仮面ライダーアズライグ   作:ヘンシンシン

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はい、区切るタイミング的にこの正反対になってしまったタイトルの温度差よ……


過去の悲劇と変態同士と

 

 

 

 

 何とか、教会の人たちは帰っていった。

 

 ふう。一時はどうなることかと思ったけど、殺し合いにならなくてよかったよ。

 

 念のために準備はしといたけど、無駄になってよかったよかった。無駄足になった人にはあとで私が奢っておこう。

 

「でもどうしよっかみんな? これってまずくない?」

 

「そうですね。コカビエルはライザー・フェニックスの碑じゃないはずです」

 

 うんうん、小猫っちの言う通り。

 

 なにせこの業界で聖書に名前を残しているんだしね。間違いなく桁違いの強敵だよ。

 

 同じく歴史に名前が残っているクラスの存在の戦闘能力と照らし合わせれば、この駒王町を一日かからず更地にできる戦闘能力があるはず。そりゃあもう戦略爆撃機数十機分。

 

 そんなの相手に私達じゃどうしようもない以上、助けを求めるしかないんだよねぇ。

 

「……ドライグ、勝てる?」

 

『無理だな。禁手のお前と仮面ライダーが全力を出せれば勝ち目は十分にあるが、そもそもお前、実戦じゃ闘えないだろう』

 

 うぐぅ! ごめんねビビリで!!

 

 つまり、イッセーが戦うしかないってことなのかぁ。でもどうしよう。

 

 イッセーにすべて任せるのは、すっごい心が痛むんだけど……。

 

 そんな感じてつい視線が向けられるけど、それに気づいたイッセーはにやりと笑った。

 

「大丈夫だって、姉ちゃん」

 

「でも、イッセー? あいつは、間違いなく英雄とか損のが相手するような奴なんだよ?」

 

 コカビエルは、間違いなく今までの敵とは桁が違う強敵なんだよ?

 

 そんなことを言う前に、イッセーは私の肩に手を置いた。

 

「大丈夫だよ。だったら英雄になればいいだけだろ?」

 

 うわ、すごいこと言ってるって自覚ある?

 

「大丈夫。家族や仲間のためなら、俺は英雄にでも何でもなってやるって!」

 

 そ、それはすごい格好いいんだけど、いろいろと困るよぅ。

 

「あらあら、惚れ直してしまいそうですわ」

 

「ちょっと見直しました」

 

 うわぁ! イッセーのハーレムは着々と検索されてるよぅ!!

 

 っていうか、私も惚れ直しちゃうから大変だよぅ!!

 

「……祐斗、待ちなさい!!」

 

 部長のするどい声が急に響いて、私たちは飛び跳ねるように視線を向けた。

 

 みると、祐斗っちが部屋から出てこようとしている。

 

「貴女には昏になってもらっては困るわ! お願いだから、落ち着いて祐斗!!」

 

「僕は、彼らの、同士達の恨みを魔剣に込めなくてはならないんだ」

 

 部長の静止を振り切って、祐斗っちは部屋から出ていこうとする。

 

 だけど、扉を開けたとたんに映ったヒトカゲをみて動きを止めた。

 

「お、落ち着けよ木場。なんだかわからないけどお前様子変だぞ?」

 

 そこにいたのは匙元士郎。

 

 うん、よかったよかった。

 

「な、なんでここに?」

 

「いや、こんど添い寝するからとりあえずここに来てくれって兵藤姉に言われたんだが……」

 

 おい正直に言うなぁあああああ!!

 

 とたんに視線が集まって、私はどうしたもんかと思おうけど素直に頭を下げる。

 

「怖かったんで助けてくれそうな助っ人に相談しましたぁ!! ごめんなさい!!」

 

「貴女ねぇ。そういうことを勝手にするのはさすがに辞めてほしいのだけれど?」

 

 いや、その、私ビビリなんで役に立たないし……。

 

「と、とにかく! 祐斗っちも落ち着いて!! っていうか、そもそもなんでそんなテンションになってるのさ!」

 

 うん、先ずそこから知らないとわけがわからない。

 

 エクスカリバーにいい想いを持ってないのはわかるけど、だからってなんでそこまで嫌な思いを持ってるのかわからないからどうしようもない。

 

 そもそも先輩って何? もともと協会の出身か何かだったの?

 

「姉ちゃんの言う通りだ。……木場、なんでお前がエクスカリバーを敵視しているのか教えてくれよ」

 

 あ、イッセー。

 

「それをする必要がどこにある―」

 

「何言ってんだ、当たり前だろうが!!」

 

 イッセーは祐斗ちを一喝する。

 

「ダチの苦労は一緒に肩代わりするのが当たり前だろうが!! ふざけたこと言ってんじゃねえ!!」

 

 ああもう! だからなんでそんな格好いいこと言うかなぁ!! 惚れ直すよ!!

