仮面ライダーアズライグ   作:ヘンシンシン

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はい、第二話です!


第二話 婚約者といがみ合いと

 

「いやー、リアスの女王がいれてくれたお茶は美味しいなぁ」

 

「それはどうも」

 

 ライザーの誉め言葉に、朱乃さんはそっけなく返す。

 

 うん、舌が肥えてるのは褒めてあげるし、イケメンなのも認めるし、実力だってルーキーの範囲内なら高いはずだ。

 

 ライザー・フェニックス。72柱の悪魔の一つであるフェニックス家の三男坊。

 

 そして、リアス部長の婚約者だ。

 

 とはいえ、部長はそういうの嫌がってるんだけどね。

 

 親御さんは何を考えてるんだろう。政略結婚っていうのは今後のお家の関係を密接にするのが目的だから、二人の関係性もちゃんと考慮に入れるのが本来基本だって話なのに。

 

 心底嫌がられてるのに気が付いてないよライザー。お前そんなんでモテてるのはどうしてなの?

 

 そしてイッセー。何鼻の下のばしてんの

 

 

 おおかた、裸を見たことがあることに優越感を感じてるとかそんな感じなんだろうけどさぁ、下僕悪魔なんだから考えてよ。

 

「……卑猥な妄想禁止」

 

「イッセーくん、とりあえずよだれを噴いた方がいいよ?」

 

 うんうん。小猫っちも祐斗っちもごめんね?

 

「……いい加減にして、ライザー!!」

 

 そして、いい加減我慢の限界なのかリアス部長は立ち上がるとライザーを怒鳴りつけた。

 

「私の結婚相手は私が決める! 私は貴方とは結婚しないわ!!」

 

「……やれやれ。相変わらずのわがまま姫だな、リアス」

 

 そういい返すと、ライザーも立ち上がって死線をぶつける。

 

「君のところのお家事情だって、結構切羽詰まってるんだろう?」

 

「余計なお世話よ! 私が次期当主である以上、婿の相手は自分で決める。第一、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれる話だったわ!!」

 

「それは事実だ。大学に行ってもいいし、下僕のセレクトも隙にすればいい。だが、君のお父様もサーゼクス様も心配なんだ」

 

 ライザーは、諭すようにそう告げる。

 

「ただでさせ先の大戦で多くの純血悪魔がなくなり、お家断絶した家は数多い。いまだ堕天使や教会とはにらみ合いを続けている以上くだらない小競り合いで純血悪魔の跡取りをなくすだなんて笑い話にもならないだろう? 字上級悪魔のお家同士がくっつくのは当然で、純血の上級悪魔の新生児は貴重なことだって知ってるはずだ」

 

「だからって、結婚相手まで決められるなら話は別よ。自分の結婚相手は自分で決める。帰りなさい」

 

 部長は、はっきりとそう言い切った。

 

「……本当に我儘だな、リアス」

 

 そして、ライザーも引く気はないみたいだ。

 

 私の全身から汗が噴き出て震える中、ライザーは全身から炎が噴き出ていく。

 

「俺だって、フェニックスの看板を背負ってるんだ。この名前に泥を塗られるわけにはいかない」

 

 そして、部屋中に炎がまき散らされる。

 

「―これ以上我儘を言うなら、俺は君の下僕を全部燃やし尽くしてでも君を冥界に連れて帰るぞ」

 

 私は、腰を落とさないようにするので精一杯だった。

 

 まずい、本気でライザーはそうするつもりだ!!

 

「―おい、焼き鳥」

 

 そんな中、イッセーが一歩前に出る。

 

「……ぁあ?」

 

 ものすごい罵倒を受けた顔で、ライザーはイッセーをにらみつける。

 

 そして、それに負けずとイッセーもライザーをにらみつけた。

 

「俺の姉貴を殺そうっていうなら、お前も殺される覚悟はできてるんだろうな……っ」

 

 すでにイッセーはテンテキドライバーを出してドラッグシリングを挿入する準備までできている。

 

 あ、これマジモードだ。

 

「吠えたな、下級悪魔。まずはお前から焼き尽くしてやる―」

 

「上等だよ。できるもんならやってみやがれ!!」

 

 ライザーが炎をあつめ、イッセーはドラッグシリングをベルトに挿入して―

 

「―そこまでです」

 

 ―それ以上に、すごい気配が部屋中を覆い尽くした。

 

「イッセーさまもライザーさまもそこまでです。これ以上人間界で狼藉を働くというのならば、私も黙ってみているわけにはいきません」

 

 あ、たぶんこの人がこの場で最強だ。

 

 そして本気で言ってるよこの人ぉおおおおおお!!

