仮面ライダーアズライグ 作:ヘンシンシン
小猫っちにかばわれて、私はギリギリで無事だった。
だけど、そのせいで小猫っちがやられた。
……誰のせいだ?
決まってる。
今目の前で勝利の笑みを浮かべているあの年増女だ!!
「
一瞬で鎧を身にまとうと、私は躊躇することなく年増を殴り飛ばす。
何が起こったのかもわからずに、年増は地面へとたたきつけられた。
うん、骨は粉砕したしこれで終わりでしょ。
もうこれ以上考えるのはやめだ。なんていうか、慣れてないからいろいろと抑えられない。
今からあの焼き鳥をぶちのめす!!
一気に校舎の上まで飛んで、部長と戦闘中のライザーの横っ面に一発パンチを叩き込んだ!
「……ほう? まさかすでに禁手にまで目覚めているとはな」
「うるさいよ! 悪いけど、いろいろと抑えられないから八つ当たりさせてもらうよ!!」
悪いけどさぁ、ちょっと機嫌が悪いんだよこっちは!!
『落ち着け相棒!! テンションが上がりすぎて消耗が激しいぞ!!』
「わかってるけど、もう我慢できない!!」
後輩の小猫っちにかばわれて、こっちはいろいろと来てるんだよね!
……先輩の私がフォローしなきゃいけないのに、油断したせいで小猫っちがやられちゃった。
だったらその分成果を上げないと、小猫っちに悪い!!
「面白いな女!! いいだろう、伝説の二天龍を叩きのめせば俺の白も作ってもんだ!!」
「小物のセリフだよ焼き鳥!!」
私とライザーは真正面から殴り合う。
ライザーは全身から炎をまき散らしながら、こっちに躊躇なく反撃を叩き込んだ。
うん、マジで痛い。
だけど、それがどうしたっていうんだよ!!
「ライザー!! あんた、隙でも無い男に嫁ぐ女の気持ち考えたことある!?」
「なにぃ!?」
そうだ、誰一人としてその辺を全く考えてない。
政略結婚を受け入れる者もいるだろう。それが平気な人は当然いるし、恋愛かどうかはともかくお互いに不快な感情を抱かない人もいる。
だけど、リアス部長はそういうタイプじゃないんだよ!!
「好きでもな男の子をはらむなんて、神でもごめんな人だっている!! なんでそれがわからない!!」
「失礼な!! 結婚すれば幸せにする自信はある!!」
それがわかってないっていうんだ!!
「ライザー!! あんたはリアス部長をグレモリーのリアスとしてしか見ていない!!」
「何を言っている! リアスはグレモリーの跡取りだろうが!!」
カウンターの拳が突き刺さるけど、その言葉で絶対にこいつがアウトだってよくわかった。
「部長は! グレモリーの色眼鏡がない男と結婚したいんだよ!!」
真正面から私はヘッドバッドを叩き込む。
そして、遠慮なくそれを連打した。
「それが! できない! 焼き鳥に! 私達の! 部長は! やらせない!!」
連続で、連続で頭突きを叩き込む。
鎧が砕けて額が割れて、血が目に入るけど構うもんか!!
「だからやらせない!! 私たちを、イッセーを救ってくれたリアス部長には、幸せになってほしいから!!」
そう、私はリアス部長に感謝している。
赤龍帝の籠手があるからこそとはいえ、部長は私を救ってくれた。イッセーを救ってくれた。
だから、私は部長に恩返しをするんだ!!
「お前に、部長を、渡すもんかぁああああ!!!」
だから、ここで必ず―
『―Burst』
そして、限界を超えた。
鎧が音声とともに消えて、体は重くて、全身痛くて―
「……げほっ」
口から、大量に血が出た。
「……どうやら、お前はもう限界のようだな」
ライザーが、傷をいやしながらそう告げる。
くっそぅ。もう回復しちゃうの!?
まだ、まだだよ。からだは、かろうじて動く―
「……もうやめろ。お前の体は限界だ」
「一美もうやめて!! このままじゃ貴女が!!」
部長どころかライザーまで止めるけど、そんなことできるわけがない。
だって、ここで負けたら、朱乃さんが、祐斗っちが、小猫っちが……
そして、何よりリアス部長が………っ!!
だから動いて私の躰。
戦いじゃ何の役にも立たないくせに、それでも私を見捨てなかった皆のためにも!!
お願い、動いて―
「―もう、大丈夫だ」
そんな私の肩を、やさしくたたいてくれる人がいた。
つらい時、ずっと聞きたかった大事な大事な弟の声。
たった一人の私の家族の声―
「あとは任せて、休んでろ姉ちゃん」
イッセーが、来てくれた………っ!
