TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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ワールド・パージ編②

「貴女ならわかるでしょう?織斑千冬」

 

 

 

「………」

 

 

 

違う。違うんだ。外見は同じでも、彼女はあんなことは言わない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

私は必死にそう自身へ言い続ける。しかし、身体のほうは正直であった。

 

 

眼前の少女へ、この腰に下げた刀を向けることはできない。

 

 

ああ、間違いなく『異常』だ。

 

 

 

「あれれぇ?なんで何も言わないのかしら?……ああそっか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「…!!」

 

 

同じだ。寸分違わず、その話し方は、今まで私に向けられた『彼女』だった。

 

 

 

「呼ぶな…!()()()姿()でその呼び方をするなァッ!」

 

 

 

拳を握りながらそう叫ぶ。

 

 

 

「あは、やっと反応してくれましたね?じゃあ、始めましょうか。楽しい楽しい殺し合い!」

 

 

 

パァッと彼女の手元が明るくなると同時に、彼女は地面をける。

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

とびかかる彼女の光が刃になった瞬間、私は腰にマウントされている刀を抜いた。

 

 

キンッ―と刃と刃のぶつかり合う音が薄いライトで照らされた空間に響く。

 

 

 

「織斑千冬、私はずぅぅっと夢見てたわ!貴女と戦えること!」

 

 

 

(クッ!速い!!)

 

 

 

繰り出される剣撃は一切の反撃の余地を与えないほど激しい。

 

 

 

「一体、誰なんだお前は!」

 

 

 

「うふふ、私は冬香ですよ?千冬さん!」

 

 

 

彼女は妖艶な笑みを浮かべる

 

 

 

「たわけたことをォッ!!」

 

 

 

「ふふふふふ!本当よぉ!私は意思だけの存在、身体は正真正銘、100%天利冬香なんだから」

 

 

 

そう言った彼女は左手にも武器を形成する。

 

 

 

「葵だと!」

 

 

 

左手に握られたのは右手の刀がナイフに見えるくらい巨大な刀、IS用ブレードである葵だった。

 

 

ガンッ!と振り下ろされる葵を間一髪で回避する。

 

 

直撃した床は特殊なコーティングが施された材質であるが、そんなものを無視するかのように砕け散った。

 

 

(身体が冬香のものなら、攻撃はできない……。だが、このままではいずれ押し切られる!)

 

 

 

「やっぱり貴女は最高よぉ!織斑千冬!」

 

 

 

また彼女が刃をふるう。ガキン!と鈍い音が通路に響き、火花が散る。

 

 

 

「冬香……」

 

 

 

そう小さくつぶやく。

 

 

「アハハ!今は何を言っても無駄よォ?」

 

 

 

また繰り出される葵の一撃を受け流す。パキン―と四本目の特殊刀が折れた。

 

 

 

折れた瞬間に壁を蹴り、一度距離を開ける。

 

 

 

『織斑先生!こっちの準備が出来ました!敵ISを誘導願います!』

 

 

 

と、その瞬間、ザザッっというノイズと共にインカムに声が届く。

 

 

 

(やるしかないのか…)

 

 

 

私は、間違ってる。こんなことをしてはいけない。

 

 

 

罪悪感が、倫理観が、一気に波として襲う。だがしかし、現状を打破するためには、これしかなかった。

 

 

 

「山田先生!状況が変わった。目標が小さくなったが誘導する。合図で一斉射を頼む」

 

 

 

『了解!』

 

 

 

(すまない冬香……!)

 

 

 

そう心へ言いながら腰にマウントしている五本目の刀を抜いた。

 

 

 

「ハァァァァアッ!」

 

 

地面を蹴り一気に彼女の元へ駆ける。

 

 

「もっとよぉ!もぉぉぉっと殺し合いましょう!」

 

 

そう言う彼女へ刃を向けながらも、着実にポイントへ誘導してゆく。

 

 

そして彼女の位置が射線と重なった時―

 

 

「山田先生今だ!」

 

 

そう叫んだ。

 

 

ゴン―という大きな音と共に、30ミリ7連装機関砲(GAU-8アヴェンジャー)を四基装備した巨大な『砲台』が動き出した。

 

 

 

「あはァッ!」

 

 

が、しかし―その砲台から弾丸が発射されることはなかった。

 

 

「何を!」

 

 

動き出していたクアッド・ファランクスは光の粒子となって消え去ってゆく。

 

 

それだけではない。彼女が指をパチンと鳴らすと展開していたラファール・リヴァイブも同様に消えてゆく。

 

 

「あはは、山田先生、あまあまですよぉ。私がこの程度の事に気付かないとでもぉ?」

 

 

