仮面ライダーアズライグ   作:ヘンシンシン

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魔王様と二天龍と

 

「と、とりあえず夜食持ってきました!!」

 

 うわぁあい緊張する。

 

 とりあえず、夜食ということでそば作って持ってきました。

 

 うん、ラーメンとか定番だけど太るもんね。こういう時は同じ麺類でさらりといけるそばにしよう。

 

 だけど麺はあくまで乾麺だし、これいけるんだろうか。

 

「そばかい? 日本食は美味しいから好きだよ」

 

「ふ、普通に乾麺使ってるからあまり期待しないでくださいね?」

 

 一応予防線張ったけど、大丈夫だろうか?

 

「大丈夫よ、一美」

 

 と、リアス部長が言ってくれる。

 

「貴方の料理はおいしいもの。お兄様もきっと気に入るわ」

 

 部長。気休めありがとうございます。

 

 あ、でも部長も普通に食べてて文句を言ったりはしていないし、もしかしたらいける?

 

「ふむ。これが人間界の庶民が食べる麺類か。冥界でもこういったものが普及してくれると嬉しいね」

 

 おお、以外にも好感触。

 

「冥界の者は人間を下に見る者が多いが、人間の普及技術は目を見張るものがある。それが広まってくれればいいのだが」

 

「サーゼクス様。難しい話は今日のところはやめにしましょう」

 

 なんか難しい話に発展してきてるなぁ。

 

 たしか、冥界って下級と上級の生活のさがかなり激しいんだっけ?

 

 今の話とかを考えると、インスタント食品とかフリーズドライとかはあまりないのかもしれない。大変だな冥界の庶民。

 

 ってことはファーストフードとかもないのかも。それは不便だなぁ。

 

 そんなことをかんがえていると、サーゼクス様はいつの間にかそばを食べ終えていた。

 

「……ご馳走様。ちょうど小腹がすいていたんでね、おかげで助かったよ」

 

「い、いえいえお粗末様です!!」

 

 お、お礼言われたよ。まさかここまで下の人にも優しいとは。

 

 そんなサーゼクスさまだけど、なんか表情が真剣なものになると、真剣な表情をイッセーに向けた。

 

「さて、兵藤一誠くん……いや、仮面ライダーアズライグくん」

 

 ん?

 

 なんで、あえて仮面ライダーとしての名前の方を言うのかな?

 

「は、はい! なんでしょうか?」

 

「一応確認しておきたいことがある。先日リアスが送ってきたドラッグシリングとドラピングの情報のことだ」

 

 ああ、あれのことか。

 

 確かにただの人間が上級悪魔クラスの戦闘能力になるとか、将来的に脅威だよね。

 

 それにイッセーも下級悪魔とかいう次元の戦闘能力じゃないもん。

 

 命がけの実戦でろくに動けないことを差し引いても、赤龍帝の鎧よりも強力だ。そんなものを出せるのがドラッグシリングなら、当然気になることも多いだろう。

 

 だけど、イッセーが嘘をついていると思われるのは心外だぁ。

 

「はい。俺が知ってるのお父さんが残した手紙に書かれていた内容だけです。……良ければコピーしてお渡ししましょうか?」

 

 イッセーはそうちょっと緊張しながら答えるけど、サーゼクスさまは笑顔になると片手を振った。

 

「いや、ご両親の形見を汚すような真似は避けたい。私個人としては一応確認を取っておきたかっただけだから、安心してくれ」

 

 ほっ。なんか心配したけどそれならよかった。

 

 うん、イッセーが怪しまれて冥界から狙われるだなんて、いやだもん。

 

 ちょっとビビったけど安心したよ。

 

「……とはいえ、ライザーくんを圧倒したその能力を危険視している悪魔も多い。できれば、ドラッグシリングのサンプルがほしいところだね」

 

「あ、それなら何本か確保したんで一本差し上げます」

 

 イッセーは、前回使ったフンヌシリングを取り出した。

 

 それをグレイフィアさんが受け取ると、サーゼクス様は満足げにうなづいた。

 

「うん。これがあれば上役も何とかできるだろう。手間をかけさせてしまってすまないね」

 

「……あの、良くわからないんですけど、もしかして俺、警戒されてます?」

 

 イッセーはやっぱり少しは考えられるよね。

 

 昔っから自分なりに推測するときは多い。それに、なんだかんだで名門校の駒王学園に入学だってできてるからね、勉強は高校生平均値よりできるほうなんだよね。

 

 そんなイッセーが考えている通りなら、ちょっとこれ大変かも?

