仮面ライダーアズライグ   作:ヘンシンシン

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今回ちょっと長いです


悍ましい真実と至る心と

 

 結界の中では、一人の見慣れない男の人がなんか魔方陣の内側で儀式っぽいのを行っていた。

 

 そんでもって、その魔方陣の中には五本の聖剣らしきものが浮かんでいる。

 

 ってあれ、ゼノヴィアの破壊の聖剣(エクスカリバーディストラクション)!?

 

 そういえば、盗まれたエクスカリバーは合計三本。そんでもってこっちに持ち込まれたのはイリナっちとゼノヴィアの二本。

 

 つまり、イリナっちとゼノヴィアはやられちゃったの?

 

「……ほう? 貴様らがグレモリーとその眷属悪魔かね?」

 

 そういって振り返る男は、なんていうか明らかに悪そうな顔だった。

 

 うん、考えるまでもなく悪役だね。それも、容赦なく倒しちゃっても問題がない外道みたいなタイプだ。

 

「貴方が、バルパー・ガリレイね?」

 

「いかにも」

 

 リアス部長がにらみつける中、その男は振り返りもせずに平然と答える。

 

 そのとたん、祐斗っちが一気に駆け出した。

 

「お前が、バルパー!!」

 

 いきなりすぎるよ祐斗っち! 落ち着いて!!

 

「すすすすすすすすすすすすすすすすっすす」

 

「姉ちゃんの代わりに言うけどストップ木場!!」

 

 有難うイッセー! 二重の意味で愛してる!!

 

 そして、その祐斗っちの前に割って入る人影が!!

 

「おぉっとそうはさせませんぜお兄さん!!」

 

「お前は、フリード・セルゼン!!」

 

 なんか明らかに行かれてるっぽい白髪のお兄さんが祐斗っちを妨害する。

 

 っていうかできる! 祐斗っちとまともに渡り合うなんて何て実力者!!

 

「ひゃはははは!! この程度かいお兄さぁん? 出ないと俺が殺しちゃうよん?」

 

「どけぇ!! バルパーが、エクスカリバーが目の前に―」

 

「落ち着いてください、祐斗先輩」

 

 と、そこで小猫っちが援護攻撃をして白髪を引き離す。

 

 あっぶな! 祐斗っちすごい頭に血が上ってるよ!!

 

「ふっ。どうやらバルパーの奴と因縁がある小僧がいるようだな」

 

 と、上からそんな声が聞こえてくる。

 

 見上げれば、そこにはコカビエルが宙に椅子を浮かべて悠然としていた。

 

 うっわぁ余裕オーラ満々! マジでむかつく!!

 

「ふん。どうやらサーゼクスもセラフォルーもまだ来ないみたいだな」

 

 そんな風につまらなさそうに言うと、コカビエルは槍を構えて投げつけた。

 

 その一撃は、特に本気っぽさは感じられない。なんていうか明らかに手抜きの感覚でぶっ放された。

 

 なのに、観れば体育館が吹き飛んでる!

 

 うそでしょ!? ライザーのところの女王並みの火力を平然と!?

 

 で、でも所詮単発の攻撃だもん。

 

「あ、あ、あたたたたたた当たらなければい、いいんだもんね!!」

 

「声が震えているぞ? 今代の赤龍帝はヘタレなようだな」

 

 うるさいよそこ!! ヘタレでもヘタレなりに一生懸命頑張ってるんだい!!

 

 いや、それはともかくこれどうしよう。

 

 間違いなく、相手が違いすぎるよぉ!!

 

「……コカビエルは俺が何とかします!! みんなは木場の援護を!!」

 

 イッセーがテンテキドライバーにドラッグシリングを挿入しながら叫んだ。

 

 あ、うん。あれに勝てるのは赤龍帝の鎧かアズライグだけだもんね。

 

 ごめんね、役に立たなくて!!

 

「変身!!」

 

『ブッスーン! チューニュー、ドライグ!!』

 

 オーラがプロテクターとなって、イッセーはアズライグに変身する。

 

 そしてそのままジャンプすると、コカビエルに拳を叩き込んだ!

 

 あ、コカビエル腕でガードしてる、惜しい!!

