仮面ライダーアズライグ 作:ヘンシンシン
そんなこんなで次の日になって、私たちは割と緊張していた。
だってだって! 悪魔と教会が交渉だなんて、宗教に疎い私だってわかるぐらい何かがおかしい字面だよ?
絶対よほどのことだってわかる。ライザーとのレーティングゲームがかすむぐらいの、すっごく大変なことだって想像できちゃうよぉ。
イッセーも緊張しているのか、結構あたりを見渡している。
反面小猫っちは結構落ち着いてるね。やっぱり悪魔としてはベテランだからかな?
そんでもって、一番あれなのが祐斗っちだ。
なんかわからないけど、すごいピリピリしてる。
え、なに? なんなの? なんか今まで見たことがないぐらいイライラしてるみたいなんだけど?
「部長ぅ。祐斗っちどうしたんですか? 球技大会までは落ち着いてましたよねぇ?」
「私も分からないわ。どうも、昨日の夜に何かあったみたいなんだけれど……」
うぅ。ただでさえ教会と揉るかもしれないってのに、なんでこんな時にイライラしてるんだよぅ。
「祐斗は教会にいい思い出がないから仕方が名かもしれないけれど、何かあったら取り押さえてね、一美、イッセー」
「はいぃ。頑張りますぅ」
でも、祐斗っちがこの中で一番足速いんですけど?
うぅ、でもなんていうか、爆発寸前って感じで嫌な予感しかしないんだけどぉ?
頼むから、教会の人ともめ事を起こさないでね、祐斗っちぃ。
そして、朱乃さんに連れられて教会の人が三人入ってくる。
イリナっちに昨日会った青髪の人。そして見知らぬ金髪の男性。。
なんだろう、金髪の人の敵意がすごくひどい。
「……ふっ」
「……ふん」
うわぁ、敵意満々の祐斗っちと視線が合っただけでにらみ合いが発生してるよ。
頼むからこんなところで殺し合い何て勘弁してよね。私とか絶対役立たずで足引っ張るから。
っていうか、なんか寒気がするんだけどどういうこと? ここはあくまで悪魔側なんだから、むしろ教会側に重圧があると思うんだけど?
よく見ると、寒気が出ているのは女の子が持っている布の包みだ。
なんだろう? 聖別された武器か何か?
っていうか、なんかそれに気づいた祐斗っちの視線が十割増しで険しくなってるんですけど!?
なんか嫌な予感しかしないなぁ。これ、穏便に済む気配が欠片もないよ。
もうとっくの昔に体が震える中、ついにイリナっちが口を開いた。
「簡単にまとめるわ。先日、ヴァチカン、プロテスタント、正教会から管理されていたエクスカリバーが盗まれました」
なんか、すっごく知られたらまずいことを堂々と言わなかった!?
確かエクスカリバーっていうと、アーサー王伝説に出てくる聖剣だよね? しかも超すごい!!
あ、あまりに堂々と言われたもんだからリアス部長も朱乃さんも小猫っちすら目を丸くしてるよ。祐斗ッ値にいたってはなんか気でも狂いそうな表情になってる。
あ、そういえばイッセーはなり立てだからよく知らなかったよね。フォローしないと!
「えっとイリナっち。エクスカリバーってたしか、かつての大戦で七つに砕けたんだっけ?」
「そうよ一美ちゃん。そして、七振りの件に作り直されて、うち六振りを教会が保有してたの」
うんうん。そうなんだよ。
私も詳しくは知らないけど、それでもエクスカリバーはすっごく強い聖剣なんだって。
仕える人は十年に一人出ればいいぐらいだけど、その分使える人はそれだけで優秀扱い。中級悪魔なんて女じゃないらしい。
そして、青髪の人が布をほどいて包みの中のものを見せる。
それは、やけにごつい一振りの大剣だった。
うわぁ、包みを解かれたと単に寒気が増したよ。
っていうか、この展開で見せるってことは―
「そしてこれが、残存しているエクスカリバーの一つ、
ぶっきらぼうにそういった女の子に続いて、イリナっちもローブをまくり上げると腕に結ばれたひもを見せる。
っていうか、なんか紐からも寒気が見えるんですけど!?
「私のこれは
へえー。
「あれ? でもそんなことペラペラしゃべっていいの?」
「全くです戦士イリナ。悪魔は所詮倒すべき敵なのですから、うかつに情報を漏らしてはいけません」
思わず口を突いて出てきた疑問に、男の人もそういってたしなめる。
たしなめるけど倒すべき敵って。そういうことを言ったら本当に戦うことになりそうだからやめてくれない?
