仮面ライダーアズライグ 作:ヘンシンシン
「さて、それではそろそろ動くべき時だと思うが、どうする?」
暗い部屋の中一人の男が、一人の少年を前にしてそう尋ねる。
「当面は貴方に任せるさ。真の魔王の力を俺に見せてくれると俺としてもうれしさ」
少年はそう答えるが、しかしそれは男の言葉の裏の意味を理解しているからだ。
男は意見を聞いているようで、実際のところは聞いていない。
ただ単純に、自分の望む言葉を少年が言うことを命令しているだけなのだ。
すなわち、我々に従え下等種共、と。
しかし、少年たちはあえて素直にそれに従った。
別にそれを受け入れているわけではない。
どうせ彼らが失敗することがわかりきっているのだ。
だったら、わざわざ内輪もめをする必要などない。
適当に動かしておいて、せいぜい敵となる者たちを減らしていけばいい。そして彼らがいなくなった後に実権を握ればいいのだから。
そう判断し、少年―曹操はこの場の実権を男―シャルバ・ベルゼブブに譲る。
シャルバが無自覚の時間稼ぎを行っている間に、自分たちは自分たちで準備を整えるべきだ。
そう判断し曹操はシャルバと別れ、そして一つの研究室にたどり着く。
……その研究室では、大量の培養槽が存在した。
その中にいるのは、大量の人間。否、人間もどきといってもいい者たち。
「研究は進んでいるかい、プロフェッサー」
「もちろんだとも!!」
大声でそれにこたえるのは、白衣を着た白髪の男。
初老といっても差し支えない年齢の男は、しかし夢に向かって邁進する者が持つ若々しさがあった。
「それで!? あの馬鹿はやはり主導権を握りたがっていたかね!?」
「ああ、まあプライドだけは一人前の旧魔王末裔なだけあるよ。兵力を提供する必要もあるだろう」
「問題ない! 問題ないとも!! この世の中屑は腐るほどいるのだからな!!」
そういいながら、男は危機を操作すると培養槽の中の人間を調整する。
その人間たちは少しずつ異形の姿に変わっていくが、曹操も男も意に介さない。
しょせんは彼らは偉大な存在に利用される資源なのだ。しかも何百万人もいるのなら、いくら使用しても当分問題はなかった。
少なくとも、彼らはそう思っている。
そして、男は振り返るとそれを見物する者たちを見て口元をゆがめる!!
「さあ! 馬鹿が愚行を働いている間に我々賢者は世界を導くために働こうではないか!!」
そういいながら取り出すのは、注射器のような機械。
「このドラッグシリングによって生み出される、新たなる未来のために頑張りたまえ!! 世界を作るのはいつだって勤勉な天才なのだよ!!」
そして、その言葉にこたえるかのように彼らは一斉に注射器を取り出すと、それを突きさす。
『チューニュー!!』
その合成音声とともに、その場にいた者たちは異形の姿へと変貌する。
「さあ、俺たちも準備を始めよう。ドラッグシリングとドラピングによる、この世界を作り変える戦いはもうすぐそこまで迫っている」
曹操もまたそう告げながら異形へと姿を変えると、そして彼らは魔方陣を展開しながら世界各地へと転移していった。
その数年前、炎に包まれる家の中で、一人の少年はへたり込んでいた。
「父さん、母さん!! しっかりしてくれよ!!」
「……イッセー、か」
父親の方はかろうじて目を開けるが、しかし母親の方は目を覚まさない。
当然だ。すでに彼女は死んでいるのだから。
「ごめんな、イッセー。俺は、お前や一美にひどいことをしちまった。だから、これはそのせいなんだ」
「ひどいことってなんだよ!! 俺もアイツも、父さんにも母さんにもいいことしかされてないって!!」
今にも死にそうな父親の肩を揺さぶりながら少年は―兵藤一誠は声を荒げるが、しかし父親は静かに首を振る。
「いや、俺はお前にひどいことをしてしまった。そうするしか方法がなかったとはいえ、俺たちは、自分の子供を悪魔の実験にささげたんだ……」
震える手で彼はカギを取り出すと、そのままイッセーに押し付ける。
「日記と、それと奴の作った試作品がそこに、ある。……一美を……た………の」
最後まで言い切ることなく、彼はそのまま血を吐いて無言になる。
そして、炎が近くにあるにもかかわらず、その体は冷たくなっていった。
「父さん? 父さん……父さん!!」
何度もゆすり、しかし反応は帰ってこない。
「う……うぁああああああああああああああああ!!!!!」
叫び声が、空に響き渡った。
そして、時は戻る。
「イッセー! そろそろ朝だけど起きないのー!?」
「も、もう起きてる! 起きてるから!!」
その声で俺は目を覚まして、慌てて飛び起きる。
目覚まし時計をセットするのを忘れてたみたいで、もう時間は結構すぎていた。
「……いやな夢、見ちまったな」
最近は全然見てなかったのんに、久しぶりにあの時の夢を見ちまった。
俺は兵藤一誠。親しい友達からはイッセーって呼ばれてる。
夢はハーレムを作ること!! それも、おっぱいブルンブルンのきょにゅうだらけのハーレムとかできたらいいって心から思ってる高校生さ!!
