TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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修学旅行編①

 

 

「今日から一緒だね」

 

 

 

ホームルーム前、私の隣に座った簪がそう言った。

 

 

休み明けの月曜、楯無さんの取り決めにより、全専用機持ちが一組に集められることになった。

 

 

席替えも少し行って、簪は私の隣。一夏君の後ろになった。

 

 

 

 

「よし、全員いるな。先日の件を考慮し、専用機持ちを全て一組に集めることにした。これでクラス対抗戦はできなくなったわけだが、専用機持ちにはミッチリと特別メニューでしごいてやる。楽しみにしておけ」

 

 

 

 

そう言われた後の簪の顔はちょっと面白かった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「さて、皆さん。延期に延期を重ねていた修学旅行ですが、受け入れ先との調整の結果日程が決まりました。」

 

 

生徒会の集会の壇上で、私は話している楯無さんの後ろに立っている。

 

 

ついこの前までは書記補佐だったので立つ必要はなかったのだが、副会長と言うこともあって立たざるを得ない。

 

 

しかしこの位置、一夏の隣と言うこともあって座っている生徒から『誰よあの女』と言う視線を感じる。つらい。

 

 

「しかし、度重なる第三者の介入が今度は行き先の京都で起きないとは限りません。そこで…」

 

 

楯無さんはパッと扇子を開く。書かれていた視察の二文字は空間投影ディスプレイへでかでかと映される。

 

 

「選抜メンバーによる京都視察を行います。学年問わず、現在学園にいる専用機持ち全員に加え生徒会副会長。引率は織斑先生と山田先生に行ってもらいます」

 

 

 

そう言い放つと生徒達からは羨望の声が所々で聞こえて来る。

 

 

 

(京都かぁ…)

 

 

 

『京都』という単語で私の頭の中はスコールから渡されたあの招待状の事でいっぱいになる。

 

 

視察に行く前日に開けろ、と彼女はそう言っていた。

 

 

 

「冬香」

 

 

私を呼ぶ声が聞こえた。ふと我に返ると、もう全校集会は終わり皆片付けに入っていた。

 

 

そんな中で何もせずに立ったままでいる私を不思議に思ったのか簪が声をかけてくれたようだった。

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「ううん。なんでも。ちょっと考え事してただけ」

 

 

私はそう返答し、ありがとうと付け加えて簪の頭へ手を置き、ゆっくりと撫でる。

 

 

打鉄弐式が完成したトーナメント以降、こうすることも少なくなってきたので久々だった。

 

 

 

「こら、イチャついてないで冬香ちゃんも簪ちゃんも手伝って」

 

 

そうこうしていると楯無さんに注意されてしまった。

 

 

簪は顔を赤くし、ぱっと私から離れる。

 

 

(さて、私も仕事しないと)

 

 

そう思って私はまだ運ばれていない机を動かし始めた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「さて、みんな集まったわね」

 

 

IS学園の地下、本来ならば使われることのない会議室に、世界最強の戦力が集まっていた。

 

 

「今回の目標は亡国機業の実働部隊『モノクローム・アバター』の撃滅、それ一点よ」

 

 

壇上に立つのは楯無。空間投影スクリーンには三機のISの姿が映る。

 

 

 

開発元、入手経緯が一切不明。つい先日も楯無と戦闘を繰り広げたゴールデン・ドーン。

 

 

再起不能となったアラクネの代替として用いられると予想される、オレンジとパープルでカラーリングされたラファール・リヴァイブ。

 

 

そして英国の最新鋭機、強奪されたサイレント・ゼフィルス。

 

 

 

そのパイロットであるモノクローム・アバターは文字通り一騎当千の実力も兼ね備えている。

 

 

 

「やっぱやるんすね~。ウチの連中も噂してたっスよ。」

 

 

 

「いよいよって訳か。グリフィンがいねぇのは残念だったがな」

 

 

ホーステールをたなびかせ、腕を組むダリル、ダルいっす~と付け加えるフォルテ。

 

 

ペアでは他の追随を許さない二人は心強かった。

 

 

「みんなも気を引き締めて。彼女たちは国際テロ組織よ。思う存分戦えるわ」

 