「ここまで粘ってくれたから、俺がライザーを倒せるんだ。姉ちゃん、有難う」
そういって、イッセーはにっかりと笑ってくれた。
………イッセー、イッセーイッセーイッセー!
「………お願い、勝って!!」
「任せろ!!」
私に堪えるイッセーが、ドラッグシリングを構えて変身する。
『ブスット! チューニュー! ドライグ!!』
「変身!!」
そしてオーラが龍の形をとり、スーツとして結晶化する。
「……なんだ、その姿は!」
「俺は……」
イッセーは、少しの間沈黙してから、そして意を決したように顔を上げる。
「俺は、仮面ライダーアズライグ!!」
そして、言うが早いかズバットマグナムを構えて突撃した。
「お前を倒す男だ!!」
そして、反撃のために突き出されたライザーの腕を一撃でぶった切る。
「やるな! だが、その程度では―」
「まだまだ!!」
ライザーが言い切るより早く、素早く攻撃を叩き込む。
連続で叩き込まれる攻撃が、遠慮なくライザーを叩きのめす。
「ぬ、ぬぉおおおおおお!!! 下級悪魔風情が、なめるなぁ!!」
ライザーは反撃のために炎をまき散らすけど、イッセーは全く気にせず突っ込んだ。
「そんなちんけな炎で、俺を倒せるわけがねえだろぉ!!」
そしてそのままとびかかると、顔面に拳を叩き込む。
ライザーの顔面から、鮮血が飛び散った。
「この、クソガキがぁあああああああ!!!」
ライザーは頭に血が上ったのか、強引にイッセーを弾き飛ばそうとする。
だけど、イッセーはそれをすべて交わしてカウンターを何回も叩き込んだ。
「がっ! ぐっ! ぐがぁっ!?」
「この程度か、焼き鳥野郎!!」
強い。イッセー強い!!
あれが、ドラッグシリングの力……。
ううん、違う。
ドラッグシリングだけの力じゃない。少なくても、前にドラピングと戦った時はあんなにすごい動き出来なかった。
私の脳裏に、この十日間の特訓がよみがえる。
無駄じゃなかったんだ。あの戦いは、無駄じゃなかったんだ!!
「……く、くくくくく」
だけど、ライザーはそれでも倒れない。
ああもう! フェニックスの不死面倒!!
「無駄だ! その程度の力でフェニックスの不死は越えられん!!」
ライザーは勝利を確信したのか、攻撃に迷いがなくなっていく。
やばい、余裕を取り戻して動きが精彩になってきている!!
「俺を倒すには神クラスの一撃が必要だ! そして、お前の体力なら俺がガス欠になるより先にお前が持たない!!」
そんな、それじゃあ、この戦いは―
「―ああ、だからこうする」
イッセーは、そんな声を出した。
そして取り出すのは、あの時倒したドラピングのドラッグシリング。
「こいつには、こんな機能もある!!」
そういうと、イッセーはドラッグシリングをテンテキドライバーの左側に突き立てた。
『ツイカチューニュー! フンヌ!!』
その合成音声とともに、アズライグの全身がさらに赤くなる。
「俺だってなぁ……」
そして、ライザーの懐にもぐりこむと―
「……お前には腹が立ってんだよ!!」
その腹に一撃叩き込んだ!!
そのパンチはライザーを粉々に吹き飛ばし、さらに衝撃波が向こう側の木々を跡形もなく粉砕する。
うっそぉ!? 何あの破壊力!!
しかも、そのラッシュは全く衰えず、連続でライザーを叩きのめす。
「ぐ、ぐぅうおおおおおおおおお!?」
ライザーは再生させて逃れようとするけど、遠慮なく拳が叩き込まれて、まったく反撃ができない。
そして、その炎も弱弱しくなっていく。
「待て! この婚姻は、悪魔の将来のために必要なことなんだぞ? お前なんかが、下級悪魔が、とやかく言っていいことじゃないんだぞ……っ」
「それがどうした。もとより、俺程度どうにかできないような奴が部長と結婚なんて冗談じゃない」
ライザーの懇願を一蹴したイッセーは、遠慮なくドラッグシリングを再装填する。
『ヒィイイイイイッサツ!!』
「ライダー、キック!!」
そして、遠慮ない止めの一撃がライザーを吹っ飛ばした。
仮面ライダー恒例、フォームチェンジ。
敵を倒せば倒すほど強くなる、それがインフレに対抗するためにこの作品が考え出した作品の一つ。仮面ライダーアズライグはそうやって強くなっていくのです。