でも、いまだに彼女ができたことすらない。なぜだ!! これでも頑張って筋トレと化してるのに!!
「いやいやイッセー。覗きの常習犯が持てる世の中とか何かが間違ってると思うんだよ、ヒトミ」
「うるっせえよ!!」
俺は心を読んできた一美にツッコミを入れると、朝ごはんを勢いよくかっこんだ。
……この茶髪の女の子は兵藤
そして、俺の唯一の家族。
俺が中学生のころ、俺たちは家族を失った。
その時の細かい事情はまだ一美にはいってない。いや、いえるわけがない。
……でも、いつかは言わないといけないってことも分かってるんだ。
「イッセー? 手が止まってるよ?」
「え? あ、もう急がないと遅刻する―」
「先に行ってるからねー」
「あ、ちょっと待ってぇえええええええええええ!!!」
一美の奴! 俺を置いてさっさと行っちまいやがった。
くそ! このままだと遅刻だから急がねえと!!
俺は慌てて朝食をかっ込んで、急いで出ようとして―
「―その前に」
ああ、あんな夢を見た後ぐらい、仏壇に手を合わせておくか。
「父さん、母さん。言ってくるよ」
大丈夫、俺は、必ずヒーローになる。
………いつか必ず来る、ドラピングとの戦いに諮って見せる。
一美Side
はい! 初めまして!!
私の名前は兵藤一美!! いつか素敵な男子と結婚することを夢見ている女の子!!
「「「「「「「「「「待てこら覗き魔ぁああああああああああああああ!!!」」」」」」」」」」
「「「に、逃げろぉおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
校舎の近くでジュースを買ってると、いつもの光景に出くわしちゃった。
慌ててきたのか微妙に服が乱れた女子たちが、イッセーや、友達の松田っちと元浜っちを追いかけてる。
三人とも気のいい人たちなんだけど、なぜか覗きがやめられなくて、ほとんどの人たちから嫌われてるの。
いや、父さんも母さんも死んじゃって距離をとられている私やイッセーと仲良くしてくれてるいい人なんだけどね? 女は見られてなんぼだから下着までなら私は気にしないし。でも普通の人にはきっついみたい。
むぅ。見られて欲情されてるうちが花だと思うんだけどなぁ。
とはいえ、やっぱり一応犯罪だから仕方ないよね。
三人ともー。もてたいならそれ本当に直した方がいいからねー。
そんなアドバイスを心の中で送ってから、私は旧校舎の方に行く。
私はオカルト研究部に所属してるの。
え? なんでだって?
それはね―
「あら、早かったわね、一美」
と、渡しに超えるかけるのはオカルト研究部部長のリアス・グレモリー先輩。
間違いなくお兄ちゃんがテンション爆上げするようなおっぱいの持ち主で、そして―
「今日、大公から指示が来たわ。はぐれ悪魔よ」
―私も含めて、悪魔なんだよねぇ。
悪魔や天使って本当にいるんだよね実際。
なんでも、ほかにも神様とかもいるらしくって、人間世界でいう冷戦っていうのに近い感じになってるの。
それで、悪魔や天使、そしてだてんしは三大勢力って呼ばれてるの。それも長い間戦い続けてたんだって。
それで悪魔の当時の指導者の四大魔王はみんな死んじゃって、いまはリアス部長のお兄さんたちが襲名してるの。
その魔王様たちが行っている政策の一つが、
それを使って多種族を悪魔に転生させるのが、最近の上級悪魔の基本なんだって。
そして、父さんと母さんが死んじゃった私は、悪魔と契約してお世話になってるの。
あ、これはイッセーには内緒。いつかは言わないといけないけど、それを言ったらいろいろと大変そうだから。
そして、そんな転生悪魔の中には主から逃げ出して好き勝手する人たちが何人もいるの。
そんなはぐれ悪魔を倒すのも、転生悪魔の大切な仕事!
と、いうわけで―
「さささささあああああたたたたたおおおおおそそそそそううううう!!」
「落ち着いて一美さん。右手と右足が一緒に出てるから」
「……汗が出すぎです」
同級生の悪魔仲間の木場祐斗っちと、後輩だけど悪魔としては先輩の小猫っちに突っ込まれた!
ちゃ、ちゃうもん! そんなんじゃないもん!
「こ、これは難波歩きや!!」
「あらあら、関西弁になってますわよ」
うぅぅ! 先輩の姫島朱乃さんにまで言われた!!
