天利さんと組むよ」

 

 

 

そう言ってシャルロットは二人のもとへ行く。

 

 

確かに俺が写真を撮って回るなら一人余ってしまう。

 

 

 

 

「じゃあアタシは箒と組むわね」

 

 

「む、よろしく頼む」

 

 

 

 

「ならわたくしはラウラさんと」

 

 

「ああ。頼むぞセシリア」

 

 

 

他の四人もペアを作ったようで各々にどこへ行くかを話し始める。

 

 

「それじゃあ決まったらメールするから、一夏は先に行ってて」

 

 

「おう。それじゃあまたな」

 

 

そう言って俺は京都の町中へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「それじゃあ、どこ行こうか」

 

 

 

 

そう言って僕は二人の顔を見る。

 

 

簪さんと天利さん、あまり話さないほうだけど、あの時の一軒(一夏と付き合ってる疑惑)以来、天利さんとは人並みな会話はしている。

 

 

 

「えっと、私はどこでも……」

 

 

「私も、冬香といっしょなら」

 

 

 

「あはは…二人とも仲いいね」

 

 

 

簪さんが天利さんにただならぬ想いを抱いているのは分かってる。

 

 

 

二人だけで街を歩きたいって気持ちも分かるけれど、でもあえて僕は二人の間に立った。

 

 

 

……簪さんはおそらく天利さんのあの()に気づいていない。

 

 

 

いつもとはほんの少し違う。経験したことがないとわからないあの目。

 

 

僕が嫌と言うほど見てきたもの。昔の僕の目(白式を奪おうとした時の目)をしていた。

 

 

 

(僕の杞憂だと良いんだけど……)

 

 

正直、ただの勘違いと言うことも十二分にある。だからあまり大げさにいう事もできない。

 

 

 

「じゃあ、僕が決めて良いかな?」

 

 

僕はとりあえずそう言って僕は雑誌に付箋を付けたページを開いた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「あとはシャルのところか」

 

 

あの後、箒やセシリアから連絡をもらった俺はいろいろな場所で写真を撮って回っていた。

 

 

途中弾に会ったりなんかもしたが久々のゆったりとした時間に俺は心を休めていた。

 

 

 

「にゃぁお」

 

 

「お?」

 

 

俺の足元には白い猫が一匹すり寄ってきた。

 

 

またにゃぁと鳴くと今度は付いて来いと言わんばかりに歩き始める。

 

 

ケータイを見てもまだシャルたちからの連絡は入っていない。

 

 

少しぐらいこの気まぐれな猫について行ってもいいだろう。

 

 

 

(どこに行くんだろうな)

 

 

 

家の間や細い路地を抜け、急な階段を上り……白い猫は気ままに歩くように見える。

 

 

そうこうしている間に時計を見ると既に30分は立っていた。

 

 

(これ以上はもうやめとくか)

 

 

そう思った瞬間、キィンと金属がはじく音が響いた。

 

 

 

「いきなりで悪いナ!織斑一夏君!」

 

 

 

眼前に、突然一人の女性が現れた。

 

 

 

俺は何が起きたのか訳も分からずあたりを見回す。

 

 

 

「次来るのサ!」

 

 

 

ガン!ガン!とまた彼女は何かをはじいた。

 

 

地面に転がるソレを見て、俺は驚愕する。

 

 

「じゅ、銃弾!?なんで!?」

 

 

「君を狙っての事サ!人気者の織斑一夏君!」

 

 

「あ、貴女は……」

 

 

「アリーシャ・ジョゼスターフ。アーリィって呼ぶと良いのサ」

 

 

 

そう俺にウィンクしながらも彼女は銃弾をはじき返している。

 

 

 

「さて、本腰を入れていくのサ!」

 

 

 

そう言うと彼女をまばゆい閃光が包み込む。何度となく見た、ISを展開する姿だった。

 

 

 

「さぁ、テンペスタと私に抜かりはないのサ!」

 

 

 

イタリア語で嵐を意味するその機体。

 

第二回モンド・グロッソでは千冬姉の欠場に変わって優勝したIS。

 

 

彼女の存在しない右腕が、ISによって実体を持つ。

 

 

 

「織斑一夏君!君は早く逃げるのサ!」

 

 

 

そう言って彼女は銃弾が迫りくる方向へ向かって行った

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「チッ。あのアマ、全部弾きやがった」

 

 

 

そこから1キロほど離れた高層ビルで、ダリルケイシーは悪態をついた。

 

 

 