 

 だってイッセーに非があるわけじゃないし、どうしたらいいんだろう。

 

「お兄様。イッセーはいい子ですから、ぜひ寛大な処置をお願いします」

 

 リアス部長も心配してそういう。

 

 だけど、サーゼクス様は朗らかに笑った。

 

「それは安心してくれ。短い間だが兵藤一誠くんの人となりはよくわかった。彼なら強大な力を持っていてもそれを悪用することはないだろう」

 

 お、ってことは大丈夫なのか。

 

 あー、安心した。

 

 だけど、サーゼクス様はすぐに表情を厳しくする。

 

「問題はドラッグシリングそのものだ。もしこれが人間世界で流通するようになれば、間違いなく世界は今より悪い方向に進んでしまう。そして悪魔に渡ったとしても同じことが冥界で起こるだろう」

 

 あ、そっか。そっちか!

 

 そういえば、フンヌドラピングに変身した人も明らかに暴走してた。

 

 バルパーはもとからアレっぽいけど、それでも聖剣を使いこなせたせいでハイになってる。

 

 そんな人が何人も何万人も増えてきたら……っ

 

 もしかして、これってものすごくやばいことなのかも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな不安なことを言われたせいで、ぶっちゃけ最近あまりいい感じがしない。

 

 もう数日たってサーゼクス様もホテルに泊まって行動してるけど、ちょっと心にしこりが残ってる感じかな。

 

 いや、サーゼクス様がフリーダムすぎるのも心労の元なのかもしれない。

 

 なにせ、ファーストフード店をご満悦するはカラオケショップで熱唱するわと遊びに来てるとしか思えない。しまいには魔王パワーで無理やり突破して神社にお参りする始末。怒ってないよね神様。

 

 そんな毎日を過ごしていると、いつの間にかプール清掃まですることになった。

 

 うん、掃除したてのプールを泳ぐのは楽しかったけど、それでもいろいろと大変だった。

 

 具体的には、小猫ちゃんの泳ぎの特訓に付き合ったり、部長がサンオイルイッセーに塗らせようとしたり。

 

 とどめにリアス部長と朱乃さんがイッセーの取り合いで喧嘩するし、マジ大変。

 

 そこのお二人さん? イッセーは私の弟なんだからサンオイル塗るなら私が一番だよっての!!

 

「んもう! 割とフリーダムなのは受け継いでるよ部長も!!」

 

「ま、まあまあ。確かに命がいくつあっても足りないけど、女の子にべったりされるのは俺としてはぐふふだしさぁ……」

 

 だから向かってくるの!

 

 でも、それはさすがにイッセーにばれるわけにはいかないし、どうしたもんか。

 

 それに、争奪戦何てマジでするってことは、朱乃さんもイッセーに好意を持ってるってことだよ。

 

 うわぁ、いくら悪魔がハーレムOKだからって、君たちすごいことしてるよね。

 

 うう、私も実の姉じゃなかったらなぁ!!

 

 そんなことを考えながら歩いていたら、目の前に私服姿の人がいた。

 

 あれ? ここ一応関係者以外立ち入り禁止のはずなんだけど?

 

 うん、ちょっと聞いてみた方がいいかも。

 

「あの、転校する予定の人とか何かですか?」

 

「……いや、そういうわけじゃない。それはそれおつぃていい学校だけどね」

 

 そんなことを言う男の人だけど、すっごいイケメンだ!!

 

 でもちょっとフランクすぎるなぁ。うん、ここはもうちょっと丁寧なあいさつをしてくれた方がうれしいかな。

 

 でも、転校するわけじゃないんだったら入っちゃだめだから言っとかないと。

 

 そう思って口を開こうとするけど、それより早くイケメンが笑顔を浮かべた。

 

「俺はヴァーリ。白龍皇だよ、赤龍帝」

 

 へ? 白龍皇?

