TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
トンネルを抜けると、海であった。
人工島の上に建設されているIS学園からも海は見えるがやはり白い砂浜があるのとないのとでは大違いである。
「うわぁ~砂浜綺麗~」
隣でそういったのはのほほんさん。
最近少しはクラスメイトとも話すようになったが、やはりダントツで彼女が私に話しかけてきてくれる。
「かんちゃんもこればよかったのに…」
そう、簪ちゃんは倉持から完全に見放された状態でありつつも日本代表候補性としてのプライドにかけ必死に完成を目指している。
この前お弁当をもって整備課にいったらもう二か月で完成できそうとはしゃいでいた。
「学園長に臨海学校は絶対参加しないって直訴したらしいけどね。簪ちゃん」
内気とか言われてるけど普通に原作で一夏くんのことをスタンガンでバチバチするような娘なんだよなぁ…
さて、海沿いの国道を走ること30分。4台のバスは目的地である『花月荘』へと到着した。
広い駐車場へ停まると全員降りはじめ、そして玄関前でクラスごとに整列。いつの時代もこの流れは変わらないようだ。
「ここが三日間お世話になる花月荘だ。従業員の皆さんの仕事を増やさないよう謹んで行動しろ。」
「「「「「よろしくお願いしまーす」」」」
原作でも若々しく見えると言っていたが女将さんは本当にきれいな人だった。
「こちらこそよろしくお願いします。ささ、皆さんお部屋のほうへどうぞ」
もはや慣れた様子で従業員の人たちが私たちを誘導していく。
「わぁ~ひろぉ~い!」
一部屋五人でのほほんさんと私、あとは四十院さんと谷本さんあとは箒さんの五人。
「とりあえず私たちは海に行きますが…」
四十院さんはペロリと服を上げる。既に中に水着を着てきたようだった。
「じゃあ私も行こうかな…」
「私も行く~!」
これを機に何とかクラスメイトとの親交を図っておきたい。
「箒さんは?」
「私は…少し休んでからかな。」
「なら早くいきましょう。別館で着替えらしいので」
さて、いざ行かん!青い海!白い砂浜!
~~~~~
「なんで?」
機械と画面にい囲まれた部屋で私はあすなろ抱きをされている。
誰に?そうウサギに。
「いやぁ~ふゆちゃんに会うの久しぶり過ぎて抑えが効かなくなっちゃってさぁ~」
いつから貴女は私LOVEみたいなキャラになったんですか?
と、いうか一人でトイレに行った瞬間に拉致するのやめてください。
「それに、箒ちゃんにアドバイスもしてあげたからお礼もしなきゃなって。」
あ、泣かせたところはお咎めなしだ。やった。
「で、束さん。お礼ってなんですか?」
「んーっと黒薊のアップデート!今日のためにいっぱい追加機能を考えてきたからね~。」
「追加機能ですか…」
この人がこんなにウキウキしていると逆に恐怖しか感じないのだが。
というか私複数回生死をさまよってるんだけど。
「あー!その目は疑ってるなぁ~?大丈夫だって。ふゆちゃん
「…………」
「それではそれでは~黒薊だ~して?」
逆らえないのである。
「じゃあ、赤椿を箒ちゃんに渡す前にパパパっと終わらせちゃうから…あ、ふゆちゃん」
「なんですか?」
「めちゃんこ強くするのと普通に強くするのどっちがいい?」
「普通で、断じて普通でお願いします!」
めちゃんこ強くなんてされたらどうなる。私の学生生活崩壊まっしぐらだ。
私だって原作楽しみたいんだよ。
「じゃあちゃちゃっとさっきの所に戻しちゃうからそこの機械に乗って。」
指さした先にあるのは見るからにワープ装置と言わんばかりの怪しげな装置。
光る台に乗るとまばゆい光が私を包み込んだ。
~~~~~
目を開けると別館のトイレの中だった。
「さて、行きますか…」
浜辺に出るとのほほんさんがいた。
「あ、ふゆふゆ~今からビーチバレーするんだけどやる~?」
「あー私はいいかな…」
確かこれ一夏君も参加するやつである。
「え~、そっかぁ~」
「ごめんね?あ、四十院さんと谷本さんは?」
「一緒にやるんだぁ~」
「そっか、頑張ってね?」
「えへへ~がんばるよぉ!」
そういってコートのほうへ駆けていった。
ぴょんぴょんと飛び跳ねる姿はとても可愛らしい。
…しかしのほほんさん随分と凶悪なものを持っている。クッ…い、一応私もそれなりにはあるのだが…勝てない。
というかなんでこんなに大きい子がいるのだ…あ、千冬さんだ。
「冬香、一人か?」
「ええ。見ての通り…それよりもほら私よりも織斑君のところへ行ってあげてください。」
確か原作ではシャルちゃんに嫉妬?される所だったはずだ。
「いいのか?」
「私に拘束力はありませんよ。ほらほら早くしないと織斑君取られちゃいますよ!」
私がそう言うとなにやら悲しそうな顔をする。
これはあれじゃな?おおかた一夏が自分のところから居なくなることを想像して悲しんでるな?