 

「ほう? どうやら少しは面白いのがいるようだな」

 

 コカビエルはそういうと、翼を広げて一斉に動かした。

 

 う、うぉおおおおおおお!!! 早くて動きが見えないぃいいいいい!!!

 

 でも、イッセーはズバットマグナムを使ってそれを何とか防いでる。

 

 あれ? 前よりも動きがよくなってない?

 

『戦闘経験がなかったのは、兵藤一誠も同じだからな。きょつ的との戦いで体の動かし方を学んだのだろう』

 

 なるほど、すごいねイッセー。

 

 と、思っていたらこっちはこっちでなんかでっかい犬が何体も現れた。

 

 しかも頭が三つもある!? え、なにこれ!?

 

「冥府の番人ケルベロス! コカビエル、そんなものまで連れてきたというの!?」

 

 部長が驚く中、そのケルベロスは一斉に襲い掛かる。

 

 それを、部長と朱乃さんの攻撃が迎え撃った。

 

 そして動きが止まったところを小猫ちゃんが殴りつける。

 

 いよっし! やっぱり三人とも強い!!

 

 でもケルベロスもタフなのか、なかなか倒れてくれないよぅ。

 

 そして、そんな中イッセーはイッセーで激戦を繰り広げている。

 

 コカビエルが地面に降り立って光の剣を両手に持って攻撃を何度も叩き込む。

 

 それを、イッセーはズバットマグナム一つで何とか抑え込んでいた。

 

 あ、これコカビエルの奴遊んでる。

 

 そうだ! その遊んでいるうちに何とかケルベロスを倒して数で攻めればあるいは?

 

「ちょいやっさ!!」

 

 っていうか祐斗っちも苦戦してる!!

 

 あの白髪の人、思った以上に強い!!

 

「あらぁん? 今の僕ちん、エクスカリバーを使ってないのにまともに戦えちゃってるよん? やだ、この敵弱すぎ……っ」

 

「ほざくなぁ!! そこを……どけぇ!!」

 

 だめだ、祐斗っちかなり頭に血が上ってるよ!!

 

 どうにかしないといけないと思ったその時、赤龍帝の籠手が光り輝く。

 

 え、えええ? なにこれぇ!?

 

『今の倍化を譲渡すれば、ケルベロスを一撃で倒せると教えてくれているのさ』

 

 そんな機能付いてたの?

 

『神器も進化するというわけだ。ほら、今すぐやってみろ』

 

「うんわかった!」

 

 確かに、譲渡するだけなら私がビビリでも問題ない!!

 

「部長! 朱乃さぁん! こっち来て譲渡されてくださぁあああいい!!」

 

 来てもらえばいいんだもんね!!

 

「小猫、一瞬だけ抑えてなさい!!」

 

「はい」

 

 小猫ちゃんがケルベロスを押させている間に、部長と朱乃さんが急いでこっちに来る。

 

 そして、わたしにタッチ!!

 

「「喰らいなさい!!」」

 

 そのまま全力で砲撃が叩き込まれて、ケルベロスは跡形もなく吹き飛んだ!!

 

「……ほぅ? 今のは上級悪魔でもそうは出せない威力だな」

 

「余裕だなこの野郎!!」

 

 イッセーとつばぜり合いをしながら、コカビエルが感心する。

 

 だけど、それで倒せたケルベロスはまだ二体。

 

 確かまだほかにもいたはず―

 

「……ふん!!」

 

 その瞬間、残りのケルベロスが両断された。

 

 う、うぉおおおおおお!? なに、なになに!?

 

 突然ケルベロスがぶった切られて、私は何が何だか分からなくなった。

 

 見れば、そこには光の剣を持ったジョージの姿が。

 

 しかも十人以上も悪魔祓いがいるよ!?

 

 イリナっちはともかく、ゼノヴィアも一緒にいるし!!

 

「堕天使コカビエル!! ここであったが百年目だ、その首、もらい受ける!!」

 

「ついに教会の連中まで来たか! 戦争前のいい余興じゃないか!!」

 

 ものすごいうれしそうにするコカビエルに、ジョージはゴミでも見るかのような目で答える。

 

 そして、そのまま剣を突き付けた。

 

「ちょうどいい。貴様の首をここで採り、その勢いに乗じて堕天使どもを根絶やしにしてくれる!! 物のついでにこの地を悪魔から解放するのもいいかもな」

 

 うわぁ、この人全面戦争する気満々だよ。

 

 すいませーん。あなた上から言明されてなかったっけー?