 

「ぃ、いいいいいいいいいイッセー。と、とりあえずおおさえてお、さえて」

 

「……わかったよ」

 

 はあ、とため息をついてから、イッセーはドライバーを戻すとドラッグシリングもしまった。

 

「最強の女王と称される貴方にそんなことを言われたら、俺もさすがに怖いよ」

 

 ライザーも炎を消して、そのままソファーにどっかりと据わった。

 

「こうなることは両家の御当主様も想定の範囲内でした。ですので、もしこの場で話が終わらなければということで最終手段を用意しております」

 

「最終手段?」

 

 部長が首をかしげると、グレイフィアさんは話を続ける。

 

「お嬢様が自らの意志を押し通すというのであれば、この縁談の是非は『レーティングゲーム』でお決めになるというのはどうでしょうか?」

 

 レーティングゲームは、眷属を持つ上級悪魔同士が戦うゲームだ。

 

 悪魔の駒がチェスの駒を模して造られていることから、自分の眷属自慢の決着をつけることを目的として始まったらしい。

 

 いつの間にやら実戦訓練と娯楽もかねて冥界の一大イベントとなっていて、噂ではほかの勢力もこっそり映像を集めて楽しんでるとか。

 

 で、これは本来成人になった悪魔がやることだけど、非公式で行われてることもあるんだ。

 

 それが、お家騒動とかいがみ合いとかの決着。

 

 だけど……。

 

「正直出来レースなんで使いたくないんだけどな。ほら、リアスは眷属まだ空いてるし?」

 

「そう、どこまでも私の人生を弄びたいのね、お父様もお母様も!!」

 

 うん、ぶっちゃけ不利なんだよねぇ。

 

「イッセー、覚悟した方がいいよ?」

 

「ん? なんで?」

 

 イッセーが首をかしげるのと同意に、またしても炎がまき散らされた。

 

「言っとくが、俺の眷属は15駒全部埋まっている。そしてその戦力もみな優秀で―」

 

 炎の中から現れるのは、ライザーの眷属たち。

 

 そして眷属は全員―

 

「―美少女、だと!?」

 

 イッセーが愕然とするほどの美少女だった。

 

 うん、このライザーってひと、ハーレム作ってるんだよ眷属で。

 

「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおん!! 夢は、かなうんだねぇえええええええええ!!」

 

 イッセーはうらやましいやら感動したのやら、すごい勢いで号泣したよ。

 

「うんうん。とりあえず落ち着け馬鹿弟」

 

「イッセーくん、とりあえずハンカチ使いなよ」

 

 祐斗っち。そんなことしなくていいから。

 

「……リアス、あの下僕悪魔くん、俺の女たちを見て号泣してるんだが」

 

 ライザーもドンビキしてるし!!

 

「ごめんなさい。彼、上級悪魔になってハーレムを作ることが夢なの」

 

 リアス部長も申し訳なさそうな顔してライザーに事実上の謝罪をしてるし!!

 

 イッセー! 恥ずかしいから落ち着いて!!

 

「ふっふっふ。そうかそうか、うらやましいかぁ? うらやましいだろぉ?」

 

 そしてライザー! あんた人が悪いな!!

 

「ああそうだよ! うらやましいよ!! 悪いかこの野郎!!」

 

「そうか、そうか、そうだろうそうだろう。お前にはこんなことはできないもんなぁ」

 

 そんなことを言うと、ライザーは近くにいた眷属を抱き寄せるとキスをする。

 

 うっわぁ! 下まで絡めたディープキスぅ!!

 

 ……本当に性根が悪いなこの人。そりゃリアス部長も結婚嫌がるわけだよ。

 

「……殺すぞ、この種馬ならぬ種鳥野郎!!」

 

「はっはっは。敗者の負け惜しみにしか聞こえんなぁ?」

 

 ライザー? 額に怒りの青筋浮かべて言っても説得力ないよ?

 

 あ、コレ同レベルだ。

 

「部長! 一発殴っていいですか!?」

 

「抑えなさいイッセー。大丈夫、レーティングゲームで容赦なく殴ってしまえばいいわ」

 

 部長も煽らないで!!

 

「……とりあえず、そういうことですのでレーティングゲームを始めましょうか。開始日は―」

 

「―十日後。それでどうでしょうか?」

 

 と、グレイフィアさんの言葉をさえぎってライザーは言った。

 

「私にハンデをくれるっていうの?」

 

 うわぁなめた発言! 部長が起こるのも当然だよ!!

 

 だけど、振り返ったライザーの顔は至極真剣だった。

 

「屈辱か? だが感情だけで勝てるほど『レーティングゲーム』は甘くない。初めてゲームに臨むの君が下僕たちと修行をするのは当然だ。いくら素質があろうと、初戦で力を出し切れずに負けたチーム何て俺も何度も見てきたぞ」

 

 あ、意外とリアス部長のこと考えてるんだ。

 

 部長もそれがわかったのか、すこし落ち着くと静かにうなづいた。

 

「いいわ。その余裕を後悔させてあげる。」

 

 その言葉に満足そうにうなづくと、ライザーは一歩下がって魔方陣を展開する。

 

 そして最後に、イッセーに視線を向けた。

 

「お前、駒は?」

 

「び、僧侶(ビショップ)だ」

 

 そう、イッセーは僧侶になった。

 

 魔力が少ないから、それを補うための措置だ。おかげで何とか転移魔方陣で転移できるようになった。

 

 むしろ、魔力を強化する僧侶の駒でその程度なのがあれなんだけどね?

 

 それはともかく―

 

「貴様ら全員気合を入れておけ。お前たちの一撃はリアスの一撃なんだからな」

 

 ―まあ、ライザーは部長のこと気に入ってないわけじゃないんだけどね。

 


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