女の子の方もいい気分はしていないみたいで、とがめる視線をイリナっちにむける。
「ジョージの言う通りだ。少しは機密保持という言葉を知ったらどうだい?」
「あら、ゼノヴィアもジョージさんも心配性ね。能力が知られたからって私がこの場の悪魔の皆さんに後れを取るとでも?」
イリナっちぃいいいいいい!!! 喧嘩売らないでくれない!?
うわぁあああああ!!! 部長も朱乃さんも小猫っちも機嫌悪くなったよぉ!!
しかも祐斗っちが本当にひどい!! もうこれ切りかかってもおかしくないぐらいキレてるよ!!
もう一発ぶんなぐって気絶させた方がいいような気がするよぅ。どうしようかなぁ。
「それで? それが私たちにどう関係するというのかしら?」
「それが、盗んだ堕天使コカビエルはこの駒王町に逃げ込んだんです」
えっと、コカビエルって確か堕天使の統率組織である
超大物だよ。すごいのが来たよ。
なんでそんなのがこんなところに来るんだよぉおおおお! 私のビビリが収まってから来て頂戴な!!
「私の縄張りを逃げ場に選ぶだなんて、屈辱だわ」
リアス部長もすごく苛立たし気にため息をつく。
っていうか、そんなすごい人ならなわばりの一つぐらいあるでしょうに。なんでわざわざ悪魔の陣地に来るかなぁ。堕天使の本部とかに逃げ込んでよ。
っていうかこれは大変だね。うん、すぐにでもなんとかしないと。
なるほど、つまりこの人たちは迷惑をかけるからごめんなさいといいに来たのかな?
そんなことを思っていると、ゼノヴィアといわれた人はリアス部長の目を見て堂々と言い切った。
「私たちの要求はただ一つ。今回の件に悪魔側は一切かかわるなといいに来た」
はい? いや、ちょっとまって?
ここは魔王様から直々にリアス部長が管轄するように言われた地域。つまり、ここで起きたもめ事は基本的にリアス部長が何とかしなけりゃいけないこと。
それなのに、手を出すなって言ったよこの人たち。
むちゃくちゃだ。ふざけてる。
「それは、宣戦布告ととってもいいのかしら?」
「ふむ、それならそれで都合がいいところもあるがな」
おいおい、今まであまりしゃべってなかった金髪の人、笑顔すら浮かべてそんなこと言ったよ。
「ちょっとジョージさん。さすがにそれは私達も困るんだけど?」
「かまう必要などないだろう。薄汚い欲望を司る悪魔を滅ぼすことこそ我らが使命。確かに難易度は跳ね上がるが、見逃すこと自体が愚かなことではある」
そういうなり、ジョージといわれた金髪男は光の剣と銃を引きぬくと静かに構える。
「我々としては悪魔も堕天使も信用していない。欲に溺れた者同士、どうせ共闘しているのだろう? そうでなければ堕天使が悪魔の領地を逃走先に選ぶわけがないのだからな」
「この私が、リアス・グレモリーが、寄りにもよって堕天使と手を組んでいるですって? 侮辱するのもいい加減にしなさい」
リアス部長はまだ戦闘態勢に入っていないけど、こっちもこっちで切れかけてる。
当然だ。いくらなんでも勝手なことを言いまくってる。
人の縄張りに敵が侵入しているのに、そいつらが殺し合うのを黙ってみてろって、むちゃくちゃにもほどがある。
しかも、このジョージって人はむしろそれが不満みたいだ。
「なに? 断るというのなら断ってくれて構わんぞ? どちらにせよ、悪魔の住まう土地に来たのならばその悪魔を切るのは
「……ふざけたことを言ってくれるようね。そんなに教会は戦争がしたいのかしら?」
部長はジョージに牽制球を放つが、むしろジョージは乗り気だった。
「私個人としては、ただでさえ無宗教などという狂った考えに汚染されているこの国の、さらに悪魔に裏から支配されている土地など軽蔑の対象でね。せめてどちらかでもなんとかしたいと常々思っている。……上からの指示がなければ真っ先に殺しているところだ」
うわぁ、敵意満々。
だめだ、このままだとマジで殺し合いになるかもぉ!!
