TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
「お、セシリア」
生徒会室に行く途中の廊下で俺はセシリアを見かけた。
「あら、一夏さん。丁度良かったですわ」
振り返ったセシリアの手には何か握られているようだ。
「どうしたんだ?それ…生徒手帳?」
「ええ。この度、わたくしは生徒会執行部に入ろうとおもいますの!」
「おお、そっか!じゃあ楯無さんに俺からも推薦してみるよ」
「うふふ。ありがとうございます。では一夏さん!一緒に行きましょう」
そう言ってセシリアと一緒に進んでいくと今度はツインテールの見慣れた後姿が目に入った。
「お、鈴」
「あ、一夏!……とセシリアも一緒なのね」
こっちに振り向いた鈴もまた生徒手帳を持っている。
「鈴も生徒会に入りたいのか?」
「ええそうよ!何?ってことはセシリアも?」
「そうですわ。栄えある学園の発展のため、わたくしは決意したのです」
そうセシリアが言うと鈴はフーンと言いながら怪訝な顔をする。
「まぁ、いいわ。どっちにしろ目的は一緒みたいだし」
そう言ってセシリアがいる方とは反対の左側にくる。
「よし、じゃあ行くか」
そう言って俺たちは生徒会室へ足を進めた。
~~~~~
「却下」
「なんでよ!!」「なんでですの!!」
生徒会室についた俺たちは早速楯無さんに詳細を伝えてみたが扇子と口頭、どちらも却下と言われてしまった。
「だってメンバーはもう全員そろってるんですもん」
ピシッと扇子を向けた先には楯無さんの妹、簪さんが机に座り作業をしていた。
「どうも。書記補佐兼
「織斑…」
「一課ァ?」
ひどいダジャレじゃない!と鈴が続けた。
「ぶふっ!」
何故かツボにはまったようで吹きだしたセシリア。それを鈴は少し引いた眼で見つめている。
「コホン。しかし待ってください!納得がいきませんわ!」
息を整え、そう言い放ったセシリアはゴソゴソとポケットの中から生徒手帳を取り出す。
「ここの生徒会の欄には、会長1、副会長2、書記2、予備枠1となっています!副会長が一夏さん一人しかいらっしゃらないので枠は一つ余るはずですわ!」
「そうよそうよ!」
セシリアの発言に鈴も便乗して声をあげる。
「はぁ…貴女達少しは落ち着きなさい」
楯無さんはそう言いながらピシャと扇子を開く。そこには冷静と書かれていた。
と、同時に生徒会室の扉がガチャリと開く。
「ちょうど来たみたいね。彼女が、二人目の副会長よ」
そう言って楯無さんは座席から立つと持っていた扇子を今入ってきた
「遅れました……って、なんですか?」
この部屋にいる全員の視線が一気に彼女へ集中する。
「天利……さん?」
セシリアが茫然と呟く。
「ちょぉっと待ちなさいよ!!またあんたぁぁぁ!!?」
そんなセシリアをよそに、鈴は入ってきた
「へ?な、何がですか?」
今入ってきたばかりの天利さんは何が何だか良く分からないようで、困惑している。
「セシリア、知ってた?」
「いえ。天利さんが執行部の役員だなんて全く知りませんでしたわ」
そう言いつつ二人は天利さんへと詰め言ってゆく。
と、こっちもこっちでさっきの事を確認しなければ。
「そう言えば、簪さんが俺のスケジュール担当になるのか?」
「はい。私なら公正でしっかりとしたスケジューリングが出来るってお姉ちゃんが」
「まぁ、のほほんさんのスケジュールはすごかったからなぁ。ともかくよろしくな」
ひどい―と言う言葉以外適切な言葉が見つからないくらいあれはひどかった。
その当の本人は我関せずという態度で俺の後ろでスナック菓子をむしゃむしゃ食べているが。
「分かったわ!」
各々好き勝手に話始め、渾沌極める生徒会室に楯無さんの声が響く。
「一週間後、一年生対抗織斑一夏争奪代表候補生ヴァーサスマッチの開催を宣言します!」
また、面倒ごとになりそうだ。
~~~~~
「ふぅ、やっと到着かぁ」
バスに揺られること十数分。放課後の時間を利用して俺たちは大運動会の買い出しへ来ていた。
「じゃあ、先ずはパンから行こうぜ。
「うん」
俺と天利さんは副会長同士買い物班に命じられていた。
町中にある、配送サービスもやっているステーション・モールへと入ってゆく。
「アンパン50個に…軍手となんだっけ?」
「ハチマキが5色と他にも生徒会室でなくなりかけてたコピー用紙に輪ゴムとかも」
取り出したメモ帳を見ながら天利さんはそう答える。