「ッ!」

 

 

山田先生が狼狽える。いつも私たちに見せる笑顔が、異様な形で見せられているのだ。

 

 

 

「織斑先生!」

 

 

「詳しいことは後だ、今はこの状況をどう乗り切るか…だが」

 

 

最後の、六本目の刀を腰から引き抜く。

 

 

「うふふ、嬉しいなぁ。山田先生まで私と殺し合いしてくれるんですかぁ?」

 

 

山田先生は少したじろぎ、怯える様な目をする。

 

 

まるでその姿は蛇と睨まれたカエルのようなものだった。

 

 

しかし、その狂気は唐突な彼女の一言によってなくなる。

 

 

 

「あらぁ、()()()()()()()じゃあ私は戻らなきゃ」

 

 

 

「何を言って!?」

 

 

 

「うふふ。今日はとっても楽しかったわぁ。」

 

 

 

こちらの言葉を無視し、彼女は言葉を続ける。

 

 

 

「あ、そうだ。その前にとぼけた私の本当の名前、教えないと」

 

 

今までの邪悪な笑みとは違う、さわやかな笑みを浮かべて彼女は自ら名の名を言った。

 

 

「私の名前は群咲、貴女とその弟妹(きょうだい)を滅ぼすもの。それじゃあまた会いましょう?」

 

 

 

彼女―群咲がそう言った瞬間、ぷつんと糸が切れた人形のようにその身体が地面へ倒れこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

一夏がこちらに戻ってきたのはその数秒後だった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

「うん……?」

 

 

 

ぬぐえぬ違和感と共に私は目を覚ました。

 

 

「ここって……」

 

 

 

確か、先ほどまで生徒会室でパソコンとにらめっこをしていたような……

 

 

 

「冬香!」

 

 

ウィーンと音を立てスライド式の自動ドアが開くとともによく聞きなれた声が私を呼ぶ。

 

 

 

「わっ、千冬さん!?」

 

 

入口から数メートルはあるベッドへ一瞬でやってきた千冬さんは私をしっかりと抱きしめる。

 

 

 

「冬香!どこか、身体に異変はないか?気持ち悪かったりは……!」

 

 

ぱっと私の身体を話すと千冬さんはそう言った。

 

 

「い、いえ。別に何とも……でも、強いて言うなら……」

 

 

 

頭の中にあった違和感。なんとなく、だがそれは夢だったのだと思う。

 

 

 

「夢を見ました。……千冬さんと戦う夢を」

 

 

 

「そうか…」

 

 

千冬さんの顔が、少し悲しみを含んだようなそんな顔になる。

 

 

「そう言えばなんで私はここに…?生徒会室で仕事をしていたところまでは覚えてるんですけど……」

 

 

「あ、ああ。()()()()()()()()()()()。棚の上にあった段ボールがお前の頭を直撃したんだ。それで、脳震盪を起こしたらしくてな。この部屋は脳波の検査もできる。だからベッドごと移送させたんだ」

 

 

成程、道理で寝るまでの記憶がないわけだ。

 

 

「とりあえず、部屋まで送っていく。更識妹にも状況は伝えておいたから心配することはない」

 

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

そう言って私はベッドから起き上がる。

 

 

「おっと」

 

 

一瞬、ぐらっと身体が揺れるが、すぐさま体制を立てて直した。

 

 

 

「大丈夫か?車椅子は念のため用意してあるが」

 

 

「あはは。心配性ですね千冬さん。大丈夫ですよ」

 

 

 

そう言って私は千冬さんに連れられ部屋までの道を進んだ。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

シュとスライド式のオートドアが開く音がした。

 

 

「おっかえり~!どうだったくーちゃん?」

 

 

部屋の主、篠ノ之束は今入ってきたクロエに対しそう言った。

 

 

「はい、束様の見立て通り暮桜は半覚醒状態になっていました。それと…」

 

 

「群咲のほうもうまくいったみたいだね」

 

 

「ええ。唯、記憶処理能力がまだ甘いようです」

 

 

「そっかぁ。まぁそこは束さんの腕の見せ所だよね~。最終的には右手で収まるくらいの人数しか覚えてなくさせるんだし、()()()()()()()()()()にはまだ遠いかぁ」

 

 

 

キリキリと腕を動かし、束は机の上で何やら工作をしていた

 

 

「さてさて、次は楽しい京都だね!」

 

 

「そうですね。もう少し先ですが楽しみです。束様」

 

 

 

屈託のない笑顔を見せた束に、クロエも同じように返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなりましたがワールド・パージ後編です。③までの予定が②で終わってしまいました。次回からは九巻の内容に入ります。


感想、評価よろしくお願いいたします。

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