などと思っていたけれど、リアス部長はそれを見てむしろ笑った。
「なるほど。つまりバチカンはここで悪魔と揉めることを望んでいないというわけね」
「……っ」
その言葉を聞いて、ジョージはイラついた顔をした。
なるほど、敵意全開だけど、全面戦争を望んでいるわけではないようだ。
つまりこの挑発はジョージって人の独断だと。
「まあ、そういうことだ。ジョージ、頼むから剣を収めろ。それ以上するようなら私が相手になる」
と、ゼノヴィアも逆に聖剣をもってジョージに詰め寄る。
「我々はあくまで主の意向を広めるために動いている。その代行であるうえがそう決めた以上、我々が独断で悪魔を滅するわけにもいかないだろう」
「………ちっ!」
ゼノヴィアに詰め寄られて、ジョージは舌打ちすると乱暴にソファーに座った。
「ごめんなさいね。ジョージさんは悪魔祓いを総動員してでもグレモリーごとコカビエルを倒すべきだって強く主張してたから」
イリナっちがそういって誤るけど、あれ、ってことはつまり―
「……あなたたち、まさか三人でコカビエルを倒すっていうの?」
リアス部長の言う通りだ。
コカビエルって堕天使の中でも超強いって聞いたことがある。こっちの業界だと政治的に上に上り詰めるにはある程度戦闘能力も必要だからだ。
それってつまり堕天使最強格。普通人間がたった三人で挑むような相手じゃないよね?
「ちょっと、正気なのイリナっち!」
「もちろん! 主のためなら命の一つや二つかけれるわ♪」
ノリノリで答えないでよイリナっち!
「まあ、簡単に死ぬつもりはないが、そもそも命を懸ける覚悟がないならこんなことはしないさ」
「正気を疑うわね」
リアス部長よく言った。私もちょっとこれはどうだろうと思うよ。
「貴様ぁ! 主の命を捧げることを狂気というなどふざけた真似を! ここで眷属まとめてみなごろしにしてやろうかぁ!!」
ジョージは目を血走らせて剣を構えるけど、すぐにイリナっちとゼノヴィアに取り押さえられる。
「あの、本当にやめてくれないかしら?」
「いい加減にしないと本当に切ることになるんだけどね?」
「戦士イリナに戦士ゼノヴィア! 信仰を馬鹿にされて平然としていられるのかお前たちは!!」
ジョージはそういって今にも切りかかりそうだけど、だけどまあ身内で止めてくれるならこっちが手を出す必要は―
「それ以上暴れるというのなら、僕が相手になろう」
あ、ヤバ。
そう思った瞬間には、魔剣が大量に入り乱れて部屋中を埋め尽くす。
そして、それを生み出した張本人は壮絶な笑みを浮かべていた。
「何者だ? 貴様」
「君たちの先輩だよ。失敗作として処分されたけどね」
うわぁ、にらみ合い。
ど、どどどどうしよう! これってマジでまずくない?
こ、このままだと殺し合いに―
「―そこまでにしておけ、ジョージ」
と、そこでゼノヴィアがしびれを切らしたのか、本気で苛立たし気に声を出す。
「それ以上馬鹿な真似をするというのなら、私も切り札を切るぞ?」
「………チッ!」
心底苛立たし気に舌打ちして、ジョージは武器を収めた。
「もういい。私は退席させてもらう。これ以上ここにいると本当に戦闘を開始しそうだ」
そういい捨てると、ジョージは本当に部屋から出ていく。
ふぅ。とりあえず危機は去ったね。
そして、ゼノヴィアは軽く頭を下げた。
「ジョージが済まない。彼は教会でも屈指のタカ派でね。今回の件も半ば無理やり参加したようなものだ」
「どこも過激派っていうのはいるのね、心中お察しするわ」
ため息をつきながら、リアス部長は片手を上げる。
機先を制されたこともあって、祐斗っちも仕方なく魔剣をしまった。
「……先程の物言い。君はもしかしてバルパーの時の被験者か」
そうつぶやくと、ゼノヴィアはリアスに顔を向けた。
「迷惑料だ、リアス・グレモリー。君たちに情報を伝えておこう」
迷惑料? いったい何の話?
「……聖剣計画において被験者の殺害が行われたのはもう知っているようだ。……例の件は当時の主要研究者の暴走だ。当時の研究主任は追放されて堕天使側だ」
「……そいつの名前は?」
「バルパー・ガリレイだ」
だれが、オリキャラが一美だけだと言った?
と、いうわけで敵も強化するべくオリキャラを何人か投入します。まあ、十人も出てこない予定ですが