「分かった。またな?」
「ええ。織斑先生。」
手をふりふりして見送る……あっ!
「そう言えば私、結局誰とも親交深められてないじゃん…」
…その一言はセミの声に掻き消され、誰にも届くことはなかった。
午後になって一人でいた箒さんを見つけた。
「天利…」
「冬香、呼び捨てでいいよ。篠ノ之さん」
綺麗な赤い水着だった。少し派手かもしれない。
おおかた、一夏君の前に出るのが恥ずかしいのだろう。
「綺麗だね。その水着」
「そ、そうか…?」
「うん。篠ノ之さんにピッタリ」
そういうと彼女は少し頬を赤らめる。
「…箒。箒で、呼び捨てでいい。」
…驚いた。これは箒さんの理解者ポジとして束さんの願いをかなえられる最短ルートに入ったんじゃないか?
「そう?ならそう呼ばせてもらうね箒。」
私はにっこり微笑んで彼女の名前をいう。
このあと箒といっぱい遊んだ。
楽しかった。
…何故か変な視線感じたけど。
夜飯はお刺身だった。席は右がのほほんさんで左が箒だった。
シャルちゃんがわさびをそのまま食べたりセシリアさんがアーンしてもらったり箒が一夏君の事凝視してたり
…さて一日目がもう終わる。露天風呂へ行きたいところだがもう皆ご飯前に入ってしまったらしい。
「じゃあ篠ノ之さ…箒、行こうか?」
私がそう言うと箒を除くほかの3人がこちらを驚きの目で見つめる。大して本人はと言うと、
「あ…」
と言って申し訳なさそうな目でこちらを見つめていた。
彼女の手にはコーヒー牛乳。そして髪はしっとり濡れている。
「じゃあ、私行ってくるから」
結局一人じゃないか…
~~~~~
「で、また何なんですか?」
脱衣所を見回しても一人だったので鼻歌を歌いながら服を脱ごうとしたらまた束さんに拉致されていた。
「黒薊のアップデートがかんりょーしたからね~。」
いぇい!といってピースしている。
「そぉれぇにぃ!…箒ちゃんとも仲良くしてくれてるしね。」
「…珍しいですね。」
束さんの顔はいつもの何かを裏で企んでるような笑みではなく、純粋な微笑みに見えたのだ。
「なにがぁ~?っとそれよりも早く起動してみてよ!」
と、束さんは待機状態-腕輪を私に渡してくる。
今までと少しデザインが変わっており、中心には紅く輝く小さな石のようなものが埋め込まれていた。
「これなんです?」
「かっこいいでしょ!私の趣味!」
戦極凌馬みたいなこと言うなこの人。
(…黒薊!)