 

 心の底でツッコミを入れていると、とたんに魔方陣がすごい光を放った。

 

「……完成だ」

 

 高校とした表情で、バルパーが声を上げる。

 

 見れば、エクスカリバーは一本の剣になっていた。

 

「儀式は完成したぞコカビエル。あと三十分もすれば、その影響でこの街は吹き飛ぶだろう」

 

 さ、三十分! 私たちが入ってから、まだ十分もたってないのに!!

 

 増援が来るまでに十分足りない!! このままだと、駒王町が吹き飛んじゃう!!

 

「なるほど、では余興だバルパー。―例の奴を」

 

「……ああ。そうさせてもらおう」

 

 そういうと、バルパーは懐から何かを取り出した。

 

 機械でできた注射器のような小さな物体。それを見て、私たちは目を見開いた。

 

 あれ、ドラッグシリング!?

 

「悪いなフリード。私はエクスカリバー使いになりたかったのだよ」

 

 そういうと、バルパーはドラッグシリングを躊躇なく首筋に突き立てた。

 

『ブッスーン! チューニュー、ケンゴウ!!』

 

 そのとたん、バルパーの姿が変化する。

 

 全身にいくつもの剣の鞘を取り付けた、騎士だが武者だかよくわからない怪人。

 

 あれが、ドラピング……っ!

 

『さあ、それでは合一化されたエクスカリバーの試し切りといこう』

 

 そういうなり、バルパーの姿が一瞬で掻き消える。

 

「っ!?」

 

 次の瞬間、慌ててジョージが剣を構えて、そして検温が大量に走った。

 

「ぐぁあああ!!!」

 

「ぎゃぁ!?」

 

 鮮血がまい、悪魔祓いたちが全身を切り裂かれて倒れ伏す。

 

 な、なんだとぅ!?

 

『……素晴らしい、これが合一化されたエクスカリバーの力!!』

 

 恍惚とした声で、バルパーが喜んでる。

 

 や、や、ややややばい!!

 

 エクスカリバーとドラピングのコンボなんて最悪なんてもんじゃない!!

 

 これ、間違いなくやばいよ!?

 

「バルパー……っ!!」

 

 祐斗っちがにらみつける中、コカビエルは突然イッセーから距離をとると空に飛びあがる。

 

「バルパー。合一化されたエクスカリバーのお披露目も兼ねた余興として、そいつらを殺して見せろ」

 

「ああ、わかっているともコカビエル」

 

 コカビエルにうなづくと、バルパーはすごい速度でイッセーに迫ると切りかかった。

 

 イッセーはズバットマグナムで防ごうとするけど、一撃で弾き飛ばされる。

 

 そして一瞬で無理になったエクスカリバーがイッセーに絡みつくとそのまま振り回した。

 

「う、うぉおおおお!?」

 

『ふはははは!! どうした仮面ライダー? エクスカリバーの力の前には手も足も出ないようだな!!』

 

 そういうと、バルパーはイッセーを豪快に投げ飛ばす。

 

「い、いいいイッセー!」

 

 私はつい叫ぶけど、イッセーもすぐに立ち上がった。

 

「そっちこそ、俺みたいな下級悪魔を一撃で滅せないだなんてちゃちな聖剣だな?」

 

『言ってくれるな、だが、どれだけ吠えようと貴様に勝ち目はない』

 

「こちらを無視するなよ、背教者!」

 

 後ろからジョージが切りかかるけど、バルパーはそれをあっさり交わすとエクスカリバーを高速で振るう。

 

 それをジョージは受け止めるけど、そのまま弾き飛ばされた。

 

『これが、エクスカリバーの力!! むろんどんな剣も素人が使えばただのナマクラだが、それもドラッグシリングの力があればいくらでもできるのだよ!!』

 

 そのままバルパーは哄笑を上げながら戦闘を開始する。

 

 イッセーとジョージは最大の目的が一致しているからかろうじて共闘になってるけど、バルパーはそれでも二人を相手にしていた。

 

 ドラッグシリングを使っているうえに、エクスカリバーまで使ってるからシャレにならない!! ちょっとちょっと、それ反則!!