 

 

「「「「「「はいッ!」」」」」」

 

 

一年生の声が響く。まだ上級生に比べまだ荒削りなところもあるが、彼らはダイヤの原石だった。

 

 

「そうだ。生徒会副会長の冬香ちゃんですが、彼女は一切何も伝えません。生徒会のほうで作成したルートに従ってもらい体裁上の視察を行ってもらいます。」

 

 

勿論京都にいる更識家の監視も付けます。と続けた楯無の言葉に、簪や一夏、箒などがほっとした顔をする。

 

 

「それでは、各自出撃に備え、解散!」

 

 

凛とした楯無の声が部屋の中に響いた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「じゃあ、おやすみ。冬香」

 

 

京都への視察と言う名の亡国機業殲滅作戦が明日に迫った夜。

 

 

私は簪が眠るのを待ち、例の招待状を開く。

 

 

 

「これって…」

 

 

 

蝋で封された封筒を開けると中には三枚の写真と手紙、そして一枚のチケットが入っていた。

 

 

 

楯無さんと千冬さんには、明日は何もしなくていいといわれた。

 

 

 

 

「千冬さん…楯無さん。簪、みんな……。ごめんなさい」

 

 

 

 

でも、その封を開けてしまったなら、私はそう言うしかなかった。

 

 

そう呟くことが、今考えられる最大の贖罪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

『次は~京都、京都に止まります』

 

 

車内アナウンスが到着地を伝える。

 

 

東京駅ではラウラがやけにひよこに執着したりと一悶着あったが、新幹線で約二時間。

 

 

日本の古き良き都に俺たちは付いた。

 

 

「ん、あれ」

 

 

もうすぐで到着だというのに俺の脳内には一瞬の不安がよぎる。

 

 

 

「一夏、何してんのよ」

 

 

バッグの中をがさごそと漁る俺をみて鈴が言った。

 

 

「ちょっとな……あった!」

 

 

 

そう言って俺は今となってはひどく古めかしいフィルムカメラだった。

 

 

もう十数年前のものになる。

 

 

親が蒸発した俺と千冬姉にとって家族の絆同然のようなものだった。

 

 

 

「それ、まだ持ってたのね」

 

 

いつもは激しい鈴だったが、この時ばかりは優しい視線でこのカメラを見つめる。

 

 

箒と鈴は何度も映ったことがあるカメラだが、IS学園に入ってからは使う機会がなかった。

 

 

だから一昨日急いでメンテナンスしたのだ。

 

 

「鈴さん!一夏さんの独り占めは禁止ですの!」

 

 

「そうだぞ!一夏は私の嫁なのだ。ほら早く行くぞ!」

 

 

新幹線を降り京都駅から出ようとすると、長い階段が顔を出す。

 

 

「ここで集合写真撮ったらよさそうだな」

 

 

俺がそう漏らすと、千冬姉も賛同する。

 

 

「そうだな。記念に撮っていくか」

 

 

「え、いいのか!千冬姉!」

 

 

「織斑先生だ。ほら三脚を立てろ」

 

 

パシッと頭を叩かれる。最近『織斑先生』と呼べていたのに今回ばかりはボロが出てしまった。

 

 

俺はカバンの中から素早く三脚を展開しカメラをセットする。

 

 

「それじゃあ撮るぞ!」

 

 

そう言うとつかつかと鈴が歩いてくる。

 

 

「バカじゃないの?あんたが映らなくてどうするのよ!」

 

 

ほらと言って鈴はタイマーを30秒にセットする。

 

 

そしてグイッと袖をつかまれみんなの列の中に押し込まれた。

 

 

 

 

 

カシャ―

 

 

 

 

 

 

とカメラはオートでシャッターを切り、俺達を映した。

 

 

二度とそろうことのない、そのメンバーを。

 

 

 

 




と言う訳で修学旅行編です。

ここから私が考える「群咲」が結構かかわってくるので、原作との乖離がより進みますが、ご了承ください。


まぁ冬香がいる時点で物語が大きく変わってるので何とも言えませんが。


感想評価よろしくお願いします。

追記:何故か1部が繰り返されていたようです。訂正しました。

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