「じゃあ、OA用品はここじゃなくてもっと学園に近い店で買うか」
「ここで買っていかないの?」
「ああ。ちょっと寄りたい店もあるからっと、ここだここだ」
そう言って俺たちはパンコーナーに入っていった。
~~~~~
「よし、これで最後だな」
最後の発注品であるハチマキの注文で二時間ほどのモールでの買い物は終わりを告げた。
「じゃあ、次は生徒会の備品?」
俺にそう聞いた天利さんは店員から受け取ったレシートとお釣りを財布に入れていた。
「いや、あの店に寄ってもいいか?」
そう言って俺は指をさす。その指先は雑誌にも掲載された有名な抹茶スイーツの店へと向いていた。
「あの店って……」
「今日から新作が出るらしくて、まぁ副会長就任のお祝いをな」
「そんな悪いよ」
天利さんはこちらを向いて申し訳なさそうに言う。だが、俺の意志はそれくらいでは変わらない。
「天利さんにはいつも助けてもらってるし、その分も含めておごらせてくれ」
「……じゃあ、ありがたく」
また申し訳なさそうな表情であったが肯定の返答をしてくれた。
やっと誘えた、という安堵の感情が俺の中に広がってゆく。前々からしっかりと話してみたかったし、こうしてどこかに出かけてもみたかった。
今までは何かとタイミングが合わなかったけどこうして買い出し班にしてくれた楯無さんには感謝しかない。
店内に入るとほぼ満席で空いている席は窓際の数席だけだった。まずはその席を確保する。
「新作は…お、抹茶シェイクか。天利さんもそれで良い?」
「うん。私はなんでも」
テーブルの上に乗せられていた広告には件の新作の抹茶シェイクが大きく載せられていた。
「それじゃあ注文してくるから待っててくれ」
「うん」
短い返事を聞いたいそいそと俺は注文カウンターへと向かう。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
にこっと和服調に仕立てた制服を着た店員さんが笑みを浮かべる
「ええっと、この新作の抹茶シェイク2つ」
「ああっ!すみません!もうほとんど売り切れでして、おひとり分ならなんとか……」
「じゃあ、1つは抹茶ラテをアイスで」
「はい、ではシェイクに、アイスラテ。承りました。すぐお持ちします。では先にお会計いたします」
そう言われ会計をしている間にシェイクとラテは出来上がったらしく、もうトレイに乗せられていた。
俺はそれを素早く受け取り、席まで持ってゆくと、座っていた天利さんは髪をかき、カバーをかけた文庫本を読んでいた。
そう言えばバスの中でも読んでいたような気がする。
それにしても―だ。
彼女の座っている席は夕暮れの日の光で茜色に照され、その中で髪をかく姿はなんだか妙にドキッとさせるものだった。
「悪い、待たせたな」
「あ、いや。ぜんぜん」
そう言った天利さんはパタンと文庫本を閉じごそごそとバッグの中へしまう。
トレイからシェイクを渡し、俺は対面へと座った。
「じゃあ、いただきます」
そう言って天利さんはちゅーとシェイクを吸い込む。俺も抹茶ラテをかきまぜ、飲み始めた。
そうして数分が経っただろうか。飲み物がお互い半分くらいまで減った時、俺はふと簪さんの人集めの時の事を思い出した。
「そういや、俺天利さんに貸しがあるんだっけ?」
「あぁ、うん。そう。あの時はありがとう」
「いや。……それでさ、お礼今頼めるか?」
そう俺が言うと天利さんはきょとんとした顔でこちらを見つめる
「ええっと、今?」
「ああ。……その、冬香って呼んで良いか?」
言って見たはいいものの、なんだか照れ臭くなってしまった。
「へ?」
俺の言葉を聞いた天利さんはきょとんとした顔で声を発する。
「ダメか?」
「あ、ううん。大丈夫。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち上がって彼女の手を握っていた。
「そうか!じゃあ俺のことも一夏って呼び捨てにしてくれ!」
「え、あ、うん。よろしくね。一夏」
冬香がにこりと笑った。
それは……彼女が箒や簪さん、千冬姉に見せているような優しい笑顔だった。
と言う訳で次回からは運動会編、その後に修学旅行と続きます。
いやぁ、前半の生徒会副会長の下りはずっと書いてみたかったワンシーンでした。
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