「中国製でもいいから擲弾狙撃砲(スナイパー・グレネード)を手配してもらうべきだったぜ」

 

 

 

彼女の手にあるのは.338ラプアマグナム弾を使うスナイパーライフルだった。

 

 

一般人相手なら威力は十分。当たれば一撃で絶命するほどである…が、相手もブリュンヒルデを眼前にまで追えた女。

 

 

そう易々と殺せるわけではなかった。

 

 

次の瞬間、ヴィーと携帯がバイヴする。

 

 

 

「何なにっと…おばさんのほうは目標の確保に成功、あたしのバックアップは予定道理オータムって訳か」

 

 

 

それは叔母からの電子メールだった。

 

 

 

 

 

「何…してるんスか?」

 

 

 

恐る恐る、そう形容するに足りる声と顔でフォルテはダリルへ聞いた。

 

 

 

 

「何って、織斑一夏の暗殺だよ。暗殺」

 

 

 

「あ、暗殺って、何言ってるんスか!そんなの!何でッ!わけわかんないっスよ!」

 

 

 

信頼していた仲間、頼りになる先輩、そして……最愛の恋人。

 

 

裏切り、崩壊、欠落、恐怖。それが一気にフォルテの心へ襲い掛かる。

 

 

 

「オレのコードネームはレイン・ミューゼル。炎の家系、それの末席ってワケだ」

 

 

 

涙を流すフォルテの頬にダリルはそっと手を当てその涙をぬぐう。

 

 

そしてぐっとフォルテの元へ近づき、そっとささやくような声でこういった。

 

 

 

「なぁフォルテ、壊しちまおうぜ。この世界を、オレのミューゼルの呪いをよ。全部裏切って、ぐちゃぐちゃにしちまおう。オレ達二人で」

 

 

 

「あ……ああ。」

 

 

 

フォルテはそんな言葉しか出せない。だが心の中は既に傾いていた。

 

 

最愛の人と、運命を断ち切る。すべてを裏切り、二人でとろける。

 

 

その甘美な誘いはもうフォルテを堕としていた。

 

 

 

「ついてこい。フォルテ。オレと一緒に」

 

 

 

そう言ってダリルは強引にフォルテの唇を奪う。

 

 

フォルテはそのキスを、もう何のとまどいもなく受け入れた。受け入れてしまった。

 

 

その強い言葉に、フォルテは心を決めた。

 

 

祖国を、IS学園を、今までの生活を、すべて裏切る。そして愛するものと共に己を貫くのだと

 

 

 

「さぁ来たぜ!ヘルハウンドッ!!」

 

 

 

数秒間の幸せの口づけは、嵐のような猛攻によって遮られる。

 

 

 

ダリルの身体を包み込むダークグレーの装甲。

 

 

アンロック兵装の番犬の頭からは紅蓮の炎が舞い上がる。

 

 

そして握られているのは双刃剣である黒への導き(エスコート・ブラック)

 

 

 

「死ねよやぁッ!」

 

 

 

炎を纏った刃や暴風を纏うテンペスタへ襲い掛かった。

 

 

 

「はッ!羨ましい若さなのサ!」

 

 

「ほざけぇ!」

 

 

 

ガオンッ!とケルベロスの方向のような炎がテンペスタを包み込もうとする。

 

 

「はー!何たる言い方してるのサ!教育してやるのサ!」

 

 

 

が、しかし腐ってもアリーシャは世界大会で二番目に強いと呼ばれるISパイロット。

 

 

機体に纏う風で、その炎を一蹴した。

 

 

 

 

『敵機、熱源探知、誤差0.3ミリ』

 

 

 

 

読み上げ式インターフェイスがアリ―シャにそう伝えた。

 

 

 

「そこなのサッ!」

 

 

 

テンペスタが纏う風が、複数の鋭い槍へと変貌する。

 

 

 

「クッ!?」

 

 

 

避けられない―とダリルが覚悟した時、風の槍は幾層もの氷の壁によって遮られた。

 

 

 

「何……やってるんすか!ウチらは二人で最強のイージスなんスよ!それが一人になるなんて絶対に嫌っス!」

 

 

 

氷のシールドを張ったフォルテの目に、もう迷いはない。すべてを裏切る覚悟を決めた。

 

 

 

「ときめきな友情はまた後にして欲しいのサ!」

 

 

「させないっス!」

 

 

 

また風の槍を投擲するアリーシャへ再び氷のシールドを張る。

 

 

 

「オラアッ!」

 

 

そしてその隙を狙い、ダリルが炎を纏った剣を叩き込んだ。

 

