仮面ライダーアズライグ   作:ヘンシンシン

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白い龍と赤い龍と

 

 その瞬間を、理解できた人はほとんどいない。

 

 イッセーとジョージはなんか目で追えたっぽいけど、だけどそれが限界っぽかった。

 

 そして、コカビエルも一瞬何が起こったのかわかってなかったっぽい。

 

「な、なんだこれは!?」

 

 自分の翼が引きちぎられて、コカビエルはパニックを起こしかけてる。

 

 うん、わたしなんて何が起こったのかさっぱりだもんね!!

 

「……薄汚い翼だ。少しはアザゼルを見習ったらだろうだ?」

 

 そして、そんなことをしてのけた人は、空を飛んであきれていた。

 

 うわ、なんかすごい綺麗な鎧をつけてる。

 

 背中からは光り輝く翼が生えていてなんかすごくかっこいい。

 

 そして多分むちゃくちゃ強い。だってコカビエルは一瞬で叩きのめされたんだもん。

 

「貴様、白い龍!! 何をする!!」

 

「見ればわかるだろう? お前を止めに来たんだ」

 

 平然とそんなことを言われて、コカビエルは激おこ状態で光の槍を生み出した。

 

 っていうかでか!! 十メートルは越えてるんだけど!?

 

 しんだぁああああ! あんなの喰らったら余波で私達も巻き込んで駒王学園が消滅するぅううううう!!

 

「小童が! 不意打ちを入れた程度で俺を倒せると思ってるのか!?」

 

 うん怒ってるよね! さすがにこれはむちゃくちゃ腹立つよね!?

 

 っていうかやっぱりまだ本気じゃなかったんだ! あ、これ死んだ。

 

 思わず辞世の句を詠みかけるけど、それも白い鎧の人が手をかざしただけで終わった。

 

『Dvidi』

 

 その音が鳴りひびいた瞬間、光の槍はごっそり小さくなった。

 

 え、なに? なんなのあれ?

 

『厄介なのが出てきたな』

 

 え? 知ってるのドライグ?

 

『覚えておけ、あれこそが俺と対をなす二天龍だ』

 

 に、二天龍?

 

 ってことは、あれがアルビオン!?

 

「まさか、こんなところに白龍皇まで出てくるなんて……っ」

 

 リアス部長も戦慄してるし、あ、これ間違いなさそう。

 

 ジョージもいつの間にか後ろに下がって警戒してる。うん、だよね!

 

 そして、そんな風に周りを見ていたらいつの間にか決着はほぼついていた。

 

「……すでに下級堕天使と同等レベルにまで半減されたか。これではもはや楽しめないな」

 

「まさか、この俺がぁ!!」

 

 コカビエルはそれでも抵抗をつづけるけど、白龍皇はもう気にせず一気に接近した。

 

「気は済んだだろう? もう面倒だから寝ているといい」

 

 そして白龍皇の拳がめり込んで、決着はついた。

 

 つ、つよい。

 

 イッセーでも一人じゃ遊ばれていた位の強さを持っているコカビエルを、いとも簡単に倒しちゃった。

 

 どれぐらい強いのアイツ? っていうか、私死んだよコレ。

 

「一美さんをやらせはしない!!」

 

「下がってください、先輩」

 

 祐斗っちと小猫っちが前に出るけど、たぶんグレモリー眷属が総力をあ下手も勝ち目ないよねコレ!

 

 うぉおおおい! 魔王様の援軍、まだぁああああああ!?

 

 再び辞世の句を考え始めた私の前で、しかし白龍皇はため息をつくとそのままコカビエルを抱え上げて空に浮かぶ。

 

「そう身構えなくていい。俺はアザゼルに頼まれてコカビエルを止めに来ただけだ。……俺の宿敵もまだまだのようだしな」

 

 あ、ここで戦ったりはしないんだ。

 

 っていうかアザゼルって人は本当に戦する気がないんだね。

 

 戦争をしてもいいって思ってるなら、コカビエルを放っておくなんてばかなまねはしない。止めに来たってことはつまり戦争をする気がないってことだから、これなら白龍皇も止めてくれるかな?

 

「……待てよ」

 

 と、イッセーが白龍皇を呼び止める。

 

「なんだ? 俺はもう帰りたいんだが―」

 

「ありがとうな」

 

 その言葉に、白龍皇はぽかんとした。

 

「いや、俺は言われたとおりにしただけなんだが」

 

「それでもだよ。このままだったら俺の仲間も主もただじゃすまなかっただろうし、お礼は言った方がいいかと思って」

 

 イッセー。うう、いい子に育ったね。

 

 お姉ちゃんは涙が止まらないよ。もう抱いて!!

 

 と思ったら、そのあとイッセーはなんか怒りのオーラを出すと指を突き付けた。

 

「でも、いいところ見せれなかったのは残念だけどな!! そうすれば部長もご褒美の一つぐらいはくれたと思うのにこの野郎!!」

 

「……これだから悪魔は汚らわしい」

 

「……先輩最低です」

 

 ジョージと小猫ちゃんから辛辣なツッコミが飛んだ。

 

 うん、気持ちは痛いぐらいよくわかるよ。なんていうか上げて落とされてる。

 

「イッセー!! お姉ちゃんは泣きたくなったよ!!」

 

「うわ! ご、ごめん姉ちゃん!!」

 

 イッセーは思わず変身を解いて謝るけど、本当にいろいろと残念な子だよねこの子は!