うぅ、ホント悪魔になってから結構たつけど、全然治らない!!
「もう五回ぐらいはぐれ悪魔を討伐してるけど、全然治らないわね、それ」
「しゅしゅしゅいましぇん!!」
だめだ、噛み噛みだよ。
これが私のどうしようもない欠点なんだ。
どうしても、命の奪い合いとか命がかかってるとかいうのが緊張するというかビビっちゃう。
汗はだらだら流れるし、心臓はバクバク動くし、体の動きはがちがちになるし、どうしても思い通りに動けない。
そのせいで、はぐれ悪魔の討伐とかだといまだに全然役に立ってないんだ、私。
「……や、役立たずでご、めんな、さい」
「いいわよ。気にしないで」
そんな私を、リアス部長は優しく抱きしめてくれる。
「戦いが怖いのは当然。それに、あなたはそれでもちゃんと自分の足でついてきてくれるもの。むしろその勇気は褒められるべきだわ」
優しくなでられて、私は本気で泣きそうになる。
「怖さを乗り越えたり怖くないから戦場に出てこれるのは当然。でも、怖さを乗り越えられないのに戦場に自分から出てくるのは大変だもの。私達はそこは評価してるわよ?」
う、うぅううううう!! 部長ぅううううう!!
頑張ります、頑張りますから見捨てないでくださいねぇええええええええ!!!
「さあ、そのためにも線上になれないといけないわね。……行くわよ皆、主を裏切り欲望のままに人間を害するはぐれ悪魔を滅してあげる!!」
「「「「はい、部長!!」」」」
うん、私頑張るよ。
そしてお兄ちゃんも楽させてあげるんだから!!
そして私たちは廃工場に押し入って―
『んあ? なんだぁ?』
そして、化け物を見た。
全身に針が突き刺さったかのような後を持つ、悪魔どころか天使や妖怪でもないわけのわからない化け物。
『ああ、こいつを狙ってたのか。へっへっへ、悪いけど俺が殺しちまったよ』
気づけば、そこにははぐれ悪魔みたいな死体がいた。
うそでしょ、まるでミンチ……っ。
「そう、それであなたはいったい何者?」
部長は警戒心を見せながら訪ねるけど、どう見てもまともな相手には見えない。
『ちょうどいいぜぇ? こいつだけじゃ物足りねえところだったんだ。……ついでに殺させろヤァあああああ!!!』
その怪物は私達相手に舌なめずりすると、一騎に突撃する。
マズっ!?
「させない」
「やらせないよ!!」
小猫っちと祐斗っちが同時に攻撃するけど、その化け物はそれを腕で受け止めた。
嘘でしょ!? すでに小猫っちはともかく、祐斗っちは剣なのに!!
「きくかよぉ!!」
強引に二人を吹き飛ばすなか、さらに朱乃さんの雷が叩き込まれるけど、それを喰らってもぴんぴんしてる!?
な、なに? なんなの!?
ううん、そんなこと気にしてる場合じゃない!!
「りりりりりりりりりりリアしゅ部長には手を、だ、させない!!」
「一美! 危ないから下がって!!」
『そいつが大将かぁ!!』
あ、やば! 逆効果!?
うぉおおおおおおお! でも逃げたりなんてしないんだからねぇえええええええええええええ!!!
私はせめてもの意地でその化け物をにらみつけて―
「そこまでだ、ドラピング!!」
いきなりバイクがぶつかって、その化け物が弾き飛ばされた。
……え? うそでしょ?
なんで、ここにイッセーが!?
「大丈夫か姉ちゃん! 助けに来たぜ!!」
「な、なんでイッセーがここにいるのよ!!」
うそぉ!? マジでなんで!?
いや、そんなこと気にしてる場合じゃなかった!!
「そこの君!! ここは危ないから下がって!!」
リアス部長の言う通り! ただの人間のイッセーじゃ、あんなバケモノどうしようも―
「いや、ここは俺に任せてください!!」
いうが早いか、イッセーはベルトを巻き付ける。
何ていうか、医療用具を思わせるそのベルトを取り付けると、さらにイッセーは何かを取り出す。
なにあの機械! 注射器に似てるけど―
「変身!!」
そういうとイッセーはベルトにその注射器もどきを注入する。
『ブッスーン!! チューニュー、ドライグ!!』
……え? ドライグ?
私はその音声が言った名前に驚く中、イッセーの体に鎧みたいなものが取り付けられる。
まるでドラゴンを模したその姿は、そう―
『て、てめえ何もんだぁ!!』
「俺は、仮面ライダーアズライル!!」
そんな、あれは赤龍帝!?
「さあ、張り倒すぜ!!」
とりあえず長くなったので二分割。
次で初戦闘と簡単な説明があります。