 

『私は聖剣が大好きだった。幼いころから本を読み、彼らのような使い手になりたいと心から思っていた』

 

 うっそぉ! 二人を同時に相手して、さらに語り始めたよ!?

 

『だが、残念なことに私には適性がなかった。あの絶望は誰にもわからないだろう。だからこそ、せめて使い手を生み出したいと心から願った!!』

 

 擬態の力を使ったのか、エクスカリバーがひもでつながった二本になり、イッセーとジョージを同時に攻撃する。

 

『捨てられたごみどもを使い、聖剣使いとはどういう存在なのかを調べ上げた。そして私は気づいたのだ、人には聖剣を使う因子があり、それが非常に高い者こそが聖剣使いとなりうるのだと!!』

 

『そんな余迷いごとを!!』

 

 二人が弾き飛ばされた瞬間に部長が魔力を放つ。

 

 それを真正面からはじきながら、バルパーはしゃべるのをやめなかった。

 

『否。これは正しく事実。だからこそ私は人工聖剣使いを完成させることができたのだよ!!』

 

「余迷いごとを!! 僕たちを失敗作といって殺したじゃないか!!」

 

 祐斗っちが激昂して切りかかるけど、バルパーはそれをオーラを増大させて防ぐ。

 

「ほほう。君は用済みで殺したはずの被験者か? なら冥途の土産に教えてやろう。用済みになったのは因子を抜いたからだ」

 

 そういって、バルパーは一つの結晶を取り出した。

 

 あれ、なに?

 

 それを見て、バルパーは目を見開く。

 

「それは! 人工聖剣使いが祝福を受けるときに移植される結晶か!」

 

『その通り。これは被験者から摘出した聖剣因子でできている。……簡単な発想の転換だ、足りないのならよそから持ってくればいい』

 

 ああ、確かにその通りだ。

 

 必要なものが足りないなら、ある所からもらってくればいい。盲点だけどそれができるなら、聖剣使いもたくさん作ることができる。

 

 でも、だけど!

 

「なら、殺す必要はなかったはずだ!! なぜ彼らを殺した!!」

 

『あんな野良犬ども、必要なものをもらったら生かしておく必要はないだろう? まあ、ミカエルのような偽善者どもなら殺しはしないだろうがな』

 

 ……ひどい。

 

 仮にも聖職者が、神を信じている人たち相手にそんなことするなんて。

 

「そん、な……」

 

 祐斗っちは、ショックのあまり崩れ落ちる。

 

 そんな祐斗っちに、バルパーは結晶を放り投げた。

 

『量産体制が確立した以上、もはやこれも必要ない。欲しければくれてやろう』

 

 投げ捨てられて転がるそれを、祐斗っちはゆっくりとした動きで手に取った。

 

「皆、こんな姿になって……っ」

 

 悔しさのあまり、祐斗っちは涙を流す。

 

 そんな時だった。

 

『……なかないで』

 

 え、何この声?

 

 聖剣因子の結晶が輝いて、人影が何人も出てきている。

 

『ありがとう、イザイヤ』

 

『生きててくれて、ありがとう』

 

 だれ、あの子たち?

 

 っていうか、いったい何?

 

「この洗浄に漂う様々な力が、因子の結晶から魂を解き放ったのですわ」

 

 朱乃さんが言っていることってマジ?

 

 それって、つまり幽霊!?

 

 なんだけど、全然怖くない。むしろほっとする。

 

『イザイヤ、いこう?』

 

 そういって、少女の影が祐斗っちの手を取る。

 

『僕たちが、一緒だよ?』

 

 ……涙、出てきた。

 

「ああ。僕たちは一緒だ」

 

 その言葉とともに、何か強大な力が放たれる。

 

 え、あれはいったい何?

 

『相棒、お前も知ってるだろう?』

 

 ドライグ? 知ってるって何が―

 

「………あ」

 

 私は気づいた。

 

 そうだ、これは私が赤龍帝の鎧を覚醒させた時と同じ―。

 

『アイツは、至ったぞ』

 




ついに登場新たなドラピング。対象者はバルパーです。

原作においてエクスカリバーを自分で使わなかった理由を、研究者であって剣士でないからと判断しました。なので、その技量をカバーすることができたら真っ先に自分から使うだろうなぁと思いまして

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