 

「おっト!」

 

 

 

しかしその剣は風のシールドにはじき返される。

 

 

 

「やるなぁッ!ババアッ!」

 

 

「なッ!まだ28なのサ!」

 

 

「はん!10も上ならババァなんだよッ!」

 

 

 

子供のケンカのような言葉に対し実際の戦闘は過酷だった。

 

 

世界有数のワンオフアビリティー、疾風する嵐はその存在自体がISのシールドエネルギーを削り取る。

 

 

 

「チッ!シャーねぇ!フォルテ!アレをやるぞ!」

 

 

「了解っス!」

 

 

 

そう言うとフォルテは大きな氷のシールドを展開する。

 

 

「「凍てつく炎(アイス・イン・ザ・ファイア)!!」」

 

 

 

「その程度のシールドならテンペスタで貫通できるのサッ!」

 

 

テンペスタの風を三角錐のように一点に集中しアリーシャは突撃する。

 

 

 

「かかりやがったなアホがッ!」

 

 

 

しかしその攻撃を氷のシールドが受け止め、内部の炎が噴き出す。

 

 

それは一種のリアクティブ・アーマーのようにダメージを受け流すものだった。

 

 

 

「フォルテ!」

 

 

「はいっス!」

 

 

 

発生した水蒸気の煙幕が晴れるころにはもう二人は消え去っていた。

 

 

 

「うぅん。なかなか面白かったのサ。さて、じゃああっちの様子でも見て来るのサ……」

 

 

 

ISを解除したアリーシャはゲームをしたかのようにそう言って和傘を開きのらりくらりと歩いて行った。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「どうしてお前が!?」

 

 

 

「はッ!察しの悪いヤローだぜ全くよォ!」

 

 

 

あの狙撃から逃げた矢先、俺は見覚えのある女―亡国機業のオータムと遭遇した。

 

 

彼女の手には拳銃が握られている。

 

 

 

(ともかく…人のいないところに!)

 

 

ダァン!と発射された弾丸を何とかよけ、俺は人がいないほうへと走ってゆく。

 

 

「バカが!そっちは行き止まりだぜ!」

 

 

しかし、複数の袋小路と抜けた先に待っていたのは行き止まりの壁だった。

 

 

「クソっ!」

 

 

万事休す―とそう思ったとき、オータムの周りを蒼いビットが取り囲んだ。

 

 

「セシリア!」

 

 

「お待たせしました一夏さん!」

 

 

オータムの真後ろにはスターライトMK-Ⅲを構えたセシリアが立っていた。

 

 

それだけではない。箒に鈴、ラウラの姿もあった。

 

 

 

「さて一緒に来てもらおうか」

 

 

 

「一歩でも動けば貴様を打ち抜く」

 

 

 

「アタシの衝撃砲も、生身で受けたら全身が吹き飛ぶわよ」

 

 

 

この包囲に、オータムも顔色を真っ青に変えている。

 

 

 

このまま終わり―そう思ったときだった。

 

 

ザシュ―と一筋の刃が一瞬にしてセシリアのビットを堕とした。

 

 

 

「何ですの!?」

 

 

 

セシリアがそう叫ぶ。

 

 

そして視線の向こうにはIS学園の制服を着た少女が、自身の身の丈以上の刀を握り占めていた。

 

 

目まで伸びた黒髪。そこから眼鏡越しに見える瞳。

 

 

だがその右目だけは漆黒の中に金色が輝いていた。

 

 

 

 

「冬…香……?」

 

 

 

箒がつぶやく。

 

 

 

 

「零落……白夜!」

 

 

 

そう冬香がつぶやくと、光と共に漆黒の装甲が彼女の身体を包み込む。

 

 

 

「なッ!」

 

 

 

いきなりの不意打ちに箒、鈴、セシリア、ラウラの四人は何の対応もできずにシールドエネルギーを削り取られてしまう。

 

 

 

「冬香……?」

 

 

 

彼女はそっと俺の前に立ち、握る刃の矛先を俺へ向けた。

 

 

 

「動くなら殺す」

 

 

 

そう言って彼女は俺たちと同じように状況を掴めぬオータムを抱えて、飛び去ってゆく。

 

 

 

 

彼女が立っていた地面には、二つの涙が落ちたような跡が地面にできていた。

 

 




まずはお気に入り登録1000件突破ありがとうございます!不定期更新ですが頑張って書いていきます。


それと、運動会後に専用機持ちを一クラスに集める描写を忘れたことに気付いたので前回の冒頭に書き足しておきました。



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