 

「あらあら、イッセー君はいつも通りでわね」

 

「ええ。……悪いけど、ご褒美はまた次の機会ね?」

 

「うおおおおおおお!!! 畜生ぅうううううう!!!」

 

 ああもう、なんかいろいろとツッコミどころだらけだよ。

 

 でも、なんていうかそれでやる気がそがれたのか、白龍皇はなんか調子を崩していた。

 

「不思議な男だな、君は」

 

「なんか、ごめん」

 

 私はつい本気で謝ったよ。

 

 あ、なんか緊張がなくなった。

 

 つまり殺気がないってことだね。うん、これは安心だね!

 

「まあいいさ。また縁があれば会おう」

 

 そういうと、白龍皇はコカビエルを抱えたまま飛んでいった。

 

 よく見ると、フリードとバルパーの姿はどこにも見えず、エクスカリバーが地面に落ちていた。

 

 あいつら逃げたんだ。ま、当然っていえば当然だよね。

 

「……チッ! まさか奴に助けられるとはな」

 

 そんな中、心底いやそうにジョージは吐き捨てた。

 

 うん、どうもいろいろと思うところがあるみたいだね。

 

「………とはいえ、エクスカリバーが合一化されたのは僥倖か。まずはこの至宝を持ち帰るのが先決だな」

 

 そういうと、ジョージはエクスカリバーを拾うとそのままゼノヴィアに手を貸す。

 

「帰るぞゼノヴィア」

 

「だが、主はもう死んでいるのだぞ?」

 

 ゼノヴィアはいろいろと焦燥してるけど、ジョージはそれにため息をついた。

 

「確かに衝撃的な事実だが、主の教えはどちらにせよ残っているだろう? ならば何の問題もない」

 

 迷いなく、ジョージははっきりとそう言った。

 

「主の教えを守り人々を正すことこそわれら信徒の指名。何よりまずはバチカンへと戻り、このことについて問いたださねばなるまいて」

 

「そうか。……うん、そうだな」

 

 ゼノヴィアはそういうと、ゆっくりと立ち上がる。

 

 そして騎士団たちが去っていく中、ジョージはこちらをにらみつけた。

 

「……本来なら切っておくべきだが、しかしこちらも無意味な敗戦は望まん。その首は預けておくぞ」

 

 あ、これ本気で言ってる。

 

 本気でこっちを殺せないのが腹立たしいみたいだ。

 

「いずれ、この地を浄化するために来させてもらう。覚えておくがいい」

 

 そういうと、ジョージはそのまま立ち去って行った。

 

「た、倒さなくていいんですか?」

 

 ぶっちゃけあれ、勝手にやってきそうな感じがするんだけど。

 

 だけど、部長も割と疲れた感じで肩をすくめる。

 

「仕方がないわ。このまま彼らを返さなければ、それこそ戦争の火ぶたが切られてしまうもの」

 

 うーん。そういうもんなのかな?

 

 あ、でも戦争を私たちが起こしたら、戦争反対派の人たちから徹底的に叩きのめされるし、平和な生活とかできないよね。

 

 うん、戦闘駄目絶対!

 

「でも、このままだと大変です」

 

 小猫ちゃんが心配するけど、確かにその通りだ。

 

 なんせ、ジョージはノリノリで戦争仕掛ける気満々だもんね。あれはほっといたら本当に戦争起こしそうだよ。

 

 聖書の神の死もばらまかれる可能性があるからなぁ。世界が大混乱にならなきゃいいんだけど……。

 

「そうだね。まだ、聖剣計画も終わったわけじゃない」

 

 そう、祐斗っちがつぶやいた。

 

 あ、そっか。聖剣計画は教会でもまだ続けられてるんだ。

 

 死んでる人はいないみたいだけど、それでも敵が強くなるのは不安だよなぁ。

 

 バルパーの技術が堕天使側にもわたってたら、堕天使側の人も聖剣使いになってるわけだからなおさら大変だよ。

 

 う~ん。これはいろいろと不安なことが多すぎるぞぉ?

 

「……おいおい、あんまり今から悩みすぎるなって」

 

 いや、イッセー? さすがにこれは考えないといけないと思うんだけど?

 

 だけど、イッセーは明るく言った。

 

「今はさ? 決着がついたってことでいいじゃねえか」

 

 そういって、イッセーは祐斗っちの肩をたたく。

 

「素直に喜んどこうぜ? な?」

 

 イッセー……。

 

 うん、確かにそうだ。

 

 祐斗っちの過去に決着がつけられた。それは良いことだよね。

 

「そうね。それにいいことはほかにもあるわ」

 

 リアス部長も、表情を明るくして祐斗っちを抱き寄せる。

 

「ぶ、部長?」

 

「私の祐斗が禁手(バランス・ブレイカー)に目覚めたんだもの。流石に後始末があるけれど、明日はいっぱいお祝いしないとね」

 

「あらあら。でしたらごちそうを用意しないとけませんわね」

 

「ゴチになります」

 

 朱乃さんも小猫っちもノリノリだ。

 

 うん、確かにいろいろと不安はあるけど、いいことはきちんと喜ばないとね!

 

「うん! だったらうちでパーティーしよっか。掃除して待ってるからね!」

 

 うん、一杯大変なことが起こりそうだけど―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、今は乗り越えたことを喜ばないとね!

 




今回、ゼノヴィアは悪魔化しませんでした。

事情を知ったうえで信仰心を全く捨てていないジョージがいるので、それに引っ張られた形になります。

それと、ジョージは今後も登場します。一発で終わるようなキャラじゃないです。

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