TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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専用機持ちタッグマッチ編⑥

 

「それでは、更識楯無生徒会長より開会の宣言をいただきます。」

 

 

数百名の生徒が集う中で虚さんの声が響く。

 

 

壇上に立つのは書記補佐という微妙な地位の私を除いた生徒会のメンバーだった。

 

 

昨夜は楯無さんの急な来訪に驚いたが特段変わったことはない。開会式が終わったらすぐ着替えてくれと言う事だった。

 

 

追加で最新のチョーカー型変声機と身バレ防止用サングラスももらってしまった。

 

 

(これでは道化だよ…なんて)

 

 

なんて考えている間に楯無さんの開会宣言が始まるところだ。

 

 

「おはようございます。本日は専用機を持つ生徒によるタッグマッチ戦ですが、皆さんも学ぶことが多くあると思います。しっかりと見ていてください。……まぁ、それはそれとして、」

 

 

そこまで言った楯無さんは扇子をバサッと広げる。そこに会ったのは『博徒』の二文字。

 

 

「皆さんに楽しんでもらうために企画を用意しました!名付けて、『優勝ペアは誰だ!食券争奪戦!』」

 

 

ワァァァァァァと歓声が広がってゆく。やっぱり用意しておいたようだ。

 

 

ふと教師陣の顔を見ると千冬さんのみが頭を抱えている。

 

 

「それではお待ちかね!対戦表を発表します!」

 

 

 

 

 

 

パァッっと空間投影スクリーンが楯無さんの後ろに展開される。

 

そして第一試合の組み合わせが目に入った。

 

 

織斑一夏 シャルロット・デュノア VS 更識簪 角谷奈津美

 

 

 

(一試合目かぁ…。でも、()()があるからどっちにしろ動くタイミングは変わらない…かな。)

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

朝起きた時、冬香はもういなかった。

 

 

寝室を出てテーブルを見ると今日の準備を手伝うため先に行くという一枚の書置きがあった。

 

 

「冬香…」

 

 

そう呟いた後、ふらふらとした足取りで洗面台まで歩いてゆく。

 

 

澄んだ冷水を乱雑に顔に浴びせタオルでふき取る。

 

 

ふと鏡を見るとそこに映っていた姿は、少なくとも清々しいものではなかった。

 

 

いつも澄んだ瞳の姉とは遠くかけ離れ、優しい笑顔を向けるルームメイトへは1ミリだって届かない。

 

 

(昨日聞いたことは…全部嘘、まやかし。私の夢の中の出来事)

 

 

そう自分に言い聞かせる。でもそんな程度でこの心が変わるとなんてない。

 

 

「朝ごはん…食べなきゃ」

 

 

冷蔵庫からスーパーエナジーゲル2号『プロト・どっこらショット』を取り出しヨーグルトにかける。

 

 

「…不味」

 

 

完全に失敗作だ。まだ改良の必要がある。

 

 

時計を見るともう8時を回っていた。食器を水につけ制服へと急いで着替える。

 

 

「…行ってきます」

 

 

左手の中指にはめられている打鉄弐式を一撫でし、私は扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の猛烈な閃光と耳を塞ぎたくなるような爆発音が第4アリーナのピットで準備をしていた簪を襲った。

 

 

 

「なに…」

 

 

その声は小さく空気を震わせる。アリーナ中央へ目を向けるとその攻撃の主がゆっくり姿を現した。

 

 

立ち込める煙の中に赤く光る瞳。

 

 

何人の視線も吸い込む漆黒の装甲。

 

 

背からは光の翼が神々しく生えている。

 

 

 

「黒薊……」

 

 

そう呟いた簪はとっさに口を押えた。

 

 

()()()()()()()。その名を。彼女にしか許されない、その機体の名を。

 

 

眼前のISを、()()()()()()()()のだ。黒薊と。

 

 

(わた…し…)

 

 

汚してしまった。ヒーローを。まるで苦悩の知らぬ一般人がヒーローと悪を同一視するかのように。

 

 

 

そう考えているうちにも眼前のISはこちらへ一歩一歩迫ってくる。

 

 

宙にすら浮かず、地に足を突き歩いてくる。

 

 

無機質なソレは簪を敵とすら認識していない。人間はちっぽけなアリ1匹を殺すのに核爆弾なんて使わない。

 

 

震える身体は空気を震えさせることもできず、全身から力は抜け、地面へペタリと座り込んでしまう。

 

 

(私…私…やっぱり、無理だよ…)

 

 

前身が死の恐怖に支配され、うずまってゆく。

 

 

 

(誰か、誰か助けて…)

 

 

 

簪は微かな力を右腕にそそぎ、ゆっくりと伸ばした手で空を掴む。

 

 

⦅大丈夫、簪?⦆

 

 

「…!!」

 

 

声が聞こえた。幻聴とくくればそれで終わる。でも簪にははっきりと聞こえた。

 

 

⦅簪は、いつも一人で抱え込んじゃってる。そんなんじゃさ、いつか壊れちゃうよ。⦆

 

 

「とう…か…」

 

 

⦅大丈夫。私は絶対貴女を否定なんかしない。全部、受け止めるから⦆

 

 

漆黒のISはすぐそばまで迫る。そして、右手のブレードを展開し、高く挙げた。

 

 

 

 

 

 

⦅だから、辛くなったらいつでも呼んで。私の名前!⦆

 

 

 

 

 

 

「助けて!私のヒーロー(冬香)!」

 

 

 

 

 

 

 

少女のその声が響けば、無機質な、漆黒の殺意は一瞬で意味のないものと化す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ。私のパートナー()!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










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