 

 白龍皇って、あの時の!?

 

「……え、あの時の白い奴かよ!!」

 

 イッセーもびっくりするけど、ヴァーリは全然かまってない。

 

 あ、赤龍帝の籠手が勝手に出てきた。ドライグが反応してる?

 

 でもヴァーリは白龍皇の光翼を出してない。つまりそれは制御ができてるってこと。逆に言えば私は全然使いこなせてないってことだ。

 

 なんか、ちょっと悔しい。

 

 っていうか何しに来たんだよもう。まさか決着をつけようとか考えてないよね!?

 

 無理無理無理無理! 実戦だと下級が相手でも全然動けないのに、二天龍対決何て絶対無理!!

 

「そうだな……。例えばここで君に魔術的なものをかけるというのは―」

 

「おい」

 

 ヴァーリが動くより先に、イッセーが即座にドラッグシリングを構える。

 

 そして、それと同時にヴァーリの首に剣の切っ先が突き付けられた。

 

「冗談が過ぎるよ、白龍皇」

 

 うぉおおおおおおおお! 祐斗っちぃいいいいいいいい!!!

 

 今日は別件で一緒にいなかったはずなのに、すごいいいタイミングで来てくれたね!

 

 すごく心強いよ、ありがとう!!

 

 だけど、ヴァーリは全然気にせず余裕の表情だった。

 

「やめておけ、手が震えているじゃないか」

 

「……っ!」

 

 へ? そんなにヤバイ?

 

「実力差がわかるのは優秀な証拠だ、誇るといい。それほどまでに、俺と君たちの間には差があるのさ」

 

 うぅ。確かにコカビエルを倒せなかった私達じゃあそれを一蹴したヴァーリには勝てないけど。

 

 っていうか私は実戦じゃ絶対勝てない、間違いなく動けない間に殺される。

 

 そんな風に自己嫌悪に陥っていると、ヴァーリはこっちを見てきた。

 

「兵藤一美。君は自分が世界で何番目に強いと思う?」

 

 はい? そんなこと考えたこともないけど。

 

「完成した禁手にいたっている君は、上から数えれば三桁に到達するかしないかだ。まあ、実戦で動けないのは致命的だけどね」

 

 そして、さらにその視線はイッセーに向く。

 

「そしてコカビエルとまともに戦えた君もそれぐらいだろう。なかなか興味深いよ」

 

「それがどうしたってんだ」

 

 イッセーがヴァーリをにらみつけるけど、ヴァーリは全然そんなことを気にしない。

 

「君たちはこれからもどんどん強くなる。……いい眷属を持ったね、リアス・グレモリー」

 

 その言葉に振り返ると、そこには朱乃さんと小猫っちを連れてリアス部長が!

 

 おお、少し気が楽になったよ。

 

「白龍皇、何のつもりかしら? あなたが堕天使とつながりを持っている以上、不必要に悪魔と接触するのは―」

 

「二天龍とかかわりを持った者たちは、みなロクな生き方をしてない」

 

 リアス部長の言葉を遮って、ヴァーリはそういった。

 

「君たちは、いったいどうなるのかな?」

 

 そんな言葉に、リアス部長たちは何も言えない。

 

 だけど、だけど!

 

「……見くびらないで、白龍皇」

 

 そんなこと言われて黙っていられれない。

 

「ほう?」

 

「そんなことになるぐらいなら、私は喜んで死んでやる。私のせいでイッセー達を不幸な目になんて、絶対に合わせない」

 

 さっきから黙って聞いてればこの野郎。

 

 マジむかつくんですけど。

 

 しかも、私の言葉を聞いた途端になんか嬉しそうに笑いやがって。ホントに腹立つ。

 

「見事なまでに本気の目だ。これは、少しは面白いかもね」

 

 そういうと、ヴァーリは振り返って歩き去っていく。

 

 むぅ。私、あいつ嫌い!

 


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