 

 いやいやいやいやそうじゃない。

 

 それはともかくとして―

 

「祐斗っち。私たちは同じ部長の眷属仲間つまりは友達だよ?」

 

 友達だったら困ったことがあったら聞くのが当たり前。

 

「どうしても一人でやりたいっていうなら、せめてどうしてかを教えてよ。そしたら、私は我慢するからさ」

 

「………」

 

 祐斗っちは憮然としていたけど、やがて苦笑すると険を緩めた。

 

「わかったよ。どうやら行ってくれないと拉致もあかないだろうしね」

 

 そういうと、祐斗っちはすべてを語りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祐斗っちは、孤児だった。

 

 生まれたときから名前すらない祐斗っちは、ある時教会に拾われて名前を付けられるなどして育てられる。

 

 その時の名前は嫌なことがあったのか言わなかったけど、少なくともこの時の祐斗っちはやる気に満ち溢れいていたってことだ。

 

 神に選ばれたと、聖剣に選ばれた人間になるといわれて、祐斗っちは過酷な訓練や実験に耐えてきた。

 

 いつか手のために役に立てると、神に愛されてると信じて、聖歌を謳いながらつらいことにも耐えてきた。

 

 それが、最後は毒ガスだ。

 

「アーメンと、そういいながら、彼らは僕たちに毒ガスをまいた………っ!」

 

 拳を握り締めながら、祐斗っちは言葉を紡ぐ。

 

「そんな中、彼らは僕だけでもと、命がけで……命を捨てて僕を逃がしてくれた」

 

 そして、そこから逃れた祐斗っちはリアス部長に拾われて今に至った。

 

「同士達が命を犠牲にしてつないでくれた僕の命。それは、ただ生きているだけでは意味がない。彼らの無念を、彼らを無残に殺したバルパーにたたきつけるまでは、死んでも死にきれない!」

 

 祐斗っち……。

 

「ねえ、祐斗っち」

 

 私は、ちょっと言いたいことがあって祐斗っちに声をかける。

 

「復讐は何も生まないとか、わかった風なことは言わない。だけど、だったらまず最初にやることがあるでしょ?」

 

 うん、これは言っていいと思う。

 

 バルパーってやつのやったことは許せない。祐斗っちの怒りはもっともだ。

 

 復讐は何も生まないとか、憎しみの連鎖を産むだけだとかいうかもしれないけど、これは全部バルパーが悪い。

 

 追放なんかで済んでいいような話じゃない。もっとこう、ちゃんとした報いを受けさせなきゃ私だって我慢できない。

 

 だけど―

 

「だったら、なんで頼ってくれないの?」

 

 ―なんで、一人でやろうとするんだよ。

 

「え?」

 

「そういう事情なら、私はできるだけ協力する。っていうか、いらないなんて言われてもやるからね!」

 

 うん、それはもう決定事項。

 

 だってそんなクソ野郎許せないよ!!

 

 見つけ次第徹底的に叩きのめいしてやるんだから!!

 

「ああ、俺もマジでむかついてる。バルパーの奴、絶対に見つけたら叩きのめしてやる!!」

 

 うん、だよねイッセー!! そういってくれると信じてたよ!!

 

「……そうね。エクスカリバーを盗んだ以上、使い手を見繕う可能性はある。バルパーはコカビエルと手を組んでいる可能性もあるわ」

 

 リアス部長はそういうと、立ち上がった。

 

「朱乃。今すぐに教会の者たちを探し出して頂戴。バルパーを発見した場合、引き渡しを要請するわ」

 

「そうですわね。うふふ、お仕置きのしがいがありそうですわ」

 

「力仕事なら任せてください」

 

 朱乃さんも小猫っちもやる気満々だ。

 

「待ってください! これは僕の問題で―」

 

「馬鹿野郎!!」

 

 止めようとする祐斗っちに、イッセーが一喝する。

 

「俺たちは仲間だろう! なんで俺たちを頼らねえんだ!!」

 

 イッセー、やっぱりいうことが違うよ。

 

 そんなだから、私はお姉ちゃんなのに……。

 

「嫌だって言っても協力するからな! 仲間の、ダチの敵は俺の敵だ!!」

 

「イッセーくん……」

 

 祐斗っちがなにも言えない中、私はふと思い出したことがある。

 

 そういえば匙くんは?

 

「うぅ……! その通りだ、木場!!」

 

 うわ、マジ泣きしてる!

 

 っていうか、鼻水が床に落ちてるからとりあえずかんで、かんで!!

 

「お前にそんな過去があったなんて知らなかった!! 畜生、世の中は非常すぎるぜ!! お前がエクスカリバーをうらんでも当然だ!!」

 

 力強くうなずく匙くん。でもその勢いで鼻水が飛んでるよ?

 

「俺も協力するぞ! 何かあったらすぐに言ってくれ!! 会長にお仕置きされるかもしれないけど、その時はその時だ!!」

 

 勢いよくそういうと、匙くんは祐斗っちの肩をつかむ。

 

「だから、お前はリアス先輩を裏切るな!! せっかく助けてくれた人の想いを無駄にするんじゃねえ!!」

 

 おお、熱いセリフだ!!

 

 うん、この子イッセーと似たタイプだよ。

 

「そ、そうだね」

 

 よし祐斗っちの言質もとった!!

 

 そして匙くんは鼻水をすすると、へへっと笑いながら私たちに語りかける。

 

「っと。こんな秘密を知っちまったら、俺も一つぐらい言っておかないと失礼だな」

 

 しかも律儀だった。

 

 え、でも私たちは何も言ってないけどいいのかなぁとは思う。

 

 だけど、匙くんの秘密って何だろうと思う時になる。コレはちょっと黙って聞いているべきかな。

 

「俺には夢がある。……会長とできちゃった婚をすることだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤龍帝の鎧を展開して殴り倒そうかと思ったよ。

 

 あと、イッセーは非常に意気投合した。

 


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