私がそう念じると私の体を光が包み込んだ。
今までの白とは違う、紫かかった炎のような色である。
「これは…?」
あの頭につけられていたカチューシャとヘッドギアの姿はない。
その代わりそれらが統合されたような新たな仮面…?のようなものがついていた。
ああ、これ多分「Λ-11」だ。
「うんめんどくさいからいろいろまとめたんだ!」
え、何ですかそれ。いい予感全くしないんですけど
「にしても外観や武装はほとんど変わってないんですね。」
機体の武装をチェックすると腕部のガトリングが廃止、その代わりビーム・トンファーが装備されていた。
背部のバックパックは相変わらず「光の翼」であり、フィン・ファンネル装備に換装も可能だ。
主武装のビーム・マシンガンはハイペリオンのツァスタバ・スティングマトへ変更。
あとは…斬艦刀。これがディスティニーのアロンダイトに更新されていた。
…え?これだけ?いやもっと変なのぶちこんでくるかと思ったけどそうでもなかった…
ラムダ・ドライバも相変わらず機体システム内に存在している。
へ?いやうそでしょ?
「束さん…本当にこれだけなんですか?」
「え?そうだけど?普通にふゆちゃんのデータを見てちょっとだけOS変更したし、他にもちょこちょこ改良はしてるけど」
「……分かりました」
あれ、何だろう。この気持ち。
「じゃあ送り返すからまた乗ってね~」
「はい…」
何だろう。喪失感なのかな…。
「…そんなんで私が終わるわけないじゃん?ふふっ、もっと私のことを楽しませてよね?ふゆちゃん。」
彼女もう居なくなった部屋にその一言は響くのである。
~~~~~
「はぁ~」
やはり温泉はいい。さっきまで感じていた喪失感が全部流されるようだ。
そう、そうなのだ。と言うかなんで私が束さんの実験台紛いの扱いを受けなくて喪失感を得なくちゃいけないんだ。
…私もう銀の福音と戦わなくていいよね?
そんなことを考えていると扉が開いた音がした。
誰か入ってきたようだ。幸いここは時間で男女が変わる方式ではない。
よって
「…冬香?」
おっと千冬さんだった。奇遇である。
「奇遇ですね。」
「ああ。今、一人か?」
「そうか、…すまん冬香、その嫌ならいいんだが…背中流してくれないか?」
この人はもう酔っているのか?いや、いやならいいとか言っているので完全に出来上がっているわけではないんだろう。
「いいですよ。」
私は浴槽から上がって千冬さんからボディタオルを受け取る。
「すまん、頼む」
「…ッ!」
そういって私に背中を向ける千冬さん。私は息をのんだ。
綺麗な背中。純粋にそう思ったのだ。
例えば山の上から素晴らしい景色を見渡す、そんな感覚に近いのだ。
ボディーソープを付け、強すぎず、弱すぎず、絶妙な力加減でごしごしと背中を洗っていく。
こうしているとなんだか家族のようだった。
「千冬さんって…織斑君以外に背中を洗ってもらったことってあるんですか?」
「…ないな。というか…一夏にも洗わせたことはない」
「へぇ。じゃあ私が初めてなんですか?貴女の背中をあらったの。」
「そうなるな…しかしいきなりどうした。」
「んー、なんとなくですよ。それよりも千冬さん。」
「なんだ?」
「頭も洗ってあげましょうか?」
「ゲホッ!ゴホッ!」
そう言ったら千冬さんはむせてしまった。
「お前…私も髪くらいは洗えるぞ。」
「冗談ですよ。冗談…はい、終わり。千冬さんシャワー取ってください。」
「ああ。」
この30分後、山田先生が来たので私が入れ替わるように出ていった。
さて、浴衣に着替えた私は自販機でコーヒー牛乳を買い、夜風を浴びようと少し外にでた。
「…綺麗な月。」
静かな夜に明るい月があたりを照らしている。
潮の香りと少しだけ感じる夜風、揺れる木。
そして…
「黒薊ッ!!!」
両手を展開しラムダドライバを使用してフィールドを形成する。
飛来した銃弾はフィールドによって止められ地面へ落ちる。
「成程、このくらいは対応できるか。少しは張り合いがある。」
空中に一機のISが静止していた。機体はラファール・リヴァイブのカスタム機。
黒薊のセンサーが相手の顔を拡大する。
短髪にした黒い髪、その顔はつい先ほどまで一緒にいた、なじみ深い顔だった。
「織斑…マドカッ!」
青天の霹靂。それは、まったく予期せぬ出会いだった。
遅くなりました。ちなみに私はあの漁船に亡国が乗っている展開好きです。
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